冷寧である俺は戦争に行かないし、救護手当てもしない。~完結済み~

青篝

陰キャである俺は

何やら喚いている散原を
置き去りに部室を出て、
甲高い悲鳴をあげる
ドアを閉める。
前を見ると、向こうから
同じバド部員の
2人がやってきた。

「早ぇな、桝北」

先に声をかけてきたのは、
細い目とスポーツ刈りの
印象的な男だ。

「もう風凪は行ったらしい。
お前らも早くこいよ」

俺に声をかけてきたのは
この男の名は左白さしらじん
いつでも眠そうな細い目に
スポーツ刈りが目立つ。
全体的な顔立ちとしては
決して悪くないのだが、
全くモテないらしい。
本人と周りはなぜ左白が
モテないのか不思議なようだが
俺はそれが左白の
性格にあると思っている。
というのも左白は
つるむ奴次第で羽目を
外し過ぎることがある。
よく授業中でもうるさいと
風の噂が俺の耳にも届くほどだ。
そして、何を隠そう
俺達バド部の部長を担っている。
思っていることは割と
はっきり言うのと、
どっちつかずであることが
部長に選出された理由だ。
その腕も確かであり、
部内ランキングは3位。
4位の散原とダブルスを組み
大会の団体戦でも
重要なポジションである。

「じゃあ、先行っといてや。
仁、俺らも早う行こうや」

左白と一緒に来た
この男は織田おだ将人まさひとだ。
学年一のイケメンと言われ、
その容姿は並外れ。
今まで付き合ってきた女の数は
数知れず、部活にまで
彼女を連れて来たことも。
それも1度や2度ではなく、
その度に俺は殺意を抱いた。
しかし、容姿そのものは
完璧以外の何でもなく、
目にかかりそうな前髪は
右に流し気味で、
いかにもモテそうな二重、
鼻筋もスッとしていて
歯並びも綺麗である。
見た目だけでなく、
バドミントンの実力もあり、
ランキングは2位に位置。
しかも、この部活の副部長。
.......本当に嫌になる。

「おお、そうやな。
じゃあ桝北、後でな」

2人はそう言って
部室に入っていった。
俺は2人に何も返さずに
体育館に向かった。


──────────


体育館に入ると、
すでに風凪が1人で
バドミントン用のポールを
立てている最中だった。

「おっ!桝北!
手伝ってくれ!」

俺を見るや否や、
すぐに風凪は手伝いを要請。
それも当然、バドミントンの
準備は1人でやるには
大変過ぎるのである。

「あいよ」

すぐにシューズを履き、
俺は風凪の救助にいく。
体育館の倉庫から
ポールを2本選び、
コートの場所に運んで
床の差し込み口に
ポールを入れる。
そのあとネットを持ってきて
ポールにかけ、張る。
これで1コート分が完成だ。
1人でするには
かなり大変なのだが、
この作業を風凪は
率先して行っている。

「よし、後は窓とカーテンか。
俺窓やるから、桝北カーテンな」

全部で6コート分を
立てた後、風凪は
そう、俺に言ってきた。
バドミントンはコートを
立てるだけでは
競技としてプレイできない。
バドミントン用のシャトルは
風に流されやすく、
少しの風が影響してしまう。
なので、バドミントンを
する上では必ず全ての
窓やドアを閉める必要がある。
しかし、体育館は
バドミントン部だけでなく、
他にバレー部とバスケ部が
日替わりで練習する。
今日は俺達とバスケ部が
体育館を半分ずつ
使っているので、
体育館内全ての窓を
閉める訳にはいかない。
だから今回は
バド部側の窓だけを閉める。

「了解」

体育館の左後ろにある
階段から2階のギャラリーへ。
そこから体育館の後方側の窓の
カーテンを閉めて回る。
バドミントンは
窓とドアだけ気にするのでは
全力を出すことが出来ない。
天井の灯りはいいとして、
2階の窓から太陽で
照らされると、90㌫の確率で
シャトルを見失ってしまう。
それを防ぐために、
カーテンを閉めて回るのだ。

「おお、早ぇ。
もう出来てるぞ」

俺が最後のカーテンを閉め、
1階に降りようとした時、
左白、織田、散原が
その他大勢の女子達とともに
体育館に入ってきた。

「流石灯歌だな」

彼らが体育館に
入ってきたその瞬間に、
俺の姿は彼らに見えていない。
それは、この準備全てを
風凪がしたと勘違いさせるに
十分な要素であった。

「さっさと始めようや」

俺の存在が完全否定され、
皆が並びだす。
我がバド部は練習の前に
1列に整列して挨拶をする。
もちろん、終わった後もだ。
整列せずに練習に
参加するのは嫌なので
俺は慌てて列に並んだ。

「陰キャおったん?」

相変わらずの口調で嘲笑いつつも、
散原が俺に話しかけてきた。
他の奴ら(風凪を除く)は
俺に気づいてすらないのに、
なぜこいつだけは
他と違うのだろうか。

「最低でもお前よりは早く来た」

俺の返しも、
さほど変わらない。
散原の嘲笑に対して、
少なくともお前より上だという
優越の塊返し。

「おーい、静かにー。
練習始めるぞー」

整列しても騒がしい奴達
(大部分が女子だが、
一部に俺と散原を含む)
を男子の部長の
左白が制する。
こういう時に声が
大きい左白が部長で
良かったと俺は思う。

「お願いしまーす!!」

まず、左白が大声で
挨拶をしたら、次は
その他大勢が挨拶をする。
これがバド部の挨拶だ。

「「「お願いします!」」」

挨拶をしたら、
それぞれが各コートに散る。
アップと基礎を兼ねた
フットワークをするためだ。
その後、部長が
今日の練習を指示する。


さぁ、これからが本番だ。
思わず手に汗を
握ってしまうような、
高校生達の青春をかけた
熱いスポーツ物語が、今始まる。

(大嘘)


━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき


どうも、夢八です。
読んで頂き、感謝します。


一応言っときますが、
この作品は
スポーツ小説ではありません。




それでは、アディオス!


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