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オレの幼馴染が嫁候補!?

古民家

モテ期は賛否両論なんですが…

水沢から告白を受け、さらに付き合わないかとの話をされたオレは、頭の理解が追いつかずにいた。

水沢との別れ際に、「一度考えてみて」と言われ、オレは実家に帰ってからも上の空だった。

水沢がオレのことを好き?
は?いつから?
オレと水沢、そんなに仲良かったんか?

頭の中で水沢とのこれまでの経緯を反芻するが、彼女に惚れられる要素が見つからない。

いや、自分がわからないだけで、水沢には要素があったのかもしれない。

学科の内外でも人気のある水沢が好きだと言ってくれたことは、正直言って嬉しい。

だが、水沢のことを考えると、どうしても美咲の事が頭を過ぎる。

別に美咲と付き合っている訳でもないため、水沢と付き合う事が悪い訳ではない。

悪い訳ではないが、許嫁という関係があり、尚且つ美咲はオレのことを好いてくれている。

その複雑な関係性にオレは罪悪感に近いものを感じてしまっているのではないか。

ピロローン♩ピロンピーン♫

スマホの着信が鳴り、表示名が『美咲』とあることにオレはビクッとなる。

「……は、はい小鳥遊ですが…」

緊張しているのが自分でもわかるくらい、声が裏返る。

「もしもし悠ちゃん?どうかしたん?」

「い、いや何もないで。それよりもどうかしたんか?」

「…どうって、明日の事なんやけど…」

明日は美咲と出かける約束をしていたことを今のいままでオレは失念していた。

時計を見ると夜の10時。

「あ、ああ明日やろ。明日、美咲は行きたいとこ有るん?」

「え!?う、うん、そやね……私、少し買いたい物が有るし、新京極の方に行こかな…」

「ほな行こか!」

「う、うん……でも、ええの?悠ちゃん退屈やない?」

「かまへん!ほな明日、9時に家に迎えに行くし用意しときや!」

「え!?あ、うん。わかった。
……悠ちゃん、おおきに。」

「あ、ああ。ほな、また明日な。」

「うん、また明日。」

美咲との電話が終わる頃には、オレは少し冷静さを取り戻していた。

美咲は昔から空気を読むのが上手い所があるため、恐らくさっきのオレの態度が変な事には気付いていただろう。

だけど、あえてそこは突っ込んでこないのは、彼女なりの優しさだと言うことは、オレはわかっていた。

「美咲に気ぃ遣わせたな……」

オレはバッテリーが減ったスマホをコンセントに挿し、充電しながら明日の予定を考えることにした。

次の日

昨日、勢いで迎えに行くと言ってしまったが、美咲の家に行くのは久しぶりだ。

自分の家を出て出町柳を越え、加茂川を渡ると美咲の実家である葛籠屋が見えてくる。

因みに、京都の鴨川と加茂川は異なり、
修学院の方から流れる高野川と、上賀茂神社の方から流れる加茂川とが、合流して鴨川になるのである。

葛籠屋は代々続く家具職人の家柄で、今も昔も神社やお寺などに家具や葛籠を納めている。

美咲の家の前まで来ると、昔よく遊びに来ていた時のままの玄関があり、それに安堵する自分自身に気付いた。

ピンポーン…

「はーい…」

インターホンを鳴らすと、返事をする声が聞こえる。

「はい、どちら……悠人はん!?」

「お久しぶりです、夏帆さん。」

「あら〜、お久やね〜。えらいカッコようならはって、叔母さん見違えたわ〜。」

「夏帆さんこそ、変わらずお綺麗で何よりです。」

「いややわ、こんな叔母さん捕まえて〜、お世辞も言えるようになったんやね〜。」

和服姿で出て来たのは、美咲のお袋さんで葛籠屋 夏帆つづらや かほさんだ。

夏帆さんは、旦那さん…美咲の親父さんが亡くなってから、一人でこの葛籠屋を切り盛りする敏腕な女将さんである。

「まあまあ、上がりよし。美咲はまだ支度終わってないみたいやさかい、奥間にでもゆっくりしてな。」

夏帆さんは昔から、物腰が柔らかく、おまけにスタイルも良い。

オレのお袋と同じぐらいの年齢の筈なのに、若々しく見え、俺たちの方に近いくらいにすら感じさせる。

奥間に通されると、夏帆さんはお茶を入れてくれた。

「あ、お構いなく…」

「ふふ、ホンマあのこまい悠人はんがこんなに立派にならはって、お母さんも鼻が高いんちゃいます?」

「いや、オレは…そんなに変わってないですよ。」

夏帆さんは、座を引くとオレの方に向き直り、ゆっくりと頭を下げた。

「か、夏帆さん!?」

「この度は亡き辰馬たつまさんのわがままを聞き入れてくださいました事、本に御礼を申し上げます。私共としては、辰馬さんの遺言を果たせた事に安堵し、何より悠人さんと美咲との縁談が結ばれましたことを喜んでおります。」

夏帆さんは頭を下げながら、ゆっくりと、しかしハッキリとした口調で言葉を綴った。

それを聞いてオレは、胸の奥がギュッと掴まれる錯覚を感じた。

「いややわ、ウチ、ぶぶ(お茶)も出さんで。悠人はん、美咲が来るまでゆっくりしはってな。」

そう言うと夏帆さんは、台所に引っ込んだ。

部屋の中を見渡すと、壁に写真が何枚か飾られており、その中に小学低学年のころのオレと美咲、そして美咲の親父さんが映った物があった。

真ん中に親父さんが腕組みをしながら堂々と立ち、その横でその真似をしているオレ、そしてそのオレの袖を掴むように恥ずかしそうしている美咲。

あの頃は、オレが親父さんによく懐いていた頃で、その後を美咲がちょこちょこ着いてくるのが当たり前だった。

「おはようさん、悠ちゃん。」

ススーッと、襖が開き美咲が姿を見せた。

「おはようさん。」

今日の美咲は紫陽花色のワンピースに薄手のジャケット、少し伸びた髪を目に掛からない程度にヘアピンで押さえ、いつもの縁無しメガネをかけている。

「待たせてごめんな。」

「かまへんよ、オレもさっき来たとこやし。」

「あら、美咲、もう来たん?」

ほぼ同時に、美咲の背後から夏帆さんがお茶を運んできた。

「おかあはん、ウチらもう出るよってさかい。」

美咲は腕を引っ張る様にオレを立ち上がらせると、玄関に向かおうとした。

「なんや忙しいな〜。悠人はん、帰りも寄ってってな〜。」

ニコニコしながら手を振って、見送ってくれる夏帆さんは、相変わらずの美人で優しい人だった。

オレ達は美咲の家を出ると、バス停に向かう。

その間、美咲は黙ったままだ。

「美咲…、どないかしたんか?」

「え?う、ううん、何もないよ。」

今日は積極的に誘って来たのは美咲の方だったが、当の本人に元気があまりない様に見える。

オレは少し考えて……

「み、美咲の今日の格好、涼しげで良う似合ってるやん。」

「え!?ホンマ!?」

「お、おう。」

「良かった〜、おおきに。」

と、言いつつも美咲は喜んでも、直ぐに押し黙ってしまった。

「なあ、美咲。オレら長い付き合い…というとアレやけど、言いたい事あんねんやったら言うときや。」

「……ウチ……おかあはんが羨ましい…」

「夏帆さん?何でまた?」

「おかあはん、自分で言うのも変やけど、幾つになっても綺麗やし、愛嬌もあって……」

確かに夏帆さんは、オレのお袋と同じくらいの年齢の筈なのに、綺麗で笑顔が素敵な人だ。

仮に夏帆さんが実年齢を20代後半と偽ったとしても、直ぐにはバレない自信が、オレにはある。

そんな母親を持つ美咲にとっては、同性として憧れやライバル心を持っていてもおかしくはない。

「そんなん言っても美咲、夏帆さんになれるわけやないんやし…」

「それは…そうやけど…」

「それに美咲にだって…」
「え?」

「いや……何もない。」

美咲にも良いところはあると、言いかけてオレは気恥はずかしくなり、言葉を切った。

首を横に傾げる美咲を他所に、オレは先を歩き出した。

南北に伸びる新京極商店街、両側に河原町通りと寺町通りとに挟まれた一筋であり、その両筋を含めて、多くの観光客や、地元の学生達が集まる人気スポットの一つだ。

GWというだけあり、オレ達と同じくらいの男女が往来している。

「懐かしいな、ここに来んのも高校生以来やわ。」

「そうか悠ちゃん、大学行ってからこっち来とらんもんね。」

「ああ、最後にここ来たんは、卒業式の日にクラスの奴らとカラオケでオールした……」

「どうかしたん?」

オレは水沢と行ったカラオケのことと、その水沢から告白された事を思い出し、頭の中でそれを反芻していた。

これまで告白なんて、高校の時に部活の先輩以来のことでしかも、告白される側なんてものは初めてだった。

「……ちゃん。悠ちゃん!」

美咲の呼ぶ声に意識を戻すと、いつの間にか新京極の真ん中あたりまで歩いていた。 

「あ、ああすまん、美咲。」

ひたりと美咲の手がオレの額に当てられる。

「な、なんや!?」

「体調悪いん?」

「そんな事ないて。」

オレは額からゆっくりと美咲の手を剥がす。

ヒンヤリする美咲の手は少し心地よかった。

心配そうに顔色を伺う美咲に、オレは何でもないと笑った。

オレは美咲には水沢の事を話さないといけないと心の中で思った。


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