この声が届くまで、いつまでも叫び続けたい

@tsushi

9.坂本講師が現れた!

次の週のジェンダー論の講義の時、総ちゃんの姿は見あたらなかった。
なんだ、今日は休みか。
少し残念な気持ちと、まぁいつものことかという気持ちが交差する。
なんて言ったって、彼が二週連続で出席確認をしない講義に出席するのは奇跡に近い。


「はい皆さん、静かにしてくださいね。講義を始めますよー。」


坂本講師が現れた!透は十のダメージを受けた!
透の攻撃!坂本講師はひらりとかわした!
坂本講師はラリホーを唱えた!透は眠ってしまった!






























































「…の人の悩みはありがちですね。それではこの悩みに対する…。」


おっと、よだれが…。
腕も痺れている。
どうやら、いつの間にか寝てしまったらしい。


「十七番さんの意見ですが、私はあまり好きになれませんね。何かこう、上からの目線の物言いが…。彼はいったい何様なんでしょうねぇ」


何やら坂本講師が嫌味ったらしいことを言っている。
相変わらず勘に触るばーさんだ。


今はコメント集の感想を述べているのか?どれどれ十七番十七番…。






















ん?






















俺の書いたコメントじゃないか!




ちょっと待て。
このコメント集の目的は、講義の感想や普段言えないことをさらけ出す場を提供することだろう。
なのになんでそんなことを言われなくちゃならないんだ。
書いた本人がこの講義に出席しているのはわかっているだろうに。


元々好感を持てなかった講師だったが、ここまでされたら嫌いにならない方が難しい。
俺が何様というより、アンタが何様なんだよ。


心底腹を立てた俺は、坂本講師への不満をコメントとして書くことにした。






『十月二十五日配布のコメント集十七番の者です。私は今、心から腹を立てています。確かに私の書いた文章は少し横柄な部分があったかもしれません。しかし公共の立場である先生が、あのように個人を批判するような意見を一般生徒の前で発言することは許されることではないと思います。あの意見を書いた生徒が今日もこの講義を受けていて、あのような言葉を聞いてどう思うかということを想像することもできなかったのでしょうか?先生の発言は、例え匿名と言えど私の恥を晒し、少なからず私を傷つける結果となりました。できれば、誠意のある謝罪を求めます。(哲学科二年・雨宮透)』








今回のコメントは、本名を晒すことにした。
誠意のある謝罪を求める代わりに、こっちも姿を隠さず正面から勝負がしたかったのだ。


わざわざこんなことを書く必要はないのかもしれない。
無視すれば何事もなかったかのように終わる。
だけど、それじゃあ俺の気が済まない。
子供と思われるかもしれないが、今回ばかりは完全に先生の方が悪い。


このコメントがどんな結果を招くのか。
色んな意味で、来週の講義が楽しみだ。

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