甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第51話

山口県岩国市内の小さな店。
お爺さんとお婆さんでやっている4人掛けのテーブルが二つ有るだけの店。
食べて帰る人は殆ど無く皆んなガラスケースに入れれられた商品を買って帰るからだ。
岩国城と錦帯橋に近いこの店は隠れた名店として一部の人には有名だ。
買い物籠を加えた私は錦帯橋近くの暗闇から姿現す。
人の姿がメディアに晒されお使い中に話し掛けられたりしていた私は真っ黒な甲斐犬の姿で出歩く事が多い。
今日はこの前熱海駅前で写真を撮ったお爺さんの一人からお使いの依頼があり岩国に来ている。
今日のお使い予定はこれだけなので早めに来て岩国城や城下町を散策してからお店に向かう。
先ずは錦帯橋を渡る。
面白い事に岩国城近くに白蛇の観れる博物館みたいな建物があり白蛇グッズも売っている。昔から神の使いとして祀られているそう。
錦帯橋は釘が一本も使われていない太鼓橋。
丸みの所を登り下りするが楽しい。
この橋の掛かる河は鵜飼が夜に篝火を炊いて行われる。
是非観て観たいけれども予約制だとか。
岩国城に登ると宮島や瀬戸内が綺麗に一望出来る。

城下町を散策していると剣道の道具を持った子供達が目立つ。
城下町の子供達は皆剣道をやるみたい。
岩国の街の雰囲気や流れる時間がゆったりしてるのは街に住む人の城を中心に昔から変わらない生活から来るのかしら。

お目当の店に到着。

自分用にお店で食べて行こうと思っているので不便だからいつもの浴衣姿に変化してと。

店頭のケースを覗くと。
錦糸卵やピンクの具材の乗った箱寿司と三角形のお稲荷。
箱寿司は長方形の寿司を食べ易い大きさに切ってある。
お稲荷さんはお腹の所から覗く酢飯に細切りの赤い人参が入っていて美味しそう。

お婆さんに中で食べても良いですか?と尋ねるとニコニコしながらどうぞとテーブルの丸椅子を勧められる。
お茶を出してくれたお婆さんに箱寿司と三角稲荷を一つづつを食べて行き持ち帰りで箱寿司一本と三角稲荷を十個を頼んだ。
お爺さんが箱寿司と三角稲荷を皿に入れて割り箸と共にすぐ、出してくれる。
三角稲荷をパクっと齧ると甘い味付けの酢飯が口の中で解ける。
しんなりした人参の食感が合う。
この地方のお豆腐は真四角でそこから作った油揚げで稲荷寿司を作るので三角形なんだとか。
地方によって特色が出るのねお稲荷さんは。
次に箱寿司をお箸で切ってパク。
ん〜口の中で色々な具材が踊っている。
お婆さんが箱寿司は昔は祝いの席の贅沢品だったと言ってるけど正に贅沢品だわ。
食べてて幸せと言うか特別な日の特別な食べ物と言った気持ちにしてくれる楽しい御寿司。

地方の食文化侮れないわ。

箱寿司と三角稲荷を食べ終えお茶を飲み終わり持ち帰りの品を買い物籠に入れお会計を済ませて、店の外へ出てお爺さんお婆さんにお辞儀して城下町を腹ごなしに歩いている。

そう言えば、箱寿司と三角稲荷を届けるお爺さんは何て言う人だったかな?髭のお爺さん。
確か長州出身の伊藤博文さんだっけ?カミーラお婆様に直訴してたお爺さんも長州出身の昔の首相経験者の名前だった様な・・・。
まあ、私は地獄の使者で黒い天使ですもの誰の所だろうとどんな場所でもお使いしますよ。
明日は確か伊藤さんから紹介のあった吉田松陰さんと言う人で吉田さんが憧れているアメリカのハンバーガーの注文があったわね。
明日は忙しいわ。

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