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冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

帰路で俺は

その日の放課後、
部活に入っていなかった俺は
学校が終わるとすぐに
帰り支度をしていた。
―友達もいなかったので
誰かと一緒に帰るなんて
その時から縁もゆかりも無い
ことだったことは
ささやかな自慢である。
教室がまだ騒がしい内に
俺は教室を出ていく。
今日は久しぶりに
家族以外の奴と
喋ったなぁなんて思いながら。
まだパラパラとしか人が
見当たらない時間帯に
校門へ向かうのが、
俺の放課後であった。

「待って!桝北君!」

俺が丁度校門に
さしかかった時、
後ろから俺の名前を呼ばれた。
声でなんとなく察したが、
一応振り返ると、
今日唯一俺に話しかけてきた
朱空が手を挙げながら
こちらに走ってきていた。

「はぁ、はぁ…」

朱空は俺に追いつくと
膝に両手を乗せて
肩で息をしていた。

「はぁ…早いんだね」

赤みがかった髪を
ボサボサにしながら
手を膝に乗せたまま、
顔だけを上げて
朱空は俺を見た。

「一緒に帰らない?」



俺の静かな放課後は
隣りの朱空によって壊され、
その自覚も無く朱空は
ほぼ一人で喋っている。
朱空の好きな小説家の話、
最近の音楽はどれも
思いが伝わってこない事、
全ての話の中に
学校でのイジメの話が
出てこなかったのが
俺は気が気でならなかった。

「それでね、僕から
桝北君にお願いなんだけど…」

急に朱空の声色が
真剣味を帯びてきたので
なんだと思ったが、
ここで友達になってくれと
言われたなら、
俺は残酷に突き放しただろう。
しかし、そうできなかった。

「僕と一緒に曲を、
作ってくれないかな?」

その一言で、俺達の物語の
歯車は同じ速度で
回りだすことになる。




いつも一人で歩く帰路、
しかし今日は隣りに
もう一つの足音があった。

「…なぜ俺なんだ?
国語できる奴なんて
他にもいるだろう。
仮に俺しかいないにしても
俺にメリットがない」

結局俺は朱空の
勢いを振り切れずにいた。
朱空は俺の文章力に
魅力を感じたと言うが、
国語なんて日本人なら
誰でもできるもの。
なぜ、俺なのか。

「何回聞かれても
僕の答えは同じだよ。
君の、桝北君の文章に
惚れてしまったんだよ」

先程からこのようなやり取りを
幾度となく繰り返している。
だが、何度聞いても
昴の疑問を払拭する答えは
朱空から出てこなかった。

「…ねぇ、桝北君。
本当に桝北君は自分の文章が
そこまでのレベルに
達してないと思ってるの?」

二人が歩道橋を上り、
朱空が一歩前に出て振り返る。
そのタイミングで
朱空は一気に核心へと
踏み込んだ。
朱空の質問に対し、
昴は眉を釣り上げた。

「…何が言いたい」

桝北も階段を上り、
朱空の前で立ち止まる。
たくさんの車が
歩道橋をくぐり抜け
その車も遥か彼方へ
走り去っていく中、
朱空は口を開いた。

「…『北道素晴』って
桝北君のことだよね?」

その言葉を聞いた瞬間、
強い風が昴の頬を
殴って通り過ぎた。


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あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。



放課後一人で帰るなんて
陰キャの私には当たり前です。
一緒に帰る友達いるとか
陽キャだけだと思ってます。

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