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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第65話 初陣へ往く侍達

【ガルキュイ平原】
ここでリュウヤは、ちゃんとした初陣兼食料集めとして、タクマと共に討伐クエストに励んでいた。
ヘビのようなバジリスク討伐、ヤギと見たことのない動物を掛け合わせたようなキメラ討伐、ハエトリグサのような姿のマンイーター討伐。
この三つのクエストで、レベルアップや食材集め、その他諸々を目標に剣を振る。

「行くぜ、タツ!」
「はい、お前様!」

二人は目の前から突進してくるキメラを前に武器を構え、いつでも技を撃てるようにする。
そして、衝突まであと2秒といった所で、リュウヤとおタツはすごい速さで剣舞を繰り出した。

「「〈双星乱舞・景清ノ舞〉」」
「地獄が、おまんのゴールぜよ」

二人は自然の息で技名を唱える。
するとその時、キメラは口からありえない量の血を吐き出して倒れた。
それもその筈、この技「景清」とは、影のように素早い動きを用いて相手の心臓を潰す技。つまり、キメラが血を吐いたの心臓を潰されたからである。

「こいつぁヤギの部分は確定で食えそうだが、このカマキリみたいな腕は無理だな」
「こんなの食べれるのでありんすか……?」

倒したキメラから食べれそうな部分を無心で剥ぎ取るリュウヤに、どこが食べられるのか分からないおタツは訊ねる。
するとリュウヤは、キメラから内臓を取り出しながら「爺ちゃんの言葉でな」と前置きをして話し始めた。

「知らんもんは知ってる奴に訊け、最初の毒味は自分、次が信じる者に。ってな」

リュウヤは内臓を引き抜いた際に飛び散った返り血を、親指で拭きながら言う。
しかしそんな事をしていた事で、後ろから現れたマンイーターが襲いかかって来た。

「うわぁっ!!」
「ここは拙者にお任せをっ!」

二人を守るように現れた吾郎は、後ろから飛び上がり、腰の刀を抜刀して斬りつける。

「〈雲雀ノ一太刀〉」

吾郎は刀を鞘に戻しながら最後に技名を言う。
すると、そのマンイーターはバラバラになって地面に落ちた。

「無事でござるか?リュウヤ殿」
「あぁ、お陰様で」

リュウヤはこの事から戦闘中の剥ぎ取りは危険であると学び、気を取り直して刀を構える。
そして、その隣に居るタクマ達が戦う大蛇、バジリスク戦の加勢に向かった。

「こっちだ!」

タクマは追いかけてくるバジリスクを近くにある大岩におびき寄せる。
そして、バジリスクが完全に曲がれない所まで来たところで、タクマは横に逃げた。
すると避けきれなかったバジリスクはそのまま岩に激突した。

「今じゃ! 《フレア》!!」

その先でスタンバイしていたメアは、岩から出てきたバジリスクに、フレアを放つ。
メアのフレアはそのままバジリスクの口に当たり、悲鳴に似た鳴き声が辺りに響き渡る。

「まだまだぁ!《サンダー》!!」
「待てノエル!様子がおかしいぞ!」

さっきまで見なかった動きを取るバジリスクを見て、タクマは魔法を打とうとするノエルに忠告する。
しかし、呪文を唱え終えた事だった事もあり、バジリスクの上空から雷が落ちた。
するとバジリスクはその雷を吸収し、逆にその力を使って謎の液体を吐き出してきた。

「遅いですっ!!」

ノエルはその液を、杖を高跳び棒代わりにして謎の液を避ける。
しかし、身体は無傷ではあったが、液を食らった杖や地面がジューと音を立てながら溶け出した。

「そんな……私の杖が……」
「溶解液か、こらまた厄介だな」

タクマはその様子に驚きながらも言う。
そうしていると、今度はタクマの方に顔を向け、襲いかかって来た。

「来やがれぇ!!」

襲ってくるバジリスクは、タクマからすれば何の脅威でもなかった。
そのためタクマは、剣を構えて突進するバジリスクをどんと受け止めるように構える。
そしてそれと同時に、バジリスクのロウらしき場所を探した。

(あの首の付け根、アレかもしれない!)
「そこだぁっ!!」

タクマはプレスするように頭を落として来たバジリスクの首目掛けて飛び上がり、その首に「閃の剣」を放った。
そこから首が切れ、バジリスクは頭と身体の二つに分離し、その場に倒れる。

「危なかったぁ」
「よっ、大丈夫かタクマ」

加勢に入ろうとしていたリュウヤ達は、倒れたバジリスクの頭の上に飛び乗りながら、額の汗を拭うタクマに声をかける。
それにタクマは「まぁ何とかなったけど……」と言いながら、ノエルの方を見た。

「私の杖が……グスン」

ノエルは涙目になり、溶けた杖を見つめる。
それを見たタクマは、座り込んでいるノエルの頭を撫でた。

「服もボロボロになって来たし、そろそろ武器も新しいの買おっか。な?」
「タクマさん……ありがどうございまずぅぅ!!」

笑顔で言ったタクマの優しさに、ノエルは涙を滝のように流して抱きつく。
しかもそれと同時に、タクマの背中から何だか不穏な音が聞こえてくる。

「痛い痛い痛い痛い、背骨がぁ……」
「やっぱりタクマ達は面白いね」
「呑気な事言ってないで助けてくれ〜!!」


【武器・防具屋】
それはさておき、タクマ達はバジリスクの蛇肉やら何やらを剥ぎ取り、報酬金を換金した後に、新たな大陸に向けて装備を整える事にした。

「へいらっしゃい、良い武器揃ってるぜぃ!てやんでい!」

頭にタオルを巻いた坊主の店主は、江戸っ子口調でやってきたタクマ達を接客する。
黒い鉄を使った剣、血のように赤い鍵爪のような模様を遇らった何故ナイフ、黒猫を模した宝玉の埋め込まれた水色の杖。
その他にも、メアの好きそうな黒い服や、タクマに合いそうな青いチェスターコートなど、色んな武器や防具が取り揃えられていた。

「うわぁ、こんなに沢山……」
「あれ?タクマさんは見なくて良いんですか?」

ふと武器を見ていたノエルは、ずっと服と睨めっこして武器に見向きもしないタクマを見て訊ねる。

「俺はケンさんから受け取ったコイツと旅に出ようって、ブレイクさんの所で決めたんだ」
「そういえば、私と会った時からその剣大事にしてますからね」

ノエルは改めて、タクマの背負っている特別な剣を見てから、もう一度杖の方を見た。
先程言ったような水色の杖、龍を模したアクセサリーの付いた緑の杖、三又槍のような杖などの色々な杖が壁に立てかけられている。

「どうした嬢ちゃん、迷うかい」
「うひゃあっ!いつの間に!」

まるでワープしたかのようにヌルリと現れた店主を見て驚く。
するとその店主は、ノエルの目を見てから、水色の杖を渡した。

「嬢ちゃん、氷とかの杖はコイツが使いやすいぜ」
「へぇ、いくらなんですか?」
「うーんと、こいつぁ4800ゼルンだな」
「よし、買います!!」

ノエルはその杖に惚れ、購入を決意した。

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