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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第31話 不殺の死神と世紀末的な遺跡

 一方その頃、タクマはと言うと……

「ざっとこんなもんかな。にしても、どこだ此処」

 タクマは辺りに居たスコルピオ達を倒し、ブレイクやメア達の下へ戻ろうとしていた。
 だが、タクマは何故だかその外れにある廃墟のような遺跡の前に居た。
 崩れ廃れたビルの残骸のような建造物、鉄骨のような瓦礫の山々、まるで終末を迎えた現代の街のような場所。
 タクマはその光景を禍々しく感じ、そして男のロマン的に美しくも感じた。

「ゴーレム退治終わったら、メアとノエル連れてちょっと見て回るか」

 タクマは独り言を呟きながら、中央の崩れた遺跡を見た。
 するとその時、どこからか、足が竦むような恐ろしい風が吹き、砂を力強く踏むような足音が聞こえてきた。
 振り返ると、案の定そこにはオニキスが立っていた。

「何でお前がここにいる、そう言いたそうな顔してるな」

 オニキスはタクマに近付いて言う。あの睨みつける目、タクマはそれのせい更に恐怖を感じる。
 そのせいで、タクマは体を動かすどころか口も動かせない。

(動け!動かないと殺される!)

 タクマは必死で念じて、その場から逃げようとした。
 だがオニキスは、何もせず、ただ「安心しろ」とタクマに言う。

「俺はただ“最強”って奴からその称号を狩り取るだけだ。殺しをした事なんて一度もない。それに、お前はまだ剣のいろはを覚えたばかりだから、今戦ったとてなんの面白みすらない」

 オニキスはタクマを睨みつけながら言う。
 オニキスの話から「殺される心配はない」と言う確証を得た事で、本当ならばここはホッとする場面なのだろう。
 しかしタクマは、オニキスが普段から放っている、魔力を削ぎ取られるような恐ろしい風のせいで全然ホッとするどころではなくなっていた。

「とにかくここは危険だ、悪く思うなよ」

 そう言うと、オニキスはタクマの腹に重い拳を一発お見舞いした。
「がっ!」と、痛々しい断末魔を上げて、タクマは気絶してしまった。


 ──

「あ、生き返った」
「タクマさんっ!!心配したんですよ!!」

 タクマが目を開けると、目の前からミサイルのようにノエルが飛びかかってきた。
 それを避けられなかったタクマはノエルに押し倒され、一瞬また気絶しそうになる。

「人騒がせが、てっきりオニキスに殺されたかと思うたわい」
「おう待て、これは一体どういう状況なんだ?」

 タクマは泣きつくノエルを押し除け、メアに訊ねた。

「実はの……」

 メアは、数時間前、何があったのかを話した。


 数時間前
【ウォル 停留所】

「こっちは居ない、ノエルちゃんの方は?」
「ダメです、こっちにも……」
「あの馬鹿、一体何処に行きよったのじゃ?」

 メア達は忽然と姿を消したタクマを探していた。しかし、何処を探しても見つからなかった。
 するとその時、こちらの方でもまた足が竦むような風が吹いてきた。

「これは特異体質からなる風!?まさか……」
「メア、ノエル!俺の後ろに隠れてろ!」

 ブレイクはメアとノエルに言い、守るようにして剣を構えた。
 そして、そこにオニキスが急に姿を現した。しかもタクマを背負ってだ。

「タクマさん!!」

 それを見たノエルは、タクマに声をかけた。
 しかしタクマは反応しない、ノエルはまさかと思い、力を失くして気絶してしまった。

「テメェ!タクマに何しやがったっ!!」

 ブレイクは、いつもとは全然違う真剣な目つきでオニキスを睨み、すぐにでも飛びかかれる態勢で構えた。
 だが、オニキスはその質問に答えず、タクマを下ろして背中を向けた。

「どういうつもりだ!何故タクマを……」
「俺はソイツを気に入った。だから迷ってた所を助けた。それじゃ不満か?」

 オニキスはそう言いながら振り向き、口をにやつかせた。
 その顔は、まるで面白い獲物を見つけた獣のような、遊び甲斐のある人間を見つけた悪魔のような顔だった。
 そして、メアやノエル、そしてロード兄弟までも動けなくなってしまう。

「ぐっ……待て……」
「今のお前達には今日現れるゴーレムの対策が先じゃないのか?そのショーが終わったら楽しませてもらうぜ」

 オニキスの姿が影のようにすぅっと消え、メア達は動けるようになった。
 そして、4人はタクマの方へ向かい、ブレイクがタクマを背負う。

 ────

「てな事があったのじゃ」
「オニキスが俺を助けた……?ごめん、一旦考えたい事があるから1人にしてくれないか……?」

 タクマはメアにそう言って、もう一度ベッドに横になり、あの時の事を振り返る。
 何故奴はZ達に仲間入りするのか、何故最強を狙うのか。そして、何故殺しをしないのか。
 しかし、結局のところ分からなかった。
 でも、ただ楽しいからやっているようには思えない。何かちゃんとした理由があるのではないかと、タクマは結論付けた。
 そして、そんなモヤモヤした気持ちを待ちつつ、タクマは身体を伸ばし、部屋の外へ出た。

「やっと起きたか、寝坊助」
「大丈夫?オニキスに何かされなかったかい?」

 外で待っていたロード兄弟が、タクマに駆け寄ってきた。

「いえ、腹を一発殴られた以外は何もされていません」
「それは良かった。だけどお前も災難だな」
「あのオニキスに、気に入られたんだからよぉ」

 それを聞いたタクマは、一瞬オニキスの出す恐怖の風を感じた。
 だが、その後に「やってやろうじゃないか!」と言うモチベーションのような何かがこみ上げ、タクマの心に火がついた。
 しかし、それと同時にまたギルドから緊急要請アナウンスが流れる。

『キョーハイ砂漠にて、数日前に現れたとされる大型魔物が出現!直ちにキョーハイ砂漠へお向かいください!』
「始まったみたいだな。気合い入れて行くぞお前ら!!」

 ブレイクはタクマ達と拳を合わせ、闘魂注入の輪を作った。
 そしてタクマは、すぐに《ワープ》を発動し、ゴーレムへのリベンジマッチに向かった……

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