コピー使いの異世界探検記
第3話 リス地も生まれる家も自分じゃ決められない
ある日の朝、タクマは目を覚ます。
電球ソケットすら吊るされてない見知らぬ天井、手作りの高級羽毛布団がかけられたベッド、床も壁も全て木材で作られた部屋。
こんな部屋、佐方の病院には存在しない。
タクマはすぐ「本当に来ちまったのか」と感じた。
起き上がった瞬間、何処かの冒険家カップルの二人が「大丈夫か?」「ゆっくり起き上がってね」と声を掛ける。
(あれ?日本語で話してる……?でも……)
タクマは咄嗟に二人の顔を見て「は、はろー」とぎこちない英語で挨拶をした。
するとそのカップルは不思議な顔をしつつも、ちゃんと「はろー?」と疑問形にはなったが返してくれた。
一応日本語が通じるなら話が早い。タクマは、まずここがどこなのか訊いた。
「ここはアルゴの宿屋、僕達がクエストを終えて帰る時、君が木の下で寝てたのを保護してここに連れてきたんだ。」
「それより君はどこから来たの?そして何であんな危ない所で寝てたの?」
この時、タクマは高速で何を言おうか考えた。
もしここで素直に「日本」と答えても日本の「に」の字も知らない異世界人には絶対信じてもらえない。だからと言って、デルガンダルにあるどっかの国名を言おうとしても、来たばかりじゃ何処に何の国があるか分からない。
じゃあ記憶喪失設定でこの状況下から抜け出すか?いやいやそうしたら余計に心配されてしまう。
その結果、タクマは「もうどうにでもなれ」という気持ちで素直に「日本」と答えた。
「にほんって、あの大魔神タナカトスが生まれ育った幻の地の……?」
カップルの優男が急に席を立って驚いた。
「え何て?タナトス田中?」
「2000年前に絶対壊れないと言われていたカード工房の水晶をただ手をかざしただけで粉々に粉砕し、多くの魔物をほぼ一撃で倒したって言う最強の男よ?知らないの?」
そんな事言われても知らないものは知らない。しかも、タナカトスって「田中」と「タナトス」をかけただけじゃないか。
だが、水晶粉砕や一撃必殺等の武勇伝を聞く限り、そのタナカと言うのは日本出身の転生者である事は間違いない。
「そのタナカだか何だかって人は知りませんが、俺が日本出身なのは嘘ではありません。」
タクマは「最強の男が生まれた幻の地・日本」なんてここで言えばただ少し昔に起こっただけで、神話の類としてしか捉えてくれないかと思っていた。しかし、意外にもカップルはすんなり信じてくれた。
そう、今着ている制服は、少なくともこの世界の服ではない。そして、この世界にある技術ではまだ同じものを作れないからである。
「そういえば君、名前は?」
「僕はフィル、そしてこの子が僕の彼女のアンだ。」
「俺はタクマ、よろしくです」
タクマとフィルは共に握手を交わした。
【アルゴの城下町】
大きな城、魔物が入ってこれないように作られた壁と門。いかにも入ったら呪われそうな全体的に暗い屋敷、石造りの道。
RPGゲームの世界そのものだ、夢ならば覚めないで欲しい。
「そういえばタクマ君、君はギルドカードを持ってるのかい?」
ギルドカード……?冒険家が所有する学生証的なアレの事だろうか。当たり前だが、転生したばかりの彼がそんな物を持っている訳がない。
「いえ、持ってません」
「なら、酒場の向かいにあるお店に行きなさい。そこのおねえさんに頼んだら、作ってくれるわよ」
アンは酒場の向かいにある建物を指を差した。それにしても、お姉さん……どんな人なのだろうか。タクマは可愛いお姉さんを想像した。
「それじゃ、お互い頑張ろうな。」
フィルはタクマに手を振って酒場の方へ入っていった。
【カード屋】
「こんにちは〜、ギルドカードを作ってると言うのはここですか〜?」
タクマは扉を開けると同時に挨拶をした。だが、人が居るようには思えない程暗い。正直薄気味悪い為、あまり近付きたくない。だが、ここがそうなんだと、アンの言葉を信じて扉を閉めた。
「あら〜可愛いボウヤじゃないの〜!何作るの?ギルドカード?あっ、そもそもここ、ギルドカードしか作れないんだったわ!オホホホホ!!」
扉を閉めた瞬間、ガタイのいい男が後ろから抱きついてくる。そう、アンの言っていた「おねえさん」は、お“姉”さんではなく“オネェ”さんだったのだ。
「はいそれじゃあそこかけちゃって〜!そして名前を書く!はいどうぞ〜」
タクマはその異次元的なテンションに押され、水晶が置いてある部屋の椅子へ半強制的に座らされた。
「あら?アナタの名前……ねぇこれどこの字?アタシ外国語嫌いだから全然読めないわ〜」
タクマはつい、いつもの癖である悪筆で「陽山託舞」と書いてしまった事に「あ」と声を漏らす。
「すみません、俺タクマって言うんです。その文字は多分生まれ変わる前の記憶が残ってるせいでしょう」
タクマは笑って誤魔化した。いや、誤魔化せてない。
「生まれ変わり……?まあいいわ、アタシ不思議な子嫌いじゃないから。じゃ、次は武器適正、魔法属性を測るから水晶に手を当ててね〜」
タクマは言われるまま水晶に手を当てた。よく分からない何かが、頭をよぎる。
火、水、木、風、光、闇、無、そして色んな形をした武器達。
頭をよぎる多くの情報を脳で処理していると、後ろで「チーン」とトースターのような音が聞こえた。
「あら?これはまた初めてのパッティーンねぇ…」
オネェさんはタクマのギルドカードを見て驚く。
「アナタも見てちょうだい。」
タクマが見たカードには、このような事が書かれていた。
名前:タクマ
適正武器:剣
魔法属性:
「本当なら、適正武器は最低でも二つは表示されて、魔法属性もちゃんと表記される筈なのよ。」
タクマはこのカードを見ても大して驚かなかった。
適正武器が剣だけなのは対価、そして適正魔法はコピーが無ですらない本来ならば存在してはならない魔法を使うことが出来るからだと分かっていたからである。
それより驚いたのは、この世界の文字であるにも関わらず何が書いてあるのかすんなり分かってしまう事だった。
「でも、エラーカードじゃなさそうだしアナタに渡すわ。それじゃあ、良い旅を〜!」
こうしてタクマは正式にギルド会員となったのだった。
電球ソケットすら吊るされてない見知らぬ天井、手作りの高級羽毛布団がかけられたベッド、床も壁も全て木材で作られた部屋。
こんな部屋、佐方の病院には存在しない。
タクマはすぐ「本当に来ちまったのか」と感じた。
起き上がった瞬間、何処かの冒険家カップルの二人が「大丈夫か?」「ゆっくり起き上がってね」と声を掛ける。
(あれ?日本語で話してる……?でも……)
タクマは咄嗟に二人の顔を見て「は、はろー」とぎこちない英語で挨拶をした。
するとそのカップルは不思議な顔をしつつも、ちゃんと「はろー?」と疑問形にはなったが返してくれた。
一応日本語が通じるなら話が早い。タクマは、まずここがどこなのか訊いた。
「ここはアルゴの宿屋、僕達がクエストを終えて帰る時、君が木の下で寝てたのを保護してここに連れてきたんだ。」
「それより君はどこから来たの?そして何であんな危ない所で寝てたの?」
この時、タクマは高速で何を言おうか考えた。
もしここで素直に「日本」と答えても日本の「に」の字も知らない異世界人には絶対信じてもらえない。だからと言って、デルガンダルにあるどっかの国名を言おうとしても、来たばかりじゃ何処に何の国があるか分からない。
じゃあ記憶喪失設定でこの状況下から抜け出すか?いやいやそうしたら余計に心配されてしまう。
その結果、タクマは「もうどうにでもなれ」という気持ちで素直に「日本」と答えた。
「にほんって、あの大魔神タナカトスが生まれ育った幻の地の……?」
カップルの優男が急に席を立って驚いた。
「え何て?タナトス田中?」
「2000年前に絶対壊れないと言われていたカード工房の水晶をただ手をかざしただけで粉々に粉砕し、多くの魔物をほぼ一撃で倒したって言う最強の男よ?知らないの?」
そんな事言われても知らないものは知らない。しかも、タナカトスって「田中」と「タナトス」をかけただけじゃないか。
だが、水晶粉砕や一撃必殺等の武勇伝を聞く限り、そのタナカと言うのは日本出身の転生者である事は間違いない。
「そのタナカだか何だかって人は知りませんが、俺が日本出身なのは嘘ではありません。」
タクマは「最強の男が生まれた幻の地・日本」なんてここで言えばただ少し昔に起こっただけで、神話の類としてしか捉えてくれないかと思っていた。しかし、意外にもカップルはすんなり信じてくれた。
そう、今着ている制服は、少なくともこの世界の服ではない。そして、この世界にある技術ではまだ同じものを作れないからである。
「そういえば君、名前は?」
「僕はフィル、そしてこの子が僕の彼女のアンだ。」
「俺はタクマ、よろしくです」
タクマとフィルは共に握手を交わした。
【アルゴの城下町】
大きな城、魔物が入ってこれないように作られた壁と門。いかにも入ったら呪われそうな全体的に暗い屋敷、石造りの道。
RPGゲームの世界そのものだ、夢ならば覚めないで欲しい。
「そういえばタクマ君、君はギルドカードを持ってるのかい?」
ギルドカード……?冒険家が所有する学生証的なアレの事だろうか。当たり前だが、転生したばかりの彼がそんな物を持っている訳がない。
「いえ、持ってません」
「なら、酒場の向かいにあるお店に行きなさい。そこのおねえさんに頼んだら、作ってくれるわよ」
アンは酒場の向かいにある建物を指を差した。それにしても、お姉さん……どんな人なのだろうか。タクマは可愛いお姉さんを想像した。
「それじゃ、お互い頑張ろうな。」
フィルはタクマに手を振って酒場の方へ入っていった。
【カード屋】
「こんにちは〜、ギルドカードを作ってると言うのはここですか〜?」
タクマは扉を開けると同時に挨拶をした。だが、人が居るようには思えない程暗い。正直薄気味悪い為、あまり近付きたくない。だが、ここがそうなんだと、アンの言葉を信じて扉を閉めた。
「あら〜可愛いボウヤじゃないの〜!何作るの?ギルドカード?あっ、そもそもここ、ギルドカードしか作れないんだったわ!オホホホホ!!」
扉を閉めた瞬間、ガタイのいい男が後ろから抱きついてくる。そう、アンの言っていた「おねえさん」は、お“姉”さんではなく“オネェ”さんだったのだ。
「はいそれじゃあそこかけちゃって〜!そして名前を書く!はいどうぞ〜」
タクマはその異次元的なテンションに押され、水晶が置いてある部屋の椅子へ半強制的に座らされた。
「あら?アナタの名前……ねぇこれどこの字?アタシ外国語嫌いだから全然読めないわ〜」
タクマはつい、いつもの癖である悪筆で「陽山託舞」と書いてしまった事に「あ」と声を漏らす。
「すみません、俺タクマって言うんです。その文字は多分生まれ変わる前の記憶が残ってるせいでしょう」
タクマは笑って誤魔化した。いや、誤魔化せてない。
「生まれ変わり……?まあいいわ、アタシ不思議な子嫌いじゃないから。じゃ、次は武器適正、魔法属性を測るから水晶に手を当ててね〜」
タクマは言われるまま水晶に手を当てた。よく分からない何かが、頭をよぎる。
火、水、木、風、光、闇、無、そして色んな形をした武器達。
頭をよぎる多くの情報を脳で処理していると、後ろで「チーン」とトースターのような音が聞こえた。
「あら?これはまた初めてのパッティーンねぇ…」
オネェさんはタクマのギルドカードを見て驚く。
「アナタも見てちょうだい。」
タクマが見たカードには、このような事が書かれていた。
名前:タクマ
適正武器:剣
魔法属性:
「本当なら、適正武器は最低でも二つは表示されて、魔法属性もちゃんと表記される筈なのよ。」
タクマはこのカードを見ても大して驚かなかった。
適正武器が剣だけなのは対価、そして適正魔法はコピーが無ですらない本来ならば存在してはならない魔法を使うことが出来るからだと分かっていたからである。
それより驚いたのは、この世界の文字であるにも関わらず何が書いてあるのかすんなり分かってしまう事だった。
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