コピー使いの異世界探検記
第50話 癒しの茶、よく食う老人
「じゃあ一体、誰が犯人だと言うのです?」
リュウヤが犯人でないとなった今、リュウヤの無実をよく思っていない黒銀はノブナガに訊く。
すると、それを聞いたノブナガは目を鋭く睨ませ、黒銀に刀を向けた。
「ワシはただリュウヤを気に入っているから疑わない訳ではない、ワシも他の者も皆やっていないと証言しているからだ」
「そして今はここでお前が犯人だ何だと争うような時間ではない、もし次誰かを証拠も無しに疑うようであれば……分かるな?」
ノブナガの逆鱗に触れかけた黒銀は、流石にいい年だから泣かなかったものの、あまりの恐ろしさに体をガクガクと震えさせていた。
これが第六天魔王の覇気、恐ろしい……
だが、そんな覇気の中には明らかに情の温かみも感じる。
「リュウヤ、タクマ、お前達には悪いが、今ここで帰られるとお前達が疑われかねない。だから勝手だが……」
「本当の犯人が見つかるまでは帰りませんよ、折角の飯時に暗殺されたんですから、とっ捕まえるまでは帰れませんよ!」
リュウヤは、申し訳なさそうに言うノブナガに対し、口をにやりとしてウィンクをしながら、そう言った。
そして「お前もやってくれるだろ?タクマ」と、隣に立つタクマにも訊いた。
「あぁ、あんまり犯人探しとかするのは好きじゃないけど、このまま放っておいたら危ないし、端からそうするつもりだよ」
「客人にまで迷惑をかける事になるとは……本当に申し訳ない」
二人の協力に感謝して、ノブナガは小さく頭を下げる。
【大和城 調理場】
まずタクマ達は、真っ先に怪しまれた調理場で即効性の毒になり得そうな物を探した。
食材をしまう電池式の冷蔵庫の中、鍋などの調理器具をしまう棚、そしてあり得ないが、念のために竈門の中も調べた。
しかし、どこからも毒らしき怪しい物は見つからなかった。
「毒草もないし、それっぽい物もないようじゃな……」
「料理班の人達の持ち物検査とかも、怪しい物を持っている人は誰ひどい居ないようですし、リュウヤさんも池の外から持ち込んでいる形跡も無いようですし……」
そして、調理場は異常無しと判断され、次の場所へ行く事となった。
それから数時間、ノブナガ達は城中を調べ回った。
しかし、城の中からは何も出て来なかった。
「おかしい、人を疑いたくはないが、流石にこれはおかしい」
人を疑わず、ずっと探し回っていたノブナガも、そう言って頭を抱える。
タクマ達も、完全に行き詰まってしまい頭を抱える。
それもそうだ、警察とか捜査官みたいな現職でもない素人達がこぞって探したところで、そう簡単に凶器や毒が見つかる筈がない。
すると、門の辺りを封鎖していた侍が、ノブナガのもとへ駆け寄ってきた。
「ノブナガ殿、茶屋のマモル様がお越しになられておりますが……」
「え!?お父上が!?」
侍の話を聞いて、おタツは喜びの声を上げながら立ち上がる。
だが、立ち上がった所をギロリと睨みつけた黒銀を見て、また大人しく座る。
「そう言えば茶が切れていたな、とにかくワシが出向こうとは思うが……」
ノブナガはちょっと考えた後、タクマとリュウヤ、そしておタツの三人を指名した。
そして、三人に「とにかく無実の証人がいた方がなんぼか助かる、それに父上にも顔を合わせたいだろう?」と理由を言った。
「あ、ありがとうございなんし」
「こんな時だ、ピリピリした空気には茶を一杯でもやって和ごましたい」
【大和城 門前】
「おうノブナガ殿!今日も立派な茶葉が入ってるぜ!」
ガタイのいいレスラーのような男が、まるで友達に会ったかのように、ノブナガと軽い挨拶を交わす。
このお方がおタツさんの親父さん!?これを言うのはマズいが、全然似てない。
すると、おタツは、あの大人びた様子と打って変わり「お父上〜!」と抱きついた。
「おぉ、タツじゃねぇか!リュウヤ少年は元気か?」
「はい、俺も今まで通り元気ですぜ!」
そう言って、リュウヤ、おタツ、マモルの三人は「ガーハッハッハッハ!!」と大きく笑った。やっぱり家族だ。
そして、1発笑い終えると、今度はタクマの方を向いた。
「誰だコイツ、新しい家臣か?」
「あぁ、コイツは俺の大親友!タクマって言うんだ」
「タクマです、よろしくです」
すると、マモルはタクマの目をじっと見つめて、また笑った。
「この目はアレだな、今は冴えないけど、いつかドデカイ大物になる奴の目をしてやがる!」
「分かるか?こやつの目、いい目をしておるだろ!」
ノブナガもマモルも、そうタクマを褒めて笑い合った。
しかし、そんな楽しい空間の中に、使用人の男がこちらへ走ってきた。
「今度は何事だ?」
「昨日保護した老人が、やっと目を覚ましました!」
「何!?今すぐ向かう!お主はマモルに一月分の茶葉を買っておいてくれ!」
ノブナガはそう言い残して、城に帰っていった。
そして、タクマ達もノブナガを追って城に戻った。
【大和城 小部屋】
「爺さんが起きたって本当か!?」
リュウヤは勢いよく小部屋の襖を開け、部屋に入る。
すると、そこにはどこから出したのかは分からないが、勝手に寿司を食べる眼帯爺さんの姿があった。
「お爺さん、良く食べますね」
「起きて早々こんなに食うとは、この爺さんなかなかやるぞ……」
そして、付き添っていたメアとノエルは 爺さんの食べっぷりに驚いていた。
「良かった〜死んでなくて」
タクマはホッと胸を撫で下ろした。
と言うか、何故リュウヤも居ないのに寿司が振る舞われているんだ?
今は調査とかで調理場は作れない筈なのに、一体誰が……?
そう考えていると、爺さんは最後の寿司を飲み込んで、緑茶を飲んだ。
「ふぅ、ここの飯は極上でござるな、一体誰が作ったのでござるか?」
「それは俺が作った奴ですが……いや、アンタ誰!?」
リュウヤはやっと、驚くようにして爺さんの名を訊いた。
「そうだったな、拙者の名は……名は……」
「名は?何と申すのだ?」
何故か自分の名を溜める爺さんに、ノブナガは訊く。
しかし、爺さんはすぐに「うーん……」と唸り出し、まだ喋らない。
そして、特にどうでもいい話ではあるが、他の人達も気になって、辺りには誰が「総選挙一位なのか!?」と言うバラエティで良くあるドキドキ感が漂う。
そして、やっと爺さんは口を開く。
「やばい、忘れた」
「「「「「は?」」」」」
「だから、忘れちゃった」
まるで頭に大きなタライが落ちてきたかのような衝撃が走り、その場にいた全員がずっこける。
「記憶喪失じゃと!?」
「溜めに溜めてそりゃないですよ!」
「変な期待をして損したでありんす」
女性陣うち一人男の娘は、変な期待をされた事に対し、嘆きの声を上げる。
そして、ノブナガは、タクマとリュウヤ、そして黒銀を集めて小さな話し合いを始めた。
「……どうする?爺さんだけではやりづらいよな?」
ノブナガは切り出して最初に発言する。
「名前付けちゃいやしょうぜ、ノブナガ様」
そこにリュウヤはそう発案する。
「いやしかし、じゃあ名前どうする?」
と、タクマはリュウヤ達に訊く。
「そんなの知らん、勝手にしろ!」
黒銀は完全にだるいのか、そもそも輪に入ろうとしていない。
そう四人で会話をしていると、爺さんが四人に呼びかけた。
「ただ爺だけではちと接しずらかろう、だから拙者は思い出すまで『吾郎』とでも呼ぶでござる」
そう、爺さん改め吾郎は言う。
「こんなピリピリとした時ではあるからろくなおもてなしは出来ぬが、まぁよろしく頼むぞ、吾郎」
ノブナガは吾郎の前に正座し、吾郎に小さく頭を下げる。
そして、吾郎もノブナガに対して、また深くお辞儀を返す。
するとその時、茶葉の入った箱を持った使用人の男が、また血相を変えて部屋に入ってきた。
「今度は何だ、また客人か?」
「いえ、違います!今度は……」
「また一人、遺体が発見されました……」
リュウヤが犯人でないとなった今、リュウヤの無実をよく思っていない黒銀はノブナガに訊く。
すると、それを聞いたノブナガは目を鋭く睨ませ、黒銀に刀を向けた。
「ワシはただリュウヤを気に入っているから疑わない訳ではない、ワシも他の者も皆やっていないと証言しているからだ」
「そして今はここでお前が犯人だ何だと争うような時間ではない、もし次誰かを証拠も無しに疑うようであれば……分かるな?」
ノブナガの逆鱗に触れかけた黒銀は、流石にいい年だから泣かなかったものの、あまりの恐ろしさに体をガクガクと震えさせていた。
これが第六天魔王の覇気、恐ろしい……
だが、そんな覇気の中には明らかに情の温かみも感じる。
「リュウヤ、タクマ、お前達には悪いが、今ここで帰られるとお前達が疑われかねない。だから勝手だが……」
「本当の犯人が見つかるまでは帰りませんよ、折角の飯時に暗殺されたんですから、とっ捕まえるまでは帰れませんよ!」
リュウヤは、申し訳なさそうに言うノブナガに対し、口をにやりとしてウィンクをしながら、そう言った。
そして「お前もやってくれるだろ?タクマ」と、隣に立つタクマにも訊いた。
「あぁ、あんまり犯人探しとかするのは好きじゃないけど、このまま放っておいたら危ないし、端からそうするつもりだよ」
「客人にまで迷惑をかける事になるとは……本当に申し訳ない」
二人の協力に感謝して、ノブナガは小さく頭を下げる。
【大和城 調理場】
まずタクマ達は、真っ先に怪しまれた調理場で即効性の毒になり得そうな物を探した。
食材をしまう電池式の冷蔵庫の中、鍋などの調理器具をしまう棚、そしてあり得ないが、念のために竈門の中も調べた。
しかし、どこからも毒らしき怪しい物は見つからなかった。
「毒草もないし、それっぽい物もないようじゃな……」
「料理班の人達の持ち物検査とかも、怪しい物を持っている人は誰ひどい居ないようですし、リュウヤさんも池の外から持ち込んでいる形跡も無いようですし……」
そして、調理場は異常無しと判断され、次の場所へ行く事となった。
それから数時間、ノブナガ達は城中を調べ回った。
しかし、城の中からは何も出て来なかった。
「おかしい、人を疑いたくはないが、流石にこれはおかしい」
人を疑わず、ずっと探し回っていたノブナガも、そう言って頭を抱える。
タクマ達も、完全に行き詰まってしまい頭を抱える。
それもそうだ、警察とか捜査官みたいな現職でもない素人達がこぞって探したところで、そう簡単に凶器や毒が見つかる筈がない。
すると、門の辺りを封鎖していた侍が、ノブナガのもとへ駆け寄ってきた。
「ノブナガ殿、茶屋のマモル様がお越しになられておりますが……」
「え!?お父上が!?」
侍の話を聞いて、おタツは喜びの声を上げながら立ち上がる。
だが、立ち上がった所をギロリと睨みつけた黒銀を見て、また大人しく座る。
「そう言えば茶が切れていたな、とにかくワシが出向こうとは思うが……」
ノブナガはちょっと考えた後、タクマとリュウヤ、そしておタツの三人を指名した。
そして、三人に「とにかく無実の証人がいた方がなんぼか助かる、それに父上にも顔を合わせたいだろう?」と理由を言った。
「あ、ありがとうございなんし」
「こんな時だ、ピリピリした空気には茶を一杯でもやって和ごましたい」
【大和城 門前】
「おうノブナガ殿!今日も立派な茶葉が入ってるぜ!」
ガタイのいいレスラーのような男が、まるで友達に会ったかのように、ノブナガと軽い挨拶を交わす。
このお方がおタツさんの親父さん!?これを言うのはマズいが、全然似てない。
すると、おタツは、あの大人びた様子と打って変わり「お父上〜!」と抱きついた。
「おぉ、タツじゃねぇか!リュウヤ少年は元気か?」
「はい、俺も今まで通り元気ですぜ!」
そう言って、リュウヤ、おタツ、マモルの三人は「ガーハッハッハッハ!!」と大きく笑った。やっぱり家族だ。
そして、1発笑い終えると、今度はタクマの方を向いた。
「誰だコイツ、新しい家臣か?」
「あぁ、コイツは俺の大親友!タクマって言うんだ」
「タクマです、よろしくです」
すると、マモルはタクマの目をじっと見つめて、また笑った。
「この目はアレだな、今は冴えないけど、いつかドデカイ大物になる奴の目をしてやがる!」
「分かるか?こやつの目、いい目をしておるだろ!」
ノブナガもマモルも、そうタクマを褒めて笑い合った。
しかし、そんな楽しい空間の中に、使用人の男がこちらへ走ってきた。
「今度は何事だ?」
「昨日保護した老人が、やっと目を覚ましました!」
「何!?今すぐ向かう!お主はマモルに一月分の茶葉を買っておいてくれ!」
ノブナガはそう言い残して、城に帰っていった。
そして、タクマ達もノブナガを追って城に戻った。
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リュウヤは勢いよく小部屋の襖を開け、部屋に入る。
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「お爺さん、良く食べますね」
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「名は?何と申すのだ?」
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しかし、爺さんはすぐに「うーん……」と唸り出し、まだ喋らない。
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「「「「「は?」」」」」
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「溜めに溜めてそりゃないですよ!」
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そして、ノブナガは、タクマとリュウヤ、そして黒銀を集めて小さな話し合いを始めた。
「……どうする?爺さんだけではやりづらいよな?」
ノブナガは切り出して最初に発言する。
「名前付けちゃいやしょうぜ、ノブナガ様」
そこにリュウヤはそう発案する。
「いやしかし、じゃあ名前どうする?」
と、タクマはリュウヤ達に訊く。
「そんなの知らん、勝手にしろ!」
黒銀は完全にだるいのか、そもそも輪に入ろうとしていない。
そう四人で会話をしていると、爺さんが四人に呼びかけた。
「ただ爺だけではちと接しずらかろう、だから拙者は思い出すまで『吾郎』とでも呼ぶでござる」
そう、爺さん改め吾郎は言う。
「こんなピリピリとした時ではあるからろくなおもてなしは出来ぬが、まぁよろしく頼むぞ、吾郎」
ノブナガは吾郎の前に正座し、吾郎に小さく頭を下げる。
そして、吾郎もノブナガに対して、また深くお辞儀を返す。
するとその時、茶葉の入った箱を持った使用人の男が、また血相を変えて部屋に入ってきた。
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