第45話　再会、永遠の大親友

「リュウヤ！！」「タクマ！！」

二人は、共に喜んで抱き合った。
織田信長本人だけでなく、二度と会えないと思っていた大親友との再会。
タクマは涙を流して、その再会を喜んだ。

「もしかして、お主の言っていた大親友と言うのは？」

ノブナガ様は、再開を喜ぶ二人に訊ねた。
それに対し、リュウヤは「はい！彼こそが俺の大親友、タクマです！」と、涙ぐんだ声で言った。

「はっはっは！親友と再開できたとは、喜ばしい事だな！」
「……さて、ワシが居ては再開を喜ぶのには邪魔だろうからここで失礼させてもらうよ」

そう言って、ノブナガ様は、部屋の前に現れた爺らしきお爺さんと共に部屋を後にした。
それはそうと、何故リュウヤがここに？まさか……
タクマは血相を変えて、リュウヤに訊こうとした。
すると、タクマが訊こうとしている事を読み取ったのか、リュウヤはタクマの手を引いて、急ぎ目で庭に走って行く。

「聞くまでもねぇよ、面白いモン見せてやるから来い！！」
「ちょ、妾を置いてくでないぞ〜！！」
「待ってくださいよ〜！！」

【大和城　庭】
リュウヤに連れられ、タクマ達は大和城の庭に連れてこられた。
石の敷かれた綺麗な地面、ぱあっと咲き誇る素晴らしい桜の木、澄んだ水が張られた岩囲いの池。
目の前には全てにおいて「素晴らしい」と言う一言しか思い浮かばないくらいに語彙力を削ぎ落とされる、完璧な庭がそこにはあった。
もしこんな美しい庭が日本にあるのなら、真っ先に「日本のココがスゴい！20x x」みたいなランキングの一位候補に上がるだろう。

「これが面白い物か……？」
「まさか、これも良いけど、もっとすげぇモンがあるぜ！」

リュウヤは、今目の前にある景色に見惚れるタクマにそう豪語した。
これ以上に面白い事？タクマは、リュウヤの言う事に期待して、何が庭より面白いのか訊いた。
すると、リュウヤは庭にある立派な池を指差して言った。

「聞いて驚くなよ？実は俺、あの池からこの世界に来た。つまり俺は死んじゃいないってワケよ」

勿論、全然意味が分からないため、タクマ達は少し間を置いて「……は？」と言った。

「池がゲートって事か……？マジ？」
「どう言った原理かは分からんけど、俺の家の風呂はあんな感じで、こっちの世界の風呂や湖、海や池と繋がってるらしい」
「じゃが、この池はどう見ても普通の池じゃぞ？」

メアとノエルは、全然信用せずに池を覗きながら言う。
確かに、リュウヤが言うように、この先が剣崎家の風呂に繋がっているようには見えない。
ただ綺麗な水の中で鯉が元気に泳いでいるだけの、ありふれた池だ。

「やっぱ口だけじゃ信じてくれねぇか……」

リュウヤは小さく呟きながら頭をかいた。
そして、「そうだ、これなら信じてくれるか！」と何かを思いつき、手をパンと叩いた。

「こっから中学時代の教科書持ってきたら信じてくれるか？」
「きょーかしょ？何ですかそれ」
「まぁ何でも良い、この妾がどんなトリックを使ったか見定めてやるわい！」

ノエルが面白そう聞く中、100%信じていないメアは目を燃やすかのようにメラメラと燃える。

「じゃ、行ってくるぜ！」

信用しないメアに対して、リュウヤはそう言い残し、池の中に飛び込んだ。
そして、メア達はすぐに池を覗いてみた。
しかし、池の中には鯉が数匹しか居らず、リュウヤの姿はどこにもなかった。
けれどもメアは「あの岩出っ張ってないか？」と、これでもかと言うくらい信用せず、まじまじと池の中を覗いている。

「あら？見ない顔でありんすな」

後ろから急に声をかけられ、タクマは飛び跳ねるように驚く。

「うわっ！！いつの間……！？」

声の主は誰かと、タクマは振り向く。
するとそこには、舞妓さんのような髪型をした美人のお姉さんが居た。
体のスタイルはばっちしなボンキュッボン。しかも顔立ちも良く、大手芸能事務所の超絶美人女優の一人と言っても過言ではないくらいだ。
ノブナガ様の奥様か？若草色の高そうな着物を着ている。

「あらごめんなさい、ウチはおタツと申すでありんす。以後お見知り置きを」
「あぁ、タクマです。こちらこそよろしく」

二人はそう言って、互いに頭を下げた。
そうしていると、いきなり池がザッパーン！と言う大きな音を立てて、爆発したかのように水しぶきが飛んできた。

「こ、今度は何だ！？」

水しぶきが止んでから見ると、池の目の前で帰ってきたリュウヤが、中学時代の教科書を持って華麗に着地していた。

「これで信じてくれるだろ？」
「信じるも何も、俺がお前を疑う訳がないじゃないか」
「それもそうだな」

タクマとリュウヤは、共に学校で話などをしていた時のように笑い合った。
そして、ふとリュウヤは「そういや、あの女の子達は？」と、辺りを見回して探した。
確かにさっきからメアとノエルが居ない気がする。
タクマはまさかと思い、池の方を見ると、そこにはリュウヤの帰還に驚いて池に落ちた二人の姿があった。

「大丈夫か！？」
「せーので引っ張るでありんす」

タクマ、リュウヤ、おタツの三人は力を合わせて、池に落ちた二人を救出した。

【小部屋】
あれから池に落ちた二人は、洗濯のために濡れた衣服を使いの人達に預け、暫くは代わりの着物を着る事となった。
因みに二人は現在着用中のため、タクマとリュウヤはこの小部屋でくつろいでいる。

「にしてもお前、可愛い彼女二人も引き連れてんのか？この色男」
「馬鹿言え、あいつらは仲間ってだけでそんな恋愛感情はないっての」
「素直じゃないようでありんすな、女子と言うのは早く気持ちを伝えないと、すぐ取り逃す小さな煙のようなモノでありんす。ファイトでありんす」

三人はそう雑談をしながら、座布団の上で緑茶を飲んだ。
それより、さっきから気になっているが、何故おタツさんがしれっとここで茶を飲んでいるのだ！？
タクマは気になってしょうがなかったため、リュウヤに「そういえば、おタツさんって何者なんだ？」と訊いた。

「……知りたいか？」
「そんなに知りたいでありんすか？」

二人は顔を暗くして、まるで「絶対に訊くな」と言うような威圧感を出す。
そんなにアカン系の話なのか？でも凄い知りたい。
そのため、タクマは無言でゆっくりと頷いた。

「実は俺達……」
「「夫婦なんで〜す！！」」

二人は凄く明るい顔をして両手を繋ぎ合い、さっきまでの威圧感が嘘かのような声のトーンでタクマに言った。
勿論、それを聞いてタクマは飛び出るくらいに目を丸くし、口を開けて驚いた。

「えええええええ！？！？」
「ウフッ、お前様がずっとやりたかった重大発表、大成功でありまするな」
「いや〜、やっぱタクマは面白いわ」

二人はけらけらを大笑いしながら言う。
だが、タクマはそんな場合ではなかった。

嘘だろ、まさかの大親友がもう既に美人女優みたいな奥さんを持っている！？
ありえないけど、これはマジ。別にリア充○発しろとかそんな感情はないけど、すっごく羨ましい！

そう心の中で、呪文でも唱えるかのように羨ましがっていると、リュウヤは「何羨ましがってんだ、お前にも彼女居るだろ」と慰めた。
あ、そういえばメアとノエルが居たわ。
その事に気付いたタクマは、羨ましがっていた顔を緩めて茶を飲んだ。
しかし、また一つある事に気付いて、飲む手を止めた。
そう、ノエルは男であると言う事に。
なんだかんだですっかり忘れていたが、そう言えばアイツ男だったな、立派なガネーシャ飼ってたなと。

「タクマ様、お二人の着付けが終わりました」

そうしていると、小部屋の襖から出てきた使用人のお婆さんが報告しに来た。
そして、お婆さんが捌けると同時に、着物姿のメアとノエルが入ってきた。

「ど、どうじゃ？タクマ……」
「やっぱり私は何着ても似合いますね〜！ルンルン」

メアは蝶柄の黒い着物、ノエルは少し水色がかった花柄の着物を着ている。勿論ノエルはいつも通り女物を着ている。
タクマはそんな二人を見て、驚きのあまり硬直してしまった。
普段サイドテールのメアが、普段髪を下ろしているノエルが、かんざし留めのポニーテールにしていて、そんな二人が今着物姿で目の前に立っている。

「すげぇ似合ってるぞ、メア……」
「タクマ……」

二人は自然と名を呼び合い、抱き合った。
それをノエルは「お？お？」と、やるかやるか？と言うように二人を見る。

「……ハッ！！」

何をするかとは言わないが、途中でメアは我に帰った。
そして、タクマの顔をもう一度じっと見つめ、また顔を赤くする。

「わ……わ……わぁぁぁぁ！！！」
「ごふっ！！」

照れに照れたメアのビンタが、タクマの頬にクリティカルヒットし、タクマは回転をかけながら飛ばされたのだった。