冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~
テンション上がる俺は
今日の昴達の予定は、
東真の歌収録と、
簡単なMVの打ち合わせをすることだ。
その為に今日は朝から
岡山駅に集まり、
東真の案内で目的地に向かっている。
東真曰く、着いてからのお楽しみ、
ということで東真以外の三人は
今どこに向かっているのか
よく分かっていない。
「やっぱ、朝でも人多いな」
「一応、岡山の中心だからね~」
特にすることもないので、
南関と西難は
そんなくだらないことを話していた。
東真はというと、
鼻歌を歌いながら
確かな足取りで先頭を歩く。
そして、昴は人混みに
うんざりしながらも
三人の後ろを付いていく。
すると、歩き始めて約五分。
東真は立派な建物の前で
立ち止まり、振り返る。
「ここだよ」
駅から歩いてから少々。
なので、ここはまだ岡山の中心。
大きなショッピングモールがあり、
カラオケがあり、ホテルもある。
何の会社かも分からないが、
綺麗なビルも並んでいる。
その中でも一際目立つ
建物の前に東真は立っていた。
「マジか」
「ここって…」
西難と南関が驚くのも無理はない。
東真の背にある大きな建物。
それは…
「まさか…」
ガラス張りの側面には、
絶賛放送中のドラマの広告が貼られ、
映画の宣伝広告も
デカデカと吊り下げてある。
ガラスに太陽の光が反射し、
その存在感をアピールするようだ。
誰が見ても分かる。
――テレビ局である。
「ついてきて」
昴達が呆気に取られていると、
現実に引き戻すように
東真が声をかける。
そしてそのまま
自動ドアを潜り抜けた。
慌てて昴達もドアを潜ると、
東真は受付らしき所で
綺麗なお姉さんと話をしている。
「はい、そうです。
東真星奈と三人、はい。
はい、ありがとうございます」
昴達が追いつくと、
丁度話を終えたようで、
東真は再び振り返る。
今度は、何も言わずに
歯を見せて笑った。
エレベーターで3階に上がり、
左右にいくつもの部屋がある
長い廊下を進む。
奥から2番目の部屋のプレートには、
『AZUMAスタジオ』と書かれていた。
「さぁさぁ、入って」
東真が持っていた鍵で扉を開け、
昴達に入るよう促す。
昴達は目を見合わせ、
ゴクリと息を喉に押し込む。
先陣を切ったのは、昴だった。
「おぉ…」
感動のあまり、昴は口から出る
声にならない声を殺せなかった。
壁と天井、床にまで張り巡らされた
灰色の防音材。
どの方向からでも
光を当てられるように
あちこちに埋め込まれた照明。
ドラムやギターなどの楽器一式。
そして、中央にポツンと置かれた
1本のマイクが、それ単体ながら
異様な存在感を放っていた。
「すげぇ」
その光景に、南関も声を洩らす。
鋭い目にキラキラと興奮を宿し、
部屋の様子を隅々まで観察している。
「わぁー!ねぇねぇ、昴!
すごいよこれ!」
西難もそれに倣えで、
何かを指差しては、
キャー!と声を挙げている。
昴も昴で、心の底から湧き出る
男心を抑えることが出来ず、
これ以上ないワクワクを感じていた。
「どう?すごいでしょ?」
テンション上がりまくりの
三人を暫しの間堪能して、
東真はそう言った。
「ここはね、うちのパパが
プライドとお金をかけて創った、
私の、『東雲小町』の為の
スタジオなんだよ」
そうして、東真は胸を張る。
確かに、テレビ局の中に
それ関係以外のスタジオを創るなど、
普通は出来ることではない。
それが個人用ならなおさらだ。
「さっ、物珍しいのも分かるけど
早いとこ終わらせて
遊びにでも行きましょ。
…私、普段は一人で出歩くの
禁止されてるから、
今日くらいは遊んでみたいんだ」
なるほど。
東真は『東雲小町』で、
最近話題の芸能人。
昴達も芸能人には違いないが、
顔を晒している訳ではないので
街に出ても話しかけられる事もない。
そういえば、ここに来るまでの間、
東真は麦わら帽子を目深く被り、
まるで顔を隠すように俯いていた。
それだけ、警戒しなければ
ならないと考えると、
昴は顔出してなくて良かったと、
安堵するのであった。
「そうだな。折角朝から出てきたんだ。
さっさと終わらせて、どっか行こうぜ」
言葉尻が弱くなっていく東真を
元気づけるように、
昴は東真の意見に乗る。
あとの二人も賛成のようで、
どうすれば良いか東真に聞く。
隣りの部屋にモニター室があり、
そこで歌っている様子と
歌声が聞けるので、
そちらで待機してと言われた。
モニター室に移動しようと
昴達が部屋を出ると、
丁度一人の男がこちらに歩いて来た。
スーツをキリッと着こなし、
髪もワックスで固めた、
いかにも仕事出来そうな人だ。
「君達が星奈のお友達かい?」
東真の歌収録と、
簡単なMVの打ち合わせをすることだ。
その為に今日は朝から
岡山駅に集まり、
東真の案内で目的地に向かっている。
東真曰く、着いてからのお楽しみ、
ということで東真以外の三人は
今どこに向かっているのか
よく分かっていない。
「やっぱ、朝でも人多いな」
「一応、岡山の中心だからね~」
特にすることもないので、
南関と西難は
そんなくだらないことを話していた。
東真はというと、
鼻歌を歌いながら
確かな足取りで先頭を歩く。
そして、昴は人混みに
うんざりしながらも
三人の後ろを付いていく。
すると、歩き始めて約五分。
東真は立派な建物の前で
立ち止まり、振り返る。
「ここだよ」
駅から歩いてから少々。
なので、ここはまだ岡山の中心。
大きなショッピングモールがあり、
カラオケがあり、ホテルもある。
何の会社かも分からないが、
綺麗なビルも並んでいる。
その中でも一際目立つ
建物の前に東真は立っていた。
「マジか」
「ここって…」
西難と南関が驚くのも無理はない。
東真の背にある大きな建物。
それは…
「まさか…」
ガラス張りの側面には、
絶賛放送中のドラマの広告が貼られ、
映画の宣伝広告も
デカデカと吊り下げてある。
ガラスに太陽の光が反射し、
その存在感をアピールするようだ。
誰が見ても分かる。
――テレビ局である。
「ついてきて」
昴達が呆気に取られていると、
現実に引き戻すように
東真が声をかける。
そしてそのまま
自動ドアを潜り抜けた。
慌てて昴達もドアを潜ると、
東真は受付らしき所で
綺麗なお姉さんと話をしている。
「はい、そうです。
東真星奈と三人、はい。
はい、ありがとうございます」
昴達が追いつくと、
丁度話を終えたようで、
東真は再び振り返る。
今度は、何も言わずに
歯を見せて笑った。
エレベーターで3階に上がり、
左右にいくつもの部屋がある
長い廊下を進む。
奥から2番目の部屋のプレートには、
『AZUMAスタジオ』と書かれていた。
「さぁさぁ、入って」
東真が持っていた鍵で扉を開け、
昴達に入るよう促す。
昴達は目を見合わせ、
ゴクリと息を喉に押し込む。
先陣を切ったのは、昴だった。
「おぉ…」
感動のあまり、昴は口から出る
声にならない声を殺せなかった。
壁と天井、床にまで張り巡らされた
灰色の防音材。
どの方向からでも
光を当てられるように
あちこちに埋め込まれた照明。
ドラムやギターなどの楽器一式。
そして、中央にポツンと置かれた
1本のマイクが、それ単体ながら
異様な存在感を放っていた。
「すげぇ」
その光景に、南関も声を洩らす。
鋭い目にキラキラと興奮を宿し、
部屋の様子を隅々まで観察している。
「わぁー!ねぇねぇ、昴!
すごいよこれ!」
西難もそれに倣えで、
何かを指差しては、
キャー!と声を挙げている。
昴も昴で、心の底から湧き出る
男心を抑えることが出来ず、
これ以上ないワクワクを感じていた。
「どう?すごいでしょ?」
テンション上がりまくりの
三人を暫しの間堪能して、
東真はそう言った。
「ここはね、うちのパパが
プライドとお金をかけて創った、
私の、『東雲小町』の為の
スタジオなんだよ」
そうして、東真は胸を張る。
確かに、テレビ局の中に
それ関係以外のスタジオを創るなど、
普通は出来ることではない。
それが個人用ならなおさらだ。
「さっ、物珍しいのも分かるけど
早いとこ終わらせて
遊びにでも行きましょ。
…私、普段は一人で出歩くの
禁止されてるから、
今日くらいは遊んでみたいんだ」
なるほど。
東真は『東雲小町』で、
最近話題の芸能人。
昴達も芸能人には違いないが、
顔を晒している訳ではないので
街に出ても話しかけられる事もない。
そういえば、ここに来るまでの間、
東真は麦わら帽子を目深く被り、
まるで顔を隠すように俯いていた。
それだけ、警戒しなければ
ならないと考えると、
昴は顔出してなくて良かったと、
安堵するのであった。
「そうだな。折角朝から出てきたんだ。
さっさと終わらせて、どっか行こうぜ」
言葉尻が弱くなっていく東真を
元気づけるように、
昴は東真の意見に乗る。
あとの二人も賛成のようで、
どうすれば良いか東真に聞く。
隣りの部屋にモニター室があり、
そこで歌っている様子と
歌声が聞けるので、
そちらで待機してと言われた。
モニター室に移動しようと
昴達が部屋を出ると、
丁度一人の男がこちらに歩いて来た。
スーツをキリッと着こなし、
髪もワックスで固めた、
いかにも仕事出来そうな人だ。
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