この声が届くまで、いつまでも叫び続けたい

@tsushi

14.何も聞こえない

喫煙所には、友人の何人かがいた。


いつも一緒にいるわけではないが、会えばそれなりに話をする関係。
大学という自由気ままな空間においては、こういった微妙な関係の人間が何人もいる。
知り合いなのか友人なのかさえわからない。




「おぉ久しぶりー。何やってんの?」




俺はできるだけハイテンションで話しかけた。
少しビックリした表情で、こちらの顔をうかがう。
相手が俺だと認識すると、自然と笑顔がこぼれた。




「おぉ、透じゃーん。今は講義サボって一服中よーん。一時間半はさすがにダルイっちゃねー。」




相変わらず気持ちの悪い口調だ。
だが、彼のキャラクターを表すには調度良いのかもしれない。




「俺は真面目に受けてきたぜー、顔に似合わず。おっと、自分で言ってしまった」




俺の冗談は彼等に通用する。
それなりに気心が知れているからこそ、言えることなのだ。
そうでなければもう少し発言を控えるだろう。




「ギャハハハハ!チョーウケる!」


「まぁ確かに透はねー、ホント顔に似合わずだわ」


「いっそ出家すれば?」




辺りに下品な笑い声がこだまする。
下品な、と言ったが大学内ではこれが普通の環境だ。
彼等には自分が下品という認識は一切ない。
もちろん、俺もだ。




「そうそう、この間のサッカー見た?」


「代表の試合?見た見た!」




聞こえない。




「マジ熱くなかった?特に二本目のゴールの時の…。」




何も聞こえない。






















ドウシテソンナニクダラナイハナシガデキルノ?

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