非現秘怖裏話
エピローグ 前編
6月29日 水曜日 午後1時
《未来メール》に関して色々あった次の日
この日は目覚ましを設定しなかった。
「ふわぁぁぁぁ……よく寝れたよ〜……。」
理由は今日の講義が四限からなので長々と寝ていても遅刻しないからである。
たまにはこういった息抜きみたいにのんびりと起き出すのもいいかもしれない。
「これから毎日講義を四限からにしようかな〜!そうしたら楽できるし〜。」
実際それが出来たら普段の生活がどれだけ楽になるだろうか……。けれどそうならないのが今の現実である。
まず必修科目が二限や一限に多くあり、どうしてもそこの時間帯には必ず講義を入れなければいけないのである。
それと講義の数も4限や5限の方よりも二限や一限の方が桁違いに多いのもあってほぼ毎日早起きを(自分の感覚では)しているのだ……。
「ちゃーんと起きたことだしお昼ご飯食べていきますか!!」
清々しい気分のまま、昼食を済ませて大学に向かった。
……………………
午後二時頃、かなり余裕を持って大学に着いた。
するといつも先に来ている千秋ちゃんから、
「今日は顔がイキイキしてるわね〜!何かいい事でもあったのかしら?もしくは二度寝でもしていたのかしら?」
「だってのびのびと寝れたからね〜。毎日こんな感じで登校できたらほんとにいいのに〜……。」
「えー……それだと色々体験出来ないじゃない……。折角大学生になったのに何もしないのは勿体ないって!」
大学生ねぇ……変わったことと言ったら高校や中学みたいに登校時間や下校時間が固定されてないぐらいだろうか。
大学生は時間が沢山あると先生から聞いていたのだが思っていた以上に忙しいのである……。
「分かってけどなかなか時間が作れないのよね……あーあ……1日の時間が36時間とかそれ以上になってくれないかなぁ……。」
「たしかに時間が増えたら色々やることは出来るけど……凛ちゃんの場合それでも時間が足りないって嘆いてそう〜……。」
私は普段千秋ちゃんからどう思われてるのだろうか……ひょっとしたらナマケモノと同類に扱われてそうだ。
「流石に12時間も増えたら時間が足りないなんてことは言わないわよ……。動画とか小説見たりしてもなかなか使い切れないわ……。」
「そう言ってるけど12時間なんてあっという間に過ごせるわよ〜。試しに休みの日とか外出たり日帰り旅行行ったりした時はそれぐらい時間経ってるし〜。」
「いつも思っているけど千秋ちゃんはどうやってそんなにやる事こなしているのかしら?どう見ても貴女のスケジュールが実行不可能なレベルなんだけど……。」
一日の時間はどんな人間でも24時間のはずなのに、千秋ちゃんは実に様々な行事などを何事も無くこなしているので、絶対に何かあるに違いない。
「いや〜……そんなに特殊なことなんてしてないよ〜。ただ単純に自分のやりたいことに一生懸命チャレンジしてるだけよ〜。」
これが陽キャの力ってことか……ここまで来るともう越えられない壁というものが的確であろう。
「あっ……凛ちゃん!そう言えば今日の《未来メール》は本当に来てないのかしら?ちょっと調べてみて〜。」
確かにちょっとした手違いで来ているかもしれない。そうなったら即座に会長に相談しよう。
メールBOXを開き、探してみたがどこにもあの《未来メール》のものは無かった。
「ええっ……本当にあのメールは来てないわ。やっぱり昨日のことは本当だったのかな〜……。」
これでよかったと思う安堵と本当に終わったんだと思う喪失感が同時に押し寄せてきた。
「来てないなら来てないでいいと思うわよ。この世の中には知らない方がいいことだってあるからね〜。
それに会長の言った通り、ここまで広まっちゃったらもう絶対に送ることなんて出来ないわよ〜。」
結構お気楽な感じで千秋ちゃんが私の肩を叩いている。
「確かにそうかもしれないけど……自分の中でまだ引っかかってるのよね……。
でも何も無い今そんな事言っても仕方ないわ。なら今のサークルで新しいネタを見つけないと!!
私は色々な超次元現象をこの目で見るためにこのサークルで色々しているのよ!だから千秋ちゃんも一緒に頑張りましょ!」
「うふふっ……凛ちゃんのそのやる気はとってもいいことなんだけれども……まずはちゃーんと4限の講義を受けないとね〜。」
丁度その時、講義が始まりを告げる鐘が鳴った。
「今その事を言わなくても良いと思うんだけど〜……。ちょっと憂鬱になったじゃない……。」
「あっはは!凛ちゃんごめんごめん〜。でも今日の講義はこれだけなんだし頑張ろうよ〜。」
ケラケラと笑っている千秋ちゃんを私は白い目で見つめながら、4限の講義を受けることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
4限の講義を終えて、今日もいつも通りに部室に顔を出しに行った。
今日の来ているメンバーは会長と葵さんと菫ちゃんだ。最近蘭先輩を見てないのだが向こうで忙しいのかな?
「おおっ!2人も来たことだし定例会と前回の定例会おさらいでも始めるとしようか!!」
前回の定例会のおさらい……例の《未来メール》の説明でもするかな?
「えーと……前回の定例会は『JK聖地は最高だぜぇ!!』って感じでOKだな!」
はて?そんな事あったかな?私が思っていることとは180度以上異なっているのだが……。
そしてそれに同調するように菫ちゃんが
「やっぱり会長さんも分かりますか〜!JKの服を脱がせるという背徳感がとっても気持ちがいいということが!!」
私が帰った後に何をしてたのだろうか……。
「それにあのゲーム結構アクションとかグラフィックがいいんですよね〜。あれは間違いなく良ゲーだと思いますよ。」
千秋ちゃんも千秋ちゃんであのゲームに対して解説してるし……。大体服を脱がせる時点でもう色々アウトだと思うけど……。
「おっ……前回そんな面白いゲームやってたんですか〜?私もそのゲームやってみたいですよ〜!」
あとなんか葵さんがめっちゃ興味津々でこっちに入ってきてるし……いよいよこのサークル大丈夫なのか?
「いや〜……せっかくいいゲームだしそんなチンケなモニターじゃなくて大画面で見てみたいと私は思うんだ!
なーので!!なんとプロジェクターを借りてきたのさ!!これでJKやJDのパンツやらなにやらが大画面で移されるぞー!」
会長何してるのですか……わざわざこんなゲームのためにプロジェクター借りたんですか……。
「会長さんやりますねぇ!!じゃぁ早速……やるとしましょうか!!」
菫ちゃんが大興奮でプロジェクターに色々と接続している。ほんとにやるつもりなのだろうか……。
「あとはプロジェクターの向きをここにすれば……おおっ!!映ったぞ!!」
そこには『AKBstripper2!』と書かれたタイトルのゲーム画面が映し出されていた。
なんというか……舞台は現代の風景である。ここからどうやって服を脱がせることになるのだろうか?
「ねぇねぇー?これどんなストーリーなのー?」
葵さんが画面を見ながら菫ちゃんに聞いていた。
「このゲームは……オタクと呼ばれている者の求めている全ての物が集結してると言われる聖地『アカバ』を救う物語よ!!
数年前……この聖地に魔物が現れてしまって……このままだとこの『アカバ』は混沌に貶められてしまうの!!
そんなことが起こらないようにその魔物を秘密裏に排除するためにこの主人公は暗躍していくストーリーよ!」
あまりにも設定壮大過ぎないかな?世界を救うなんて言ってるけどやってることはただの犯罪だと思うんだけど……。
「へぇ……聖地を救う物語ね……いいじゃない!!とっても興味をそそるフレーズじゃない!」
葵さんは何故か興味津々だし……。
「色々説明も済んだし……見てもらった方が早いから早速プレイしていきましょっと!」
少しゲームのロード時間を挟んだあと、まず現れたのは海パン一丁の変態男だった。
「菫ちゃん……なにこの変態は?」
これには私も突っこまざるを得なかった。いきなりゲーム画面にデカデカと海パン男がいたら流石にびっくりするだろう。
しかし、菫ちゃんは普段通りの感じで
「あー?これ?これはこのゲームの主人公よ!!服装は私が決めたの!いいでしょこれ!」
いや……『いいでしょ!!』って言われてもただの海パンにいいも悪いもないと思う。
けれど何故海パン……こんなのが街中を歩き回っていたら恐怖でしかない。
「海パンって……なんで服を着ないの服を!!これじゃぁただの露出狂じゃない!」
「服を着るのはリアルで間に合ってるわ!ゲームの世界ではむしろ裸でもいいぐらいよ!」
この感じだとリアルでも服を着たくないのかな……。色々とこの子の考えが掴めない。
「あと今って夏じゃない?そんな暑苦しいような服なんて着ないで身軽な方がいいと思うの!巷で有名な『クール・ビズ』って言うじゃない!」
「あー……分かる分かる!!私も家の中ではパジャマなんて面倒だから下着姿で過ごしてるし!!」
これは『クール・ビズ』とは言わないだろう……まず彼女は発案者に謝罪することから始めないと……。
あとさりげなく同意した会長さんはちゃんと家でも服を着てほしい。唯でさえ不摂生な生活送っているのにこれ以上ダラダラしていたら何が起きても不思議ではないと思う。
「まぁとりあえず今回はサブミッションを消化していこうかなって思ってるんですよ〜。
えーと……今できるのが『悪しきストーカーに逆襲を!!』と『BL友人での相談』と『メイドさんを脱がせ隊!』の3件ね。どれからやろうかな〜。」
明らかに最後のサブミッションの内容が危ない気がするのだがほんとにこのゲームは大丈夫なのかしら……?
「私は『メイドさんを脱がせ隊!』に一票!」
よりによって会長が危ないものを選択しちゃったよ……。
「それじゃぁ……私も『メイドさんを脱がせ隊!』に一票よ!!」
続いて葵さんも危ないものに一票入れてしまった。もうこれはこのサブミッション確定だろう。
今でも頭を抱えてる状況なのに、さらにカオスなことになってしまうのか……。
内心ため息をつきながらこのゲームの行く末を見守ることにした。
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