オレの幼馴染が嫁候補!?
続々、モテ期は賛否両論なんですが…
京都駅から西へ少し行くと、緑地と鉄道博物館が隣接する梅小路公園が現れる。
広々としたこの公園は四季折々の花や樹木が植えられ、広い芝生の上では、家族連れやカップル、何かのサークル集団など、あらゆる人達が伸び伸びと過ごしている。
そして、ここにはペンギンやイルカをはじめ、1年中海の生き物達を眺める事ができる京都水族館があるのだ。
オレが中学生の頃、内陸部の都市である京都に、水族館が建つことに町中が沸き、完成と同時に多くの人が、ここを訪れあっという間に人気スポットの一つになった。
学校の中でも話題がちょくちょく出るようになると、その半年後にはクラスの半分近くがそこを訪れていた。
オレはというと、そんな所に行くのは、ミーハーでナヨナヨしたヤツだと勝手に思い込み、部活に明け暮れていた。
「……結局、オレもミーハーやったな。」
「ミーハーがどうかしたん?」
「……なんでもない。」
「悠ちゃん、水族館とか嫌いやった?」
美咲が不安げに見上げてくる。
「そんな事はないよってに、昔と今と価値観が変わった事を再認識しただけや。」
「???」
不安げなものから、今度はキョトンとした表情する美咲。
「ええから、来たかったんやろ?はよ入ろうや。」
そういうと、オレはスタスタとチケット売り場へ向かった。
中は思った以上に広く、順路を進む度に様々な海や川の生き物達が出迎えてくれる。
一見、何もいなさそうな水槽にも目を凝らせば擬態して見つからないようにしているヤツや、明らかに派手な出立ちで存在をアピールしているヤツなど様々だ。
珍しい生き物を目の前にして、オレも美咲も水槽が変わる度にマジマジと眺めていた。
特段、美咲が長く眺めていたのは、砂地から細い体を出したり引っ込めたりして、愛嬌のあるヤツがいる所だった。
「カワイイ…」
「そうか?細いし、美味しくなさそうやん?」
「もう、悠ちゃん!?メチャメチャカワイイやんこの子達。」
「飼いたいとか?」
「ウーーン、飼うてみたいけど、ウチ生き物とか飼うたこことないし…」
この生き物に美咲はかなり惹かれているようで、張り付くように水槽を眺めている。
オレは水槽横にある魚名と説明文を読み、少し面白くなったので美咲に振ってみた。
「なあ、この魚の名前オモロいでww」
「なんなん悠ちゃん、ニヤニヤして?」
「ええから、見とおみい。」
美咲は説明文を読むと、オレ方を見る。
「???」
よくわからないと言った表情をする美咲。
「魚の名前読んでみぃ。」
「………チンアナゴ?」
「な、オモロいやろ?」
「???」
「だーーもうっ!チンついてるやろ!」
「……………!!ア、アホーー!!」
「遅いねん!!」
オレは罵倒されながらも、美咲の反応の遅さにツッコミを入れずにはいられなかった。
その後しばらく、美咲は顔を赤くしながら、それを見せまいとオレの半歩後ろを歩くようについて来た。
今思うと小学生の様な絡み方で、少し懐かしい気もした。
順路をさらに行くと、暗い通路となり、
そこを進むと薄暗らい大広間となる。
そして、次の瞬間、大きな大水槽が目の前に現れる。
何メートルもの高さのある天井まで伸びた分厚いガラス越しに、大小様々な魚達が優雅に泳ぐ姿がそこにはあった。
吸い込まれそうな蒼い光の中、海の中を再現したその景色に、オレも美咲もただただ魅了されていた。
「キレイ……」
「すごいな……」
お互いに短い感嘆を上げる。
美咲は、もっとよく見ようとガラス越しまで近寄って眺めている。
蒼い光が全身を照らし、美咲の細身の身体をより強調させる。
オレは水槽の魚よりもその姿に見惚れていた。
オレの視線に気付いたのか美咲がこちらを見て微笑む。
「キレイやね、悠ちゃん。」
「お、おう…」
その笑顔にドキリとする。
オレは端にあるベンチに座ると、大水槽と遠くに眺め、美咲もそれに習って隣へちょこんと座る。
しばらくの無言の中で、美咲のゆっくりとした呼吸が聞こえる。
蒼く静かな空間。
横を見ると、水槽をジッと見つめる美咲の横顔が蒼い光に照らされている。
普段のあどけなさとは別の、母性を感じさせる、優しい表情をしていた。
オレは一瞬……、いや一呼吸の間、美咲の表情から目が離せなかった。
「どないしたん?」
オレの視線に気付いた美咲が、スッと顔を向けると、オレと美咲の視線が交差する。
正面から見た美咲の瞳は蒼く煌めき、小さな口元は対照的に影となって、より瞳を強調させる。
無言のまま視線が重なり、知らず知らずオレと美咲の距離が縮まる。
僅か数秒が、何時間にも感じられる。
もう、どのくらい経ったのか…、いや、もうそんな事はどうでも良い。
最初に視線を合わせた時よりも、もう半分の距離になっている。
美咲がスッと静かに目を閉じる。
蒼く静かな世界には、オレと美咲の2人だけ…
静かな世界に居ながらも、胸の鼓動は大きくなる。
もう、1/4の距離。
美咲の鼓動の音すら聞こえそうな距離…
「ああ!パパ、ママ、見て見て!おっきなお魚!」
静寂引き裂くが如く、大きな声が広間に響く。
その声に、オレも美咲も慌てて距離を取る。
家族連れのようで、5歳くらいの男の子が水槽に駆け寄りへばり付くように、水槽を眺めている。
オレ、今何をしようとした!?
心臓がドキドキするのを、体全体で感じる。
美咲の方を見ると、俯きながら顔が見えない方へ向けている。
「そ、そろそろ行こか?」
「う、うん…そやね…」
その後は、全くと言って良いほど、何を観て回ったのか覚えておらず、美咲も似たような状態のようだった。
あんなドキドキしたのは、初めてかもしれない。
帰りのバスの中、オレたちは一切言葉を発せず、美咲と時折視線が合っても直ぐに逸らすなど、まるで中学生の様な気分だった。
バスを降りると、先に降りていた美咲が、手をモジモジさせながら、何か言いたそうにしていた。
結局、美咲の家の前まで片言も話すことなく、歩いてきてしまった。
「……今日は…楽しかった…な。」
確認する様にオレがいうと、美咲はコクリと小さく頷いた。
「ほ、ほな、また連休明けに学校で…」
「ゆ、悠ちゃん!」
オレが立ち去ろうとした時、一段と大きな声で美咲が呼び止める。
「なんか忘れ………!!!」
振り返った瞬間、言葉を遮るように美咲の柔らかな唇がオレのと重なり、一瞬思考が止まる。
頭の中で理解が追いつかず、ゆっくりと美咲が離れてもポカンとしているオレ。
「……今日はおおきに……。ウチ、悠ちゃんの事好きやし…」
そう言うと美咲は、とっととバス停へ走り去っていった。
1人残されたオレは、しばらくの間、先程の柔らかな感触を頭の中で反芻していた。
広々としたこの公園は四季折々の花や樹木が植えられ、広い芝生の上では、家族連れやカップル、何かのサークル集団など、あらゆる人達が伸び伸びと過ごしている。
そして、ここにはペンギンやイルカをはじめ、1年中海の生き物達を眺める事ができる京都水族館があるのだ。
オレが中学生の頃、内陸部の都市である京都に、水族館が建つことに町中が沸き、完成と同時に多くの人が、ここを訪れあっという間に人気スポットの一つになった。
学校の中でも話題がちょくちょく出るようになると、その半年後にはクラスの半分近くがそこを訪れていた。
オレはというと、そんな所に行くのは、ミーハーでナヨナヨしたヤツだと勝手に思い込み、部活に明け暮れていた。
「……結局、オレもミーハーやったな。」
「ミーハーがどうかしたん?」
「……なんでもない。」
「悠ちゃん、水族館とか嫌いやった?」
美咲が不安げに見上げてくる。
「そんな事はないよってに、昔と今と価値観が変わった事を再認識しただけや。」
「???」
不安げなものから、今度はキョトンとした表情する美咲。
「ええから、来たかったんやろ?はよ入ろうや。」
そういうと、オレはスタスタとチケット売り場へ向かった。
中は思った以上に広く、順路を進む度に様々な海や川の生き物達が出迎えてくれる。
一見、何もいなさそうな水槽にも目を凝らせば擬態して見つからないようにしているヤツや、明らかに派手な出立ちで存在をアピールしているヤツなど様々だ。
珍しい生き物を目の前にして、オレも美咲も水槽が変わる度にマジマジと眺めていた。
特段、美咲が長く眺めていたのは、砂地から細い体を出したり引っ込めたりして、愛嬌のあるヤツがいる所だった。
「カワイイ…」
「そうか?細いし、美味しくなさそうやん?」
「もう、悠ちゃん!?メチャメチャカワイイやんこの子達。」
「飼いたいとか?」
「ウーーン、飼うてみたいけど、ウチ生き物とか飼うたこことないし…」
この生き物に美咲はかなり惹かれているようで、張り付くように水槽を眺めている。
オレは水槽横にある魚名と説明文を読み、少し面白くなったので美咲に振ってみた。
「なあ、この魚の名前オモロいでww」
「なんなん悠ちゃん、ニヤニヤして?」
「ええから、見とおみい。」
美咲は説明文を読むと、オレ方を見る。
「???」
よくわからないと言った表情をする美咲。
「魚の名前読んでみぃ。」
「………チンアナゴ?」
「な、オモロいやろ?」
「???」
「だーーもうっ!チンついてるやろ!」
「……………!!ア、アホーー!!」
「遅いねん!!」
オレは罵倒されながらも、美咲の反応の遅さにツッコミを入れずにはいられなかった。
その後しばらく、美咲は顔を赤くしながら、それを見せまいとオレの半歩後ろを歩くようについて来た。
今思うと小学生の様な絡み方で、少し懐かしい気もした。
順路をさらに行くと、暗い通路となり、
そこを進むと薄暗らい大広間となる。
そして、次の瞬間、大きな大水槽が目の前に現れる。
何メートルもの高さのある天井まで伸びた分厚いガラス越しに、大小様々な魚達が優雅に泳ぐ姿がそこにはあった。
吸い込まれそうな蒼い光の中、海の中を再現したその景色に、オレも美咲もただただ魅了されていた。
「キレイ……」
「すごいな……」
お互いに短い感嘆を上げる。
美咲は、もっとよく見ようとガラス越しまで近寄って眺めている。
蒼い光が全身を照らし、美咲の細身の身体をより強調させる。
オレは水槽の魚よりもその姿に見惚れていた。
オレの視線に気付いたのか美咲がこちらを見て微笑む。
「キレイやね、悠ちゃん。」
「お、おう…」
その笑顔にドキリとする。
オレは端にあるベンチに座ると、大水槽と遠くに眺め、美咲もそれに習って隣へちょこんと座る。
しばらくの無言の中で、美咲のゆっくりとした呼吸が聞こえる。
蒼く静かな空間。
横を見ると、水槽をジッと見つめる美咲の横顔が蒼い光に照らされている。
普段のあどけなさとは別の、母性を感じさせる、優しい表情をしていた。
オレは一瞬……、いや一呼吸の間、美咲の表情から目が離せなかった。
「どないしたん?」
オレの視線に気付いた美咲が、スッと顔を向けると、オレと美咲の視線が交差する。
正面から見た美咲の瞳は蒼く煌めき、小さな口元は対照的に影となって、より瞳を強調させる。
無言のまま視線が重なり、知らず知らずオレと美咲の距離が縮まる。
僅か数秒が、何時間にも感じられる。
もう、どのくらい経ったのか…、いや、もうそんな事はどうでも良い。
最初に視線を合わせた時よりも、もう半分の距離になっている。
美咲がスッと静かに目を閉じる。
蒼く静かな世界には、オレと美咲の2人だけ…
静かな世界に居ながらも、胸の鼓動は大きくなる。
もう、1/4の距離。
美咲の鼓動の音すら聞こえそうな距離…
「ああ!パパ、ママ、見て見て!おっきなお魚!」
静寂引き裂くが如く、大きな声が広間に響く。
その声に、オレも美咲も慌てて距離を取る。
家族連れのようで、5歳くらいの男の子が水槽に駆け寄りへばり付くように、水槽を眺めている。
オレ、今何をしようとした!?
心臓がドキドキするのを、体全体で感じる。
美咲の方を見ると、俯きながら顔が見えない方へ向けている。
「そ、そろそろ行こか?」
「う、うん…そやね…」
その後は、全くと言って良いほど、何を観て回ったのか覚えておらず、美咲も似たような状態のようだった。
あんなドキドキしたのは、初めてかもしれない。
帰りのバスの中、オレたちは一切言葉を発せず、美咲と時折視線が合っても直ぐに逸らすなど、まるで中学生の様な気分だった。
バスを降りると、先に降りていた美咲が、手をモジモジさせながら、何か言いたそうにしていた。
結局、美咲の家の前まで片言も話すことなく、歩いてきてしまった。
「……今日は…楽しかった…な。」
確認する様にオレがいうと、美咲はコクリと小さく頷いた。
「ほ、ほな、また連休明けに学校で…」
「ゆ、悠ちゃん!」
オレが立ち去ろうとした時、一段と大きな声で美咲が呼び止める。
「なんか忘れ………!!!」
振り返った瞬間、言葉を遮るように美咲の柔らかな唇がオレのと重なり、一瞬思考が止まる。
頭の中で理解が追いつかず、ゆっくりと美咲が離れてもポカンとしているオレ。
「……今日はおおきに……。ウチ、悠ちゃんの事好きやし…」
そう言うと美咲は、とっととバス停へ走り去っていった。
1人残されたオレは、しばらくの間、先程の柔らかな感触を頭の中で反芻していた。
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