非現秘怖裏話

双葉カイト

六日目

 


    6月26日 日曜日


    午前10時頃、


   スイッチを入れられたように不意に目覚めて、今の時刻を確認すると午前10時になっていた。


「えっ!?もうこんな時間なの!?」


  自分が想像していた時間よりも大幅にオーバーしていて、慌てて起き出した。


「結構早く寝たはずなんだけど……かなり寝過ごしてたわ……。」


   今の時刻に呆然としながら、今日はどんなことをしようかと考えていると、昨日のことを思い出した。


「あー……昨日1日あれにかかっていたからお腹減ったし……あとベタベタするからお風呂にも入らないと……。」


     昨日はレジュメなどの整理で1日終わってしまい、夜ご飯やお風呂などをすっ飛ばして寝てしまったのである。


「はぁぁぁ……とりあえずお風呂には入らないと流石に人間として何かを失う気がする……。」


    ボサボサの髪に汗まみれの体では人と会いにくいし、感触として気持ちが悪い。


   とにかく急いで脱衣場に行くことにした。


    脱衣場に着き、試しに興味本位で自分の姿を鏡で見ると、予想を超えたことになっていて驚いた。


「ほんとに今日休みでよかったよ〜……。このまま大学言ったら千秋ちゃんになんて言われるか……。」


   今日が休みであることに感謝をして、さっさとシャワーを浴びることにした。




    急いで朝シャンを終えて、さっぱりすると自然と気分が上向きになった。


「やっぱりシャワーって偉大だよ!暗い気分とか一気に晴れるし! 」


   こんな晴れ晴れとした気分になれたのは久しぶりだ。


「ん〜……あとは何を食べようかな〜?そもそも冷蔵庫になにか入っていたっけ……?」


    そして朝ごはん兼昼ごはんをどうしようかと考えていた時に、メールの着信音が鳴った。


   だが、今はメールよりもご飯のことが大事なので無視することにした。


「ーーどうせいつでも見れるし後で見るか……。」


    そんな言い訳をしつつ、冷蔵庫を見ると物の見事に何も無い。


「とりあえず何があるかなー? って何も無い!? 」


   冷蔵庫を開けると、物の見事にすっからかんだったのである。


  そもそも最後の買い出しを何時したのかさえ覚えていないのだからどうしようもない。


「とりあえず買いに行くしかないよね……。  さて何を買おうかな。」


    まずは買いたいものをメモに書いてみることにした。


「えーと、まずはカップ麺とか冷凍食品でしょー?あとは2リットルのジュースに色々と雑貨も切れかかってるし……。 」


    全てメモに書き起こしたら、かなりの文量になったので目眩がしてきた。


「まさかこんなに買うものがあるなんて……全部買うのは無理だから雑貨や飲み物とかはネットで済ませるとして……。 」


   問題は今日のお昼と夜ご飯である。こればかりは自分で買うしかない。


「ゴタゴタ言ってても仕方ない……まずはスーパーに行かないと……。」


    ちらっと時計に目を向けると、時刻はもう12時を回っており、日差しが窓越しにサンサンと照りつけていた。


「考え事もほどほどにしておかないと……!」


 時の進む速度に苛立ちながら、素早く着替えを済ませた。






 午後1時頃、ようやくスーパーに辿り着いた。


「やっぱりこの時間帯は混んでるか〜……もっと早めに来たらよかったよ……。」


    店内は人で溢れかえっており、やはり予想通りの光景になっていた。


「とりあえず買いたいものだけ買って今日は帰ろ……。」


   これだけ人が多いと、買って帰るだけで相当な時間がかかりそうだ。


  そして買い物を済ませ終わった時にはもう3時を過ぎていた。




【家】


「ふぃぃぃ〜……外が意外と暑かったよ……。」


 まだ6月だと言うのに外はもう軽い夏日みたいな暑さになっていてびっくりした。


「これはもう扇風機とかエアコンの出番も近いうちに出てきそうね……。」


 色々詰め込んでいる押入れから取り出す行為をまたしなくてはならないと考えると面倒になる。


「てかもうお昼余裕で過ぎちゃったし……もうこのまま夜まで我慢しようかな〜……。」


 そんなぼやきを呟いていると、突然携帯から着信音が鳴り響いた。


「うわぁ!?……びっくりしたぁ……。誰かから電話が来るのなんて久しぶりだなぁ……。」


   誰がかけてきたのかと見てみると、葵さんからだった。


(珍しいなぁ……あの人が電話してくるなんて……いつもメールで適当に済ませてるのに。)


「はい……もしも……。」


『凛さーん!!生きてるー!?生きてますー!?』


「生きてるわよ!!てかそんなに大声で叫ばなくても聞こえてるから!」


   相手側に叫ばれたため、ついこちらも大声で対応してしまった。


   だが、こちらの声が聞こえたのか葵さんのトーンが落ち着いていた。


『おおぅ……凛ちゃん生きてる?生きてるよね?まさかUFOに連れ去られて色々された後に人生の幕を下ろされてないよね?』


   だから人を勝手に殺すなって……そもそもUFOの下りはこれで2回目だし……。


「まだ人生これからなのに幕を下ろされたくはないわよ!!それで要件は何なのかしら?結構切羽詰まっていたみたいだけど……。」


『だって色々メールで連絡したのに返信一切くれないんだもの……心配しましたよ〜……。』


   メールを送ってくれていたのね……。ちゃんと確認しておけばよかった……。


   ちょっと罪悪感を抱きながら彼女の話を聞くと、


『だってニュース見ました?死亡事故ですよ死亡事故!!《未来メール》で人が死んだんですよ!しかも何件も!』


   え?死亡事故?あれは未来の自分が送ってるものではないのか?


「どうゆうこと?じゃぁ……あのメールは一体誰が送ってるのかしら?」


『それは今警察の方で調査してるらしいけど……まだ何もわかってないのが現状よ……。』


「そうなのね……とりあえずメールのことについて今は何も出来ないから様子を見るしかないわ……。」


   まだメール内容を確認してないが……このことを聞いたらそれを見たく無くなった。


『まぁね……でももし凛ちゃんのメールに《今日君は必ず死ぬだろう》とか来てたら私とか千秋ちゃんに必ず伝えてね?』


「ええっ。でも具体的にどうするつもりなの?未来メールに対しての対処法なんて無いと思うけど……。」


『そこは安心したまえ!私と千秋ちゃんの完全サポートの元で君を死なないように見守ってあげるから!』


   確かに心強いが……それで果たして死の未来から逃れることが出来るのだろうか……。


『まぁ長々と話してたけど、とりあえず凛ちゃんが生きててよかったよ!じゃぁまた月曜日にまた会おうね!絶対に休まないでよね!!』


   そう言われ、一方的に電話を切られた。


   もし月曜日休んだら葵さんからの電話のラッシュが来るのだろうか……。それはそれでめんどくさい。


「とりあえずメールを確認するか……果たしてなんて書いてあることやら。」


   メールを開き、早速未来メールを見つけて内容を確認すると、


 《もっとみんなと一緒に居たかった。
 つまらないこととかも沢山あったけど、
 時の流れは残酷で、もう何も出来ない。
 いったいなんでこうなったんだろう?
 機械のようにもしなれたら、
 退屈とか色々考えたり思ったりしないかな?
 痛く辛く思える心はもう欲しくない……。》


「ーーーなにこれ?なにかのポエム?」


   色々頭の中にはてなマークが浮かんだが、とりあえず今は死ぬことはないだろう。


「というか未来に関しては今日はスルーなのかしら?まぁいっか……とりあえずニュースでどんなことになってるか調べてみよう。」


 早速、葵さんが言っていたニュースについて調べると3、4件出てきた。


『カーブミラーにバイクが激突。乗っていた男性は死亡。


 今日の朝6時頃、〇〇市にある曲がり道に「壊れたバイクがある!」と警察に通報がありました。


 直ぐに救急隊が出動し、病院に運ばれましたが男性の死亡が確認されました。


 この男は出かける30分前に、SNSに自身に送られていた例の《未来メール》の内容を写真にアップをして


「このバイク乗車歴10年の俺がカーブミラーにぶつかるわけないだろ?この《未来メール》は絶対パチモンだなっ!」


 と投稿していたことが明らかになってます。


 警察はブレーキの故障やスピード違反を行っていたかなどを確認しましたが、特にそのようなことは無いと確認されました。


 それと同時に《未来メール》の出ところも調査する予定です。』


『生放送を行っていた住宅が火災、生主は死亡。


 今日のお昼頃、〇〇区にあるマンションから火が出ていると消防に通報がありました。


 火は現在鎮火されておりますが、マンションの大部分が焼け落ちるなどの被害が確認されております。


 この火災で男性1名が死亡、けが人はいないということです。


 またこの生主は自身に送られていた《未来メール》の内容を暴露した上で、


「俺はこの放送終わったら焼肉食いに行くぞ〜。」


 と余裕ある発言をしていたことがネット上で明らかになっています。』


「うーん……こう考えるとあのメールはかなり信憑性があると言っても過言ではないわね……。」


   とにかく今日は何ともなかったからよかったが……これからが不安で仕方ない。


   何故なら……《未来メール》という存在が本当になってしまったからだ。むしろ知らなかった方がよかったかもしれない。


   ネット上でも『kermera』についての議論が盛んに行われていた。


『あいつは神様なのでは?』とか『人知を超えた能力を持ったただの愉快犯』などと根も葉もないものが広がっている。


「とりあえず明日にならないと……分からないよね……それまで私が生きているといいけど……。」


 底知れぬ不安に押しつぶされそうになりながらも今日はなんとか生き延びられた。








 続く

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