甲斐犬黒蜜のお使い

牛耳

第15話

蜜の口元から覗く急激に伸びた牙と背後から立ち上がる真っ黒で見たこともない程強大な闇の魔力。
余りに強い魔力が放出された為に大きな屋敷全体がガタガタと震えだす。
サイドテーブルに置いてある買い物籠の中から奪衣婆の元でバイトしている鬼のくれた角が三人の大きな黒い鬼の影になり這い出してくる。

「蜜ちゃんを泣かせたのはお前等か〜?一族郎党皆喰らい尽くしてやるぞ〜弱い人狼どもめ!!」

その場に居る全員が恐怖で動けない中で蜜の手を握っている人狼君がとても良い笑顔で。
「もう浮気の心配してくれてるの?マイハニー!僕が蜜以外に興味を示す訳が無いよ。今迄全然モテなかったし僕の一族は一度番に成ったら一生添い遂げるんだ。浮気の心配なんて大丈夫」
そう言いながら握っていた手を解き蜜を抱きしめ蜜の頬にキスをした。

それを見た鬼の影達。
「よくも蜜ちゃんにキスなぞしたな!お前から喰らっやる!」
「鬼さん・”チュッ”・する・角・戻って」
と躍り掛かる鬼に蜜が右手を差し出すと三個の角が掌に飛び込んできた。

角一つ一つに可愛くキスをすると角が震える。
掌の角を着物の袂に仕舞うと袂から。
「キスして貰い袂に仕舞って貰えるなんて!我ら未来永劫蜜ちゃんの下僕ですぞ!」
と声がする。

「浮気・しない・なら・この世・地獄・無い・宜しく・お願い・旦那様」
「もちろん大歓迎だよ!我が妻、蜜」

人郎君、蜜の腰に手回し両親や集まっていた一族の幹部、白髪の横浜の魔女を見回し。
「たった今からこの人は僕の妻だ!異論のある者は居ないか?」

そこにいた全員首を横に振る。

薬瓶を握り締めていた横浜の魔女がやっとのことで言葉を発する。
「蜜ちゃん貴女は一体何者なんだい?ただの使い魔では無いんだろう?」

「私・地獄・使者・寿命無い・死なない・これ・地獄・腕輪」
宝珠の付いた地獄の腕輪を突き出す蜜。

体調万全の人狼君でも大変なのに又とんでも無いのが嫁に来たとそこに居る全員気が遠くなる。

そんな中で人狼君だけが寿命が長い人狼だがもっと寿命を伸ばす薬を作って貰おうと横浜の魔女をジッと見ていた。
そんな彼の目線を見た蜜。
「旦那様・老け専?・若い・物足らない?」
と検討違いのことを呟き周りを慌てさせる。

「蜜と末長く一緒にいられる様に寿命を伸ばす薬を横浜の魔女に作って貰おうと見ていただけさ。あんな干からびた中身がスカスカのミカンみたいな婆さんと蜜を比べるなんて有り得ないよ」

横浜の魔女が持っていた薬瓶が人郎君に投げつけられた。


          

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