甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第104話

「昔読んだ少女漫画で知ったんだけれどもね。中国の小さな急須で淹れた美味しい烏龍茶にはglic○のアーモンドキャラメルがとっても合うんだよ。嘘だと思うだろうけれども試してご覧」
随分と前に黒蜜おばばがお茶の時間に何気なく言ってだけれども今日、東京都下の町田にお使いに来てお茶屋さんの二階にあるカフェで烏龍茶を頼んだらお茶請けにアーモンドキャラメルが小皿に乗って二個付いて来た。
烏龍茶を飲んでからアーモンドキャラメルをパクリ。
「!!!」
と〜っても美味しい!
合うわ〜この組み合わせ。
両方の頬っぺたに手を当ててニコニコしていたらこの店のマスコット犬お爺さん見たいなミニチュアシュナウザー2匹が長椅子に寝転んびながら私を見て笑ってる。
私は二匹に『こんにちは』と犬の鳴き声で挨拶するとおっとりとした店のご主人がビックリしてた。
ご主人に「実は私、甲斐犬の使い魔で人の姿に変化してるんです」と言い着物姿の女の子から真っ黒な甲斐犬に変化したらまたビックリしてる。
すると丁度階段を上って来た制服姿のJKが私に駆け寄り抱きついた。
「ヤダ〜♡真っ黒な甲斐犬!可愛い〜!若旦那、新しい犬を飼ったの?ん?とても強い黒い魔力の香り・・・この子は使い魔?」
けいちゃんその子はうちに来たお客様だから失礼をしてはいけないですよ。すいません。いきなり抱きついたりして・・・うちの遠縁の親戚の子でして。許してやって下さい」
深々と頭を下げる店のご主人と慌てて抱きついた手を離す恵ちゃん。
恵ちゃんの手が離れたのを見てから着物姿の人に変化する。
「ヒャー!黒髪ロングの着物姿の女の子になった!美少女!!」
と又、抱きついて来た恵ちゃん。
そんな恵ちゃんを慌てて引き剥がすお店のご主人。

「コラ!男のおとこのこが女性に軽々しく抱きついてはいけませんよ!」
名残惜しそうに私をみる恵ちゃん。
えっ?今、『男の娘』って聞こえたけれども?

ペコペコと頭を下げるご主人に大丈夫ですと伝えるとサービスですとアーモンドキャラメルの追加とお代わりのお湯を出してくれた。

私の席の向かいにちゃっかり座った恵ちゃん。
小さな急須にお湯を入れて慣れた手付きでニ煎目を淹れてくれてる。
私が「あなたも一緒に飲みましょう」と誘うと店の奥から小さな湯呑みとアーモンドキャラメルを小皿に乗せて嬉しそうに席に戻ってくる。
烏龍茶を飲んでキャラメルを食べ二人で「この組み合わせ最高!」とキャッキャと笑ってから先程から気になっていた事を口にした。
「私の名前は蜜。けいちゃん、あなた魔力の色と香りが判るの?男の娘だけど?」

通常、魔力の香りが判るのは魔女だけ。
例外として稀に魔力を持って産まれて魔力を感じられる男性が魔術師になる場合がある。(魔法は魔女しか使え無いので魔道具や魔方陣を使い魔力を行使するのが魔術師。呪具作りをする雄大さんはかなり特殊)
それはとても希少な例外で大抵は小さな子供の頃を過ぎると魔力を感じなくなってしまうのが殆どで魔力の香りまでは解らない。
恵ちゃんは16歳位だけども魔力の『香り』が解ると言っていたのだ。
台北の紫苑さんや息子の翡翠さんでさえ魔力の『香り』までは解らない。

「うん、貴女からは真っ黒な魔力が出てる。特にその腕輪から・・・とっても良い香りね蜜ちゃんの魔力」
私の地獄の腕輪を指差す恵ちゃん。

これは、特殊中の特殊な男の娘かも知れないわね。
「ちょとメールをするわね」
と断って、買い物籠から餡子さんが魔鏡を改造して地獄や天界、月にも通じる様にしたスマホを取り出して男の娘の専門家である紫苑さんと黒蜜おばばにメールを送った。
(地獄や天界、月にも魔鏡を改造したスマホを配っている)

『私の魔力の香りが解る男の娘を発見』

紫苑さんから直ぐに返信が来た。
「私と翡翠と蜜子をその男の娘の所へ至急、連れて行って」

お店の観葉植物の裏の暗闇から台北に飛び紫苑さんと翡翠さんを連れて来る。
驚いている恵ちゃん達を後にして黒蜜おばばの所へ急ぐ。

黒蜜おばばの家の居間に出るとお腹が大きくなった黒蜜おばばが小箱を持って待っていた。
「まさかこの魔法薬を使える男の娘が現れる日が来るとわね・・・」
黒蜜おばばの手を引き箪笥と食器棚の間の暗闇に足を入れながら黒蜜おばばに
「その魔法薬は一体なんなのですか?」
と聞くと。

「これはね、魔女になる素質ある男の娘を女の子に変える魔法薬さ。以前、紫苑叔父さんに頼まれて作ったんだよ。魔女に成れない魔力の香りが解る男の娘が現れたら使おうって」

黒蜜おばばを連れてお店に戻ると恵ちゃんが紫苑さんと翡翠さんに抱きつきながら
「お二人供、私と同じ男なんですか!チャイナドレスが似合ってる〜脚細い!えっ、二人は親子でお母様が真っ白な長髪をした男装の麗人?ヤバイ!完璧〜〜!!」
なんだか盛り上がってるわねぇ。
お店のご主人に三人分の烏龍茶の追加を頼み皆で席に着くと紫苑さんがニッコリと笑って小箱を開きピンク色の液体の入った小瓶を指差し恵ちゃんに説明も何もすっ飛ばし
「貴方、ここにある魔法薬を飲んで本物の女の子になって魔女にならない?」
と言う。

恵ちゃんは目をパチクリしてから
「ハイ、魔女になります!これを飲めば良いんですか?」
と言ったが早いか恵ちゃん、小箱から小瓶を取り出し蓋を開け一気にピンク色の液体を飲み込んだ。
余りの行動の速さに流石の紫苑さんも固まってる。
恵ちゃんの体がピンク色に一瞬光る。

光が収まってから恵ちゃん胸の辺りをモゾモゾと触り「ちょっと失礼します」と言ってからトイレに駆け込む。
数分後、トイレから出て来た恵ちゃん。
手にはブラジャーに詰めていたらしいパッドを持ってニコニコしながら席に座る。
「はぁ〜、パッドを取ると息が楽。急に胸が膨らんでブラがきつかった〜。あっ、下もトイレで確認しましたよ完璧な魔女っ子で〜す♡」

呆気に取られていた私達、そんな恵ちゃんを見て口を揃えてこう言った。
「「「「ヤバイのを魔女にしちゃったのかな?」」」」

          

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