この声が届くまで、いつまでも叫び続けたい
24.他人
ボーっとしていた頭を刺激するように、紙の束が直撃する。
「あ、すいませーん。」
痛い!という言葉が瞬時に出なくて、たっ!と言ってしまった。
恥ずかしい。
前の列から回ってきた紙の束は、例のごとくコメント集だった。
すかさず自分の分だけを抜き取り、振り向きもぜずに後ろの列に回す。
やれやれ、少し考えすぎだな俺も。
もう少しリラックスして会いに行かなければ、不審者に思われてしまう。
ちょうど今回のコメント集を読みきる頃には講義も終わるだろうし、自分の意識をこの薄っぺらい紙に注げば頭の中の邪念も抜けるだろう。
でも今回のコメント集で面白い内容のものなんてあるのかな。
彼女の告白があまりにも衝撃的過ぎたから、それまで楽しみにしていた恋愛相談などもどうも薄っぺらい内容にしか感じられなくなった。
あ、そういえば先週の講義で公表された俺のコメントに対して何かしら反応があるかもしれない。
『前回のコメント集七十九番の人へ。あなたの文章はすごく衝撃的で、自分の認識の甘さを改めて思い知らされました。確かにこういった犯罪に、男も女もないと思います。自分が男だから安心、なんて考え方は通用しないし、どれだけ自分が今まで他人事として考えてきたか、深く反省するきっかけとなりました(体育二年・男)』
『十一月十八日配布のコメント集七十九番の方へ。すごい、なんて言ったらいいかわかりません。前回の四十三番の方の告白も驚くべきものでしたが、私のとっては七十九番の方の告白の方が正直ビックリしました。こんな身近にそんな事件が起こっているということを知れただけで、私はこの講義を取った意味があったと思えました。七十九番さんの告白によって、四十三番さんの気持ちが少しでも救われればと思います。ありきたりなことしか言えませんが、頑張ってください(心理三年・女)』
予想外の言葉ばかりが、羅列されていた。
気まぐれで書いただけの文章だった。
それがここまで、他人に影響を与えるなどと考えもしなかった。
どこのコメントを見ても、そのほとんどが俺に向けられた言葉で埋め尽くされていた。
慰めるもの。
反省するもの。
尊敬の眼差しを向けるもの。
その受け取り方の多種多様さに、俺は驚かされた。
これが、人ってやつなのか。
もちろんその中には、心ない言葉を残すやつもいた。
『十一月十一日の四十三番の人や、十一月十八日の七十九番の人は、どうしてわざわざこんなところにあんなことを書いたのだろう。ここに書くことで、彼らは楽になれたのだろうか。何がしたいのか理解不能だ(社会二年・男)』
子供だな…理解できない、か。
俺はいい。
だが彼女がどれほどの勇気を持ってあの文章を書き、何を伝えたかったのか。
それさえも理解できない輩がいるのならば、彼女の気持ちが報われない。
これを見た本人がどう感じるか。
それを想像する能力すらこの人にはないのだろう。
いや、そもそもこの心無いコメントを載せた先生も先生だ。
まぁ、こういう受け取り方をする人も中にはいるということを先生の立場としては伝えたかったのかもしれないが…。
それでも俺は、このコメントを見てからどうにも気分が悪くなった。
理解しろよ、ガキが。
お前みたいな奴がいるからこういう犯罪がなくならないんだよ。
全く、こいつに直接会って説教してやりたい気分だわ。
彼女と俺がここで告白することで何を伝えたかったのか。
それが理解できないお前は、きっとこういう犯罪に関する善悪を判断する能力もないのだろう。
口では良い悪いを語っていても、実際の行動ではまるで他人事のように責任を持たない。
全て自分の都合のいいように解釈して、正当化する。
そんなタイプの人間だ。
こういう奴等がいるから、こういう犯罪がなくならないんだよ。
「あ、すいませーん。」
痛い!という言葉が瞬時に出なくて、たっ!と言ってしまった。
恥ずかしい。
前の列から回ってきた紙の束は、例のごとくコメント集だった。
すかさず自分の分だけを抜き取り、振り向きもぜずに後ろの列に回す。
やれやれ、少し考えすぎだな俺も。
もう少しリラックスして会いに行かなければ、不審者に思われてしまう。
ちょうど今回のコメント集を読みきる頃には講義も終わるだろうし、自分の意識をこの薄っぺらい紙に注げば頭の中の邪念も抜けるだろう。
でも今回のコメント集で面白い内容のものなんてあるのかな。
彼女の告白があまりにも衝撃的過ぎたから、それまで楽しみにしていた恋愛相談などもどうも薄っぺらい内容にしか感じられなくなった。
あ、そういえば先週の講義で公表された俺のコメントに対して何かしら反応があるかもしれない。
『前回のコメント集七十九番の人へ。あなたの文章はすごく衝撃的で、自分の認識の甘さを改めて思い知らされました。確かにこういった犯罪に、男も女もないと思います。自分が男だから安心、なんて考え方は通用しないし、どれだけ自分が今まで他人事として考えてきたか、深く反省するきっかけとなりました(体育二年・男)』
『十一月十八日配布のコメント集七十九番の方へ。すごい、なんて言ったらいいかわかりません。前回の四十三番の方の告白も驚くべきものでしたが、私のとっては七十九番の方の告白の方が正直ビックリしました。こんな身近にそんな事件が起こっているということを知れただけで、私はこの講義を取った意味があったと思えました。七十九番さんの告白によって、四十三番さんの気持ちが少しでも救われればと思います。ありきたりなことしか言えませんが、頑張ってください(心理三年・女)』
予想外の言葉ばかりが、羅列されていた。
気まぐれで書いただけの文章だった。
それがここまで、他人に影響を与えるなどと考えもしなかった。
どこのコメントを見ても、そのほとんどが俺に向けられた言葉で埋め尽くされていた。
慰めるもの。
反省するもの。
尊敬の眼差しを向けるもの。
その受け取り方の多種多様さに、俺は驚かされた。
これが、人ってやつなのか。
もちろんその中には、心ない言葉を残すやつもいた。
『十一月十一日の四十三番の人や、十一月十八日の七十九番の人は、どうしてわざわざこんなところにあんなことを書いたのだろう。ここに書くことで、彼らは楽になれたのだろうか。何がしたいのか理解不能だ(社会二年・男)』
子供だな…理解できない、か。
俺はいい。
だが彼女がどれほどの勇気を持ってあの文章を書き、何を伝えたかったのか。
それさえも理解できない輩がいるのならば、彼女の気持ちが報われない。
これを見た本人がどう感じるか。
それを想像する能力すらこの人にはないのだろう。
いや、そもそもこの心無いコメントを載せた先生も先生だ。
まぁ、こういう受け取り方をする人も中にはいるということを先生の立場としては伝えたかったのかもしれないが…。
それでも俺は、このコメントを見てからどうにも気分が悪くなった。
理解しろよ、ガキが。
お前みたいな奴がいるからこういう犯罪がなくならないんだよ。
全く、こいつに直接会って説教してやりたい気分だわ。
彼女と俺がここで告白することで何を伝えたかったのか。
それが理解できないお前は、きっとこういう犯罪に関する善悪を判断する能力もないのだろう。
口では良い悪いを語っていても、実際の行動ではまるで他人事のように責任を持たない。
全て自分の都合のいいように解釈して、正当化する。
そんなタイプの人間だ。
こういう奴等がいるから、こういう犯罪がなくならないんだよ。
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