非現秘怖裏話

双葉カイト

三日目

 


 6月23日、午前8時。


 携帯のアラームが部屋に鳴り響き、なんとか目を覚ます。


「ふぁう〜……もう大学か〜……ほんとに眠いしサボりたい……。」


 しかしサボったら千秋にまた弄られそうだ。それは嫌なのでなんとか起きて、朝ごはんを食べたあとにまとめサイトを眺めていた。


 ふと、スマホを弄っているとメールのことを思い出したので内容を見てみると


 《お昼はうどんにするべし。間違ってもスパゲッティを頼まないこと!!》


 と言った感じの心底どうでも良い内容だったが、一番下の行に


 《ここに未来はない》


 と書かれてあった。


 一言で言うとよく分からない。


 どっちにしても現段階では何も出来ないし、情報量が少なすぎる。


 そんなことを考えていたら、遅刻ギリギリになってしまったのでダッシュで大学に向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 なんとか駆け足で急いだおかげか、遅刻することなく講義に出ることが出来た。


「おっ!凛ちゃんおそーい!まさかまた夜更かししてたでしょー!」


 この様子だと千秋はちょっとご機嫌ななめな様子である。


 こうなると変に歯向かうよりは聞き流す方がいいので適当な返事をしておいた。


「うん……大学生活になってからやっぱり夜行性になっちゃったのよ。」


「むぅ……元々妖怪みたいに夜に活動してるのは分かっていたけどさらに悪化するなんて〜。」


 最近千秋の煽り能力がみるみる上手になっている感じがする。


 と言うよりも妖怪って……私が妖怪になっても誰にも気に止められなさそうなんだけど……。


「逆にちゃんと早寝早起き出来てる大学生がどれだけいるのよ……そもそも千秋ちゃんだって昨日夜更かししてるの分かってるんだからね!」


「な……なんで分かったのよ!?証拠はあるの!証拠は!」


 あまりにもわかりやすい誤魔化し方である。そもそも証拠があるから聞いたのだが。


「だって昨日のSNSに『カラオケオール!!これぞ大学生の醍醐味!』ってわざわざ上げていたじゃない。」


「わぁぁぁぁ!!なんで凛ちゃん私のSNS知ってるのー!」


 だって入学当初教えてもらったし。それと叫び声が大きすぎる!!


 あぁっ……周囲の視線が痛い。というか教師がこっち向いてるし何やら怒っている。


「こら!そこの2人!講義中に私語はしないの!!」


 思わず顔から火が出てしまった。出来ればもう教室から退出したい。


 この原因を引き起こした千秋は何故か寝た振りしてるし!


 そのような状況で約80分間を過ごした。やっぱりあのメールは役に立たないのでは……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「いや〜……酷い目にあったよ〜……。」


 例の事件を起こした容疑者Tが、しょんぼりしている。


 全く……それに巻き込まれたこっちの身にもなって欲しい。


 あのあと講義が終わったらすぐさま教室から出て半分逃げるように食堂にたどり着いた。


 しかし、食堂でお昼ご飯食べるのはなかなか久しぶりだ。さて何を食べようか。


「おっ!このフルーツミートソーススパゲッティってやつ美味しそうじゃない?」


 もしかして……また地雷を踏みに行くのかな?どう考えても外れだと思うのだが……。


「なんでそう思えるのよ……普通に美味しいわけないじゃない。」


 そう言えばついこの間のカフェでもパスタ頼んで撃沈していたような……。


 こうもパスタ系のものには恵まれない。だからあのメールでもやめておけと言われたのか……。


「いやいや〜……分かってないなー、凛ちゃんは!このパスタはこの大学生徒発案でここの食堂で大推薦されてるから当たりに決まっているわ!!」


 あれー……この流れどっかで見たような見てないような……。


 とりあえずどっちにしてもこの状態の千秋ちゃんはどうしようもないので、せめて私だけでも逃げよう。


「そうなのね……でも私は普通にうどんを食べることにするわ。」


「やーい!南蛮チキン妖怪〜!弱虫りんりん〜!」


 なにか美味しそうな妖怪が誕生した。まずそれはバカにしてるのかもよく分からないが。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 しばらくして……。


「ナニコレ?」


 千秋ちゃんが真顔で目の前のスパゲッティ(?)みたいなものを見つめている。当然私に聞かれても、答えられるわけは無い。


 なにやらミートソースの上にこれでもかと大量のフルーツが乗っかっている。さらにソース自体にもクリームみたいなものが混ざってる。


「だからダメだって言ったじゃない……てかそれどうするのよ……。」


「食べるしかないけど……うちの大学ってもしかして常識外れなのかな……。」


 それに関してはYESとしか言えない。こんな料理を生み出して居る学生に、これに対してGOサインを出した学校側、どう考えても常識の範囲内……な訳ない。


「二口ぐらいで許してくれないかな……?もう食欲が無くなっちゃった……。」


 ふるふると震えながら切実に訴えかける瞳を前に私は厳しく言えるわけなく。


「そうね……あとでパンとか買いましょ。」


 うどんを食べながら、そんなことを呟いた。


 その後、講義を全部終えた私達は購買部に寄りどの菓子パンにしようかの話題に花を咲かせた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 《今日のサークル活動は特にないから来たい奴は鍵とかよろしくな〜》


 着信音がしたのでメールを見ると会長からメッセージが来ていた。


 何も無いのなら今日は帰って寝てしまおうか。最近寝不足気味になっているし。


「あ〜……今日はあっち何も無いのね〜。どうするー凛ちゃん?そのまま帰る?」


 菓子パンを食べ終わってご満悦な千秋が聞いてきた。


「ええっ、普通に帰ろうと思ってるわ。千秋ちゃんはどうするの?」


「んー?私は蘭先輩のサークルに遊びに行こうかなって思ってるわ〜。あそこたくさんゲームあるし!」


 相変わらず千秋は色々エンジョイしてる。普通の大学生ってこんなものなんだろうな。


「そっか…じゃぁ私は先に帰るわね。また明日会いましょ!」


「うん!お疲れ様!凛ちゃん!」


 千秋はニコッと笑顔を向けて私を送ってくれた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 今日は早めに帰ってこれた。お腹減ったので何か食べようと思ったのだが冷蔵庫にほとんど無かったため、適当にカップ麺ですませた。


「休みの時に色々買わないと〜……はぁぁ……。」


 ため息をつきながら、明日の準備をし寝ることにした。






 

コメント

コメントを書く

「ホラー」の人気作品

書籍化作品