Door

ノベルバユーザー369032

Door5 休日 1

2019年5月 (土曜日)

朝10時頃に目覚めた。
休日はどうしても起きるのが遅くなってしまう。いつも9時に花音が起こしに来るが結局二度寝するのが日課である。

「おはよう。」

リビングのソファにはいつも通り、凛がゴロゴロしていた。

「おはよ。あねぇは部活行ったよ。」
「そっか。もう朝飯食ったのか?」
「あねぇと一緒に食べたよ。今日は昼から友達と遊び行ってくるからね。」
「あぁ。俺も昼からマリーと会うから一緒に出るよ。」
「おぉ今日はマーリンとデートっすか!
いいねぇ~青春じゃん!!」

朝からなんだコイツ。あとマーリンって何。突っ込み所満載っす。

「残念ながらそんなんじゃなくてバイト探しに行くだけだよ。マリーが仕事したいって言ってたからさ。」
「へぇそぉなんだ。マーリンも大分慣れてきたみたいだね。」
「あぁそうだな。」

マリーがこっちに来た時は、記憶も無く周りは全く知らない世界で、たった1人だったんだ。相当辛い思いをしただろうな…だからこそ全力で助けてやりたい。

昼になり登校でいつも落ち合う場所で会う予定になっていたので、向かうとすでにマリーは待っていた。

「わりぃ待たせたな。」
「私も今来たところだから大丈夫だ。」

アリスの時とは正反対だな。4~5分(おそらく)待たせただけで、グダグダと言われたのにやはりマリーは真面目だわ。

「そっか…ん?」
「どうした。何か変か?」

マリーの今日の服装は一段と大人びていて正直見惚れていた。
さすが校内1の美女と言いたくなる。

「あ いや、今日の服かなりいい感じだなと思って。」
「そ そうか。そう言ってもらえると嬉しいな。昨日愛花が放課後に服を選んでくれたんだ。デートなら気合い入れないと、と言ってな。デートではないと言ったんだが。」

愛花グッジョブだぞ。あとそんなにデート否定されるとちょっと悲しいぞ。

「まぁ愛花らしいな。とりあえずハンバーガー食べに行くか。」
「あぁそうしよう。」

家の近くにはショッピングモールがあって、買い物や遊びに行く時なんかは大体ここで済んでしまう。
なので恐らく愛花とマリーはここで服を買ったんだろう。
ハンバーガーチェーン店のワックもあるのだが昼時で休日ともなれば大混雑している。

「やっぱ混んでんなぁ。並ぶしかないか。」
「ハンバーガーはこんなに人気があるのか!」
「いや休日で昼時だと大体こんなもんだよ。」
「そうなのか。確かに高校の食堂もいつも混んでいるな。」

いやそれは少し違う気がするぞ。
にしても狭い!店舗が狭いせいで密着するしかないのだが、流石に変に意識してしまう。それを感じているのかマリーは顔が赤くなっていた。だけどどことなく嬉しそうだ。

「ちょっと狭いな。窮屈じゃないか?」
「だ 大丈夫だ。ハンバーガーを食べる為だ。これしきの困難なんてことはない。」
「そうか。」

数十分並んだところでようやく注文して飯にありつけた。

「やっと落ち着けるな。んじゃいただきます。」
「いただきます。んん これは!美味しい!なんと言うんだこれは?!」
「照り焼きバーガーだ。自分が1番好きなやつだよ。」
「これは凄いな!これが人が作っているとは信じられん。見事だ。」

こんなに喜んでもらえるなら連れて来た甲斐があるな。
2人でたわいもない話をしていると、誰かが自分達の席に近づいて来た。

「やっぱり蓮ちゃんだぁ。珍しいねココに来るの。しかもこんなに可愛い子と一緒なんて。」
「か 可愛い!?」
「やっぱ来たか。今休憩中なのか?」
「そぉゆぅこと。蓮ちゃんはお母さんに彼女紹介しに来てくれたの?」
「お母さん⁈蓮の母上なのか!しかも彼女だなんて、わ 私を彼女として紹介する為に来たのか!?」

いちいち訂正するのも面倒くさい。

「母さんなのは確かだよ、ここで働いてるんだ。母さん、マリーは彼女じゃないぞ。マリーのバイト探しする前に腹ごしらえで、ハンバーガー食べてみたいって言ったからココにしたんだよ。な、マリー。」
「そうだ…そうだったな。」
「なぁんだぁ。こんなに可愛い子が彼女ならお母さん大満足なんだけどねぇ。」

母さん、マリーが爆発しそうだぞ。

「紹介が遅れちゃったけど蓮ちゃんのお母さんの芦屋幸あしやさちです。さっちゃんって呼んでね。」

なんでこんななんだろう。恥ずかしいわぁ。

「は 初めまして、マリー・パンドラと言います。」
「マリーちゃんかぁ。ホントに可愛いなぁ。」

そう言いながら、マリーを抱きしめ頭をなでなでしているうちの母親。

「い いや、あのちょっと。」
「そういえばバイト探してるんだっけ?」
「あぁ今から探すとこだよ。」
「ならウチでバイトすればいいんじゃない?」
「ん?」
「あ あのすいません。そろそろ離してもらえないでしょうか?」
「あら、ゴメンね。ウチ今バイト募集してるから丁度いいじゃん。」
「確かにそれいいかもな。マリーが良ければだけど、どうだ?」
「そうだな。蓮の母上と一緒なら安心だ。是非、お願いします母上。」
「まっかせといて!んじゃ早速制服のサイズ合わせしちゃおっか。」

いや面接とかいいの?色々すっ飛ばしてる気もするが、まぁいっか。

「あの制服か、私に似合うのだろうか?」

ワックの制服は上着が赤、スカートが黒でバイザーを被る感じである。

「絶対似合うよ!マリーちゃんはスタイルもいいし可愛くなるよ~。」

正直自分もマリーのワック姿が見たかったけど、店に入る訳にはいかない。

「自分はここで待ってるよ。流石に店の中入るのはまずいからさ。」
「あぁ、ではちょっと行ってくる。」

そして15分程待ってるとマリーが戻って来たのだが、思わず二度見した。制服姿で来たからだ。

「マリー何故、制服姿なんだ?」
「母上が一度蓮に見てもらった方がいいと言ったのでな。少し恥ずかしいがどうだ、似合っているか?」

母上やるな ︎

「凄く似合ってるぞ。バッチリじゃないか。」
「そうか。でもやっぱり恥ずかしいな。」
「大丈夫だよ。すぐに慣れるから。」

母さんも戻って来た。

「母さんマリーの事よろしく頼むよ。」
「うん。任せといて!」
「母上、よろしくお願いします。」

その後母さんと別れた自分達は、モールの中をうろついていた。

「にしてもこんなに早くバイト見つかるとは思わなかったよ。」
「そうだな。やる事が無くなってしまった。」
「久々にゲーセン行くか?」
「あぁ私は構わないぞ。」

ゲーセンに着き適当に中を見ていると、マリーがもの凄いキラキラした目でUFOキャッチャーを見ていた。

「……」
「マリー?」

商品を見てみると、キツネがモチーフの可愛らしいヌイグルミだった。
たとえ異世界の人であっても、どこにでもいる普通の女の子なんだな。

「よし!待ってろ。」

あんだけキラキラした目されたら取るしかないでしょ。
とりあえず500円投入。

「れ 蓮、私は欲しいなんて言ってないぞ!?」
「いや、自分が欲しいからやるんだよ。」
「そ そうか…ならいいんだが。」

それから格闘すること10分くらい、結局3000円つぎ込む。なんてこった…自分がこんなにUFOキャッチャー下手だとは思わなかった…

「蓮、最後の方はかなりヤケクソになってたな。」
「あぁ…あそこまでいくと意地でも取らないと気が済まないからな。というわけで自分からの就職祝いだ。」

ヌイグルミをマリーに渡す。
マリーはヌイグルミを見ながら固まっていた。

「え、でもこれは蓮が欲しかったんじゃないのか?」
「そうだよ。マリーにあげるために欲しかったんだ。」

また顔が赤くなってる。

「あ ありがとう…蓮。」
 
恥ずかしそうだけど、最高の笑顔をもらえたのは良かったな。 
その後も、どこに行くでもなくフラフラしながらも、マリーはずっと上機嫌だった。

「さてとそろそろ花音がうるさくなりそうだから帰るか。」
「そんなに花音は時間に厳しいのか?では早く帰った方がいいだろう。私も家に帰るか。」
「何言ってんだよ。マリーもウチで飯食ってくの。」
「それは決定事項なのか?!」
「当たり前だろ。飯1人で食うよりみんなで食った方が楽しいだろ?」
「当たり前か…そうだな。蓮には色々と頼ってばかりだな。」

アリスにも似たような事言われたな。
自分の目標に少しずつ、近づいてるってことかな。

「気にするな。マリーの為になるならさ。」

何気なく言った後マリーは少し離れながら小さな声で、

「私はそういう事をさらっと言う蓮が大好きだぞ…」
「ん?何か言った?」
「いや何でもない。それより今日の花音のご飯は何だろうな?」

結局何かは聞けず家に帰った。

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