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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第34話 死神の刃と機械的な心臓部

「はぁ、はぁ……気持ち悪い……」
「さっきから爆発するわ揺れるわ……外で一体何が起きてやがんだ……」

タクマは息を切らしながら一個一個の扉を開けて、心臓部らしき所を探した。
だが、何処を探しても大体は警備ロボばかりで、タクマはそろそろうんざりしてきている。

「ここであってくれ……」

そう祈って、この辺り最後の扉を開けた。
するとそこには、あの時のゴロツキ集団が、機械に磔にされ、生命エネルギーを吸い取られていた。

「タ……タスケテ……」「シヌゥ……」
「これが心臓だってのかよ、くそっ!」

タクマは迷った。
このままこの機械を壊していいものなのか、だがコイツらは悪い奴、でも見殺しにはできない、と。
しかし、そう考えている間も後ろから「侵入者、侵入者」と言って廻っているロボが居る。
タクマは一か八か、ゴロツキを殺さないように、ゴロツキに付いたケーブルと、繋がっている大きな機械に〈閃の剣〉を放った。

『エネルギー炉損傷、機能停止、爆発迄、後600秒』

内部の人工知能が、爆破機能を起動させたメッセージが流れる。
だが今はどうでもいい、タクマは助けたゴロツキ達を叩き起こした。

「うぅ……ここは一体……」
「ボス……お気づきになられ……」
「お前が……やったのか……?」

ビーグと思われる大男は、タクマを見てそう訊いた。
しかし、それを遮るかのように、また爆発音と揺れが始まった。

「とりあえず今は誰だろうといい!早く!」
「あ、あぁ……」

タクマはゴロツキ達に手を差し伸べ、そして《ワープ》でそこから一旦脱出する事にした。


【キョーハイ砂漠】

「タクマ、無事じゃったか!!」
「それより早く、コイツらの手当てを……」

タクマはそう言って、死にかけているゴロツキを、停留所前の小屋に寝かせた。
しかし、やっていた事がやっていた事で、周りの出張医者などは見向きもしなかった。

「何しているんですか!今にも死にそうな人が居るんですよ!見殺しにするんですか!」

メイジュは、必死にゴロツキ達の手当てをするように言った。
だが、医師たちからは「無銭飲食に街汚し、そんなクズ共をどうして生きながらえさせなきゃならん」だのと、辛辣な言葉を掛けて放置した。

「ならば、出来るか分からないけど……」

メイジュは鞄から「回復魔法の書」と書かれた本を出し、それを見ながら魔力を溜めた。

「それよりタクマ、こやつらは一体……」
「コイツらが、ゴーレムの中に居た。」
「なんと、こやつらが……」

タクマは、メアにその事を話そうとしたが、ゴーレムが爆発する事を思い出し、黙ってその方へ向かってしまった。
メアも追いかける。
しかし、タクマが必死で出すスピードに追いつけず、転んでしまう。

「おっ、動きが止まったぞ!」「よし、俺たちの勝利だ!」

兵士達が勝ったと思っている、まずい!
タクマは、急いで近くにいる兵士や冒険家達に逃げるよう言った。

「逃げてください!早くしないとアイツは爆発します!」
「何だって!ありがとう、すぐに報告してくるよ!」

話の分かる兵士は、タクマの言ったことを素早くメモに写し、他の隊員達に伝えた。
兵士達の行動が早く、すぐにほぼ全員が避難した。
ただ、その近くで戦っている2人を除いて……


【ゴーレム前】

「なかなかやるじゃねぇか、死神サンよぉ!」
「お前もなかなか、アルゴ一だけはある!」

2人は、共に褒め合いながら、鍔迫り合いを繰り返した。
しかし、だんだんブレイクが押されていっている。

「そろそろ終わらせようか……」
「あぁ、本気の一撃でやらせてもらう!」

両者は剣を押し合い、その反動で一旦距離を取った。
そして、そこから共に走り出し、ものすごい速さで斬り合い、辺りの砂岩やらが崩れて飛び散った。
そしてそこに、爆発する事を教えようとしたタクマがやって来た。
それと同時に、ブレイクが胸を押さえつけて膝をついてしまった。

「ブレイクさん!!」
「タクマ……駄目だ……逃げろ……」
「オニキス!何でブレイクさんを!」
「よせ……」

タクマは、やられたブレイクの仇を取ろうと言う思いで血が上り、そのまま剣を取り、オニキスに立ち向かった。
しかし、オニキスは戦った後すぐにも関わらず、タクマの攻撃を剣の鞘だけで受け止めた。
オニキスの鞘の一部が斬れ、静かな砂漠に、その一部が落ちる音が響き渡る。

「あらまぁ、硬い事しか脳のないはずの俺の鞘が斬れちまった……」
「だが、まだお前の剣技は基礎中の基礎、まだ戦う時じゃねぇ」

そう言ってオニキスは、タクマの脇腹に蹴りを入れ、遠くまで蹴り飛ばした。
そして、ブレイクとタクマの前に、瓶に入った緑の薬を置き、「悪夢はまだ終わらない、それ飲んで顔洗って、また出直してこい」と言い残し、また何処かえと消えていった。

「ぐっ……今度こそ骨折れたか……?」
「それより、早くブレイクさん連れてこっから逃げなきゃ……!」

タクマは蹴られた脇腹を抑えながら、薬を持ってブレイクの方へ向かった。

「タクマ……よせって言っただろ……」
「すみません、ついカッとなっちゃって……」
「だが奴の言った通り、あの鞘を壊せるくらいに強くなったのは事実だ……ぐっ!」
「ブレイクさん、とりあえず逃げましょう!」

タクマはブレイクの話を聴きながら、ブレイクの肩を持って、《ワープ》を使った。


【キョーハイ砂漠 小屋】

「に、兄さん!?」

メイジュはたった1人でやっていたゴロツキ治療をほっぽって、胸部から血を流すブレイクの方へ向かう。
ブレイクは大丈夫そうな顔で笑っているが、冷や汗も凄いし血もまだ完全には止まってない。
タクマは、オニキスから貰った薬をオニキスの患部にかけようとした。
だが、ブレイクはそれを拒んだ。

「ブレイク、回復薬さえあればこんな傷すぐに治るのじゃぞ!強がりもいい加減にせぬか!」
「そうだよ兄さん、ほら、服脱いで」

心配したメアは、無理矢理ブレイクの服を脱がそうとする。
するとブレイクは、口から血を吐いた後に「あのゴロツキにやれ」と小さな声で言った。

「こんなもん気合いで止血すりゃ、病院送り程度で終わる」
「だが、ソイツらはほっといたら死ぬし、訊きてぇ話だってある、今死なれちゃ困る」

ブレイクは真剣な目をしながらメイジュに二本の薬を託し、メイジュはそれをゴロツキ達の患部にかけた。
すると、たちまち全員が気を取り戻し、そのまま寝てしまった。
これで一件落着、そう思った時だった。

「テメェ!」

目つきの悪い斧使いの男が、いきなりメイジュを殴った。
辺りがざわざわし始める。

「イテテ、何するんですか?」
「テメェ!自分が何したか分かってんだろうなぁ!!」

男はタクマ達に怒鳴りつけ、ビーグらのゴロツキ集団の罪状を一つ一つ挙げて行った。
無銭飲食、施設破壊、街荒らし、ここで挙げてはキリがない程、ビーグらの恨みを込めて言い放った。

「フッ、暴れん坊だから見殺しにしてもいいってか、呆れたぜ」

ブレイクは、騒ぎ立てる男を煽るように言った。
もちろんそれにキレた男は、ブレイクの顔面を殴った。
そして、周りの男が「怪我人に何をする」「落ち着け」と取り押さえる。

「コイツらが何しでかしたかなんて、アルゴから来た俺らは何も知らねぇ」
「だがな……」

ブレイクは立ち上がり、近くのテーブルを1発殴った。
周りがビクッとなり、皆ブレイクの方を見る。

「だがなぁ……」
「例えどんなクズだろうと、だからって見殺しにしていい理由にゃならねぇ!」
「起きてすぐしょっぴこうが、暴れた分タダ働きとかならまだしも、ソイツだけは他所モンでも見過ごせねぇ」

そう言い終えた後、1人の兵士が拍手をした。
そしてそれが連鎖するように、皆が拍手をした。
殴った男を取り押さえた人も、メイジュも、メアも、タクマも、そしてその男も認めて拍手をした。

「こやつらなら、Zの何かを知っているやもしれぬ、確かにここで死なれては困……」

メアがそう言いながら、ビーグの顔を見ていると、ドーン!と言う爆発音が聞こえ、一瞬辺りが揺れた。
皆、急な揺れに驚く。
しかしその数秒後、驚いていた人々は喜びの声を上げた。
あの爆発音、つまり流れてきた話ならば、ゴーレムを倒したと言う事。
皆倒した後の分前などを期待し、大はしゃぎしながら、皆ウォルへと帰っていった。

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