非現秘怖裏話
懐かしき体育祭
「……それでここは大学入試に良く出題されていますので、ちゃんとよく覚えておくように!」
休み時間が終わった後、私のクラスでは古文の授業を受けていた。
授業開始から約30分が経過しているが、体感的にはもう1時間ぐらい経っている。要するにそれほど私にとってこの授業がつまらないのだ。
一体何が楽しくて昔の人の自慢話や、恋愛事情なんてものを読まなくてはいけないんだ……。しかもよく分からない単語も習っておかないと全く読めないし……。
正直大学入試に良く出ると言われてなければ、覚えるつもりも読むつもりもない。
「それで、この主人公は愛しい人である女性に恋文を届けます!ここから物語のクライマックスへと繋がるのです!」
……あともう1時間もこのどうでもいい話を聞かされるとなると、既に頭を抱えたくなってしまう。
こんなことをするぐらいなら、都市伝説の一つでも解明した方がよっぽどマシである。
そんなことを思いながら、私はこの地獄の1時間を過ごしたのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふぁぁぁ〜……終わった〜……。」
あれから1時間……気が遠くなりそうな程の時間だったが、なんとか寝ることなく過ごすことが出来た。
そして時間割を確認すると、この古文の授業の後は軽いホームルームだけなので、気が楽である。
「確かにあの先生の授業って眠くなるよね〜……。」
そしていつの間にか私の隣にいる綾子ちゃん。気配も無しにここまで来れるなんて忍者か何かかな?
「うん……あの古文の先生にもびっくりだけど、突然現れる綾子ちゃんにもびっくりするわよ…….。」
「突然現れるなんて失礼ね〜……。私は幽霊とかじゃないんだから、そんなに驚かなくてもいいじゃない!」
綾子ちゃんは少し不機嫌そうにしながら、私の瞳をじっと見つめている。
その様子だと私に何か言いたいらしいのだが、これだけでは全くわからない。
「ん〜……?どうしたの?綾子ちゃん?」
「そう言えばそろそろ体育祭が始まるんだけどさ〜……凛ちゃんはどこの種目に出るつもりなのー?」
体育祭か……私にとって1番嫌な思い出があるから、できるだけ出たくないんだけど……。
「えーとね〜……出来れば全部出たくないんだけど、綾子ちゃんから見て私でも出来そうな競技って何かない?」
「凛ちゃんにも出来そうな競技か〜……。これ凄く難しい質問だね……全く思い浮かばないし……。」
そりゃそうよ……だって私でも分からないんだし、完璧に分かっていたらそれはそれで一番怖い。
「そうでしょ〜?だから今回の体育祭は参加するのをやめようかなって思ってるわ。
それに今は受験期だからね。運動なんかしてる暇なんて無いわよ。」
『受験期』という便利ね言い訳をしつつ、体育祭をバックレようとすると、
「受験期だからって体育祭サボっていいことにはならないぞー?」
いつから居たのか分からないが、小麦肌でショートヘアの髪型をした女性にその事を突っ込まれた。
見る限り運動部の人だと思うが、全く名前とか思い出せないし、そもそもこんな根暗な私と毎日運動してそうな彼女が交わることないから、多分高校時代の友達ではなさそうだ。
「おやおや……瑠璃ちゃんが来たかと思ったら、まさかの『茜ちゃん』が会話に混ざるとは思わなかったわよ〜……。」
綾子ちゃんがすかさず、ショートヘアの髪型をした彼女の名前を言ってくれた為に、わざわざ恥を忍んで名前を聞かずに済んだ。
「そりゃあんたらとあんまり話さないからな〜……ってそんな話じゃなくて、凛ってなんでそんなに体育祭を毛嫌いしてるのやー?」
「だって私は運動なんか普段しないし、そもそも運動神経なんて無いからね……。だからあなたみたいに運動の楽しさなんて何一つ分からないのよ〜……。」
とりあえず言い訳を沢山重ねて、なんとか彼女が私のことを諦めてくれるといいんだけど……。
最悪彼女が私の言い訳を全て論破した所で、私は体育祭当日に来なければいい話なのだが。
「確かに凛は運動とは程遠いところに存在しているけどさ〜……クラスでたった一人だけ体育祭に参加してないってのも、寂しくないのか?」
「別になんとも思ってないわ……。私はクラスメイトみんなが頑張っている間で、色んな本を読んでるし。」
実際体育祭なんかの無駄なことに時間を使うぐらいなら、家や図書室で色々な本を読み漁っていた方が私にとっては有意義だ。
そんな感じでしばらく体育祭について話をしていると、先生が教卓の前で立っている。
どうやらそろそろホームルームが始まるらしい……長くならないと良いのだが……。
「さてみんな御静かに!静かにしないとホームルームが何時までも終わらないからな!!」
先生は大声でクラスメイト達に注意をした後に、何やらプリントを配り始めた。
「今配ってるプリントは、一ヶ月後に行われる体育祭に対してのものだ!ちゃんと読んでおけよ!」
プリントの中身をよく読むと、体育祭の集合場所や時間などの重要事項が事細かに書かれていた。
しかし、このプリントを配るのが早すぎないか?普通は始まる三日前とかに、配るものだと思うのだが……。
「今日の帰りのホームルームはこれで終わりだ!ちゃんと寄り道せずに家に帰って、受験勉強頑張れよ!」
そんな私の疑問を無視するかの如く、この日のホームルームはかなり早く終わった。多分20分も経過してないだろう。
仕方ないので私は先程貰った体育祭に関してのプリントを、若干適当にしまいつつ図書室に行こうとした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やっぱりこうしている時間がとても落ち着くわ……それにしても高校の図書室にこれだけの本があるなんて思ってなかったわ……。」
あれから何事も無く図書室に着いた私は、早速『未解決事件総まとめ本』という、未解決事件に対しての憶測や当時の証言などがまとめられている本を読んでいた。
しかもこれ以外に図書室には、『UFOは実在した!?捜査隊に密着した65日』や『全ての借金はここから始まった』などと言った興味深いタイトルが、本棚に所狭しと並んでいる。
「一度でもいいからこれだけの本に囲まれた生活をしてみたいわね〜……。そしたら一生幸せに暮らせそう……。」
そんな願いを小さく呟きながら、本を読み進めていくと、不意に気になったことがあった。
「そう言えば……ここって夢の世界なんだろうけど、今回はどうやってここから出られるのかしら?」
確か前回は窓の光が私を包み込んで……気づいたら現実に戻っていたから……この世界の光に何かがあるはずだ……。
「……脱出方法はこの本読んでから考えることにして……現実の世界では今何時なのかな?」
分かっていることはこの夢の中の時間と、現実での時間はリンクしてない事だ。もしかしたらここの1秒と、現実の1秒も違うのかもしれない。
だから目が覚めた時に現実世界ではもう夜になっている可能性だってある。
その他にもこの夢の世界に関して様々な疑問が浮かび上がって来たが、現時点では何もわからない。
「……色々考えていたら疲れるし……どうせこのままこの世界で過ごしていたら、そのうち目が覚めるでしょ。」
この世界について考えることを放棄した私は、先程まで読んでいた本の続きを読むことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「んぅぅ……ここは……私のベッド……?ということはあの世界から出れたのね……。」
しばらく夢の世界で本を読んでいると、いつの間にかこっちで目を覚ましたみたいだ。窓から外を見るともう夜になっている。
しかし今回はどうやって目を覚ましたのかがよく分からなかった。
「結局あの世界は時間経過でこっちに戻るのかしら?だとしたら向こうで適当に過ごしていれば、こっちに戻れるのね。」
疑問が未だに解消されてなく、モヤモヤとした気持ちが残ったが、あの世界にずっと閉じ込められるなどの、心配はなくなったのでひとまずは安心できた。
「それにしても既に夜になってるって事は、かなりの時間私は寝ていたことになるのね……。」
こんな真昼間に長時間寝ていたのは、久しぶりな気がする。それと同時にこうしておけば、良かったなと後悔もしているが……。
「まぁ過ぎたことは仕方ない!まずは夜ご飯を作らないと!」
気持ちを改めて、夜ご飯に何を作ろうか考えることにした。
休み時間が終わった後、私のクラスでは古文の授業を受けていた。
授業開始から約30分が経過しているが、体感的にはもう1時間ぐらい経っている。要するにそれほど私にとってこの授業がつまらないのだ。
一体何が楽しくて昔の人の自慢話や、恋愛事情なんてものを読まなくてはいけないんだ……。しかもよく分からない単語も習っておかないと全く読めないし……。
正直大学入試に良く出ると言われてなければ、覚えるつもりも読むつもりもない。
「それで、この主人公は愛しい人である女性に恋文を届けます!ここから物語のクライマックスへと繋がるのです!」
……あともう1時間もこのどうでもいい話を聞かされるとなると、既に頭を抱えたくなってしまう。
こんなことをするぐらいなら、都市伝説の一つでも解明した方がよっぽどマシである。
そんなことを思いながら、私はこの地獄の1時間を過ごしたのであった。
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「ふぁぁぁ〜……終わった〜……。」
あれから1時間……気が遠くなりそうな程の時間だったが、なんとか寝ることなく過ごすことが出来た。
そして時間割を確認すると、この古文の授業の後は軽いホームルームだけなので、気が楽である。
「確かにあの先生の授業って眠くなるよね〜……。」
そしていつの間にか私の隣にいる綾子ちゃん。気配も無しにここまで来れるなんて忍者か何かかな?
「うん……あの古文の先生にもびっくりだけど、突然現れる綾子ちゃんにもびっくりするわよ…….。」
「突然現れるなんて失礼ね〜……。私は幽霊とかじゃないんだから、そんなに驚かなくてもいいじゃない!」
綾子ちゃんは少し不機嫌そうにしながら、私の瞳をじっと見つめている。
その様子だと私に何か言いたいらしいのだが、これだけでは全くわからない。
「ん〜……?どうしたの?綾子ちゃん?」
「そう言えばそろそろ体育祭が始まるんだけどさ〜……凛ちゃんはどこの種目に出るつもりなのー?」
体育祭か……私にとって1番嫌な思い出があるから、できるだけ出たくないんだけど……。
「えーとね〜……出来れば全部出たくないんだけど、綾子ちゃんから見て私でも出来そうな競技って何かない?」
「凛ちゃんにも出来そうな競技か〜……。これ凄く難しい質問だね……全く思い浮かばないし……。」
そりゃそうよ……だって私でも分からないんだし、完璧に分かっていたらそれはそれで一番怖い。
「そうでしょ〜?だから今回の体育祭は参加するのをやめようかなって思ってるわ。
それに今は受験期だからね。運動なんかしてる暇なんて無いわよ。」
『受験期』という便利ね言い訳をしつつ、体育祭をバックレようとすると、
「受験期だからって体育祭サボっていいことにはならないぞー?」
いつから居たのか分からないが、小麦肌でショートヘアの髪型をした女性にその事を突っ込まれた。
見る限り運動部の人だと思うが、全く名前とか思い出せないし、そもそもこんな根暗な私と毎日運動してそうな彼女が交わることないから、多分高校時代の友達ではなさそうだ。
「おやおや……瑠璃ちゃんが来たかと思ったら、まさかの『茜ちゃん』が会話に混ざるとは思わなかったわよ〜……。」
綾子ちゃんがすかさず、ショートヘアの髪型をした彼女の名前を言ってくれた為に、わざわざ恥を忍んで名前を聞かずに済んだ。
「そりゃあんたらとあんまり話さないからな〜……ってそんな話じゃなくて、凛ってなんでそんなに体育祭を毛嫌いしてるのやー?」
「だって私は運動なんか普段しないし、そもそも運動神経なんて無いからね……。だからあなたみたいに運動の楽しさなんて何一つ分からないのよ〜……。」
とりあえず言い訳を沢山重ねて、なんとか彼女が私のことを諦めてくれるといいんだけど……。
最悪彼女が私の言い訳を全て論破した所で、私は体育祭当日に来なければいい話なのだが。
「確かに凛は運動とは程遠いところに存在しているけどさ〜……クラスでたった一人だけ体育祭に参加してないってのも、寂しくないのか?」
「別になんとも思ってないわ……。私はクラスメイトみんなが頑張っている間で、色んな本を読んでるし。」
実際体育祭なんかの無駄なことに時間を使うぐらいなら、家や図書室で色々な本を読み漁っていた方が私にとっては有意義だ。
そんな感じでしばらく体育祭について話をしていると、先生が教卓の前で立っている。
どうやらそろそろホームルームが始まるらしい……長くならないと良いのだが……。
「さてみんな御静かに!静かにしないとホームルームが何時までも終わらないからな!!」
先生は大声でクラスメイト達に注意をした後に、何やらプリントを配り始めた。
「今配ってるプリントは、一ヶ月後に行われる体育祭に対してのものだ!ちゃんと読んでおけよ!」
プリントの中身をよく読むと、体育祭の集合場所や時間などの重要事項が事細かに書かれていた。
しかし、このプリントを配るのが早すぎないか?普通は始まる三日前とかに、配るものだと思うのだが……。
「今日の帰りのホームルームはこれで終わりだ!ちゃんと寄り道せずに家に帰って、受験勉強頑張れよ!」
そんな私の疑問を無視するかの如く、この日のホームルームはかなり早く終わった。多分20分も経過してないだろう。
仕方ないので私は先程貰った体育祭に関してのプリントを、若干適当にしまいつつ図書室に行こうとした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やっぱりこうしている時間がとても落ち着くわ……それにしても高校の図書室にこれだけの本があるなんて思ってなかったわ……。」
あれから何事も無く図書室に着いた私は、早速『未解決事件総まとめ本』という、未解決事件に対しての憶測や当時の証言などがまとめられている本を読んでいた。
しかもこれ以外に図書室には、『UFOは実在した!?捜査隊に密着した65日』や『全ての借金はここから始まった』などと言った興味深いタイトルが、本棚に所狭しと並んでいる。
「一度でもいいからこれだけの本に囲まれた生活をしてみたいわね〜……。そしたら一生幸せに暮らせそう……。」
そんな願いを小さく呟きながら、本を読み進めていくと、不意に気になったことがあった。
「そう言えば……ここって夢の世界なんだろうけど、今回はどうやってここから出られるのかしら?」
確か前回は窓の光が私を包み込んで……気づいたら現実に戻っていたから……この世界の光に何かがあるはずだ……。
「……脱出方法はこの本読んでから考えることにして……現実の世界では今何時なのかな?」
分かっていることはこの夢の中の時間と、現実での時間はリンクしてない事だ。もしかしたらここの1秒と、現実の1秒も違うのかもしれない。
だから目が覚めた時に現実世界ではもう夜になっている可能性だってある。
その他にもこの夢の世界に関して様々な疑問が浮かび上がって来たが、現時点では何もわからない。
「……色々考えていたら疲れるし……どうせこのままこの世界で過ごしていたら、そのうち目が覚めるでしょ。」
この世界について考えることを放棄した私は、先程まで読んでいた本の続きを読むことにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「んぅぅ……ここは……私のベッド……?ということはあの世界から出れたのね……。」
しばらく夢の世界で本を読んでいると、いつの間にかこっちで目を覚ましたみたいだ。窓から外を見るともう夜になっている。
しかし今回はどうやって目を覚ましたのかがよく分からなかった。
「結局あの世界は時間経過でこっちに戻るのかしら?だとしたら向こうで適当に過ごしていれば、こっちに戻れるのね。」
疑問が未だに解消されてなく、モヤモヤとした気持ちが残ったが、あの世界にずっと閉じ込められるなどの、心配はなくなったのでひとまずは安心できた。
「それにしても既に夜になってるって事は、かなりの時間私は寝ていたことになるのね……。」
こんな真昼間に長時間寝ていたのは、久しぶりな気がする。それと同時にこうしておけば、良かったなと後悔もしているが……。
「まぁ過ぎたことは仕方ない!まずは夜ご飯を作らないと!」
気持ちを改めて、夜ご飯に何を作ろうか考えることにした。
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