偽装恋愛でもいいから恋がしたい!

桜井ギル

お礼をしたい

「一応肩、見せてください。顔は俺がすんでのところで受け止めましたが、肩は思いっきりぶつかっていたでしょう?」

「は、はい!」




……


「ん、大丈夫そうですね」

「本当に有難うございます…」

「それと、あの……」


 私が俯いていると一ノ瀬さんがくすりと笑い、口を開く。


「『お礼』ですか?」

「はい、その通りです」

「では、私の頼みを聞いていただけないでしょうか?」

「勿論です!1度だけでなくまた助けて頂けたので!なんでも頼んでください!」

「なんでも…か」


 一ノ瀬さんは妖艶に微笑み、私にしか聞こえない声で私の耳元に囁く。


「それって、俺を誘ってます?」

「!!」

「ははは、冗談です」


(かっ、からかわれた?!)


私はびっくりして固まっていると


「…顔、真っ赤ですよ?大丈夫ですか?」

「大丈夫…です……」


 一ノ瀬さんが心配して声を掛けてくれる。

私はこの空気を打ち消すかのように声を張り上げる。


「あの、それで『頼み』とは?」

「ああ、それは…」


一ノ瀬さんは少し考え込んでから私を見る。


「ここで話すのも、その…なんですので場所、変えませんか?」

「はい………あ、バイト先!!」


色んな事があったせいで忘れていたが私はバイト先に行くんだった。


「これからバイトですか?」

「いえ、シフトの事で少し相談したいことがあると店長に言われて…」

「電話でもいいのではって言ったんですがどうしても直接じゃないと伝えられない事らしいので…」

「15分くらい待っていてくれませんか?」

「構いませんよ」


 色々あったが一ノ瀬さんと会えて良かった。そう思いながら、バイト先に向かうのだった。







「さほりちゃん、何かいい事あったのかい?」

「て、店長?!」


店長は私の心を読むかのように言い出す。


「いいんだよ、言わなくても」


店長はニヤニヤしながら私を見る。


「もう…店長までからかわないで下さいよ!」

「ごめんごめん」

「話長引かせてごめんね、本題に入るけど…」


同じバイトの子が辞めるため急遽シフトに入って欲しいこと、その代わり他の子が私のシフトに入ってくれること

ここまでは電話でも伝えられる内容なのだが


「私、結婚することになったの」

「………え、えぇぇーーーーーー!!」


 これは確かに直接言うべきことなのだろう。

しかし今度のシフトの時にでも言えばいいのにと思ったのだが


「さほりちゃんのシフトの日はどうしても行けないから言えなかったんだけどどうしても直接言いたくて…」

「せっかくの休日に呼び出して悪かったねぇ」

「いえいえ!気になさらないでください!」







「遅くなってしまい、すみません!」

「大丈夫ですよ」


 ちなみにかほは


「彼氏から電話…」

「ごめんね!私帰るけど、一ノ瀬さんに会えてよかったね!」


そう言って帰って行った。


「では、行きましょうか」


そう言って一ノ瀬さんに連れてかれたのは綺麗な夜景の見える高級そうなレストランだった。

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