コピー使いの異世界探検記
第35話 勝利の余韻とキザ的なお人好し
【ウォル 病院】
「剣の斬撃による傷と、それによる全治一週間の気胸です」
「そしてタクマ君だけど、すぐに治るような肋骨のヒビだけだね」
タクマやブレイクの胸に手を当てて、医者はそう言った。
聴診器やレントゲン、CTとかとは違って、ここでは魔法で診るようだ。
それより、ビーグ達はどうなったのだろうか。
タクマは、彼らがどうなったか訊いた。
「ビーグ達かい?彼らならビーグだけが目を覚したんだけど……」
医者は途中で間を開け、続けて暗めに「記憶を失っていた」と言った。
「き、記憶を失っていたじゃと……!?」
「うむ、ビーグと言う名や自分がゴロツキのボスだったと言うことは覚えていたのだが、逮捕されてから後の事がポッカリと抜けていたそうだ」
「くそっ!ここまで来て聞き出せず仕舞いかよ……」
ブレイクは、あまりの悔しさに自分の膝を殴りながら言った。
確かに、アイツに訊きたい事は山ほどあった。
ゴーレムとの関係性、何故釈放もされてないのに出てこれたのか、そして“Zとどう言った関係を持っているのか”。
それに、オニキスが去り際に放った「悪夢はまだ終わらない」と言う言葉、タクマはそこでずっと考えた。
「ただ、その記憶喪失がおかしいのだよ」
「何がおかしいんですか……?」
そう言って、医者はメイジュに、個人情報だけを抜いて書き写したカルテのような物を渡した。
そこにはこう書かれていた。
名前:ビーグ・ムロウ
魔力:0
ダメージ痕跡:0
武器・防具の損傷:なし
だが、タクマからしたら、これらが何を意味するのか分からなかった。
そして、それを一通り見たメイジュは、カルテを返して「おかしいですね」と言い、何故おかしいのかを言った。
「もし記憶操作魔法ならば魔力がある。」
「そして確率で記憶を失くす攻撃や精神攻撃とかだとダメージがあり、武器や防具にも傷があるはず、なのに全てない」
「しかも、他の奴等も試しに検査したのだが、皆異常はなかった」
「特定の記憶を消すスキル、それを使わない限りあり得ませんね」
「だとしたら“デメルモ”、タナカトス伝説や勇者伝説に登場するおとぎの特殊能力くらいだな」
医師とメイジュは、深刻そうな顔をしながらそう言っていた。
ただ、タクマ的に気になるのは、タナカトスである。
しかも勇者伝説まで、一体何だと言うのか……
タクマは、そのデメルモの話を訊いた。
「デメルモを知りたいのかね?」
「はい、勇者伝説とかタナカトスとか、なんか色々と繋がりそうなので」
「デメルモと言うのは、タナカトス伝説でエンヴォスと言う名の男、勇者伝説では紫のオーブを手にしたホラフキンが使った伝説の特殊能力だ」
「タナカトスにも勇者伝説にも出る……何か共通点とかはあるんですか?」
「舞台が2000年前と1000年前で1000年刻みではあるが、伝説は伝説だからな」
「そう……ですか……」
タクマは、肩を落とした。
だけどオーブ、今回もこれが絡んでいるかもしれない。
そうしてタクマは考えた。
「まぁ何だ、ビーグ共に顔でも合わせてあげなさい。今の彼は反省してるからね」
「あぁ、はい!」
そう言って、タクマは鞄を持ち、3人でビーグの病室へ向かった。
【ビーグの病室】
扉を開けると、ビーグは自分のベッドから眠っている部下を見守っていた。
確かに見た感じ、弱っているようには見えない。
「……誰だ?」
ビーグは振り向かずに言う。
「タクマです、ゴーレムの所であなた方を救出した……」
「そうか、何もねぇがゆっくりしていけ」
ビーグはタクマの顔を見ないで言い、ベッドの中に入ってしまった。
機嫌が悪いのだろうか、若しくは助けられたから、見返りを要求されると思っているのだろうか……?
タクマは「別に見返りなんて入りませんよ、人助けはノーギャラでしょう?」と、少し格好をつけて言った。
しかし、ビーグは無視した。
「ただ、ちょっと聞きたい事がありまして」
「タクマ、医師から記憶がないと……」
「そうだ、今の俺は何にも覚えちゃいねぇよ」
「いえ、その前の話ですよ。例えば……」
「オニキスと戦った時の事とか」
タクマがそう言うと、ビーグは急に無言になり、首を横に振り、「オレに訊いても、アイツの正体が何者かは分からんよ」と言った。
「ただ、唯一分かるのは、足りねえ事だ」
「足りない……?何が足りないんですか?」
ノエルは、そう言ったビーグに訊いた。
「俺らのグループは俺含めて15、だがここの奴らを数えてみろ」
「ひー、ふー、みー、よー……」
「確かに、5人足りぬな……」
「ボスとして恥ずかしい、可愛い部下5人を行方不明にするなんてよ……」
ビーグは、笑いながら目に左腕を当て、ベッドに倒れ込んだ。
そして、その後に涙が流れ出てきた。
相当辛いのだろう、いや、大事な仲間を何処かへ置いてきたんだ。辛いに決まっている。
タクマはそれを見て、ビーグの右手を両手で握り「ボスが希望無くしてどうするんですか、あなたの代わりに俺が見つけます。」と言った。
「馬鹿タクマ、幾ら何でもそれは言い過ぎじゃ!」
「骨だってヒビ入ってるんですから……」
メア達が心配してタクマに言う。
しかし、タクマはメアとノエルに笑顔を向けるだけだった。
「……まだ死んだと決まったワケじゃない、その証拠にビーグさん達10人は、記憶以外無事なんだ」
「ですけどタクマさん、だからってポンポン人助けなんてしてたら自分の身が……」
タクマは、止めようとしているメアとノエルの肩に手をかけ、目を瞑りながらゆっくりと頷き、その間を通って戸の引手に手をかけた。
そして、開きながらまた口を開けた。
「親友と約束したような気がするんだ、困ってる人はまだ手が届くうちに助けようってさ」
「だから、例え偽善者だ何だ言われても、タナカトスとか勇者みたいなヒーローじゃなくても、俺は俺のやれるだけをやってあげたいんだ」
そう言い残してタクマは戸を開け、ビーグの病室から出ようとした時だった。
何か固いモノを投げつけられたような痛みが走った。
気絶するほどではないけど、これは絶対タンコブとか出来た奴。
「このお人好しが、かっこつけよって」
「そんなキザ臭い事ペラペラ喋って、一人で行こうと思ったら大間違いじゃ!」
メアはそう言い、ノエルがタクマを横四方固めで取り押さえる。
痛い、しかもノエルの馬鹿力と本気の固めが混じって関節が外れそうだ。
タクマは思わず「痛い痛い、ギブギブギブギブ!!」と小声で言い、泡を吹きかけながらノエルの肩を叩いた。
「ふぅ、これで懲りましたか」
「な、何すんだ……俺を殺す気か……」
「誰が殺すか、パーティリーダーとしてお主に勝手な行動を取らせるわけには行かぬ」
「何も、一人で抱え込まなくて良いじゃないですか」
そう言って、ノエルが差し出した手を見たタクマは気付かされ、その手を握った。
「それで良い、旅は道連れレッツゴーじゃ!」
こうして、3人は手を繋ぎながら病院を出た。
「やれるだけをやる、か」
「オレもいい歳して、あんなお人好しのガキに負けてんのか……」
「そんな事ないっすよボス、ボスはボス、あの坊主はあの坊主、勝ち負けなんかないっすよ」
起きた部下が、椅子に座ってビーグを慰める。
そして、ビーグは「うるせぇ」と小さく言いながら寝返りをした。
「剣の斬撃による傷と、それによる全治一週間の気胸です」
「そしてタクマ君だけど、すぐに治るような肋骨のヒビだけだね」
タクマやブレイクの胸に手を当てて、医者はそう言った。
聴診器やレントゲン、CTとかとは違って、ここでは魔法で診るようだ。
それより、ビーグ達はどうなったのだろうか。
タクマは、彼らがどうなったか訊いた。
「ビーグ達かい?彼らならビーグだけが目を覚したんだけど……」
医者は途中で間を開け、続けて暗めに「記憶を失っていた」と言った。
「き、記憶を失っていたじゃと……!?」
「うむ、ビーグと言う名や自分がゴロツキのボスだったと言うことは覚えていたのだが、逮捕されてから後の事がポッカリと抜けていたそうだ」
「くそっ!ここまで来て聞き出せず仕舞いかよ……」
ブレイクは、あまりの悔しさに自分の膝を殴りながら言った。
確かに、アイツに訊きたい事は山ほどあった。
ゴーレムとの関係性、何故釈放もされてないのに出てこれたのか、そして“Zとどう言った関係を持っているのか”。
それに、オニキスが去り際に放った「悪夢はまだ終わらない」と言う言葉、タクマはそこでずっと考えた。
「ただ、その記憶喪失がおかしいのだよ」
「何がおかしいんですか……?」
そう言って、医者はメイジュに、個人情報だけを抜いて書き写したカルテのような物を渡した。
そこにはこう書かれていた。
名前:ビーグ・ムロウ
魔力:0
ダメージ痕跡:0
武器・防具の損傷:なし
だが、タクマからしたら、これらが何を意味するのか分からなかった。
そして、それを一通り見たメイジュは、カルテを返して「おかしいですね」と言い、何故おかしいのかを言った。
「もし記憶操作魔法ならば魔力がある。」
「そして確率で記憶を失くす攻撃や精神攻撃とかだとダメージがあり、武器や防具にも傷があるはず、なのに全てない」
「しかも、他の奴等も試しに検査したのだが、皆異常はなかった」
「特定の記憶を消すスキル、それを使わない限りあり得ませんね」
「だとしたら“デメルモ”、タナカトス伝説や勇者伝説に登場するおとぎの特殊能力くらいだな」
医師とメイジュは、深刻そうな顔をしながらそう言っていた。
ただ、タクマ的に気になるのは、タナカトスである。
しかも勇者伝説まで、一体何だと言うのか……
タクマは、そのデメルモの話を訊いた。
「デメルモを知りたいのかね?」
「はい、勇者伝説とかタナカトスとか、なんか色々と繋がりそうなので」
「デメルモと言うのは、タナカトス伝説でエンヴォスと言う名の男、勇者伝説では紫のオーブを手にしたホラフキンが使った伝説の特殊能力だ」
「タナカトスにも勇者伝説にも出る……何か共通点とかはあるんですか?」
「舞台が2000年前と1000年前で1000年刻みではあるが、伝説は伝説だからな」
「そう……ですか……」
タクマは、肩を落とした。
だけどオーブ、今回もこれが絡んでいるかもしれない。
そうしてタクマは考えた。
「まぁ何だ、ビーグ共に顔でも合わせてあげなさい。今の彼は反省してるからね」
「あぁ、はい!」
そう言って、タクマは鞄を持ち、3人でビーグの病室へ向かった。
【ビーグの病室】
扉を開けると、ビーグは自分のベッドから眠っている部下を見守っていた。
確かに見た感じ、弱っているようには見えない。
「……誰だ?」
ビーグは振り向かずに言う。
「タクマです、ゴーレムの所であなた方を救出した……」
「そうか、何もねぇがゆっくりしていけ」
ビーグはタクマの顔を見ないで言い、ベッドの中に入ってしまった。
機嫌が悪いのだろうか、若しくは助けられたから、見返りを要求されると思っているのだろうか……?
タクマは「別に見返りなんて入りませんよ、人助けはノーギャラでしょう?」と、少し格好をつけて言った。
しかし、ビーグは無視した。
「ただ、ちょっと聞きたい事がありまして」
「タクマ、医師から記憶がないと……」
「そうだ、今の俺は何にも覚えちゃいねぇよ」
「いえ、その前の話ですよ。例えば……」
「オニキスと戦った時の事とか」
タクマがそう言うと、ビーグは急に無言になり、首を横に振り、「オレに訊いても、アイツの正体が何者かは分からんよ」と言った。
「ただ、唯一分かるのは、足りねえ事だ」
「足りない……?何が足りないんですか?」
ノエルは、そう言ったビーグに訊いた。
「俺らのグループは俺含めて15、だがここの奴らを数えてみろ」
「ひー、ふー、みー、よー……」
「確かに、5人足りぬな……」
「ボスとして恥ずかしい、可愛い部下5人を行方不明にするなんてよ……」
ビーグは、笑いながら目に左腕を当て、ベッドに倒れ込んだ。
そして、その後に涙が流れ出てきた。
相当辛いのだろう、いや、大事な仲間を何処かへ置いてきたんだ。辛いに決まっている。
タクマはそれを見て、ビーグの右手を両手で握り「ボスが希望無くしてどうするんですか、あなたの代わりに俺が見つけます。」と言った。
「馬鹿タクマ、幾ら何でもそれは言い過ぎじゃ!」
「骨だってヒビ入ってるんですから……」
メア達が心配してタクマに言う。
しかし、タクマはメアとノエルに笑顔を向けるだけだった。
「……まだ死んだと決まったワケじゃない、その証拠にビーグさん達10人は、記憶以外無事なんだ」
「ですけどタクマさん、だからってポンポン人助けなんてしてたら自分の身が……」
タクマは、止めようとしているメアとノエルの肩に手をかけ、目を瞑りながらゆっくりと頷き、その間を通って戸の引手に手をかけた。
そして、開きながらまた口を開けた。
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「だから、例え偽善者だ何だ言われても、タナカトスとか勇者みたいなヒーローじゃなくても、俺は俺のやれるだけをやってあげたいんだ」
そう言い残してタクマは戸を開け、ビーグの病室から出ようとした時だった。
何か固いモノを投げつけられたような痛みが走った。
気絶するほどではないけど、これは絶対タンコブとか出来た奴。
「このお人好しが、かっこつけよって」
「そんなキザ臭い事ペラペラ喋って、一人で行こうと思ったら大間違いじゃ!」
メアはそう言い、ノエルがタクマを横四方固めで取り押さえる。
痛い、しかもノエルの馬鹿力と本気の固めが混じって関節が外れそうだ。
タクマは思わず「痛い痛い、ギブギブギブギブ!!」と小声で言い、泡を吹きかけながらノエルの肩を叩いた。
「ふぅ、これで懲りましたか」
「な、何すんだ……俺を殺す気か……」
「誰が殺すか、パーティリーダーとしてお主に勝手な行動を取らせるわけには行かぬ」
「何も、一人で抱え込まなくて良いじゃないですか」
そう言って、ノエルが差し出した手を見たタクマは気付かされ、その手を握った。
「それで良い、旅は道連れレッツゴーじゃ!」
こうして、3人は手を繋ぎながら病院を出た。
「やれるだけをやる、か」
「オレもいい歳して、あんなお人好しのガキに負けてんのか……」
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