甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第63話

あれから私達は別荘での優雅な日々を楽しんだ。
海で泳いだり、近くのゴルフ場でゴルフにチャレンジ。
お昼を近くのお蕎麦屋さんで食べたりしていた。
そんな中で買い物籠の中の魔鏡にメッセージが。
地獄か天界もしくは熱海で会ったお爺さんの誰かのお使いかしら?

【蜜ちゃん。お願いがあります。地獄に来て下さい。閻魔大王】
もう一つメッセージが。
【蜜さん。依頼したい事があります。天界へお越し下さい。ゼ○ス】
何だか嫌な予感が・・・。

ビーチでカクテルを飲みながら寛ぐ黒蜜おばばに断りを入れ先ずは地獄の閻魔大王の所へ。

地獄の門番さんに挨拶すると閻魔大王は執務室に居るそうだ。
案内されて執務室へ行くと宗帝王【文殊菩薩】も一緒に物凄く黒い笑顔で待ち構えていた。
ソファーを勧められ文官さんの持って来た冷たい地獄人参茶を飲んで人心地ついたら。
「実は蜜さんに折り入ってお願いが御座いまして。この度天界との共同開発で【ゲート】を開発致しました。これは蜜さんの暗闇から暗闇に移動する能力を地獄の腕環の魔力を利用して地獄と天界を人間界に繋ぐ道を開く物でしてね。是非とも蜜さんに御協力して頂きたいのですが」
「地獄と天界で人間界を滅ぼすの?」
「そんな事をしたら鬼や天使の仕事が増えて地獄や天界で反乱が起きてしまいますよ。
「天界からも来て下さいと魔鏡にメッセージがあったけど」
「正に、これからお願いする事に関係があります。お盆明けで少し暇が出来る地獄と天界で一緒に夏休みを取って箱根のホテルを借り切って温泉に入ってゆっくりしようと地獄と天界のホットラインで話しましてね。どうでしょうか力を貸して頂けませんか蜜さん。報酬はもちろんお払いしますよ」
正に地獄の知恵袋と言う顔で黒く笑い宗帝王。
「頼むよ蜜ちゃん。皆んな疲れているし従業員の家族も連れて温泉入ってカラオケやってお酒飲んで美味しい物食べたいんだ我々も」
私を拝む閻魔大王様。
「仕方ないわね。分かったわ。でもホテルの予約とか大丈夫?」
「地獄から私、宗帝王が恐らく天界からはミカエルさんで箱根の観光協会に行き何とか致しますのでゲートの試運転を兼ねて先ずは私を箱根湯本駅前の何処かの暗闇へお願いします」

ゲートの前に案内され大きな茅の輪の前に宝珠が設置されている。
言われるままに宝珠に触れ腕環の魔力を流し箱根湯本駅前を思い描くと駅前ロータリーに止まるバスやタクシーの姿が。
ニヤリと笑う宗帝王さんと私は茅の輪を潜り箱根湯本駅前に出た。
後ろを振り向くと茅の輪の向こうで閻魔大王様が手を振っている。
宗帝王さんが私に。
「腕環に触れながら茅の輪ゲートクローズと唱えて下さい」
「茅の輪ゲートクローズ」
スッと茅の輪が消える。
「蜜さん今度は茅の輪ゲートオープンと」
「茅の輪ゲートオープン」
茅の輪が現れ手を振る閻魔大王様。
「大丈夫ですね。またクローズと」
「茅の輪ゲートクローズ」
茅の輪と閻魔大王様が消える。
天界からミカエルさんが来るまでネットで調べた美味しい珈琲の店にいるのでミカエルさんが来たら蜜さんも一緒にいらして下さいと観光客の中に消えた宗帝王さん。
予約でなく珈琲の為に来たのねきっと。
気をとりなおし近くの自販機裏の暗闇に紛れ天界に移動する。

天国の門を潜ると笑顔のゼ○ウス様と天使のミカエルさんがお出迎え。
天界の方はフットワークが軽いわね。
「閻魔大王から話しは聞いている見たいだの蜜ちゃん。天界からはミカエルを派遣して予約とかさせるから」
ペコリとお辞儀するミカエルさん。
「こちらのゲートはこれだよ」
指し示す方を見るとパルテノン神殿のミニチュアが。
やはりミニチュアの前に宝珠がありそこに腕環の魔力を流しながら箱根湯本駅前を思い描く。
先程とほぼ同じ場所が見える。
ミカエルさんとゲートを潜り振り向くと手を振っているゼ○ウス様。
パルテノンゲートクローズと唱えるとゲートが消えた。
「宗帝王さんがこの先の美味しい珈琲屋さんで待ってますきっと美味しい珈琲を奢って貰えますよ」
「えー嬉しいー!奢りで美味しい珈琲なんて!蜜ちゃんきっと美味しい珈琲ゼリーもあるからついでに食べさせて貰おうよ」
小走りで先を行くミカエルさん。
貴女店何処か知らないだろ?大丈夫かこの天使。

坂の途中にある珈琲屋さんで美味しい珈琲と珈琲ゼリーを宗帝王さんに奢って貰った。
宗帝王さん領収書に地獄総務課と書いて貰ってたわ。
経費で奢りなんてホント地獄の悪知恵袋ね。

箱根の観光協会に行くとあっさり数千人単位の予約が取れた
何でも全国で土砂災害が多発していて被害の有った各地域から大量にキャンセルがありその為にかなりの割引をして貰った上で予約が取れた。
観光協会の人は予約が埋まり嬉しそう。
物凄い真っ黒な笑顔の宗帝王さん。
この状況を予想してたわね・・・黒い黒いわ宗帝王さん流石、地獄の悪知恵袋。
横にいたミカエルさんは予約が取れた事にただ喜んでる。
この後、小田原駅に移動して餡子いっぱいの大きなアンパンが有名なパン屋さんに行き宗帝王さんが私やミカエルさんの分のアンパンも買ってくれた。
小田原駅近くで地獄と天界へのゲートを開き二人は予定の日にゲートを頼みますと言いアンパンを抱えて帰って行った。
宗帝王さんアンパンの領収書も地獄総務課にしてたわねまったくちゃっかりしてるわ。
大量の餡子ぎっしりのアンパンを持ち帰った私は警備している人狼一族の方や宮川さんやメイドさん料理人の方々にお裾分けした。
キャンピングカーの伊達男さんにも忘れずに。
このアンパンに餡子さんは狂喜乱舞していた。
他の皆んなもニコニコしながら食べてる。
好感度アップしてるわよ宗帝王さん。
「蜜、それで地獄と天界の用はなんだったの?」
黒蜜おばばが大きなアンパンを漸く食べ終えて聞いてくる。
「地獄と天界で二日後に箱根の何軒かのホテルや旅館を借り切って遅目の夏休みで地獄と天界を合わせて数千人単位で遊びに来るそうです。幹事の宗帝王さんが借り切ったホテルや旅館に余裕があるので蜜さんもご家族を連れてどうぞと誘われました」
クワッと眼を開く一同。
「それは無料と言う事かい?」
名古屋の手羽先に店の領収書で経理の電電さんに怒られた震電さんが尋ねる。
「ゲートを開いて温泉に連れて来てくれる御礼だと宗帝王さんが言ってました。それに余分に掛かった経費は天界に回すから大丈夫だと」

カミーラお婆様とアイコンタクトをする震電さん。
「皆んな!二日後に箱根の温泉を楽しんで美味しい物を食べて無料酒を死ぬ程飲むぞ!!」

二日後、箱根の温泉街は地獄や天界の者達から後に”悪夢の魔女”と呼ばれる酔っ払い集団を迎えるのであった。

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