非現秘怖裏話

双葉カイト

休題 ゲーマー先輩

 6月4日 火曜日


 あの事故物件(?)でのお泊まり会から2日後。


 あれから何事もなく、普通の日々を過ごしてる。ただ思うのは講義が怠いとか、そんな小さいことだろうか。


「よーし!そこだ!いけいけ!」


「なんとかここまで来れた…っていやぁぁぁ!!!」


「うわぁぁぁぁ!!これは辛い!!」


 今日もこのサークルは色々と賑わってる。


 なにやら千秋ちゃんがゲーマー先輩のクリアした苦行ゲーというものをやってるらしい。


 このゲーマー先輩の名前は金本 蘭。大学二年生であり、このサークルに2年もいる。さらにこことは別のゲームサークルにも所属してるらしい。容姿は黒髪のセミロングに、これと言って特徴のないメガネをかけた地味っ子である。


 私も地味っ子なんだけどね……せめて陽キャになりたかった。


 ここのサークルに来ようと思ったのは自身がホラゲーや謎解きゲームが大好きであり、会長に誘われて折角だからやってみようと思ったみたいだ。


 ただ最近はゲームサークルの方で、動画チャンネルを作ったらしくそっちに専念してるらしい。動画再生回数を伸ばすために、色々手を尽くしているみたいだが果たしてどうなるか……。


 そして、




「これはあんまりだよーーー!まさかほんとに最初のところまで戻されるなんてー!」


 と千秋が放心状態になっている。


 どうやら千秋ちゃんは、苦行ゲーを中盤辺りまで進んだものの、最初からになってしまったみたいだ。


 ちなみに私もやってみたのだが、この最初の地点から全く進めなかったので諦めた。


「まぁそんなこともある、私もここで5回も戻されたし……。」


「先輩よくクリア出来ましたね。私はもうここで心が砕けそうです〜……。」


 よく2人ともこんなゲームに夢中になれるわ、私にはこの気持ちは多分一生理解できないと思う。


 それに私はゲームをやると言うよりも見物したり、実況動画とかを見てる方が楽しい。


「それじゃぁ、次はホラゲーでもやるかしら?」


「どんなホラゲーですか!!」


「これよ!これこれ!」


 そうして蘭先輩が取り出したのは、なにやらゾンビを倒すゲームである。


「建物に閉じ込められた主人公が、その建物から脱出するゲームなんだけどその途中で様々なゾンビに襲われるのよ!それを倒しつつ脱出するゲームよ!」


 蘭先輩のありがたーい説明を聞き流しつつ、私はやらないので気にしないことにした。


「そう言えば凛ちゃんはゲームやらないのー?」


「あんまりやらないかな。アクションとか得意じゃないし。千秋ちゃんはゲームとか、やってるイメージないけど結構やってるのかしら?」


 実際ゲームよりも小説とか、本を読んだり動画を見てた方が私は好きなのだ。


「まぁね〜。アクションもやったことあるし、リズムゲームとかホラゲーもあるよ〜。」


 ほんとに千秋ちゃんの人生経験の容量は計れない。これが勝者(陽キャ)の余裕と言うやつか?




「というわけで早いところ始めましょう!千秋!」


 蘭先輩がワクワクしながらゲームを起動していく。注意書きに「このゲームには暴力的なシーンが含まれています」と書かれている。


「おおー!雰囲気でてるオープニングですね!」


 千秋がウキウキしながらオープニングのムービーを眺めている。


 私もムービーを眺めようと思った矢先にある人物に妨害された。


「いやー!あなた達のサークル確か事故物件に行ったんですよね!!是非感想をお聞きしたくて来ちゃいましたー!」


 このテンションが暴走してる見た目ちびっ子の三つ編み少女の名前は、秋田 広美。身長は小さいものの一応私より一個学年が上なのである。それと身長のことはタブーらしい。


 彼女はここのサークルの人ではなく「ニュースまとめクラブ」というサークルのブログで、様々な出来事をまとめてるサークルのメンバーだ。


 それと、ゲーマー先輩と会長に友好関係にあるらしい。ちょくちょくブログを見ている先輩曰く、そのニュースは面白いらしいが、


「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!お化けとか出ましたー?心霊体験しましたかー!」


 そのメンバーの1人がこんなやつなので、イマイチ信憑性に欠ける。


「そんな事言われても何も無かったですよ。普通にみんなで、温泉入っていたりしてたぐらいですから。」


 温泉と聞いた瞬間、広美の目がキラキラと輝き始めた。


「おおー!乙女だけの桃源郷ではないですか!広い温泉に乙女4人、何も起きないはずもなくやがてコイニハッテンシテ!なんてことがあるはずです!」


 ダメだこいつ、色々と頭がぶっ飛んでる。度合い的には会長といい勝負出来そうだ。


「そんなわけないですよ。大体同性で温泉入ったらなんでいきなり大人の階段を、二手三手先に行けるのですか……。」


「いや〜……温泉ってロマンじゃないですか!折角だから私もそこに混じりたかったよ〜……。」


 そしてこの記者は聞く耳を持たない。そして挙句の果てには


「それとそれと!近ごろ凛さんと千秋ちゃんが交際を続けていて、大学卒業したら結婚するという話を聞いたのですが本当ですか!?」


 ちょっとまって、それ何処の情報なのか……。


 とにかく誤解だけは解いておかないと、後々大変なことになるのだけは確かだ。


「確かに千秋ちゃんとは友達だけど……。」


「やっ…!やっぱり付き合ってた!!これビッグニュースですよ!これは!」


「だから友達ですからね!!まだそこまでですから!」


 あーもうめちゃくちゃだ……誤解を解こうとしたらもっと酷いことに……。


 誰かこの状況を打開してくれるような人は来ないだろうか……?


 この願いを神様は変な風に聞いたのか、このタイミングで、


「いやっふー!やっと我が家に帰れたよー!私は帰ってきたんだー!あの講義という名の地獄から!」


 会長を召喚してきた。あのまま地獄にいれば良かったのに……。


 今の状況で会長なんて召喚したらもっと面倒なことになるに決まってる。


 そしてこちらに気づいたのか


「おっ!広美と凛ではないか!あんたらが話してるところ初めて見たね〜。どう?ネタの方は?」


 早速つるんできた。手にはなにかお菓子みたいなのを持っている。


「そうですね〜!それがネタが今出来たのですよ!聞きますか?」


 おいバカやめろ。どうせさっきのことなんだろうけどあれは違うからね。


「おー!聞きたい聞きたい!一体どんなネタなんだ?」


 うわぁ……会長がめちゃくちゃ興味津々だ〜……


「その言葉待ってました!なんとなんと!凛さんと千秋さんが交際していたみたいなんですよ!」


「ええー!なんてビッグニュースだー!やっぱりあんたはすげぇよ!将来すごいニュースキャスターとかになれそうだ!」


 会長はそう言うが、私が思うにニュースキャスターになる前に、彼女は警察に捕まりそうでもあるが。


「それでさー!みんな甘いものが欲しいと思って私がチョコを買ってきたのさ!広美も食べてみないかー?」


「さっすがひなのさん分かってるじゃないですかー!ちなみにどこで買ってきたんですか?」


 興味ありげに問いかける広美さん。


「ふふふ、聞いて驚くでないぞ!なんとROCKSTARで買ってきたのさ!」


 すごい自身に満ち溢れた様子で言い放つ会長。


「会長がROCKSTARのチョコを買ってくるなんて珍しいですね!」


 会長のことだから、酒のつまみとか買ってそうだから驚いた。


「そうだろー!もしかして凛もこのチョコを食べてみたいのかー?」


 食べれるなら食べてみたい。


 ROCKSTARとは簡単に言えば、チョコを売ってる高級店だ。味がとても美味しいが、値段も高いし直ぐに売り切れになるからなかなか食べれないのだ。


「ふーははは!待ってろー!今こいつを開けるからなー!」


 早速会長が包装紙を開けようとしてる。しかしこれがなかなか開けられない。


「うぐー!なんでこれ開かないのー!でもこうなっても諦めずに開けてみせるからなー!待ってろー!」


「会長って結構頭が固いときありますよね〜……凛さんも思ったことありますー?」


「普通にハサミ使った方がいいとは思ってますね……広美さんならそうしますでしょう?」


「そりゃそうよ〜……時間無駄ですし、普通は開け口がありますからここまで苦労することはないはずなんだけど……。」


 しかし、当の会長は


「ハサミなんてそんなもの使わなくなって開くよ!そんなの使ったらまるでこの私が負けてるみたいじゃない!」


 既に負けてると思うけど……


 相当苛立ってみたいであるが、意地でも自分で開けたいみたいだ。待ってるのも暇なので、その間に千秋ちゃんがどうなってるのか見てみることにした。


 今は戦闘をさけているみたいなのか、しゃがみながら部屋などを探索している。


「結構ゾンビが多くて弾が直ぐになくなります〜……どこかで手に入れないと……」


「いや〜。千秋のプレイを見てると面白いね〜。会長みたいに、ナイフ単体で突っ込んだりとかとにかく物とか破壊してたりしないからいいよ〜。」


 会長何してるのですかねぇ……間違いなく会長にステルスゲームやFPSをやらしたらキレるやつだ。


 そしてその問題の会長は


「てかこいつどこに開け口あるんですかね〜…全く開けられないんだけどー!こんなものー!こんな!開けられない包装紙なんて!こんなー!!!うきゃー!!」


 まだ包装紙開けられてなかった。


 そして最終的に発狂してチョコの箱本体を殴る奇行に走ったのである。


「ウキャキャキャキャ!この箱が開くまで殴り続けるんだーーー!」


 その前にチョコが粉々になる方が先だなと思う。


 そして例の記者は


「す…すごい!ここの会員みんな才能があるよ!あとでこのこともニュースにまとめないと!」


 あー……多分今日のニュースあたりに乗ってるかも…正直言って恥ずかしい……。


 それにこれ以上猿の奇行を目にするのは精神的に宜しくないので、私はさっさとハサミを持ってくることにした。


 しばらくして、


「てか最初からハサミで切れば良かったじゃん!なんでこんなことを、しようと思ったのかな〜……でもチョコは美味しい!」


 と会長が憤りを感じていたが、それはあなたにしか分からないと思う。


 ちなみにその後包装紙をハサミで切り終わったあと、みんなでチョコを分け合っていた。


 あと包装紙は簡単に切れた。あの会長の暴走は全くの無駄である。


「でもあの時のひなのさんとっても面白かったですよー!おかげでネタには困らないですー。」


「私たちがゲームやってた時に会長は何やってたんだ……。」


 嬉しそうな記者に対して、とても心配してるゲーマー先輩も食べてる。


 見ていなかったのだがゲームは結構順調に進んでいたみたいだ。今はゲームを中断して小休止してるらしい。


「でもよく会長買ってこれましたね〜。混んでたと思いますけど……。」


「そこは気にしないのさ!千秋!そうゆうと思ってあらかじめ予約して置いてきたからね!」


 あの会長がそんなことするなんて……まさかほんとにみんなのために?


「まぁホントは1人で食べようと思ったけど、なんか人気らしいから、みんなで食べてるところを撮影してあとでSNSにあげようと思ったのさ!」


 否、私欲ダダ漏れだった。というよりも会長がSNSをやってたことは初めてなのだが……。


「これでRTが伸びるぞー!」


 と会長は喜んでいたのだが、そのうち変なことやらかして炎上することはこの私でもわかる。




 そんなこんなで今日の「非現秘怖裏話」の活動が終わったのである。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その夜、千秋から「このニュース面白いよ〜」とオススメのニュースのURLが送られてきた。


「ってやっぱりこれか〜……。」


 ニュースのタイトルは


 《発狂!包装紙を殴る奇行!》


 で要するに今日の会長の暴走が、デカデカと乗せられていた。


 分かりきっていたことだが、こうして載せられると私も恥ずかしいのだが……。


 そしてコメント欄も大盛り上がりだ。


『WAWA』@wadm580 7時50分


 チョコの包装紙に敗北した猿


『ゲームチャンネルRAN』@GAMERS_RAN    8時00分


 敗     戦     国     の     末     路


『シソりん』 @gyamo324 8時3分


 猿なら今頃開けてるだろw


『ていえもん』 @teitei147


 パワー系無力




 などと大量のコメントがあったが、ほんとに恥ずかしいので見るのをやめて、すぐにベッドに横になる。


 多分しばらくは噂されてるだろう……と言っても何も出来ないのだから仕方ないが。


 そう言えばもうそろそろバイト見つけないとな〜…と不安を覚えつつ夢を見るのであった。















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