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コピー使いの異世界探検記

鍵宮ファング

第24話 火竜討伐と地獄的修行生活の始まり

【アルメラ海付近】
 タクマ達は、火竜討伐の目的地である洞窟前に立ち尽くしていた。

「話によれば、確かこの辺だよな。暴れ火竜の根城ってのは」
「いかにもって感じじゃが、この塞いでる岩のせいで通れぬな……」

 そう言いながら、二人はノエルの方を向いた。
 甲羅の硬いスコルピオを拳一つで見せられない姿へと変えたノエルの馬鹿力ならば、岩石程度どうってこと無いだろうと言う考えである。
 ノエルは二人に対して、ため息を吐いてうなずいた。

「仕方ありませんね、ちょっと離れてください」

 タクマとメアは、言われた通り数メートルほど距離を取った。
 するとノエルは、深呼吸をしながら正拳突きの構えを取った。

「どっせい!!」

 その掛け声と共に放った正拳突きにより、入り口を塞いでいた岩石は粉々に砕け散った。

「ふぅ、これで中に入れますよ」
「清々しい顔で言うのやめて、何か怖い」

 タクマは冷や汗を流しながらノエルに言った。

「それにしても凄い音じゃったが、まさかそれで奴に気付かれ……」

 すると、洞窟の奥からドシン、ドシンと何かが近付いてくる足音が鳴り響いてきた。
 しかもその音が大きくなるにつれて辺りが暑苦しくなってくる。

「……!?危ない!」

 そう叫び、タクマはメアとノエルの手を引いて入り口の脇へ飛んだ。
 すると、二階建の家くらいある洞窟の入り口から、勢いよく火炎砲のようなものが飛んできた。

「やっぱり気付かれちゃいましたね……」
「ようし、パッと倒してロード兄弟が居るだろう場所に行くぞ!」

 そう言い、タクマ達は武器を取り、こちらへ近付いてくる火竜を待ち構えた。
 ドシン、ドシンという足音が大きくなるにつれ、タクマ達に緊張が走る。

 ────グルァァァァァァァ!!
 そして、対象の火竜が大きな咆哮を上げながら洞窟から現れた。
 耳がキーンとなるような轟音が響く。
 しかし今度こそは逃してなるものか、逃げてなるものか。そう考えていたタクマには、何も感じなかった。
 全身は赤く、入り口ギリギリまである身長、口からはティグノウスのフレアのような炎が漏れていた。

「ノエルは遠くからフリズ、メアは俺と一緒にとりあえず斬る感じで行こう」
「はいっ!」

 そうして、ノエルは遠くに行きフリズの準備を始めた。

「ドリャリャリャリャリャ!!」
「はあっ!!」

 タクマとメアは、自慢の剣と投げナイフで、まずは火竜の足を狙って斬った。
 だが、効いていないのか、火竜は痛むような仕草をするどころか、タクマを狙って尻尾のなぎ払いを繰り出した。

「ぐはっ!」

 なぎ払いを避けきれなかったタクマは吹き飛ばされ、山の岩肌に身体を打ち付けられた。

「イテテ、骨折はしてないみたいだがこの状況は……」

 タクマは、こちらに向けて口を大きく開け、魔力を溜める火竜を見て祈った。

「させません!《フリズ》!」

 ノエルは氷の弾を火竜の口に当て、溜めをキャンセルさせた。

「タクマ!ここは妾に任せておけい!」

 そう言いながら、メアは投げナイフを火竜の口へとピンポイントで投げ入れた。
 しかし、火竜はそれをものともせず、口からフレアを放った。

「ここだっ!」

 タクマは剣を持って立ち上がり、火竜の尾に向かって走り、指を鳴らした。
 神の言ってた事が本当ならば、これでコピーできているはず。
 タクマは、火竜に向けて《コピー・フレア》を放った。
 だが、相手の魔法適性は名前の通り火。そのため、全然効いていない。

「特に変わりもなく出るみたいだが、やっぱり効いてないか……」
「グルァァァァァァァ!!」

 火竜はまた咆哮を上げ、今度はノエル目掛けて殴りかかった。

「私殴ろうだなんて10年早いわゴラァ!」

 ノエルは怒りの形相で火竜の手を殴り返し、両者とも反動で倒れた。
 そして、ノエルはそのまま伸びてしまった。

「きゅー」
「ノエル!こやつは妾が安全なとこへ持ってく、今のうちに頭に登るのじゃ!」
「あぁ、頼んだ!」

 そう言って、タクマは火竜の鱗を掴んで頭へと登った。

「後は野となれ山となれだっ!」

 頭上に登ったタクマは、火竜の額を斬りつけた。

「グオオォォォ!!」

 そこが弱点だったのか、火竜はタクマを頭上から振り落とそうと暴れ回った。

「うわぁぁぁ!!」

 タクマは持ち応えようとしたが、その頑張りも幸を成さず、タクマは頭から真っ逆さまに落ちていった。

(あぁ、まさかこんな所で死ぬとはな)

 タクマが死を覚悟したその時、黒い影が杖を振りかざした。

「《ストーム》!」

 タクマの体が地面ギリギリの所で止まった。

「駄目だ駄目だ、全く成ってない!それじゃあ折角の剣が泣いちまうぜ?」

 声がする方を向くと、そこには二人の男が立っていた。
 剣を持った男の髪色は赤く、左目に傷を負っている。杖を持った男の髪色も赤く、逆に彼は右目の周りに紋章のような物が刻まれており、両方とも若い。
 彼らこそが、王の言っていたロード兄弟なのだろうか。

「ヤバそうだし加勢しようよ、兄さん」
「仕方ねぇ、剣のお手本を見せてやるぜ!」

 そう言って、兄さんと呼ばれた剣の男は、タクマを浮かしていた《ストーム》を利用して飛び上がり、火竜の頭に向かって、まるで2本の剣を扱っているかのような速さで斬撃を与えた。

「つ、強い……」

 火竜はその場に倒れ、タクマの持っていたクエスト用紙が光った。
 が、剣の男は青い瓶を開け、火竜の口の中に緑色の液体を流し込んだ。
 すると倒れていた火竜は傷を一瞬で治し、どこか遠くへと飛んでいった。

「これに懲りたら二度と来るんじゃねぇぞ〜!」

 そう言いながら、剣の男は火竜に手を振った。

「それはそうとお前なぁ、何だあの剣捌きは!全然成ってねぇ!」

 剣の男はタクマの方を向いて怒鳴りつけた。
 更に、その男はタクマを担ぎ上げて走り出した。

「ちょ、何するんですか!離して……」
「うるせぇ!剣使ってる奴が剣のいろはの『い』の字すら知らねぇってんなら、俺がゑひもせすんまでキッチリ叩き込んでやらぁ!!」

【アルメラビーチ 海の家】

「俺らを探してるってのは弟から聞いた。俺らが、噂のロード兄弟だ」

 どっしりとソファーに座っている男、もといロード兄弟の1人は、自分のギルドカードをタクマに見せた。

 名前・・ブレイク
 適正武器・・剣、弓
 魔法属性・・火、水

「俺はタクマって言います」

 タクマも自分のギルドカードを見せた。

「何だこりゃ!でも材質を見る限り偽造じゃねぇな……」

 タクマはギルドカードを太陽にかざして本物かどうかを見るブレイクに対し、苦笑いで答えた。
 すると、そこにメアとノエル、そして弟であるメイジュが帰ってきた。

「兄さん、行動早いのは良いけど強引すぎだって……」

 メイジュは息を切らしながら言う。
 それを見てブレイクは笑った。

「メイジュ!お前魔法は出来るのに体力ねぇのかよ!」
「皆が皆体力ある人だと思わないでよ。それに、僕はこの子達を担いで来たんだから……」
「昔と変わらぬな」
「俺の元気そう簡単に変わらねぇ……ぜ……」

 するとブレイクは、メイジュの後ろから現れたメアを見て硬直してしまった。
 そして、彼女の事を観察するように見た後、まさかと声を漏らした。

「まさかとは思うがアンタ、メアか……?」
「全く、五年ぶりと言うのにお主らは相変わらずじゃな」

 すると、隣にいたメイジュも口をあんぐりと開けて驚いた。

「嘘……昔と比べて、だいぶゴスくなってるもんだから気付かなかった……」

 するとブレイクは、メアの横に立ち、頭の上に手を乗せた。
 メアは強めに撫でられ、倒れかける。

「ハハハッ、昔と変わらず小せぇ小せぇ」

 ブレイクがそう言った時、メアはブレイクの腹目掛けて渾身の一発をお見舞いした。
 そしてそのまま、ブレイクは床に倒れ込んでしまった。

「おてんばなトコも……全然変わってねぇな……」
「今度父上からも変なポエムの件で話があるから、覚悟しておくのじゃぞ」
「兄さん、だからあの日やめとこって言ったんだ」

 ポエムの件が何なのか察したメイジュは、目を細めて呟いた。

 話を戻して、タクマ達はウォルに現れたゴーレムの事、元々自分達も戦いのいろはを教わる為に、この場所へ来た事を伝えた。

「探してるのは知ってたが、そう言うワケがあってか。まずは背中のソレ、見せてくれ」

 タクマは言われた通り、背中の剣をテーブルに置いてロード兄弟に見せた。
 するとブレイクは、ゆっくりと鞘から剣を取り出し、剣先から眺めた。
 そして、その剣を見た二人は、目を丸くして驚いた。

「兄さん、これってもしかして……」
「お前も気付いたか。こいつぁケンの師匠 フランクのおやっさんが最後に作った剣で間違いない」

 ブレイクは震えた声で言う。更に、その目はとても珍しい宝石でも拝んでいる時のような、ありえないと言わんばかりの目をしていた。

「しかも見てみろ、この大陸じゃあ見る事なんてまずないティグノウスの素材まで使われてやがる」

 兄弟は固唾を飲み、冷や汗を垂らしながらタクマの剣を隅から隅まで見て、鞘に戻し返した。

「確かに、お前のギルカと言い、お前みたいな面白い野郎は一生に一度、会えるか会えないかだな。俺が頭下げて、やっと見せてやるだけだったケンの奴が、お前にソイツ託すのも納得できる」

 そう言い、ブレイクは大笑いした。
 確かに本人もそんな話をしていたが、まさかそこまで頑なに譲ろうともしなかった物を……
 タクマは、それほど思い入れのある物を託してくれたケンに感謝した。

「それで、お前らはゴーレムとやらを倒す強さを身につけたくて、俺らに泣きついてきたって事だな。だよな、メイジュ?」
「兄さん、言い方。でも、僕達の修行はキツいよ。特に兄さんのは。それでもいい?」

 メイジュに優しく訊かれたタクマは、そのキツい修行も覚悟の上で強く頷いた。
 そして、後からメアもノエルも頷いた。

「妾からも頼む。昔馴染みの仲無しで、しっかりしごいてほしいのじゃ」
「私に、魔法を教えてください!」
「……面白い」

 そう呟いたブレイクは、壁にかけられていた鞄を持ち上げ、もう一方の鞄をメイジュに投げ渡した。
 しかし、メイジュにはその荷物が重すぎたのか、ギャフンと情けない声を上げて倒れてしまった。

「いい剣にゴーレムと聞いちゃ、あんな死神とか言うイケすかないアンちゃんなんざ、どうだっていい!!」
「弟子にしてくれるんですね!」
「あたぼうよ!じゃあまず、ウォルまでは歩いて移動!その道中で修行だ!」

 ブレイクが大声でそう言うと、後ろのメイジュは「ヒューヒュー」と言いながら拍手した。
 しかし、タクマ、メア、ノエルの3人は、その発せられた修行内容を聞いて唖然とした。

「歩いて移動……ですか?」
「ここからだと馬車でも半日掛かる距離を……?」
「嘘……じゃろ?」
「いいや、マジでやってもらうぜ!とにかく黙ってついて来い!マイブラザーズ!」

 こうして、タクマ達の地獄的修行生活が始まるのであった。

「「「オ、オウイェース……」」」
「声が小せぇ!メイジュも、一緒にさんはい!」
「「「「「オ、オウイェース!!」」」」」

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