コピー使いの異世界探検記
第51話 オカルト姫、血の悲劇
【大和城 廊下】
タクマ達は、その遺体が発見されたと言う現場へと向かった。
そこには、廊下に伏せて倒れている侍の遺体があった。
死因は小さなナイフで複数回刺された跡からして、刺殺である事は間違いない。
そして、その遺体の周辺には、彼の血液と、不思議で可愛らしい模様の入ったナイフが一本落ちていた。
「こりゃ酷いってもんじゃない……一体誰が……」
「もう嫌です……私帰りたいです……」
血の生々しい臭いを嗅がないよう、腕で鼻を抑えるタクマに、ノエルは涙を流して小さくなりながら、タクマの腰に抱きついて泣き出す。
そして、メアは凶器に使われたと思われるナイフを見て声も出ない程驚く。
「何だコレ、投げナイフか?」
「そのようだが、これは誰の持ち物だ?」
小さなハンカチで手を覆って、リュウヤはナイフを拾う。
すると、いきなりメアは悲鳴を上げてその場に倒れてしまった。
「どうしたでありんす!?気分が宜しゅうないでありんすか?」
心配したおタツは、メアの背中をさすって慰める。
しかし、メアは怯えたまま「妾ではない……妾ではない……」と呟くだけだった。
「まさかこやつ、身体を見せい!!」
黒銀は怯えるメアを取り押さえ、無理矢理メアの身体を調べ始めた。
「黒銀さん!何してるんすか!」
リュウヤは流石に身体検査といえ、無理矢理メアにこんな事をする黒銀を引き剥がした。
そして、黒銀を引き剥がした反動で、メアも後ろに飛ばされる。
「メア、大丈……!?」
すると、そこから太腿に付けられた投げナイフホルダーと、その中に入った投げナイフが見つかった。
しかも、驚く事にそれは、凶器に使われた投げナイフと一致してしまっていた。
「メア……お前じゃないんだよな?そうだよな?」
「違うも何も、私はずっとメアさんと一緒に居ました!人殺しなんてあり得ません!」
だが、メアは何が何だか分からず、ずっと首を横に振る。
「違う!妾が何を理由に見ず知らずの使用人を殺すと言うのじゃ!妾は何も知らぬ!知らぬぞ!」
メアは目に涙を浮かべながら、何処かへ走り去ってしまった。
そして、それを見ていたノブナガも、悲しい顔をしながらも「……黒銀、致し方ない。部下共に捕まえて来いと伝えろ」と、指令を下した。
「待ってくださいよノブナガ様、メアは違うって言ってるじゃないですか!」
「そうです、例え現場にコレが落ちてたとしても、流石にその判断は理解しかねます!」
タクマとリュウヤは、ノブナガの判断に反発する。
だが、ノブナガは何も言わずに目を瞑り、自室へと帰っていった。
「くそっ!何でいつも俺は……すぐに誰も守れないんだ……!」
タクマは、疑われたままのメアの事を自分の責任だと感じ、城の壁を本気で殴って嘆いた。
そして、殴った事で、小指側の側面から血が垂れる。
「あまり背負うな、俺達も彼女の潔白証明させる手伝いすっからよ」
リュウヤは落ち込むタクマの肩にそっと触れ、タクマを慰める。
「ごめんよ、リュウヤ……」
「ですが、まずはメアさんを探さないとですね」
ショックのあまり自力で立てなくなってしまったタクマの肩を担ぎながら、ノエルは次の作戦を訊く。
「それなら、ウチに任せるでありんす」
何をしようか迷っているノエルに、おタツはウィンクをしながら答えた。
【大和城 縁側の下】
「いたか?」「ダメだ、こっちも居ない」「あの小娘、一体どこ行きやがった」
ノブナガの部下達が血眼になって探す声と足音が聞こえる。
この状況は危険だ、もし見つかってしまえば命はない。
メアは息を殺して泣きながら、縁側下のスペースに隠れていた。
(妾じゃないのに……何故妾のナイフが……)
涙を堪えながら、メアはずっと考えた。
メアはあの時、どこにも動いていない。つまり誰かを殺すなど不可能である。なのに殺された。
「メアちゃん」
考えていると、何処からともなく声が聞こえた。
メアはその声を聞いて、すぐにその場から離れようと逃げる。
そしてその途中で、声の主が誰だったのかを確認する為、後ろを振り向いた。
しかし、振り向いても誰も居なかった。
「なんだ、誰も居……」
安心してゆっくりと場所移動をしていたメアは、暗闇の中で誰かにぶつかる。
「な、何奴」
よく見るとそこには黒いスーツを身に纏ったような、スラッとした体型の人の影があった。いや、正確には影ではなく、人だ。
まるで忍者、くノ一のような女性に見える。
「はっ……」
メアはあまりの恐怖に叫び声を上げそうになる。
だが、喉まで声が出てきた所で、謎の女性は「しーっ」と口に人差し指を当てて静かにするよう伝える。
「ウチでありんすよ、メアちゃん」
「その声……まさか!」
謎の女性は、顔を隠していたマフラーを取った。
すると、そこからはなんと、おタツの顔が現れた。
「おタ……むぐぐ」
「ここで大声はいかんでありんす」
おタツは普段リュウヤに付いている時の顔とはまるで別人かのように、目を鋭くしてメアの口を抑える。
「ぷはっ、何故妾がここに居ると……」
「ウチの術、式紙の術で居場所を特定したでありんす」
そう言って、おタツはメアの肩を指差す。
すると、そこから人型の紙人形が現れ、メアに小さくお辞儀をした。
「可愛いでありましょう?この子がお前さんの居場所を教えてくれたんでありんす」
「とにかく、門が封鎖された今ここに隠れていても、見つかるのは時間の問題でありんす。だから……」
おタツは、メアの耳にこっそりと耳打ちをする。
「何じゃと!?ここからタクマに内緒で抜け出すじゃ……むぐっ!?」
また驚いて、つい大声を上げそうになったメアの口を、またおタツは塞いだ。
「声がデカイでありんすよ」
「す、すまない……」
そして、おタツはメアに何故タクマ達に内緒で抜け出すのかを話し始めた。
「昨日骸骨が現れた原因は結界の消滅にある、しかしそれを治せるのは、ウチらシノビ一族だけなのでありんす」
「ですが、生憎ウチにはシノビ結界を張る為の闇魔力を持っていないのでありんす」
「じゃから、妾の闇魔力を貸して欲しい。そう言う事じゃな」
そうメアが言うと、おタツは頷きながら「詰まる所そうでありんす」と返答する。
しかしそのすぐ、メアの頭にはまた一つ、疑問が浮かび上がった。
「何故妾の適正魔法を知っておるのじゃ!?」
流石にもう反省したメアは、小声で引きつつもおタツに訊く。
するとおタツは手の甲を口に当ててお淑やかに笑うと、まるでイリュージョン芸のような感じで、何も無かった筈の胸の谷間からメアのギルドカードを取り出し、それをメアに見せた。
それを見て、メアはギルドカードを入れている筈の、スカートに付いたボタン留め式ポケットを探る。
勿論中には何もない。
「骸骨兵士と必死で戦ってた時、落としたでありんすよ」
「ありがと……いや、これを持っていると言うことはまさかっ!?」
おタツの発言で、メア中に残っていた微小なモヤが頭の中で繋がる。
骸骨兵士と一人で対峙した時、もう絶望的な状況だった所をアシストしてくれた黒いタイツの人物。
そう、その人物こそ……
「ウチでありんすよ」
おタツはメアの頬をスッっと撫でながら、笑顔で言う。
そして、メアの頭にあった不確かな繋がりが今、確かな物として成立する。
「それでメアちゃん、ウチの話……乗ってくれるでありんすか?」
「勿論じゃ、助けてくれた分妾の闇魔力を存分に使ってくれい」
メアはおタツの両手を握り、おタツの極秘作戦に同意した。
「ありがとうございなんし、それではそろそろ塀から抜け出すでありんすよ!」
「うむ!」
こうしてメアとおタツは、鬼の目を盗んでこっそりと、塀から封鎖された大和城を抜け出したのだった。
タクマ達は、その遺体が発見されたと言う現場へと向かった。
そこには、廊下に伏せて倒れている侍の遺体があった。
死因は小さなナイフで複数回刺された跡からして、刺殺である事は間違いない。
そして、その遺体の周辺には、彼の血液と、不思議で可愛らしい模様の入ったナイフが一本落ちていた。
「こりゃ酷いってもんじゃない……一体誰が……」
「もう嫌です……私帰りたいです……」
血の生々しい臭いを嗅がないよう、腕で鼻を抑えるタクマに、ノエルは涙を流して小さくなりながら、タクマの腰に抱きついて泣き出す。
そして、メアは凶器に使われたと思われるナイフを見て声も出ない程驚く。
「何だコレ、投げナイフか?」
「そのようだが、これは誰の持ち物だ?」
小さなハンカチで手を覆って、リュウヤはナイフを拾う。
すると、いきなりメアは悲鳴を上げてその場に倒れてしまった。
「どうしたでありんす!?気分が宜しゅうないでありんすか?」
心配したおタツは、メアの背中をさすって慰める。
しかし、メアは怯えたまま「妾ではない……妾ではない……」と呟くだけだった。
「まさかこやつ、身体を見せい!!」
黒銀は怯えるメアを取り押さえ、無理矢理メアの身体を調べ始めた。
「黒銀さん!何してるんすか!」
リュウヤは流石に身体検査といえ、無理矢理メアにこんな事をする黒銀を引き剥がした。
そして、黒銀を引き剥がした反動で、メアも後ろに飛ばされる。
「メア、大丈……!?」
すると、そこから太腿に付けられた投げナイフホルダーと、その中に入った投げナイフが見つかった。
しかも、驚く事にそれは、凶器に使われた投げナイフと一致してしまっていた。
「メア……お前じゃないんだよな?そうだよな?」
「違うも何も、私はずっとメアさんと一緒に居ました!人殺しなんてあり得ません!」
だが、メアは何が何だか分からず、ずっと首を横に振る。
「違う!妾が何を理由に見ず知らずの使用人を殺すと言うのじゃ!妾は何も知らぬ!知らぬぞ!」
メアは目に涙を浮かべながら、何処かへ走り去ってしまった。
そして、それを見ていたノブナガも、悲しい顔をしながらも「……黒銀、致し方ない。部下共に捕まえて来いと伝えろ」と、指令を下した。
「待ってくださいよノブナガ様、メアは違うって言ってるじゃないですか!」
「そうです、例え現場にコレが落ちてたとしても、流石にその判断は理解しかねます!」
タクマとリュウヤは、ノブナガの判断に反発する。
だが、ノブナガは何も言わずに目を瞑り、自室へと帰っていった。
「くそっ!何でいつも俺は……すぐに誰も守れないんだ……!」
タクマは、疑われたままのメアの事を自分の責任だと感じ、城の壁を本気で殴って嘆いた。
そして、殴った事で、小指側の側面から血が垂れる。
「あまり背負うな、俺達も彼女の潔白証明させる手伝いすっからよ」
リュウヤは落ち込むタクマの肩にそっと触れ、タクマを慰める。
「ごめんよ、リュウヤ……」
「ですが、まずはメアさんを探さないとですね」
ショックのあまり自力で立てなくなってしまったタクマの肩を担ぎながら、ノエルは次の作戦を訊く。
「それなら、ウチに任せるでありんす」
何をしようか迷っているノエルに、おタツはウィンクをしながら答えた。
【大和城 縁側の下】
「いたか?」「ダメだ、こっちも居ない」「あの小娘、一体どこ行きやがった」
ノブナガの部下達が血眼になって探す声と足音が聞こえる。
この状況は危険だ、もし見つかってしまえば命はない。
メアは息を殺して泣きながら、縁側下のスペースに隠れていた。
(妾じゃないのに……何故妾のナイフが……)
涙を堪えながら、メアはずっと考えた。
メアはあの時、どこにも動いていない。つまり誰かを殺すなど不可能である。なのに殺された。
「メアちゃん」
考えていると、何処からともなく声が聞こえた。
メアはその声を聞いて、すぐにその場から離れようと逃げる。
そしてその途中で、声の主が誰だったのかを確認する為、後ろを振り向いた。
しかし、振り向いても誰も居なかった。
「なんだ、誰も居……」
安心してゆっくりと場所移動をしていたメアは、暗闇の中で誰かにぶつかる。
「な、何奴」
よく見るとそこには黒いスーツを身に纏ったような、スラッとした体型の人の影があった。いや、正確には影ではなく、人だ。
まるで忍者、くノ一のような女性に見える。
「はっ……」
メアはあまりの恐怖に叫び声を上げそうになる。
だが、喉まで声が出てきた所で、謎の女性は「しーっ」と口に人差し指を当てて静かにするよう伝える。
「ウチでありんすよ、メアちゃん」
「その声……まさか!」
謎の女性は、顔を隠していたマフラーを取った。
すると、そこからはなんと、おタツの顔が現れた。
「おタ……むぐぐ」
「ここで大声はいかんでありんす」
おタツは普段リュウヤに付いている時の顔とはまるで別人かのように、目を鋭くしてメアの口を抑える。
「ぷはっ、何故妾がここに居ると……」
「ウチの術、式紙の術で居場所を特定したでありんす」
そう言って、おタツはメアの肩を指差す。
すると、そこから人型の紙人形が現れ、メアに小さくお辞儀をした。
「可愛いでありましょう?この子がお前さんの居場所を教えてくれたんでありんす」
「とにかく、門が封鎖された今ここに隠れていても、見つかるのは時間の問題でありんす。だから……」
おタツは、メアの耳にこっそりと耳打ちをする。
「何じゃと!?ここからタクマに内緒で抜け出すじゃ……むぐっ!?」
また驚いて、つい大声を上げそうになったメアの口を、またおタツは塞いだ。
「声がデカイでありんすよ」
「す、すまない……」
そして、おタツはメアに何故タクマ達に内緒で抜け出すのかを話し始めた。
「昨日骸骨が現れた原因は結界の消滅にある、しかしそれを治せるのは、ウチらシノビ一族だけなのでありんす」
「ですが、生憎ウチにはシノビ結界を張る為の闇魔力を持っていないのでありんす」
「じゃから、妾の闇魔力を貸して欲しい。そう言う事じゃな」
そうメアが言うと、おタツは頷きながら「詰まる所そうでありんす」と返答する。
しかしそのすぐ、メアの頭にはまた一つ、疑問が浮かび上がった。
「何故妾の適正魔法を知っておるのじゃ!?」
流石にもう反省したメアは、小声で引きつつもおタツに訊く。
するとおタツは手の甲を口に当ててお淑やかに笑うと、まるでイリュージョン芸のような感じで、何も無かった筈の胸の谷間からメアのギルドカードを取り出し、それをメアに見せた。
それを見て、メアはギルドカードを入れている筈の、スカートに付いたボタン留め式ポケットを探る。
勿論中には何もない。
「骸骨兵士と必死で戦ってた時、落としたでありんすよ」
「ありがと……いや、これを持っていると言うことはまさかっ!?」
おタツの発言で、メア中に残っていた微小なモヤが頭の中で繋がる。
骸骨兵士と一人で対峙した時、もう絶望的な状況だった所をアシストしてくれた黒いタイツの人物。
そう、その人物こそ……
「ウチでありんすよ」
おタツはメアの頬をスッっと撫でながら、笑顔で言う。
そして、メアの頭にあった不確かな繋がりが今、確かな物として成立する。
「それでメアちゃん、ウチの話……乗ってくれるでありんすか?」
「勿論じゃ、助けてくれた分妾の闇魔力を存分に使ってくれい」
メアはおタツの両手を握り、おタツの極秘作戦に同意した。
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