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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第57話 辛抱、悪霊退散

「……はっ!!ここは一体……って何ですかコレ!!」

目を覚ましたノエルは、変わり果てた部屋を見て驚く。
さっきまで綺麗で豪華だった筈の部屋、それが今は屋上と化している。
とにかくコレはヤバイと感じ、ノエルは咄嗟に杖を握りしめた。

「起きたか小娘!とにかくワシはもう限界だ!だから何でもいい、代わりに腕を止めてくれ!」

ノブナガは起きたノエルにそう伝え、エンヴォスの腕を力強く押し返して撤退した。
そして、押し返されたエンヴォスは、一瞬後ろに倒れそうになるが、すぐに戻って腕をまた同じ場所に戻す。

「とにかくやれるなら何でも!《フリズ》!」

ノエルは、エンヴォスが床についた手に向けてフリズを放った。
しかし、巨体の手に普通のフリズが叶う筈もなく、凍りついた手はそのまま床と一緒に手を上げる。
そして、エンヴォスは右腕にしがみ付くタクマを引き剥がし、まだ壊れていない部屋の方へと投げつけた。
大量の煙を上げて部屋の壁を破りながら、タクマは倒れる。

「……血が……ゴフッ!」

タクマは喉から込み上げてきた血を吹き出す。
だが、その後にやってきた謎の小さな振動により、その部屋にある棚からタクマに追い討ちを加えるように箱が落ちてきた。

「いだっ!!何だコレ……」

タクマは落ちてきた箱を拾い、その中に入っていた紙らしき物を取り出した。
そしてそれを見て、ある事を思いつく。

「そうか、アイツが骸骨なら!」

タクマは作戦を決行するために、ノブナガ達が戦っている場まで走った。


【エンヴォスとの戦場】

「ちぃ!次から次へと触手が湧いて出やがる!」
「《フリズ》!《サンダー》!」

エンヴォスは雑魚を蹴散らそうと、吸盤から魔力を出して固めた魔法触手を使い、ノブナガとノエルを襲う。
そして、ノエルとノブナガは、避けられる攻撃は避け、水と木属性の触手は魔法で退治、その他の触手はノブナガが斬った。
だが、斬っても斬っても再生する触手達に圧倒され、ついにノブナガは土魔法の力を持った硬い触手に殴られ、吹き飛ばされてしまう。

「ノブナガ殿!」
「なんのこれしき、鬼丸が居れば壁には当たらぬよ!」

飛ばされた所を見た吾郎はノブナガの名を叫ぶ。
それを聞いたノブナガは心配させまいと、剣を地面に突き立て、それをブレーキ代わりにして体勢を整えた。

「それよりこんな状況で大丈夫なんですか、メアさん達……」

ノエルは魔法触手を魔法で撃退しながら、帰ってきたリュウヤに訊く。
するとリュウヤは、刀を抜き「そろそろやってくれる頃だ」と言い、エンヴォスの後ろを指さす。
そこを見てみると、微かではあるがぽぉっと紫色の光が竹林の中に灯ったのが見えた。

「あれって……」
「この形成を逆転させる優れ物、それが終わるまでの辛抱だ!」

そう言っていると、タクマもその場に戻ってきた。

「ごめんお待たせ、振り払われちまった」
「派手な音したけどあれお前だったか、とにかくもう一回あの胸まで行くぜ!」

リュウヤと吾郎、タクマ、ノブナガの4人は剣を構え、触手を伝って胸へと向かう。
そして、その道を阻む他の触手に、ノエルはフリズやサンダーで攻撃をする。
それでも無理な触手は、吾郎とノブナガが自慢の刀で対処した。
そしてついにちょっと勇気を出して飛べばエンヴォスの体に乗れる所まで来た時、タクマはついさっき獲得した物を取り出した。

「それは……そういう事か、俺の手使ってくれ!」
「あぁ!サンキュー!」

リュウヤは何をするのか察し、すぐに自分の手を合わせてタクマのジャンプ台代わりになった。
そしてタクマは急いでそれを使って、エンヴォスの刀に着地する。

「コバエごときが、ちょこまかと鬱陶しい!」
「鬱陶しくて結構だ」

タクマはそう言い、エンヴォスに箱から獲得した「悪霊退散」と書かれた札を取り出す。
それを見て、エンヴォスは急に焦った口調で「貴様、やめろ!」と言い出した。

「貴様ら悪霊には退散の札が効くと相場は決まっておる、やってやれタクマ!」
「御意!」

ノブナガに応え、タクマは札を力強くエンヴォスの肩に貼った。
するとエンヴォスはそれが効いたのか、痛々しい悲鳴を上げながら体をブンブンと振り回して身悶える。
だがただ貼っただけでは剥がれる、そう思ったタクマは、その札を骨の中にぶち込む勢いで、札ごとそこに剣を突き刺した。

『ぐぁぁぁぁぁぁ!!!』

悲鳴と共に触手も機能を停止しはじめ、リュウヤ達は一足先に撤退する。
これで倒せた。そう思った瞬間、タクマは骨の手で掴まれてしまった。

『雑魚の芝居は疲れる、そんな物、財源の化身たる我には敵わぬ!』
「そんな……」

そして、タクマは呆気なく床に投げられた。

「タクマァ!!……ぐほっ!!」

受け止めに入ったリュウヤは、タクマを受け止めきれず、吹き飛ばされる。
そして、次の攻撃に備えようとしていた吾郎の頭に激突した。

「痛ぁぁぁっ!!……ぁぁぁ」

タクマは投げつけられた痛みや、体の蓄積ダメージなどが一気に襲いかかってきた事で、頭を押さえて悶えた。
だが死ぬとかと言う訳ではない、むしろ吾郎爺の方がマズい。

「吾郎爺!?大丈夫!吾郎爺!」
「吾郎さん!吾郎さん!」

リュウヤとノエルの声を聞いて、タクマは冷や汗をかきながら起き上がる。
すると、目の前で吾郎が微動だにせず倒れていた。
ヤバいヤバいヤバい、まさか死んでしまったとか無いよな?

「吾郎爺!ごめ……むぎゅ!」

タクマも声を掛けようとした時、吾郎はタクマの顔面に蹴りを入れた。
タクマはまた倒れる。

「思い出した、拙者はやっと全てを思い出したでござる。」
『馬鹿な、我が《デメルモ》は記憶を完全消去する魔法、たとえ頭を打ち付けようと記憶が還る筈が……』
「がしゃどくろめ、がしゃがしゃとうるさいぞ!とにかく拙者の名を聞いて怯えるがいい」

「拙者の名は喜羽丸、人斬りでござる」

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