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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第25話 身隠しのワケと地獄的修行生活 初日

 タクマ達は、馬車もワープも封印された状態で、アルメラ海から歩き続けていた。

「そういえば、どうしてロードさん達はあそこで身を隠していたんですか?」

 ノエルは歩きながら訊ねた。
 言われてみれば、あれほど強い兄弟二人がオニキスの噂話だけで逃げ出すような人たちとは思えない。
 すると、ブレイクは頭をかいた後にその理由を話し始めた。

「俺らがあそこに留まってると、噂を聞き付けたアイツが来た時、ビーグとか言うゴロツキん時みてぇに部下まで巻添え食らわるって睨んだんだ。だから、せめてそれだけでも防ぎたかったってだけだ。来たら来たでボコボコにのしてやるつもりだがな!」

 ブレイクは自分の拳と拳をぶつけた後、指の骨を鳴らした。
 それだけで“絶対に倒す”と言う意気込みが見えるため、ブレイクの言っている事は嘘ではないようだ。
 しかし、その鳴らした骨が災いしたのか、タクマ達はゴブリンの集団に囲まれてしまった。

「ありゃりゃ、早速お出ましか」
「このたわけが!あんなの見つけてくれって言ってるのと同じじゃぞ!」

 メアはブレイクに向かって叱りつけた。
 しかし、そんな事をしようと、この状況は変わらない。
 タクマ達は武器を抜こうとした。
 しかし、ブレイクは手を横に出して一旦止めさせた。

「待て、タクマだかアクマだか知らんが、まずはお前のやり方を見せてくれ」
「ですが、こんな集団タクマさん1人では……」
「まずは好きにやらせて、何処を伸ばせばいいか見る、兄さんお得意の修行術だから安心してくれ」

 ノエルの心配に、メイジュはノエルの肩に手を乗せながら答えた。
 タクマは言われた通り剣を引き抜き、いつも通り戦った。
 そして三体倒した時、ブレイクは手を叩いて止めるよう言った。

「何だそれは、ただ強引に突っ込んで腹切ってるだけじゃねぇか!そんなんじゃ背中が隙だらけだぞ!本来のやり方はこうだ、見てパクりやがれ!」

 そう言いながら、ブレイクは剣を引き抜き、それを上へと投げた。
 それと同時にブレイクは飛び上がり、高めのジャンプ斬りでゴブリンを真っ二つにした。
 それから立ち向かってきたゴブリンを斬る、斬る、後ろからの攻撃を剣で塞いでカウンター。
 からの回転斬りを放って、ゴブリンを10体まとめて倒した。

「あれがアルゴ一の剣の使い手、全然目で追えません……」

 ノエルはブレイクの剣技を見て驚いていた。

「あれはタクマ君と兄さんに任せよう。こっちもそう呑気には言ってられないようだからね」

 メイジュに言われて辺りを見渡すと、こちらもこちらでゴブリンに囲まれていた。

「それじゃあメア、まずは闇魔法のレッスンだ」

 メイジュはそう言うと、自分の目の前に文字が見えるくらい大きな魔法陣を出現させた。

「闇へと契約を交わし時、汝宇宙の力を生み出さん!《ドゥンケル》!」

 するとそこから黒い波動砲のようなものが打ち出され、目の前にいたゴブリンが消しとんだ。

「さぁ、魔力を込めながらさっきの言葉を唱えるんだ。それで闇と契約した事になる」
「闇と契約って……それマジで大丈夫な奴なのか?」

 メアは契約だの闇だのと聞いて不安になり、メイジュへと訊ねる。
 するとメイジュは、メアの頭を撫でながら笑顔で安心するように言った。

「光も闇も、他の魔法と何ら変わらない。闇だからって恐れちゃダメだし、光だからって過信してはいけない。人を見た目で判断してはいけないように、闇だからって勝手に悪と決めつけずに受け入れるんだ」

 メアはその思想に関心し、手に力を込めた。
 メイジュがやっていたような要領で、闇魔法と情を通わせた。

「闇へと契約を交わし時、汝宇宙の力を生み出さん!」

 メアがそう叫んだ時、メアの手に禍々しい紫色をした玉が現れた。
 そして、それを飛びかかってきたゴブリンに向けて放った時、それは大爆発を巻き起こして近くにいたゴブリンも倒した。
 メアはそのあまりの展開に驚き硬直していた。

「これ……妾がやったんじゃよな?」

 メアは手を震えさせながらメイジュに訊く。
 するとメイジュはメアの肩を揺さぶり、褒めた。

「やっぱりメアは凄い!アレは《ドゥンケル》の上位魔法《メガ・ドゥンケル》だよ、それを習得してすぐの一発目で撃つとなると、闇がメアを認めたって事だ!」

 メアは、魔法に関して勉強をしている訳ではなかったため、完全に意識が宇宙へと旅立っていた。
 そしてメイジュは後ろで驚いたまま硬直しているノエルの方を向き、背中の杖を見た。

「なるほどな、君は水と氷以外に雷もあるようだね。じゃあ君には、水と雷を使ったコンボ魔法を教えよう」

 そう言うとメイジュは背中から杖を取り出し、付近に大量の水を撒いた。
 ノエルはその攻撃でも何でもない行為に戸惑った。

「あの、これは一体……」
「これは《ウォーター》を極限に弱めた奴だよ。後はゴブリン共がこの水たまりに沢山入った時に教える……と言った側から来たようだね」

 メイジュの言った通り、ゴブリン達は極限に弱めた《ウォーター》でメイジュを舐めきったのか一斉に走り出した。

「アイツらも同じ罠に二度もハマる程馬鹿じゃない。だから魔法陣の契約呪文だけ教えるよ」

 メイジュはそう言った後、ノエルに早口で「雷と汝の脚を共にせし時、汝雷神からの祝福を授からん」と伝えた。
 ノエルは静かに肯き、その契約の呪文を唱えた。

「雷と汝の脚を揃えし時、汝雷神からの祝福を授からん!」

 そしてノエルはふと頭に過った魔法《サンダー》を咄嗟に叫んだ。
 すると、雲もない筈の天から、一本の大きな雷の槍が降ってきた。
 そしてその槍はゴブリンが居る水たまりへと突き刺さり、水に浸かっていたゴブリン達が次々に感電して倒れていった。


 一方その頃、タクマの方は……

「何口開けてやがる、今日はさっきの天空斬りと、それを用いた先制攻撃を叩き込む!」

 そう言われ、タクマはさっきブレイクがやったように剣を投げてみた。

「なかなか洞察力あるなお前、じゃあ次はそれ掴んでゴブリンに振り下ろせ!」

 タクマは言われた通り、掴むためにジャンプをしてみた。

(運動神経良い方じゃねぇのに届かねぇよなぁ……)

 少し弱気になっていたが、ふと目を開けてみると、タクマはちょうど剣の辺りまで飛んでいる事に気付いた。
 勿論、出来るとも思っていなかったタクマは驚いた。

「そしてコイツを掴んで……」

 タクマは飛び上がっていた自分の剣の柄を掴み、空中で身体を一回転させた。
 そこからタクマは、ゴブリンの頭目掛けて落下した。
 しかし、落下速度が遅く、ゴブリンはタクマの天空斬りを避けてしまった。

「重力を味方にして落下速度を上げてみろ、他は完璧だから頑張ろうぜ」

 と、肩を落としていたタクマにブレイクは慰めの声をかけた。
 だが、そんな間を作ってくれないのが魔物である。ゴブリンはタクマの隙をついて、後ろから襲いかかってきた。
 その時だった、タクマの中で何かを感じた。
 何とも言えば良いだろうか、「完全に殺す」そう言ったような殺気を感じたのだ。

「危ねぇ!後ろ……」

 ブレイクがそう言った時にはもう、タクマは避けていた。

「初日から殺気を感じ取れるとはな、やっぱりお前には才能があると誉めたいところだが……」
「残り数体倒すまではお預けだ。ですね?」
「分かってんじゃねぇか!流石は一番弟子!」

 そうして、タクマとブレイクは先ほどやったようにゴブリン達を斬り、実践修行は終わった。


 それから数時間、タクマ達はティグノウスと初めて出会った、嫌でもあり楽しくもあった思い出の森まで着いた。
「よし、それじゃあ夕飯の支度をするとしよう。俺らはこの辺の食えそうな魔物を狩る、そっちは木の実採取を頼む」
「……とは言ったものの、焼け跡だけで何もねぇな、ここ」

 ブレイクは、あの日タクマが追い詰められた辺りを見渡しながら呟いた。
 言われてみれば、ついこの間までティグノウスが根城にしていた森。そんな危険極まりない場所に居続ける生物など居るはずがない。まして、焼け焦げた森の中には食べられるものはないに等しい。

「この状態じゃメアの方も厳しそうですね……」

 タクマは、焼け焦げた木の実を拾い上げて近くの木を見ながら言った。
 火は消えたといえど、辺りを見た感じ、被害が大きいのは言うまでもない。

「腹が減っては戦ができぬってモンだから、ちゃんと食ってもらわなきゃ困るんだが、コイツは食えないって事も覚悟しなきゃならんな」

 ブレイクは魔物狩りを諦め、焚火に使えそうな木の枝を集めながらそう言った。


 
【ウォル 留置所】
 ── 一方その頃、ウォルの留置所に収容されているビーグ率いるゴロツキ達はと言うと……

「それにしてもどうしやす?こっからの脱獄なんて簡単じゃねぇですし……」
「何弱音吐いてやがる、この俺があんな長髪のガキにやられて黙ってられるか!」

 ビーグとその部下達は、そのような会話をしながら夕食のスープを飲み干した。
 そして、部下達は口々に今の現状を嘆いた。
 やはり、若い男?一人にやられた事が、響いたようだ。
 とその時、ビーグが耳をすますと、留置所の外が騒がしくなっている事に気付いた。

「貴様何者……うっ!」
「ここは関係者……」

 看守らが何者かによって倒されているようだ。
 そしてその悲痛の声が鳴り止むと、その襲撃犯がこちらに近づいてきた。
 カツン、カツンと不気味な足音を立てながら、ゆっくりとこちらの方へ近づいてくる。
 そして、その足音はビーグらの収容された牢屋で止まり、窓からの月明かりでその襲撃犯の顔が露わになった。

「ここでしたかね……おヤ?」

 その正体はDr.Zだった。

「き、貴様!俺らに何の用だ!!」

 ビーグは部下達を庇いながら、虚な目でこちらを見てくるZに訊いた。

「そうですネ、じゃあ今回は『呆気なくやられたゴロツキに仕事を与える者』と名乗っておきましょうかネ」
「仕事だと?」
「単刀直入に言いますと、私はアナタ方を警備員として雇いたいのデス。勿論、タダでとは言いません」

 そう言うとZは、白衣のポケットからメスを取り出し、不気味な笑い声を上げた。
 その不気味さゆえか、部下達はZに恐怖心を抱いていた。
 何をするか、何をされるか分からない奴が目の前に居て今為す術もないのだ。誰でも恐れる。

「前金の代わりとして、アナタ方をこの牢から解放しマス。仕事内容はワタシのアジトに何人たりとも入れさせない。たったそれダケ」
「悪い話ではないでしょウ、協力してくれますカ?」

 すると、ビーグは立ち上がってZの方に向かい、一旦部下達の方を振り向いた。
 部下達は皆固唾を飲み込んだ後、静かに肯いた。

「漫然一致、お前の計画に協力する。分かったらさっさと出せ!」
「アナタと言う人はせっかちだ、まぁそこを退いてなサイ」

 ビーグ達はZの命令通り、鉄格子から離れた。
 そしてZは目に見えない速さでメスを動かし、ビーグが殴っても壊せなかった鉄格子をいとも簡単に斬った。

「それでは、私についてきてくだサイ」

 そうしてZは目の前に黒いワープホールのようなものを出し、ビーグ達にその中へ入るように言った。

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