冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

出会った俺は

「―こうやってね、
あまり多くを語らずに
ヒントだけ散りばめるんだ。
そうすると少ない文字数で
物語が展開できる」

昴と朱空が出会って
半年程が過ぎた二月のある日。
昴は朱空に呼ばれて
朱空の家に来ていた。
学校のある日は学校近くの
図書館に行くのだが、
今日は土曜日で、
休みの日は朱空の家か
昴の家で作業をしている。

「でもヒントが少な過ぎると
何も伝わらないから
そこは要注意だね」

六畳半の空間には
勉強机とシングルベッド、
本がビッシリと入った本棚、
そして真ん中に小さな
透明のテーブルがある。
そのテーブルに紙を広げて、
昴は朱空に作詞のことを
教わりながら、
少しずつ文章に
深みを出していた。

「むぅ。何度やっても
そこの線引きが難しいな」

しかし、昴は苦戦していた。
六畳半の朱空の部屋に
昴の悔し気な声が響く。
昴は息を吐きながら
床に寝転がった。

「まぁ小説と作詞じゃ
全く違うから仕方ないね」

朱空という通り、
小説を書くのと
作詞をするのとでは勝手が違う。
小説は細かい描写を
長々とすればいいが、
作詞は短い文字の中で
物語を完結させなけばならない。

「だが、小説と作詞には
共通点もあるんだよなぁ」

「へぇ?何それ?」

昴の言葉に朱空は
その真意に迫る。
昴は体を起こし、
朱空の問いに答える。

「どちらも重要なのは
想像力だってことだ。
いかに文章力があって、
表現技法を知ってても、
一つの物語を生むんだから
その物語を思い付かないと
どうにもならないからな」

「なるほどねー」

ピンポーン…

昴の説明に朱空が
相槌をうったその直後、
インターホンが鳴った。
今は朱空の両親は不在なので、
朱空が玄関へ向かう。

「おっ。来たね」

何やら期待に声を弾ませ、
玄関へスリッパを鳴らす。
知らない間に
出前でも頼んだのかと
昴は思ったが、
どうやら違うようだ。

「さぁ皆さんお待ちかね、
あの桝北昴君です!」

朱空が高らかな声をあげ、
後ろから二人の男女が現れた。
男はスラッとした体格で
背も170㌢㍍はありそう。
黒縁メガネをかけているが
その中は鋭い眼光が
こちらを向いていた。

「昴、このイカつい顔が
南関なんせき和斗かずと君だよ」

メガネの方は南関和斗というのか。
眼つきもそうだが、かなりイカつい。
まさかとは思うが朱空のやつ、
薬とかに手を出したのか?
南関は朱空に紹介されると
昴に少し頭を下げた。
昴も吊られて頭を下げる。

「で、こっちの可愛い子が
西難せいなん愛花あいかちゃん」

西難愛花か、うん。
確かに可愛いな。
大きなタレ目は
光を放つが如く輝いており、
整った白い歯に、
小さな鼻がちょこんと
乗っかっていた。
綺麗な明るい茶色に
染めた髪を右側に束ねて
サイドテールにしている。
顔も可愛いが昴が
眼を引かれたのは
彼女の服装であった。

「あのっ、宜しくお願いしますっ」

明るい黄色を基調とした
パーカーにはデカデカと
赤い字で『絵心』と、
更に白いダボッとした長ズボンには
様々な色で『可愛い』だの
『綺麗』だのと書かれていた。

「あぁ、こちらこそ宜しく」

その可愛い顔を耳まで
真っ赤にした西難が
お下げと一緒にお辞儀したので
昴も西難に頭を下げる。

「よし!じゃあ
自己紹介に移ろう!」

ってな訳で、
四人で小さなテーブルを囲む。
昴はドアから最も遠い上座に、
その右に朱空が、
左には南関が、
そして向かいに西難が座る。

「じゃあここは僕からね。
…コホン、朱空楽です。
峰城みねしろ中の二年で、
『ロッソル』として
パソコンで創った曲を
配信しています」

「えと…それじゃあ次は私が。
私は西難愛花で、
中学は長船おさふね中です。
一応イラストレーターを
やらせてもらってます。
ペンネームは『西方にしかたオリオン』です」

「次は俺だな。南関和斗。
操山そうざん中の二年で
詩に曲をつける仕事をしてる。
あと、『南獄なんごく霧幻むげん
名前はそれなりに通ってる」

「最後は俺か。
…桝北昴で、朱空と同じ
峰城中の二年だ。
…で、小説家をやってる」

朱空から逆時計回りに
自己紹介をする。
それぞれは名前、
通っている中学校、学年、
そして何をやっているか、
それらをする際の
仮の名前を紹介した。
朱空は手馴れた様子で、
西難はまだ恥ずかしそうに、
南関は無愛想に、
そして昴はというと、
めっちゃくちゃ西難と南関に
凝視されて若干顔が
ひきつっていた。

「あのっ桝北さんっ。
変なこと聞いていいですか?」

昴も自己紹介を終え、
束の間も空けずに
西難が手を挙げた。

「変なこと?」

変なことって一体何だ?
まぁ初対面だから
変でなくても
そういう問い方をしても
おかしくはないか。
というよりその上目遣いやめろ。
うっかり惚れそうになる。

「はいっ。えぇとそこの
和斗君も同じことが
気になってるんですけど…」

というと西難は
今度は南関に目線を向けた。
名前を呼ばれた南関は
先程までとは一転。
背筋を伸ばして
黙って昴を見ていた。

「よく分からんが、
気になることがあるなら
別に聞いてくれて構わない」

昴がそう言うと、
西難と南関は互いに
顔を見合わせて
ゴクリと唾を呑みこんだ。
そして思い切ったように
西難は昴に聞いた。

「さっき小説家だって
言ってましたけど、
桝北さんはあの有名な
『北道素晴』だって本当ですか?」

俺はまたこれかと
思わない訳がなかった。



━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。


皆さん好きな髪型は何ですか?
自分がその髪型にしたいって
いうのもありですけど、
異性にあの髪型にして欲しいって
何かありますか?

私はショートがいいですね。
それもパーマとか一切なしの
サラサラストレートがいいです。


では、私が性癖を
晒したところで、
アディオス!

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