非現秘怖裏話
七日目後半
 ニコニコと微笑んでいる金髪の女性を前に私はしばらく戸惑っていた。
(この子が新しく入る新入会員なのかしら?)
どう見てもバリバリのリア充オーラを纏っており、ここの雰囲気には間違いなく合っていない。
そんな状況の中、会長がその子に
「君が新しく入る『甘利 菫』かな?いやはや待ってたよ!君が来るのをね!」
えっ?ほんとにこの子が入会してくる子なの!?
内心驚きまくりの私を後目に先程の金髪女子が、
「はい!!今日から入会することになりました『甘利 菫』です!皆さんよろしくお願いします!!」
そう言いぺこりと会釈した。態度も良ければ容姿も私たちより優れている。
しかし、ほんとに何故ここに来たのだろう?何か性格に難があるとかだろうか……。
そう考えていると、菫さんが怪しいことを言い始めた。
「やっぱり噂通り女の子しか居ないですね!いやはやこれからが楽しみですよー!」
ん?その噂は一体誰から聞いたのか?そしてその噂を目的にここに来たのかな?
やや人格に対して色々闇を抱えてそうだなと思っていると、
「そうだろう!これから様々な超次元現象が君を待っていることだ!楽しみにしたまえ!」
会長らしくカッコつけて難しい言葉を使ってドヤ顔をしてる彼女に対して
「なるほど……女性同士で深夜の超次元現象が巻き起こるわけですね!私……もう我慢出来ないです!」
完全に意味を間違って理解してる菫ちゃんを見て既に目眩がする。
あぁ……この人完全にアッチの方の人ですねこれは……。人格のヤバさ以上に自分の身の危険を感じてしまう。
これだけでも十分にカオスなのに、
「こんにちはー!今日ここのサークルに新入会員がいるというニュース……ってなんで菫さん!貴方が居るんですかー!!」
さらにこのカオスな状況をより混沌に落とす人物が現れてしまった。
「おやおや、誰かと思いましたら貧乳チビつるぺたマスコット幼女さんの広美さんではあーりませんか!」
菫ちゃんは広美さんと知り合いなの?ちょっとばかり広美さんの交友関係が心配である。
「身長と胸に関して悪口言い過ぎてない!?一個上の先輩に対していい口答えですねぇ!!」
実際、身長や胸のことに関しては年齢的にはもちろん一般の大学生よりも下なのは本当ではあると思う。
「一個上の先輩と言っても元の話じゃないですか〜。今はここのサークルに所属してるので関係ないです〜。」
あー……菫ちゃん元々は「ニュースまとめクラブ」の一員だったのね……。辞めた理由はもう想像は付くが……。
「まさか……新たにこのサークルに所属する人ってのは貴方のことなのねー!折角のネタが手に入ったと思ったのに……。
その肝心のネタがこのパツキン変態似非欧米人なんて3流以下のものだなんて残念ねー!」
広美さんが怒りと憎しみでとんでもない顔になっている。人間って本気でキレるとあんな感じになるのだろうか……。
「少なくてもつるぺた幼女よりもネタにはなるとは思いますよ〜。
それに貴女だってゲームキャラ作る時に必ずと言っていいほど胸は巨乳だし身長も高めにしているじゃないですかー!」
少なくても空想の世界であるゲーム内では巨乳で高身長になりきりたいという深層心理が働いているのね……。
「そんな貴女だって女性の癖に、何故か男キャラ作ってるよね!あれですか?外側は女性なのに中身はおっさんって奴だよね!
今からでも性転換して男になってきたらどうかなー?中身おっさんだし違和感無いって!」
なんか話題がどんどんズレ始めている気がする……あと既に私と千秋ちゃんが話題に入れなくて空気になってる……。
このまま帰ってもバレなさそうなのでもう帰りたい気分だ。
「へぇ……広美さんは男キャラを軽視してるのですね!これは戦争事ですよ!!今から貴女に対して男キャラの魅力を刷り込んで洗脳させてあげますからね!!」
そんな下らない理由で戦争起こすのか……百歩譲って戦争事にするのはいいがここではやめてほしかった……。
「そうだぞ!!よく言ってくれた菫!男キャラの素晴らしさが分かる理解者がここに居るとは思ってなかったぞ!!」
そして会長が火種を広げてしまった。一体なんてことをしているのか……。
さらに売り言葉に買い言葉と言った感じで今度は蘭先輩が
「それは違います!会長!貴女こそ女性キャラの魅力が分かってませんな!この状況ですから今日でどちらがいいか白黒付けましょうか!」
「蘭さんの言う通りです!こんなパツキン似非欧米人が信仰してる男キャラよりも女性キャラの方が魅力的なことを一から十まで教えこんであげますからね!!」
こうして第一次キャラ戦争が勃発していったと……今思ったがこれを記事にしたら人気出るのでは?
しかし……今はこの戦争を見守るよりも絶対に帰宅した方がいい。留まっていたら巻き込まれるに決まっているからだ。
「ね……ねぇ凛ちゃん?今一緒に帰らない?」
並々ならぬ雰囲気を掴み取ったのか千秋ちゃんが私を見つめてくる。
もちろんここは帰宅一択であろう。わざわざ残る理由がない。
「ええっ……何かに巻き込まれない内に帰りましょ……。」
私と千秋ちゃんはキャラ戦争の激戦区からこそこそと逃げるように退散した。
ちなみに葵さんは
「男でも女でも私は自分に合う子がいいかな〜。」
この状況の中でかなり呑気なことを呟いていた。それによくこの戦況の中で逃げずにいられるそのメンタルがすごい。
【帰り道】
「追っ手とかメールとか何も来てないわよね……?」
先程私たちは部室からこそこそ逃げることが出来たのは良かったが、いざ成功しても連絡とか来ないか心配になるのだ。
「大丈夫だって凛ちゃん!ずっと確認してるけど何も来てないし!」
それならよかった。あそこで戻ってこいなんて言われてもこっちが困るだけだ。
「まぁあの戦争は明日にはもう収まってるでしょ!とりあえず今日は帰って早く寝ましょ〜……。」
実際その通りではあるが……まぁ明日も大学あるし早めに寝ておこう。
「ええっ……なんだか心配していたのが馬鹿みたいに思ってきたわ……。それじゃぁまた明日大学で会いましょ。」
「うん!ちゃーんと明日も遅刻せずに来てねー!凛ちゃん!」
遅刻はするつもりないんだけどなぁ……。こればかりは明日の自分に聞いてみるしかない。
そんなこんなで会話をしつつ、駅で千秋ちゃんと別れた。
また明日も大学あるし……早いところ夏休みになってくれないかなぁ……と思いながら今日も電車に揺られていた。
コメント