冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~
正体がバレた俺は
「…なん…で……?」
朱空の発言に、
昴は困惑を隠せなかった。
目を見開き、
わなわなと震え、
明らかなキョドり方を
橋の上で晒していた。
「なんで、どうして俺が
『北道素晴』だと、
なんで知ってるんだ!」
日本語もあやふやにしながら、
昴は声を荒げて
朱空に問いかける。
なぜここまで自分が
冷静を欠いているのか、
そんなことすらも
昴の頭の中になかった。
昴は下手な答えをすると
殺さんと言わんばかりの
気迫と目つきで
朱空を睨みつける。
「…やっぱり。
僕の見立ては
間違ってなかったんだ」
「なに?」
震えは止まり、
朱空の先の言葉に
図らずも昴は
淡い期待を抱いた。
そんな昴に対して
朱空は自分の勘が
正しかったことに
ある種の達成感を抱いた。
「僕の好きな小説家の話は
さっき話したから分かるよね」
朱空の好きな小説家?
確かにさっき朱空が
一人で喋っていた内容に
そんな話があったな。
「ああ」
ほとんど右から左に
受け流していたので
鮮明には覚えていない。
しかし、聞き覚えがあったから
分かった風に答えた。
「その小説家がね、
『北道素晴』なんだ。
あの登場人物達の
感情の変化の様子を
本当に彼らが生きているように
描いている『北道素晴』は
僕の中の英雄なんだ」
そこまでの朱空の話を
しっかりと噛み締めて、
初めて昴は
自分の理解者の存在が
こんなにも嬉しいのかと
思わざるを得なかった。
登場人物達の感情の起伏、
それは昴が最も
自分の作品でこだわりを
持っている部分だった。
それを理解している者が
いると知っただけで
昴は嬉しかった。
ただ、冷静に考えて
英雄は言い過ぎだと思うが。
「それでね、国語の時間に
皆の『山月記』を聞いてて
その中の一つが
引っかかったんだ。
この特徴ある感情の
波打つような描写は
どこかで見たような…」
朱空は一度間を空けた。
「すぐに分かったよ。
この書き方は『北道素晴』だ。
忘れたりしない、
僕を救ってくれた人の
文章の特徴なんて、
文字を見なくても分かる」
夕陽が二人の頬を
赤く染めていく。
二つの影が延々と伸び、
背の低い朱空の影の方が
長く濃く見えた。
「桝北君、いや、
北道素晴さん。
最近スランプ気味ですよね」
ああ、その通りだ。
俺はここ最近書いた小説に
自分で納得していない。
「そうだが、何か?」
感情の起伏の文章は
前と変わらないのだが、
なんというか、全体的に
文章が浅い感じがして、
もっと奥深く、読者が
その奥に引き込まれるような
そんな文章を書きたい。
しかし、いくら努力しても
辿り着けないのだ。
「それを僕に手伝わせて
頂けないでしょうか?」
「え?」
朱空は何を言っているのか。
俺の辿り着けない世界に
朱空が連れていってくれると、
一体こいつのどこに
そんな力があるというのか。
「北道素晴さんの
スランプの原因って
深みが出ないからですよね。
…僕は音楽を創っています。
作詞をしています。
音楽は、少ない文字数で
いかに想いを伝えるかに
全てがかかっています。
だから、曲を創る度に
深みを追求しています。
…僕はあなたに
協力して欲しい。
僕と一緒に音楽を
創って欲しい。
でもそれは僕だけの
ためではありません。
僕に協力するメリットが
ないと仰いましたが、
僕は文章に深みを出す
コツをお教えします。
長々と話しましたが、
もう一度言います。
僕と一緒に、
音楽を創って下さい」
━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき
どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。
すでに登場している朱空ですが、
近いうちに朱空についても
詳しく書きたいと
思っております。
そういえば、
アディオスって忘れてたわ笑
朱空の発言に、
昴は困惑を隠せなかった。
目を見開き、
わなわなと震え、
明らかなキョドり方を
橋の上で晒していた。
「なんで、どうして俺が
『北道素晴』だと、
なんで知ってるんだ!」
日本語もあやふやにしながら、
昴は声を荒げて
朱空に問いかける。
なぜここまで自分が
冷静を欠いているのか、
そんなことすらも
昴の頭の中になかった。
昴は下手な答えをすると
殺さんと言わんばかりの
気迫と目つきで
朱空を睨みつける。
「…やっぱり。
僕の見立ては
間違ってなかったんだ」
「なに?」
震えは止まり、
朱空の先の言葉に
図らずも昴は
淡い期待を抱いた。
そんな昴に対して
朱空は自分の勘が
正しかったことに
ある種の達成感を抱いた。
「僕の好きな小説家の話は
さっき話したから分かるよね」
朱空の好きな小説家?
確かにさっき朱空が
一人で喋っていた内容に
そんな話があったな。
「ああ」
ほとんど右から左に
受け流していたので
鮮明には覚えていない。
しかし、聞き覚えがあったから
分かった風に答えた。
「その小説家がね、
『北道素晴』なんだ。
あの登場人物達の
感情の変化の様子を
本当に彼らが生きているように
描いている『北道素晴』は
僕の中の英雄なんだ」
そこまでの朱空の話を
しっかりと噛み締めて、
初めて昴は
自分の理解者の存在が
こんなにも嬉しいのかと
思わざるを得なかった。
登場人物達の感情の起伏、
それは昴が最も
自分の作品でこだわりを
持っている部分だった。
それを理解している者が
いると知っただけで
昴は嬉しかった。
ただ、冷静に考えて
英雄は言い過ぎだと思うが。
「それでね、国語の時間に
皆の『山月記』を聞いてて
その中の一つが
引っかかったんだ。
この特徴ある感情の
波打つような描写は
どこかで見たような…」
朱空は一度間を空けた。
「すぐに分かったよ。
この書き方は『北道素晴』だ。
忘れたりしない、
僕を救ってくれた人の
文章の特徴なんて、
文字を見なくても分かる」
夕陽が二人の頬を
赤く染めていく。
二つの影が延々と伸び、
背の低い朱空の影の方が
長く濃く見えた。
「桝北君、いや、
北道素晴さん。
最近スランプ気味ですよね」
ああ、その通りだ。
俺はここ最近書いた小説に
自分で納得していない。
「そうだが、何か?」
感情の起伏の文章は
前と変わらないのだが、
なんというか、全体的に
文章が浅い感じがして、
もっと奥深く、読者が
その奥に引き込まれるような
そんな文章を書きたい。
しかし、いくら努力しても
辿り着けないのだ。
「それを僕に手伝わせて
頂けないでしょうか?」
「え?」
朱空は何を言っているのか。
俺の辿り着けない世界に
朱空が連れていってくれると、
一体こいつのどこに
そんな力があるというのか。
「北道素晴さんの
スランプの原因って
深みが出ないからですよね。
…僕は音楽を創っています。
作詞をしています。
音楽は、少ない文字数で
いかに想いを伝えるかに
全てがかかっています。
だから、曲を創る度に
深みを追求しています。
…僕はあなたに
協力して欲しい。
僕と一緒に音楽を
創って欲しい。
でもそれは僕だけの
ためではありません。
僕に協力するメリットが
ないと仰いましたが、
僕は文章に深みを出す
コツをお教えします。
長々と話しましたが、
もう一度言います。
僕と一緒に、
音楽を創って下さい」
━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき
どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。
すでに登場している朱空ですが、
近いうちに朱空についても
詳しく書きたいと
思っております。
そういえば、
アディオスって忘れてたわ笑
「冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,083
-
723
-
-
3万
-
4.9万
-
-
426
-
725
-
-
1.2万
-
4.7万
-
-
5,119
-
2.5万
-
-
9,659
-
1.6万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
11
-
6
-
-
8,131
-
5.5万
-
-
9,329
-
2.3万
-
-
6,608
-
2.9万
-
-
951
-
1,489
-
-
179
-
151
-
-
59
-
27
-
-
20
-
1
-
-
597
-
1,135
-
-
297
-
1,187
-
-
182
-
924
-
-
2,445
-
6,674
-
-
6,183
-
3.1万
-
-
1.3万
-
2.2万
コメント