Door

ノベルバユーザー369032

Door11 桐生健斗 瀬川愛花

2019年6月(金曜日)

ギーヴルの毒により2日程寝込んでいたがそろそろ体調も良くなって来たな。
大事を取って今日も休んだけど、やる事も無いし退屈だな。
学校の終わりの時間になって少しすると、家にマリーが来た。

「もう大丈夫そうか?」
「あぁ。明日の体育祭はバッチリだよ。」
「そうか良かった…」
「マリーは心配し過ぎだって。この前来た時は号泣してるからこっちが心配になったよ。」
「あ あれは凛に騙されたんだ!」

話を聞くと凛は、

「あにぃがモンスターにやられて大変なの!意識が朦朧としながらマリー…マリーって言ってるから早く言ってあげて!」

と、それを聞いたマリーは大慌てで自分の所に来て、泣きながら抱きついて来たのだ。そしてその後ろで凛がニヤニヤしながら見ていた。

「あのやろ…俺が恥ずかしい奴になってるじゃねーか!」
「嘘だったから良かったけど…」
「全く…そういえば健斗と愛花は一緒じゃないのか?」
「2人は旅館に1度寄ってから来るそうだ。」
「そっか。」

愛花の家は老舗の旅館で健斗もそこでバイトしている。この神住市にはこれといった観光スポットなどは無いのだが、旅館は繁盛している。その訳は、ハンターである。
神住市には、ハンター養成所という場所があり、文字通りハンターを育てる所なのだが、愛花の旅館はそこの人達が泊まる寮を兼任している為成り立っているのだ。

「そういえば前々から聞いてみたかったんだが、健斗と愛花とはどうやって仲良くなったんだ?」
「あの2人と?まぁそうだなぁ…」

2人に初めて会ったのは高校1年の時。2人共同じクラスだったものの、特に共通点も無く夏休み前まであまり話した事もなかった。
愛花は美人で性格も良く、男女問わずクラスのみんなと仲が良かった。
健斗も最初の頃は人当たりが良くて、クラスの人気者って感じで、この2人がクラスの中心にいる事が多かった。
健斗は小学生の頃から野球をやっていて高校でも推薦入学で野球を続けていた。
だけど6月に交通事故に遭い選手生命を絶たれた…
その後の健斗は陽気な性格も無くなり素行も悪くなっていき、クラスでは愛花以外誰も近づかなくなってしまった。
その時クラスではある噂が流れていた。

<桐生健斗はやばい奴らとつながっている>

やばい奴らってのが詳しく話には出ないが恐らくヤクザや暴走族の事だと思う。
自分はただの噂だから特に信じたりしなかった。
健斗もその噂を聞いてたみたいで、クラスに居づらくなり、途中で帰るようになった。毎日学校には来るがその度に愛花は心配で声を掛けていた。

「健ちゃん、学校サボっちゃダメだよ。」
「またそれかよ。別に俺の事なんだから愛花には関係ねーだろ。」
「関係なく無いよ。」
「あーもう…面倒くせー。帰るわ。」
「ちょっと健ちゃん!」

こんなやり取りが毎回ありその度に帰ったりする。
愛花も毎回健斗に声を掛けてたせいもあってか、今度は愛花にも悪い噂が立ち始めクラスで避けられる様になってしまった。
そしてある日事件は起きた。
健斗がゲーセンで同じクラスの梶原と喧嘩になり怪我させて警察が来る騒ぎになった。
その話は直ぐに広まり愛花もそれを聞いていた。
その日の授業の終わりに自分は先生に用事があり、職員室に向かうと愛花の必死な声が聞こえてきた。なんとなく今自分が職員室に入るのは場違いな気がして、廊下で待つ事にした。

「お願いします ︎退学だけはしないで下さい!」
「何で瀬川がそこまでするんだ?」

ドアから覗いてみると、愛花は頭を下げて先生に頼んでいた。涙を流しながら…

「健ちゃんは野球が出来なくなって今はヤケになってるだけなんです。本当は優しくて困ってる人は必ず助ける良い子なんです。だからお願いします!」
「もう頭を上げてくれ、分かったから。1度先生たちと話してみるけど、停学は確実だからな。」
「ありがとう…ございます!」

職員室から出て来た愛花に声を掛けた。

「お疲れさん。」
「芦屋君⁈」
「悪い。先生に用事があったんだけど、立ち聞きする感じになっちゃって。」
「ううん、大丈夫。」
「そのさ、話聞かせてくれないか?何で  桐生の事にそこまでするのか。」

場所を変えて愛花の話を聞く事にした。

「健ちゃんとは家が近くて子供の頃からずっと一緒だったんだ。」
「幼馴染か。」
「うん。健ちゃん今はあんなだけど本当は優しくてね。私高所恐怖症なんだけどその時、健ちゃんいつも手繋いで私を落ち着かせてくれるんだ。」
「そうなのか。」
「健ちゃんが喧嘩したのは確かだけど、何か理由があると思うんだ。私は信じてる。でも周りは違うみたいだけど…」
「あの噂か。」

そもそも健斗は喧嘩が起きる前は口調は悪くなったけど、誰かを傷つけたわけじゃない。なのにあんな噂が立つなんて誰が流したんだ?

「健ちゃんは野球出来なくなって辛い思いしてる…噂も広まってクラスに居づらくなって可哀想だよ…」

愛花の目から涙が溢れていた。愛花だって周りから避けられて悲しい思いしてるのに、それでもなお健斗の心配するのかよ…

「それは瀬川だって同じだろ。変な噂流されて…」
「私はいいの!私は健ちゃんが笑って…過ごせればそれで…満足だから…」

それを聞いて俺のやる事が決まった。瀬川の願いを叶える。

「そっか…分かった。じゃあ俺がその願い叶えてやる。」
「え?何で?」
「それは…泣いてる子がいたら、迷わず助けろって教えられたからだ。実は俺、周りには秘密にしてる事があってさ。」
「秘密?」
「あぁ。俺ハンターやってるんだよ。向こうの世界で。」
「そうなの⁈」
「そう。で俺にはハンターの先生がいてさ。その先生に教えられた。だから助ける。」
「私ハンターやってる人初めて見たよ。」
「まぁまだ駆け出しだけどさ。だから任せとけ。」
「うん…健ちゃんをお願い!」

とりあえず健斗を探しに行く前に、教室に行くとクラスの女子が3人いて、健斗と愛花の事を話していた。あれは、七瀬、香川、箕輪だな。またしても廊下で盗み聞きする羽目になってしまった。

「前々から2人の事気に食わなかったんだよねぇ。」
「まぁでも上手くいったんじゃない。」
「噂流して梶原に協力してもらって桐生はもう終わりでしょ。」
「瀬川も噂になってみんな避けてるし時間の問題だし、超完ぺきじゃん。」

ロクでもない奴がクラスにいるとはな。
丁度いい所で謎も解けたし、コイツらはお仕置きが必要だな。
教室に入り女子達の前に行くと少し驚いていた。

「何どしたの?」
「全部…お前らのせいだったのか。」 
「は?何が?」
「何がじゃねーよ…桐生と瀬川妬んで陰湿な事しやがって…」
「聞いてたの?盗み聞きとか芦屋も十分陰湿じゃん。」
「あははは!」

笑ってる女子達をよそ目に、自分のバックを取りその中からある物を取り出した。

「これが何だか分かるか?」

3人の座っている机に綺麗な鉱石を置いた。

「何これ?超キレイじゃん。」
「向こうの世界で取ってきたんだ。モンスター殺して…」
「え?あ 芦屋って向こうに行ってんの?」

それはモンスターを倒して剥ぎ取った鉱石でこっちに偶々持ち帰って来たものだった。

「そうだ。んでお前らにはお仕置きが必要だと思ってさ。」
「い いや何言ってんの…」
「だから命の危険でも感じれば、自分達がやった事がどんだけつまんねー事か分かるだろ。」

3人共かなり焦り始めてる。この時はまだ向こうの世界の事はあまり情報が無く、向こうはとにかく危険な所で死者も沢山出ているってくらいしか、一般の人には知られていなかった。

「何する気⁈」

自分は教室のドアに手を当てた。

「今からこのドアを向こうの世界に繋げるんだよ。んでお前らを放り込む。」
「ち ちょっと待ってよ⁈そんな事したらアタシら死んじゃうでしょ!」
「かもな。でもしょうがないだろ…お前らがやった事のお仕置きなんだから。自業自得だよなぁ?」

我ながら凄い演技だった。3人共泣きながら必死で謝っていた。無論教室のドアを繋げる事なんて出来ないし、向こうの世界に放り込むなんて出来るわけない。
情報が無いおかげで十分な脅しになった。まぁ自分がかなりヤバい奴になったかもしれないけど。

学校を出て、健斗がよくいるゲーセンに向かった。やっぱりいたか。

「おい、桐生。」
「ん?なんだ芦屋か。」
「話があるから来い。お前と瀬川の事だ。」
「愛花?」

愛花の名前を出せば大人しく話が出来ると思ってた。

「桐生、お前は何でこんな所にいるんだ?」
「はぁ?なんだそりゃ?俺がどこにいたっていいだろ。」
「はぁ…」

ため息をついて自分は健斗の腹を思いっきり殴った。

「ぐはっ⁈」

膝をつく健斗。

「お前…何すんだ!」
「何すんだじゃねーだろ!お前は今すぐ瀬川に謝りに行け ︎」
「何でそう…なんだよ!」 
「ぐっ ︎」

右頰に健斗のストレートが決まる。
俺は健斗の胸ぐら掴んだ。

「瀬川は泣いてたんだぞ ︎」
「は…どう…ゆう事だよ?」
「お前が喧嘩して退学になる所を、瀬川が先生に泣きながら必死で頭下げてたんだよ!退学にしないでくれってな!」
「なん…で愛花…」
「アイツは言ってた。お前が笑って過ごせるならそれで満足だって…瀬川は自分がクラスからハブられてるのに…お前の心配してんだぞ!」
「愛花が ︎何でだよ⁈」
「くだらない噂流されて瀬川まで標的になったんだよ。だけどお前の噂と瀬川の噂流した奴らは俺がシメといた。」
「お前が…何でそこまで…俺達別に仲良くねーだろ!」
「瀬川の願い叶えてやるって約束したからな。桐生が笑って過ごせるように。」

桐生はその場で崩れた。そして泣いた。

「芦屋…お前…愛花の為に…ゴメン…俺…」

俺は健斗に手を差し出した。

「そんな事はいいから、早く瀬川の所行ってこい。」
「…あぁ!」

健斗は俺の手を取り、ありがとうと言い残し愛花の元に向かった。
これで大丈夫だろ。今日は向こうに行けないな。

次の日、噂を流した3人と梶原は健斗と愛花に謝っていた。健斗は喧嘩の件もチャラになり学校に来ていた。

「芦屋、ちょっといいか?」

昼に健斗に呼ばれた。

「昨日はあの後愛花に謝りに行ったよ。」
「そうか。」
「俺野球出来なくなって、人生終わったって思ってたんだ。だけど今はスッキリしてるし、新しくやりたい事が出来たんだ。」
「そうなのか?」
「あぁ、愛花の家旅館やっててな。小さい時愛花の親父見ててカッコいいなって思ってたんだよ。だから俺愛花の旅館でバイトして一人前になる。」
「それってつまり、一人前になって瀬川の旅館継ぐって事か?」
「あ あぁ、だからその…一人前になったら愛花に告白しようと思うんだ。」
「なるほ~どな。ゆくゆくは若旦那って事か。いいじゃん。」

夢を失くしてもまた新しい夢を見つければ、人はまた前を向けるんだな。

「芦屋、本当にありがとな。」
「いいよ、全部丸く収まったなら。」
「なぁ芦屋…いや蓮、今度愛花と3人で飯食いに行かねーか?」

初めて健斗に蓮と呼ばれた瞬間だったけど、悪くは無いな。

「だったら今日行こーぜ、健斗。」
「ははは。乗りがいーね。んじゃ愛花誘いに行こうぜ!」

こうして3人で遊ぶようになった。後で聞いた事だけど、健斗が毎日学校に来てたのは、愛花が心配だったから。そして梶原を殴ったのも愛花の事を悪く言われたから。結局は健斗も愛花の為にやってたって事だな。

話を済ませてマリーを見ると号泣してた。え⁈そんなに泣く ︎

「な…んてい…い話だ…感動したぞ…」
「いやそんなに感動する?」
「何言ってるんだ!最高の友情じゃないか!」

丁度いいタイミングで愛花と健斗がやって来た。

「遅くなったなって何 ︎どしたマリー?」
「どうしたの?」

2人を見てまた泣き出したマリーは2人に抱きついた。

「愛花~!健斗~!私は2人の友達になれて本当に良かった…」
「急にどうしたの?マリー?」
「いや大変嬉しいけど、何コレ?」

きっとこの4人なら何やっても楽しめそうだな。

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