この声が届くまで、いつまでも叫び続けたい
8.楽しいこと
喫煙所に向かう途中、何人かの知り合いにでくわした。
サークルの新歓で知り合った奴。
高校の同級生だった奴。
クラスが同じ奴。
やはり大学はいい。
高校のように閉鎖された空間と違い、いつ誰に遭遇するかわからない楽しみがある。
だから俺は、キャンパスの空気が三度の飯よりも好物だった。
「今日の坂本ちゃんどうだった?」
煙草を吸わない総ちゃんが、俺の吸っている煙草の煙をけむたりながら聞いてきた。
「あぁ、相変わらずうざかったよー、あんま聞いてなかったけど」
「何してヒマを潰してたの?」
「コメント集読んでた。あれ面白くない?」
「俺読んでないや…そんなに面白いの?」
「まぁ、総ちゃんの好みではないかもね」
彼は他人というものに興味がない。
そんな彼が、他人の意見だけを載せたコメント集に興味を持たないのは仕方のないことかもしれない。
「やっぱ講義の後の一服はうまいわー。総ちゃん、次も講義あるんだっけ?」
「いや、今日はこれで終わりだよ。透は?」
「俺も終わり。じゃあ帰るか。」
まだ二時半という時間だったが、学校にいても仕方ないので俺達は帰路に向かうことにした。
「あー、なんか面白いことないのかねぇ?」
「俺は家に帰れるだけでいいや」
さすが総ちゃん。
究極の引きこもりだ。
俺は講義が終わってからそのまま家に直帰するというのがどうも苦手で、何かしら「楽しいこと」をしなければ気が済まない。
しかし「楽しいこと」、と言ってもそれは漠然としたものでしかない。
常に刺激を求め、常に現状に満足できないでいる。
その上具体的な解決策が見つからないのでタチが悪い。
ダルイ、という言葉を一日に何度発しているだろう。
学校は楽しい。
友達だっている。
だけど、「何かが足りない」と常にどこかで思わずにはいられなかった。
あんまり多くを求めない方がいいのかな。
俺も総ちゃんみたいな生き方ができたらどんなに楽か。
まぁ、彼にだって悩みくらいはあるのだろうけど。
家に着くと、リビングで兄がニュース番組を見ていた。
「卑劣!集団暴行サークルの巧妙な手口に迫る!」とデカデカとした見出しが踊る。
下品な音楽でそのタイトルを強調し、意味もなく険しい表情のレポーターがその事件の概要を切々と語っている。
ブラウン管の中の悲劇、といったところだろうか。
俺には関係ないなと思い、リビングを後にした。
夕飯を食べ、自分の部屋に戻ると、携帯にメールが入っていた。
『来週のサークルは317教室で行うので、来られる方は返信ください』
今週の活動は何をするのだろう?そう思うだけで、俺は待ち焦がれた想い人とようやく会う取り付けをしたような気分になる。
サークルだけが一週間の唯一の楽しみであり、そしてそれは人生の暇つぶしにもなった。
手慣れた手つきでメールを打ち始め、五秒後には送信ボタンを押していた。
サークルの新歓で知り合った奴。
高校の同級生だった奴。
クラスが同じ奴。
やはり大学はいい。
高校のように閉鎖された空間と違い、いつ誰に遭遇するかわからない楽しみがある。
だから俺は、キャンパスの空気が三度の飯よりも好物だった。
「今日の坂本ちゃんどうだった?」
煙草を吸わない総ちゃんが、俺の吸っている煙草の煙をけむたりながら聞いてきた。
「あぁ、相変わらずうざかったよー、あんま聞いてなかったけど」
「何してヒマを潰してたの?」
「コメント集読んでた。あれ面白くない?」
「俺読んでないや…そんなに面白いの?」
「まぁ、総ちゃんの好みではないかもね」
彼は他人というものに興味がない。
そんな彼が、他人の意見だけを載せたコメント集に興味を持たないのは仕方のないことかもしれない。
「やっぱ講義の後の一服はうまいわー。総ちゃん、次も講義あるんだっけ?」
「いや、今日はこれで終わりだよ。透は?」
「俺も終わり。じゃあ帰るか。」
まだ二時半という時間だったが、学校にいても仕方ないので俺達は帰路に向かうことにした。
「あー、なんか面白いことないのかねぇ?」
「俺は家に帰れるだけでいいや」
さすが総ちゃん。
究極の引きこもりだ。
俺は講義が終わってからそのまま家に直帰するというのがどうも苦手で、何かしら「楽しいこと」をしなければ気が済まない。
しかし「楽しいこと」、と言ってもそれは漠然としたものでしかない。
常に刺激を求め、常に現状に満足できないでいる。
その上具体的な解決策が見つからないのでタチが悪い。
ダルイ、という言葉を一日に何度発しているだろう。
学校は楽しい。
友達だっている。
だけど、「何かが足りない」と常にどこかで思わずにはいられなかった。
あんまり多くを求めない方がいいのかな。
俺も総ちゃんみたいな生き方ができたらどんなに楽か。
まぁ、彼にだって悩みくらいはあるのだろうけど。
家に着くと、リビングで兄がニュース番組を見ていた。
「卑劣!集団暴行サークルの巧妙な手口に迫る!」とデカデカとした見出しが踊る。
下品な音楽でそのタイトルを強調し、意味もなく険しい表情のレポーターがその事件の概要を切々と語っている。
ブラウン管の中の悲劇、といったところだろうか。
俺には関係ないなと思い、リビングを後にした。
夕飯を食べ、自分の部屋に戻ると、携帯にメールが入っていた。
『来週のサークルは317教室で行うので、来られる方は返信ください』
今週の活動は何をするのだろう?そう思うだけで、俺は待ち焦がれた想い人とようやく会う取り付けをしたような気分になる。
サークルだけが一週間の唯一の楽しみであり、そしてそれは人生の暇つぶしにもなった。
手慣れた手つきでメールを打ち始め、五秒後には送信ボタンを押していた。
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