非現秘怖裏話

双葉カイト

7日目前半

 


 6月27日 月曜日


 午前8時


「うぅ……眠い……。」


   昨日の《未来メール》での死亡事故のニュースが頭から離れず、あまり寝れなかった。


「今日もメールは来てるのかなぁ……?」


   不安で押しつぶされそうなプレッシャーを感じながらメールBOXを覗いてみると


「うわ……今日も来てる……。」


   恐る恐るその内容を見てみると、


 《私たちが……絶対に成し遂げるから。》


「………なんだろ?」


   メールを隈無く見たが、これしか書いていなかった。


「とりあえず《お前は今日でどうやっても死ぬから〜》みたいなやつじゃなくてよかったわ……。」


   ここで死亡報告なんてされたらその時点でショック死してしまいそうである。


「まっ……何もなさそうだし大学に行きますか!!」


  某会長みたいな留年ギリギリにならないように大学に向かうことにした。






【大学】


   午前9時半頃


   講義の教室に着いて、ちょうど奥の方に千秋ちゃんを見つけた。


   いつも通り彼女の隣に座ると何故かじーとと見つめられている。


 こうやって見つめられるとかなり不気味なので理由を聞いてみることにした。


「そんなにじーと見つめてどうしたのよ?千秋ー?」


「おおっ!!ほんとに凛ちゃん生きてたー!」


  私を幽霊だと思っていたのか?冗談としてもかなりきついと思うのだが……。


  少し苛立ったので、むすっと不機嫌なフリをしていると、


「いや〜……凛ちゃんごめんって〜……。流石に死んでるとはほんとに思ってないから〜……。」


「そもそもなんで私が死んでる扱いになっているのよ……。」


「いや〜……最近なんとかメールでの死亡事故が起きたじゃない?凛ちゃんもその被害にあったのかなって。」


 たしかにそんなものはあったが……。そしてそれに怯えていたことも事実だし……。


「そうね……もし私が幽霊なら一生千秋ちゃんに取り憑いてみるのもいいかも!毎日ニコニコして見送ってあげるー!」


「流石にちょっと勘弁して欲しいな〜……。凛ちゃんの愛情が重すぎるよ〜………。それと凛ちゃんまだちょっと怒ってる?」


   割と冗談になってないのか千秋ちゃんの目が笑ってない。それにずっとこんな感じだと雰囲気も悪いのでそろそろ許しておこう。


「そんな訳ないじゃない、もうとっくに許してるわよ。あと心配してくれてありがとうね。」


   私はいつもこんな感じで許しちゃうので我ながらちょろいなぁと思っている。


「えっへへ!そんな優しい凛ちゃんが好き好き〜!ってことは置いておいて、そう言えばサークルに新しく入る子が居るって聞いたー?」


   え?この不人気そうなサークルに今の時期入る子が居るのがびっくりよ……。


「それ本当?ちなみに何年生なのかしら?」


「ん〜……確か私たちと同期だから1年生ね!!どんな子が私も楽しみよ!」


   私も楽しみである。今度こそ真面目系な女子がいいな〜……なんてちょっぴり思っていたりしてる。


「という訳だから今日は絶対にサークル来いよ!!って会長さんが言ってたわ!」


   会長も張り切ってるね〜……。あの人がやる気になることなんてほとんどないからこれは行くしかない。


   と会話が弾んだ時に、始まりの鐘が鳴った。


「ほらー!!講義始まるから静かにしろよー!」


(ちょうど盛り上がっていたところなのに……。)


    そんなこんなで講義が始まったが、新入会員のことで頭がいっぱいになり集中出来なかった。




   なんやかんやで二限が終わった後、


「そう言えば今日の三限が休講らしいわよ!!というわけで早速サークル行かない?」


   千秋ちゃんから思わぬ報告を聞いた。三限ないなら二限も休んでしまえばよかったよ……。


「それ朝教えて欲しかったな〜……。そしたらお昼家で食べてから行けたし……。」


「その時凛ちゃんに教えたらサボりそうだからあえて教えなかったのー!!」


   流石長年の友人……完全に私の思ってることを読み切っている……。でも朝は眠いからたまには勘弁して欲しいな〜……。


「まぁここでそんなこと揉めていても仕方ないし……ちゃちゃっと食堂で何か食べてから行きましょうか!!」


   新しい新入会員に胸を踊らせている私と千秋ちゃんは早速お昼ご飯を食べることにした。






【食堂】


「今日はどれにしようかな〜!」


   千秋ちゃんがニコニコとした笑顔で食堂のメニューを見つめている。


   大体千秋ちゃんの選ぶメニューは変なものばかりなのでこの時点でもう心配であるが……。


「よし!!今日はこれ!!」


  そうして千秋ちゃんが指をさしたものは……なんと何も変哲もないカレーだった。


「えっ?ほんとに?」


   思わず率直な感想を呟いてしまった。


「ええ?なんで凛ちゃん驚いてるのかしら?私なにか驚くようなことをしたっけ?」


    だっていつもならまたゲテモノメニューを頼んで撃沈してるではないか。


   まさかあの時のトラウマがあったとか?


「いつもの千秋ちゃんなら新メニューを真っ先に頼むはずじゃない?それなのにどうして普通のものを頼むのかなって。」


「そうね!その事に関しては気づいたことがあるのよ……。」


   そう言うと何やら神妙そうな表情で私に対して、


「限定メニューは必ずしも当たりとは限らないことが分かったのさ!!」


「それ今気づいたの!?」


   ただいま大学1年生である千秋ちゃんは、限定メニューの事実に今気づいたらしい。


「えっ!?凛ちゃんはもう気がついていたの!?」


「うん……かなーり前から。」


   小学生の時にしそ味のコーラを飲んだ時の感覚は今でも忘れられない。


   あの味で良しと思った人の脳内を見てみたいぐらいだった。


「さっすが私の大親友ね!!やるじゃない!」


   褒められるレベルが低すぎる……。


「まぁそんなわけで早いところ食べましょ!」


   ケラケラと笑う千秋ちゃんを横目に私はうどんを注文した。


   今日のうどんも普通に美味しかった。




【部室】


   ドアを開けると、何やら室内がデコレーションされており賑わっていた。


「おっ!2人とも来たのか!いいぞー!」


   とっても嬉しそうに会長が出迎えてくれた。


「それに今日は新しく会員が来てくれたんで、試しにこんなデコレーションをしてみたんだ!」


   ウキウキで自慢する会長と、


「その内装をするのに結構行き当たりばったりでしたけどね……。」


   苦笑いしている蘭先輩


「でもでもなかなかいい感じに完成して凄いですよ!!」


   このデコレーションに大絶賛の葵さん。


   とりあえずこのデコレーション計画は前もってという訳ではなく、思いつきなんだなと言うのがよくわかった。


    改めて内装をよく見てみると、オカルトネタとしてベタな骸骨が様々な所に飾られており、壁には血糊みたいなものが塗りつけられている。


    あと何故か知らないが『威風堂々』と書かれた掛け軸がある。間違いなくオカルトには場違いであろう。


    私が内装をよく見ていると突然千秋ちゃんが、


「そう言えば、新しい新入会員はまだ来ないのですか?」


    と質問していた。


「ん〜……そろそろ来るはずだと思うんだけど……。」


   会長がうーんと悩んでいると、ドアが開く音がして何者かが入ってきたようだ。


「失礼します!!ここが『非現秘怖裏話』の活動場所で間違えないでしょうか?」


    金髪で赤いカチューシャを付けたその女性はニコニコと私たちを見つめていた。








   






   


  

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