甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第21話

”forest story” f-s5

「今日は海外資本の巨大スーパーに塩を買いに行って貰うよ。それとお昼ご飯にフードコートのピザを二枚お願いね」

買い物籠の中に見慣れぬカードが一枚。
このカードは黒蜜おばばの会員カードだそう。
海外資本の巨大スーパーは会員でないと入れない入口でチェックする方式。
今回は、黒蜜おばばの会員カードにぶら下がる社員カードを私用に作るみたい。
黒蜜おばばは一般会員でなく魔法薬を作る自分の会社名義で会員になっており、私はその会社の従業員として割引で会員に登録出来る仕組み。

では、買い物籠を咥え巨大スーパーに行ってきまーす!


現れたのは、大きなカートが沢山並べられている場所の奥にあるコンクリートの柱の後ろ側。

見上げると巨大な流通倉庫みたい。

大きな入口には金髪の白人お姉さんがカードをチェックしている。

籠を咥え恐る恐る近づくと。

「oh!familiar spirit!」
と言うとニコニコしながら私の頭を撫ぜてくれる。
そして何故か隣にある出口のカウンターの黒人のお姉さんが呼ばれ私はカウンター前に連れて行かれた。
海外資本の巨大スーパーは、使い魔に慣れているらしく対応がスムーズね。
黒人のお姉さんも
「familiar!」
とか嬉しそうに対応している。

【familiar spiritは英語で使い魔です】

カウンター前に行き買い物籠をお姉さんに渡す。
中から黒蜜おばばの会員カードを取り出しスキャン。
私用のカードを作るのに紙に記入が必要みたいだけど・・・悩んでいたら記入用紙を買い物籠の側面にピタリと押し付けてる。
買い物籠から記入用紙を離し表面を見て頷いている。
字も書けるのね買い物籠、凄い!

そんな事を考えいたら背後から来た北欧美人さんに後ろから掬い上げられた。
戸惑っているとカウンターにあるパソコンモニターの上に丸いカメラの前に連れて行かれた。
「スマイル」
と言われ写真をとられる。

先程の記入用紙が見えた。
記入内容はかなり衝撃的。

会社名、黒田蜜子魔法薬製造有限会社
所在地、東京都大田区田園調布
電話、18782+18782=87564


何とも古風な会社名・・・?
そして都内に会社があるなんて。

私、周りが森の山小屋しか知らないわよ。
あそこ定期的に大きな荷物がヘリで運ばれてくるのよね食料とか娯楽用のDVDやら。
使い魔が居なければ生活もっと大変。

出来上がった会員カードを見せて貰う。
カード裏の顔写真・・・真っ黒な犬の影絵みたい。

黒蜜おばばのカードを買い物籠に入れ籠と私用のカードを持って北欧美人さんが入口の方へと誘う。

最初に対応してくれた金髪のお姉さんに私のカードを見せて写真を見て微笑んでる。

写真と私を見比べてOK!とカードを籠にいれ私に籠を咥えさせて笑顔で手を振る。

うぁー物凄く色々な物がある!

私が何匹も入れそうなクーラーボックスやキャンプ用品。
正面に巨大なテレビや巨大な冷凍庫等様々な物が眼に映る。
キョロキョロしながら進むとこれまた大きなポテチやらナッツ類やらが並んでいる。
あのポテチ黒蜜おばばと二人だと食べ切るのに数日かかるだろう。

進んで行くと家電コーナーでコーヒーマシンの試飲が!

早速試飲を配るお姉さんの前に。
お姉さんニッコリ笑い私の前に小さな紙コップを置いてくれた。
買い物籠を脇に置き紙コップを垂直に咥えると真上を向く。
ブラックコーヒー一気飲み。
ちょっと熱いけどとても良い味。
香りも口当たりもまろやか。
紙コップをコーヒーマシンの乗ったボックス横のゴミ箱へ捨てる。
お姉さんの説明を聞くと何と今飲んだコーヒーがインスタントだとか!
美味しいわ、値段をチェックして黒蜜おばばに買って貰おう。毎朝トーストとインスタントコーヒーなのね私達。これがあれば生活に広がりを持てるわきっと。
お姉さんにお辞儀して次の売り場へ。

外国製の服や文具、蛍光色の洗剤、本当に色々な物が並んでいる、楽しいわこのスーパー。

お酒コーナー前でチリ赤ワインの試飲を配っている。
通り過ぎようとする私にラテン系のおばさんが
「使い魔さん飲んできな使い魔なら年齢関係ないよ!」
振り返る私にワインの入った透明なカップに入った赤い液体を差し出す。
咥えていた籠を床に置いておばさんの方へ顔を向けたら口の中にワインを流し込まれる。
思わずゴックン。
「美味しいだろ?」
と言われ頷く。
確かに程よい酸味が口に気持ち良い。肉料理と共に飲めばとても合いそうそれに値段も手頃。

おばさんにお辞儀して野菜コーナー奥にあるパンコーナーへ向かった。

そこでは、フィリピン系のお姉さんがチーズケーキの試食を並べていた。
このスーパーは天国?
チーズケーキを貰う人の後ろに並ぶ。
フィリピン系のお姉さんも順番が来た私の口に小さく切ったチーズケーキを放り込んでくれる。
んー!酸味と甘みが口いっぱいに広がり後から爽やかさがやって来る。美味しいわこのチーズケーキ。

チーズケーキを食べ終え肉のコーナーではアメリカビーフの塩胡椒だけのステーキの試食!!
これ本当にアメリカビーフ?思っていたのと違う。赤身にしっかり味があり歯応えも柔らかい。
パックの中身、量が多いのが難点ね二人暮らしでは中々消費出来ない量。
量から考えるとお値段はリーズナブル。

ん?向こうでチキンの丸焼きの試食が!これも並ばねば、このスーパー天国どころか宝箱だわ私にとっては。

その後も鮮魚コーナーでサーモンの試食、野菜果物コーナーに戻りカルフォルニアオレンジ、缶のクラムチャウダー、ソーセージ、ラップに包んだブランド米を試食してシメにチョコレートを試食。

私、何しにここへ来たんだっけ?

そうそう塩よ!忘れてた。

香辛料が並ぶレーンの真ん中辺りに丸い筒に入り二個パックになっている”狂気の塩”を買い物籠に入れる。
私や他の使い魔ではここのカート押せないから特別に自分の籠へ入れてレジに行くのを許してくれてるそう。
使い魔が品物やお金を誤魔化したりすると契約魔法で罰を受けるしそもそも主人である魔女に嘘が付け無いのでお店にも信用されてる。
それに出口でレシートとと買い物のチェックをしている。
レジに買い物籠を置くとベルトコンベヤーで籠が動く、面白い。

ラテン系の男の人が私に笑いかけ、籠から会員カードを取り出しスキャンする。
塩をレジに通しガマ口財布からお金を出しお釣りをガマ口財布に入れ、会員カード、レシート、塩、ガマ口財布を買い物籠に入れ籠を私の口に咥えさせてくれた。
お辞儀をして目の前のフードコートへ。

ピザを二枚買って終わりだけど値段が安くてビックリ。デリバリーピザなんて話しにならない安さ。
でも気になるのはホットドッグ。
飲み放題のジュース付きで二百円しない?
食べたいなぁ〜食べたいなぁ〜ホットドッグ食べたいなぁ。ジュースも飲みたいなぁ〜。

買い物籠を咥えながらフードコートのメニューを睨みウンウン唸っていたらシベリアンブルーの猫の使い魔さんに横から声を掛けられた。
「その買い物籠に首輪に付いている中国の古銭、君は黒蜜おばばの新しい使い魔さんだね?僕は黒蜜おばばの末の妹さんで先見さきみの魔女、水無月みなづきさんの元使い魔で水玉だよ。一体何をそんなにウンウン唸っているの?君は」
良く見ると水玉さんの首輪にも中国の古銭が。
同じ系列の魔女は同じ印を使うのねと思っていると後ろからクスクスと笑い声がした。

振り向くと不思議の国のアリスが本から飛び出してきた様な金髪の女の子が笑っている。
「御免ね笑ったりして真っ黒な使い魔さん。私は水玉の今の主人で先見の魔女、水無月の娘で”たると・deep‐blue”よ。たるとって呼んでね。黒田の家系は子供の名前に甘味系の名前を付けるから変な名前でしょ?貴女は蜜子叔母さまの名前から蜜を貰ったのよね?確か」

【水無月は6月30日に京都で食べられる和菓子。6月30日産まれの先程の魔女に名付けられた】

ブンブンと首を縦に振る私。
「蜜ちゃんで良いかしら?先程私が笑っていたのは蜜ちゃんがメニューのホットドッグが食べたくて仕方ないけど我慢してる姿が余りにも可愛いかったからよ。誰が見ても分かるわよ水玉判らなかったの?」
「えー蜜ちゃんホットドッグが食べたくて唸っていたの?そんなに食いしん坊な使い魔聞いた事ないよ僕」
「黒蜜おばばの使い魔よ?美味しい物ばかりお使いしてるんでしょ?食いしん坊にもなるわよ」
「良いなぁ黒蜜おばばの使い魔、色々な物が食べれて。今日このスーパーに来てるのは僕のキャットフードを買いに来てたんだよ。そんな食いしん坊の使い魔の事なんて思い付かないよ」
何だか恥ずかしい。
「蜜ちゃん買い物メモを見せて後は何を頼まれているの?」
メモをみてフムフムと頷くたるとちゃん。
「ピザ二枚お持ち帰りね。水玉、たまには私達もフードコートで食べて帰りましょう。蜜ちゃんも一緒にホットドッグを食べない?」

私は飛び上がって喜んだ。

たるとちゃんがホットドッグとピザを買って来てくれると言うので私と水玉君は席取り。

「蜜ちゃんは暗闇から暗闇に移動出来るそうだけど便利で良いなぁ」
と聞かれたのでテーブル裏の暗闇に入り直ぐ近くにあるゴミ箱裏から出て来たらビックリしている。
椅子に戻った私に水玉君。
「使い魔の常識を打ち破りますねー蜜ちゃん。恐れ入りました。歳は僕の方が上だけど”蜜の姐”さんと呼ばせて貰います」
平伏する水玉君。
その時丁度トレイにホットドッグを乗せた、たるとちゃんが帰って来て。
「プライドの高い水玉が蜜ちゃんに傅いてる《かしずいて》凄い蜜ちゃん偉いわ」
お持ち帰りのピザ二枚を買い物籠に入れてくれる。
「ピザは買い物籠に入れたから保温して帰ってもまだ出来立てみたいだろうから大丈夫。ホットドッグはトッピング全部乗せで平気かな?」
ザワークラウトにピクルス、微塵切りの玉ねぎ、ケチャップ、マスタードこれが山盛り!正に食べたかったホットドッグ!
私は首を縦にブンブン振る。
「良かた。ジュースは何味が良い?」
黒蜜おばばの姪なら通じるかな?と思い首輪から声を、たるとちゃんに飛ばしてみる。
「緑・炭酸」
急に声が聞こえて驚いていたけど
「緑のアレね判ったわ」
ジュースの紙コップを持ってドリンクバーへ。
「姐さん流石ですね普通の使い魔は炭酸苦手なんですがその上不思議な緑色のアレを飲むんですか?犬が?やはり並みの使い魔じゃあありませんよ」

ジュースを持って、たるとちゃんが席に座り私の前にストローを刺した緑のアレを置く。

では、ホットドッグを頂きま〜す。

一口噛むと大ぶりのソーセージから肉汁が口の中に溢れる。
ザワークラウトの甘酸っぱい味がアクセントになりとても良い。もちろんその食感も玉ねぎシャキシャキ。
美味しい。これで二百円しないなんて信じられない。
私の前でスマホのシャッター音が数回鳴る。
たるとちゃんが
「やだー!黒い甲斐犬の使い魔がホットドッグ食べてる信じられない〜。魔女仲間に写真LINEで送る〜」
魔女仲間のLINE何だか怖わ。
それよりも今は、ホットドッグよ!
水玉君は、プラスチックのフォークとナイフで小さく切ったホットドッグをゆっくり食べてる。
パンとソーセージにケチャップを軽く掛けただけの奴だ。
刺激に弱いのかしら普通の使い魔?

途中に緑のアレを飲む。
効くわこれ美味しい。

あっと言う間に食べ終え大満足。
口の周りにマスタードこれが付いている写真を撮られてビックリ。
笑ってる水玉君も。

口をペーパーで綺麗にして貰い”ご馳走様”と声を飛ばすと。
「満足した?蜜ちゃん知り合いになれて良かったわ。また遊びましょうね。今私は、魔道具を作る事を生業にしている黒蜜おばばの直ぐ下の妹”十勝餡子”叔母様こと粒餡の魔女に魔道具製作を教えて貰いにイギリスから見習い魔女修行の留学中だからまた会えるわ」

テーブル上のゴミを片付け近くに置いてある水玉君のペットフードの入ったカートに水玉君を乗せ出口へ向かう、たるとちゃん。

手を振るたるとちゃんと水玉君にお辞儀をして見送る。
籠を咥えると私も出口へ向かって歩いて行った。
帰ったらピザが食べれるぞ!!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品