冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

共闘する俺は

「…分かった」

「え?」

「いいだろう。
弱みを握られたようで
すこぶる癪だが、
『北道素晴』の再起動のために
お前の話に乗ってやる」

昴は朱空に
右手を差し出した。
朱空はその手と桝北の顔を
交互に確認してから、
その右手を両手で握った。



それからというもの、
二人は放課後に学校近くの
図書館に寄るようになった。
大体はお互いの作品に
ついての話をしていたが、
時には雑談、時には勉強、
そして、なぜ小説家になったのか、
いつ曲を創るようになったのか、等
お互いにかなり踏み込んだ
話をすることもあった。
良い機会だ。
ここで桝北ますきたすばるの話と
朱空しゅそらがくの話をしよう。



昴達は里親に貰われたはいいが
母親しかおらず、
その人はお世話にも
いい親とは言えなかった。
妹の葉月は転校後すぐは
クラスに馴染めなかったようだが、
周りがとてもいい子達で
徐々に葉月は
明るさを取り戻していった。
しかし、父の影響もあってか
昴以外の男には
未だ苦手意識がある。
昴本人はというと
転校当初こそ物珍しさで
色々絡まれたものの、
昴のここに来た経緯を聞くと
遠慮してあまり昴に
近寄らなかった。
小説を読むようになったのは
この頃で、本を持って帰って
家で読めば帰りが
遅くなることもなく、
家にいることができる。
そして、週に十冊以上の本を
読む生活を送っていたある時、
昴はふと思った。
今の自分の置かれている状況を
物語にしたら、どうなるのか。
何も小説家になって
有名になろうだなんて
これっぽっちも思ってない。
ただ、ペンを握り、
ノートを広げて
一心に書き続けた。
制作期間は約二ヶ月。
読者第一号は妹の葉月。
葉月は泣きながら
昴の書いた小説を読んだ。
そして読み終えた後、
これを発表したらどうと、
昴に提案した。
初めは渋っていた昴だったが
葉月の強い後押しにより、
その作品を小説の
コンクールに応募した。
それがなんと優秀賞を獲得し、
昴は晴れて小説家デビューした。
それから白城はくじょう文庫という
事務所からオファーを受け、
その作品は書籍化された。
これが『北道きたみち素晴すばる』としての
最初の作品となり、
かなりの売り上げを誇った。
その後昴は里親を離れても
葉月と生活できるようにと思い、
小説で稼ぐことを決めた。
がしかし、小説家は
そう甘い世界ではなく、
自分が何の為に
小説を書いているのか、
自分は何をしているのか、
精神的に悩むこともあった。
その度に事務所の社長や葉月に
励まされ、ヒット小説も
いくつか書き下ろした。
そして、小説を初めて以来
一番のスランプに陥った時に
出会ったのが朱空だったのである。




朱空しゅそらがくは産まれも育ちも
岡山県の純岡山県民。
両親はどちらも日本人なのに
産まれた時から
赤みがかった髪をしていた。
それが原因で朱空は
小学生の頃から
イジメを受けていて、
自分の存在価値を
具体的にするために
勉強ばかりしていた。
学校ではイジメに遭い、
家では机とにらめっこ。
そんなつまらない毎日を
送っていた朱空だったが、
中学一年生の時、
ある日のニュースが
引っかかった。
それは、ここ数年で
ボーカロイドの曲が
物凄く人気だというのだ。
その番組に出ていた
専門家が分析するには、
ボーカロイドはテレビに
映るアーティストと違い、
自らがテレビに出なくとも
音楽を広められるので、
精神的に余裕のない人達が
自分に共感してもらいたいという
自己満足で出来ることが
可能だからではないかと。
曲さえ良ければ
誰でも共感を買えるからだと、
そう言っていた。
朱空はこの惨めな思いを、
赤髪だから変だと
罵られる日々の屈辱を、
誰かに訴えたかった。
朱空はその日に両親に
パソコンを催促し、
二日後に買ってもらった。
もちろんパソコンだけでは
どうにも出来ないので
曲を創る為のソフトは
自分のお小遣いで買った。
それからというもの、
朱空は毎日の勉強で得た
国語力を駆使して
自分の思いを曲にした。
といっても作詞をしただけで、
作詞作曲の作曲の部分は
ネットで知り合った
南獄霧幻なんごくむげん』という人に
手伝ってもらったのだが。
投稿する際の名前は
本名では意味がないので
赤を意味する「ロッソ」と
空を意味する「チェール」を
合わせた『ロッソル』にした。
『ロッソル』として
初めて投稿した曲の
タイトルは『赤い慟哭』。
それは朱空本人の心の叫びを
込めた曲だった。
曲を創るのが初めてだったので
分からないことしかなかったが、
自分の想いを伝えるために
半年もの時を費やした。
そして動画サイトに挙げ、
一ヶ月後には再生回数が
一千万回を突破した。
朱空自身こんなにも曲が
広まるとは思っておらず
困惑もしたが、
多くの人が朱空の曲に
共感したことを
身に染みて感じた。
それからというもの、
朱空はボーカロイドの曲を
たくさん創ることとなり、
ボカロ界では有名人になった。
しかしある時から行き詰まり、
どうすべきか悩んでいた。
そんな時に出会ったのが
『北道素晴』であった。
彼の発想力は凄い。
あの凄まじい発想力を
借りることができれば、
ボカロPとして更なる
飛躍を目指すことができる。
そうして思わぬ近所に
彼がいたので
声をかけたのであった。


━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。



内容は展開してないけど
次回からもっと発展させます。
新キャラも二人出ます。


まぁそれはいいとして。

皆さんはイジメの経験ありますか?
どうでもいいですけど、
私はあります。

私は小学校から陰キャで、
友達いませんでした。
だからか知らないですけど
物を隠されたり、
汚されたりしてました。

ああいうのって本当に嫌です。

この作品を読んで下さっている
皆さんにイジメなんて
起こりませんように祈ります。



では、この辺で
アディオス!

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