甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第60話

before-1

「十勝大佐!貴方!今、助けに行くからね!!姉さん白龍さん手伝って!」
「餡子!まさかこの未完成の要塞兵器を飛ばそうと言うの?」
「餡子ちゃん幾ら十勝大佐を助ける為だって無茶は駄目だ」
「黒田蜜子少佐、白峰龍子大尉、私の腹の中に十勝大佐の子供がいるのだからお願い力を貸して!」
「仕方ないわね。分かったわ可愛い妹を未亡人にしたく無いものね」
「ああ、うちの翡翠の再従兄弟はとこの父親を助ける為だ。力を貸すよ黒田餡子少尉。いや十勝餡子少尉かな?」
十勝大佐は終戦直後満州に侵攻して来たソ連の機械化師団を足留し民間人を逃す時間を稼ぐために。
未完成の黒田式火星将軍戦車試作零號とリモート試作戦車フォボス、ダイモスを引き連れソ連の戦車隊に特攻を仕掛けたのだ。
魔女と魔術師による特務機関イザナギを束ねる十勝大佐を助ける為に三人の魔女によって未完成の巨大要塞兵器が起動する。
何とか瀕死の十勝大佐を助け出し最後に巨大要塞兵器を自爆させようと要塞の魔法動力炉を暴走させたが暴走した魔法動力炉に魔力を吸われ十九歳の餡子は小学生の身体に二十一歳の蜜子は中学生の身体へ戻り白龍は色素を失い皮膚は白くなり目の色も髪も黒から金色に近い薄茶色に変化した。
十勝大佐は意識はあったが怪我が酷く終戦後の混乱で治療する薬も無い魔力を吸われた蜜子や白龍も魔法薬を精製する事が出来なかった。
十勝大佐に餡子はお腹に彼の子供がいると告げ彼の意識がある内にベッドに寝たままの十勝大佐と結婚をする。

その数日後、十勝大佐は息を引き取った。

日本に帰ろうとした三人だったが要塞を飛ばした魔女をアメリカとソ連が探し始め大連で足留めされていた。
その後、旧日本軍から情報が漏れた。
元々この要塞や火星将軍シリーズの兵器は餡子の祖父黒田善哉の発案で魔道具作りの天才粒餡の魔女、黒田餡子が中心に制作していた物だった。
姉の蜜子は魔法薬による爆弾や大量破壊兵器の開発と要塞の魔法動力炉の燃料になる【黒蜜】と呼ばれる魔法薬の精製に成功し動力炉の責任者になる。
この黒蜜の開発と年に似合わぬ老齢の魔女の様な魔法に対する知識と考察力から黒蜜おばばと呼ばれる様に。
この黒蜜はガソリンに代わる夢の燃料として期待され戦後、大国が狙い始める。
白龍は蜜子の補佐と魔法による毒物を研究していた。

本格的にアメリカとソ連に追われる身になった三人は蜜子と餡子の母親で白龍の師匠である徐震電に匿われまだ国として混乱して大国の捜査の目が入らない中国の山中で十年間隠れ住んだ。
小さな身体になり妊娠出産を危ぶまれた餡子だが何とか魔力の回復した蜜子と白龍の魔法薬によって無事に乗り越え出産。
戦後十年経ちほとぼりが冷めたのを見計らい三人の魔女と餡子の息子は日本に渡る。

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