異世界でひたすらコンティニュー!

双葉カイト

プロローグ

 


 彼女いない歴=年齢の俺、速井伝播(高校三年生、将来自宅警備員所望)は受験生最後の夏休みの今もゲーム内の女と戯れている。


 こんな俺もかつては3次元の彼女が欲しいと思っていたが、ほとんど可愛くもないし面倒くさいしでほとんど興味を無くしてしまった。


 それに対してゲーム内の少女はみんな可愛くて俺のこと一筋で居てくれるしで楽しすぎる!やはりネット(自分のコミュニティのみ)で言われているように2次元は最強なのだ!


 ただ親や世間に対しての風当たりは厳しく、「あんた何言ってるのよ!」と母親に呆れられ、「そんなことより受験勉強をしたらどうだ?だから偏差値が50切ってるんだよ!夏休み頑張らないとどこも受からないぞ!」と教師に30分も叱られていた。


 別に俺は大学には興味ないし、就職する気もない。最近では【ネットで月収30万稼げる!】と言った稼ぎ方もあるわけでわざわざサラリーマンとして働かなくてもいいからな。


 それよりもこうしてゲームの女の子から「好き!!」とか言われてるとテンションがアゲアゲでもっと彼女たちに尽くしたくなる。


 そんなある時、ギャルゲーのクール系委員長の女子を口説いているとメールの通知が来た。


「はぁ…またスパムメールか?もしくはメルマガか?」


 ココ最近は企業のメールか迷惑メールしか来てない。スルーしておきたいのだがあとで処分するのがかったるいのだ。


 しかし、差出人が今まで見たことない名前なのである。 スパムメールかと思ったが内容がかなり興味深い。


【日々パソコンやスマホで非現実な少女達と楽しんでいる君へ!もし興味あるなら異世界でゲームみたいに3次元でもハーレムを作ってみたり、自分の性癖に合う人と付き合ってみないか?】


 もしこれが本当だとしたら今すぐその異世界に飛び込んで女の子とイチャイチャしていたい。


 それにエルフとか獣耳っ娘などにも出会ってみたいし、こんな受験勉強とか就職とかの理不尽からも早く抜けたい!


 それにダメでも何もダメージがないし、ノーリスクなのだから試さない選択肢はないだろう。


 そんな思いから、【はい】を秒速でクリックした。


 クリックしたあと、唐突に眠気が襲ってきてそのまま意識を失った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 しばらく眠っていたのか、体がダルい。分かることはここは俺を部屋ではないこと、それと何者かに拘束されてる訳でもないことだ。


 なんとか体を起こすと目の前に変な禿頭ジジイがいる。


 そのジジイは俺を見ると、ニマニマと気持ち悪い笑みを浮かべている。


「ほほぉ…これはまた予想通りの男じゃなぁ。」


「テラきめぇ顔で見てんじゃねぇぞクソジジイがー!」


 思わずカチンと来たので、バシッとそのテカテカ光ってる禿頭を叩いてやった。


「っいてーな!何神様の頭を引っぱたいてくれてるんじゃぁー!」


 こいつが神様!?ウッソだろ!?普通こうゆうのは可愛い女神様って相場が決まってるはずだろ!?


「知らねーよ!と言うかてめぇみたいな神様なんて誰も呼んでねーし!可愛い女神呼んでから懺悔して土に還れや!!」


 あのクソ退屈な世界から抜け出せて、可愛い女神様に支えられながら異世界で悠々自適な生活ができるかと思ったのだが……。


 いざここに来たら、テラきめぇ禿頭の神様が偉そうにしているのを見たら誰だって禿頭を引っぱたいて、早々に神様チェンジしたくなるのは当たり前だろう。


「神様を目の前にして頭を引っぱたいたのはお主で初めてじゃい!他のものはみんな驚いたり畏敬の念を抱いたりしているというのに……。」


「いやジジイの事情なんて知らねって。てかよくそんな面で神様名乗れたな?ハゲできめぇ面のジジイなんてぜってぇ嫌われるだろ。」


 余程俺の言葉にダメージを受けたのか、自称神様は悲しそう表情で


「そうじゃのう……わしも可愛い女神様たちにチヤホヤされるかなと思っていた時期があったのだが……現実はこうしてお主みたいなクズな童貞と傷を舐め合うことしかできないのじゃ…。」


 流石にここまで落ち込まれると、いくら相手がクソジジイでも尻込みしてしまう。


 改めて落ち着くと、いくつか疑問が浮かんできた。


「そう言えばジジイ?あのメール送っていたのはあんたか?」


 それを自称神様が聞いた瞬間、ぱぁぁと表情が明るくなった。


「そうじゃ!!慣れないメール操作に戸惑いながらもなんとか出来たのじゃよ!!」


「メール打ち込んで送るだけになんでそんな達成感なんだよ!!あー…そう言えば神様の世界に老人ホームとか精神病院とかねぇの?」


 老人ホームという言葉に自称神様は不思議がっており。


「はて…そんなものを知ってどうするのか?これから異世界に行くのに必要ないと思うのじゃが?」


「あっ?決まってるだろ。あんたをそこにぶち込むためだよ!」


「わしまだそこまで年取ってないしボケてないぞ!?」


 このジジイ自信とかは1人前だな。しかし、ここでこんなコントをしてる場合ではない。


「あと、現実世界の俺どうなってるの?いきなりこっちに来たからわかんねぇんだけど、ちゃんと生きてる?」


 あの時はまだ一応生きていた。だが、今はここにいるってことは現実世界の俺はどうなってるのか気になるのだが……。


「あー…そこら辺は不具合がないようにちゃんとしてあるぞ。だからあそこの世界のことは気にせんで良い。」


 まぁ…そこら辺は自称神様がなんとかしてくれただろう。心配事もなくなったしそろそろ例の異世界に行こう。


「んで早いところ俺をハーレム異世界に送ってくれね?もう待ちきれないんだよこっちは。」


「お主には言いたいことがたくさんあるのだがまぁいい……。まずはルールと能力について説明するとしようか。」


「ルールと能力?」


 異世界ならではのルールがあるのか?てっきりなんでもありかと思っていたのだが、


「流石にお主がそのまま言ったとしても決してハーレムどころか彼女すら出来ん可能性がある。だからちょいとばかしチート能力を授けようと思うのじゃ。」


「色々と余計なことを言ってるような気がするが……まぁチート能力は欲しいわな。」


「まずはチート能力について説明しよう。と言ってもゲームのコンティニューみたいなものだけどな。」


 コンティニューか……そうなると心配なのは残機数だ。このハゲは意地悪そうだから無限コンティニューなんてさせなさそうだし。


「なぁ…あらかじめ釘を刺しておきたいのだが、コンティニューは何回でも出来るのか?」


「ああっ!残機無限のコンティニューだ!だからせこせこせずに突撃するがよい!」


 これはありがたい。リスクはできるだけ無いに越したことはないからな。


「だがコンティニューがあるということはゲームオーバーも当然ある。ルールというのはどのような時にゲームオーバーになりコンティニューするのかというものだ。」


「まずは、お主が何かしらの形で命を落とした時。これは当然ゲームオーバー扱いになる。」


 言われなくても分かるがな……流石に死んでそのままコンティニューできないなんてことあったら欠陥品だろう。


「その次に、女子からの評判が最悪になったりとかでどうやっても逆転ができない、あるいは高難易度過ぎて詰んでいる状態などの場合も強制的にゲームオーバーになるからぞ。」


 流石にそこからどうにかすることは難しいからな……。


「大まかなところはそれぐらいだな。ほんじゃぁ頑張りたまえ。」


「言われなくても頑張るわ!ぜってぇハーレム作ってやるから覚悟してろよ!!」


 意気揚々と立ち上がり、そのままゲートらしきものの前まで行く。


 よし……これからが……俺の望んだ異世界……そしてハーレム!獣耳っ娘!待ってろよ!俺が絶対に手に入れてやるからな!!


 グルングルンと体がゲートに吸い込まれていく。そしてそのまま目を閉じ、身を任せることにした。

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