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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第28話 魔法系のいろはとサイコパス的な毒の作り方

 あれからタクマ達は川を辿り、やっとの思いでマリジハ平原へと出た。
 しかし、その道中に、地震を引き起こしたであろう装置や、犯人であろうZに出会す事もなかった。
 地震にしては重力が強くのしかかったような感じ、アレが普通の地震だとは考えられない。
 そう考え込んでいると、ブレイクが背中を強く叩き「何しかめっ面してんだ、そんなに地震が気になるか?」と、笑いながらタクマに言った。

「それじゃあ、こっからはそれぞれ別々の修行!俺らは魔法を使う相手の倒し方をやるぜ!」
「じゃ、僕達の方は調合用の素材集めをしよう」

 ブレイクの元気な掛け声と共に、それぞれの修行が開始された。



「ようしタクマ!あそこに居るハイネと戦ってこい!」

 そう言ってブレイクが指した所を見ると、そこには全身が真っ黒な靄に包まれた球体が居た。しかも、そのもやの中からは、すぐ折れそうな細い腕を生やしている。
 確かに見た目からも「俺魔法使うよ」って感じのオーラを出しているが、それ故かすごく気持ち悪い!
 メアの屋敷に居たサタンやハナコとは違う、異形の幽霊といった所だろうか。
 タクマは戦う前から足を震えさせる。
 すると、それを見ていたブレイクが「何ボサっとしてる!」と一喝した。

「その程度で狼狽えてたら、永遠に強くなれねぇ!忘れるな。冒険家も兵士も皆、死ぬ恐怖に耐えて戦うものだ。あんな幽霊の恐怖なんか屁でもない!」

 ブレイクは親指を立て、ぎこちないウィンクをしながらタクマにGOサインを出した。
 それと同時に、タクマはハイネの所へと突撃した。

「うりゃあ!はっ!この野郎っ!」

 今日の激しい朝練や昨日学んだことを生かし、タクマは次々とハイネを倒した。
 しかし、相手も黙っている訳ではない。
 死角から闇の気弾が飛び出し、タクマに当たって爆発する。

「がっ……いつの間に魔法を……」
「そいつらは陰湿な魔物だ、死角を作るな!奴らはそこを狙う!だから逆に、奴らを欺いて剣を振れ!」
「分かりま……ぐはっ!!」

 聴きながら体勢を立て直そうとするが、死角からの攻撃で調子を狂わされたせいで、避けきれない。
 右から来たから避けようと思っても、左の死角から。
 かといって左に避けてもまた死角から。
 だけどこんな所でタコ殴りにされる訳にはいかない。タクマは咄嗟に指を鳴らし、ハイネの使う《ドゥンケル》をコピーした。
 そして、タクマの周りを、闇の魔法陣が囲う。

「俺だって、やる時にはっ!《コピー・ドゥンケル》!」

 タクマの右手から闇の気弾が飛び出し、それはハイネ達に当たり爆発した。
 そして怯んだ隙を突いて、タクマは反撃を仕掛けた。
 何とか調子を取り戻し、死角から来る敵の気弾も、コピーによって微かに感じることができるようになったおかげか、避けれるようにもなった。

「ようし、もういいだろう。戻ってこーい!」
「ふぅ、今回はざっとこんなもんかなぁ」

 タクマはブレイクの所へと戻る。
 するとブレイクは、タクマの肩を掴みながら「何だ今のはっ!!」と、耳がキーンとなるような大きな声で訊いた。
 流石に剣の修行で、コピーを使ったのはまずかったか……

「あ、あれはその……俺の特異技っていうか何と言うか……」
「すげぇ!!」
「へ?」
「あんなコピーだかピーコだかって言う技!それを用いて逆境から立ち上がる!すげぇ以外に何があるってんだ!」

 ブレイクは目を輝かせ、タクマを勢いよく揺らしながら言う。
 確かにコピーはこの世界では多分自分しか使えない。それに驚かれるのは慣れているが、揺らされすぎてそれどころじゃない。
 それより、メアの所は大丈夫だろうか……
 タクマはブレイクの褒め責めを食い、綺麗な青空を眺めつつ心配した。

【マリジハ平原 北】
 ここで、メアとノエル達は、調合用の「ドクセリ」や「トリカブト」などの猛毒草を採取し、メイジュから調合のやり方を伝授してもらっていた。

「これくらいで良いかの?」
「そうだね、これだけあれば十分だよ」

 メイジュは笑顔で二人に言い、背中の鞄を漁り始めた。
 それにしても小さい鞄、一体その中に何があるのだろうか……
 そう考えていると、そこから、絶対出てこないであろうサイズのまな板、包丁、薬研などのアイテムが、次々と顔を現した。

「ど、どうなってるんですかそれっ!」
「大きさの割に合ってないぞ!何の魔法じゃ!?」

 二人は、ド○○もんの持つ不思議なポッケまがいな鞄を見て驚く。
 しかし、メイジュは特にその事には触れず、昨日大量に採取した毒キノコを細かく切り始めた。

「まずはキノコを細かく切るんだけど、この種類は切った際に硫酸エキスを出すから手袋をしてね」

 メイジュは、物を動かす能力で四次元鞄からラバー製の手袋のようなものを取り出し、キノコ切りの作業を続けた。
 メア達も手袋を付けてキノコ切りの作業に入った。
 トントントントンッと、早いようで遅いまな板の音が平原に鳴り響く。
 そして今度は、薬研に切ったキノコとトリカブト一枚、そして少量の水を入れて摺り下ろし始めた。

「キノコとトリカブト、この二つに少量の水を入れたら毒の完成だよ。やってごらん」
「了解じゃ」

 二人は言われた通りに切ったキノコとトリカブトを摺り下ろした。
 すると、だんだん固形のものがなくなり、紫の毒々しい水ができてきた。

「これで完成……ですか?」
「上出来だよ、後はコレを瓶に詰めて……完成!」

 メイジュはそう言った後、その瓶を近くに居たスライムに投げつけた。
 するとそのスライムは燃え上がって消えてしまった。

「今回は火炎型の毒か、まぁどんどん瓶詰めしよう」

 特に何もなかったかのように、出来上がった毒を笑顔で詰める作業に取り掛かったメイジュ。
 二人はそのサイコパス的な行動に震えながらも、毒を作っていった。
 するとそこへ、修行を終えたタクマ達が合流した。

「ふぃ〜、疲れた〜」
「お疲れのようですね、タクマさん」
「アハハ、お主ボロボロじゃのぅ」
「あぁ、ハイネって言う幽霊にボコボコにされてな」

 タクマは言いながら瓶を取り、それを無意識に飲もうとした。
 それを見て、ノエルは「どっせい!」と掛け声を上げ、タクマの脳天に蹴りを入れ、毒を飲もうとしたのを阻止した。

「疲れてるのは分かるが、そう易々とそこらに置いてあるものを飲むでない」
「悪い悪い、にしてもこれ何だ?」
「毒だよ、それも初心者にしては上出来のね」
「成る程。てかよく笑顔でそんな事言えますね……」
「コイツは毒調合師の免許持ってんだ。こう見えて調子乗ってる部下の飯に下剤とか混ぜるから気を付けろよ」

 ブレイクはタクマに耳打ちする。
 ブレイクは見た目からもアツい奴とは分かるが、優しい見た目とは裏腹に、メイジュは裏がありそうだ。
 タクマは苦笑いしつつ、二人の魅力について思った。

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