この世で5番目に強い男

暗喩

第13話 部下、誕生


ーーーーーー

「何で私だけ先に戻らなきゃいけないのよ!! 監視しなきゃいけないじゃない!! 」

 ピールはこの場において邪魔だと思ったので先に帰そうとしたが、やたらと食い下がる。
 まあ、彼女が学園へ戻って俺の悪巧みを吹聴されても困ったから、結局ここに留めて口封じしなきゃいけないんだけどね。


 幼馴染達にベラベラと話されちゃ、こっちも都合よく動けなくなるからね。

 という事で、俺は彼女にこう告げた。

「これから話す事は、俺とピール2人だけの"秘密"にして欲しいんだ……」

 ほんの少し格好つけながらそう告げると、彼女は「2人だけの……」と呟きながら頬を赤らめていた。

「ま、まあ、そこまで言うなら私とバカミルド"2人だけの秘密"にしておいてあげるわ!! あの時と同じね!! 」

 そう、以前、俺は彼女と秘密を共有した事がある。それは、思春期の気の迷いでみんなとお泊りした際、全員が寝静まったのを確認すると1人自分のミルドを片手にモゾモゾしていた。それを見られた。

 その時、突発的に2人だけの秘密というワードを使ってみたら、彼女は喜んでその約束を守ってくれたのである。


 ちょっと昔の恥ずかしい記憶を思い出して胸が痛くなるんだけどね。


 にしても、こんな村人の俺の事を、どんだけ好きなんだよ。とか思ったけど、それはそれで都合がよかったから、安心してるのだが。


 という訳で、今回もその"魔法のコトバ"を使わせてもらったのだ。

 なまじ戻ってリンドに知られたら、俺が悪者みたいになって辛いし……。傷つきたくないし、嫌われたくないんだよ。


 ……それはさておき、これからが本番だ。

 今、とりあえずまだ信用は出来ないので、全身の自由を奪った状態で全員をその場に座らせた。

「わ、我々は何をすれば良いのでしょうか? 」

 ベルバラジはその場を代表したかの様に問いかける。

 俺は、そんな彼らの質問に対して、

「その前に、今からお前らには"契約"の魔法を掛けようと思う。裏で暗躍している奴らなんて、信用する方がおかしいからな。もしこの場で、その意思がない者は躊躇なく殺すよ。これは、理不尽でも何でもない。これまでの報いだと思って俺の部下になって欲しいんだ」

 と脅迫じみた言動を起こすと、彼らは恐怖と共に大きく頷いていた。
 だが、そんな中、先程の戦いにおいて兵士達を指揮していた中年の騎士は首を横に振った。

「そんな事、騎士の名折れ! 絶対に受け入れられん! 」

 そいつはこんな事を言っていた。

 イヤイヤ。国家を転覆させようとした"重罪人"が何を言っているのかな。
 今更、"騎士"なんて大それた言葉を使うんじゃねえよ。


 俺はそう思うと、奴の首根っこを掴んでこう凄んだ。

「てめえ、この国を滅ぼさんと画策していた分際で、今更何を抜かしてんだ!! これはな、俺からお前らに対する"救済措置"でもあるんだぞ!! それすら理解できねえクソ馬鹿なのか? お前は」

 そう恫喝にも似た注意喚起をすると、オッサンはぐうの音も出ないと言った表情を浮かべて、その後、「すまん……」と目を逸らしながら返答した。


 まあ、何にせよ、こいつらは思った以上にヘタレで助かったよ。


 という訳で、話がひと段落ついた所で、ベルバラジ大臣にファラー元老院、ミルデンにリベラ、他兵士40名と魔導師10名に"契約"の魔法をかけたのである。

 すると、奴らは雄叫びを上げながら苦しんだ。
 まあ、元々呪い関係の魔法であるから、術式をかける時に痛みが伴うのだが。


 俺が奴らと契約した内容はこれだ。

  《俺に一切の嘘をつかない》
  《俺に一切の反発をしない》
  《俺からの命令は絶対》
 
 これを一つでも裏切った時、奴らは契約により心臓が爆発して死ぬ。これは、契約した者以外には解除が出来ない、いわゆる【禁忌】の魔法である。

 なんでそんな大それた術式を知ってるかって?

 それは、幼馴染達と少し遠くへ探検していた中で、偶然見つけた遺跡の内部に潜入した際、たまたま元魔王とかいう奴らと戦ったんだ。

 その時もまあ、4人はボコボコに倒すんだけど、その恩恵として元魔王が伝授してくれたって訳です。

 脳筋4人は「そんな魔法、くだらない」とか言って拒否してたんだけど、俺はしっかりと教えてもらっていたのでした。


 その事も事前に説明した上で彼らは承認した。
 まだ気を失って寝ているローブの3人組に関しても、後で同様の措置をしようと思う。


 何にせよ、すっかりと俺の仲間となった彼らを、俺は歓迎した。

「物分かりが良くて安心したよ。じゃあ、お前ら"反国王派"についての話をしっかりと聞かせてもらおうか」

「仰せのままに……」

 ファラー元老院は、そう呟くと、ゆっくりと説明を始めた。

 
 聞いた話を纏めるとこうだ。

 英雄が爆誕する以前より、国王を良しと思わない貴族院や元老院の者は多く存在していたらしい。
 その理由としては、王の優柔不断。

 既に戦いは避けられなくなっていたガリオス帝国との対話においても、彼は何とか戦争回避の手段を模索していたと言う。

 しかし、結果的に時間の猶予を与えてしまったがために、敵国に万全の状態を整えさせてしまった結果、重要都市であるバトムは占領されてしまったのだ。

 それにより、以前から暗躍していた"反国王派"の人間は急激に増加し、挙句の果てには"ヒブリアン国"と秘密裏に結託の約束を交わしたと言う。

 ローブの3人は実際に"ヒブリアン国"の腕利き魔導師らしい。

 そんな時、"英雄"が現れ、圧倒的な力を持ってして国王軍は降伏寸前の劣勢から奇跡的な逆転を見せてしまったのだと。

 そうなってしまっては正面から戦っても打つ手なしと判断した"反国王派"は、暗躍して内部から国家を転覆させようと画策したのだと言う。

「実際、ワシらがヒアノー学園に目を付けたのは、存在を隠している『シャンデリア=リンドリア』の誘拐と、我々派の兵士による国王軍の偽装で学園の焼き討ちが狙いだったのじゃよ……」


 大方、予想通りと言った所だった。

 にしても、俺の大好きなリンドを誘拐しようとするとか、マジでムカつくな。それに、学園の焼き討ちに関しては、予想外だったな。
 ホント、水際で抑えられたと言った感じか。

 
 加えると、あの転移先は"ヒブリアン国"にある反国王派の本部に繋がっていると言う。
 そこに関しては、話が終わり次第、すぐに修復してバレないようにした方がいいと判断した。


「何にせよ、お前らの下衆な考えは良くわかったよ。まだ学園に工作員は残ってるのであろうな。という事で、これからが本題になるんだけど……」

 俺はそう切り出すと、ピールの修復魔法によってすっかり元通りとなった連絡の水晶を取り出した。

「これから、お前達には俺との接触を黙ってそのまま"反国王派"を演じてもらおうと思う。ぶっちゃけ、全貌を知った所で今どうこうできると言う訳ではないからな。少しずつ情報収集をしつつ、動きがあり次第、この水晶に契約魔法の内容を編み込んだ。その作用を駆使して俺へと逐一連絡をしろ。本部との会話や俺への連絡は"契約"を通して直接脳内に届くように細工しておいた。俺からの指示もだ。だから、頼んだぞ」

 俺がそう告げると、彼らは少々困惑しつつも、「はい! ミルド様! 」と、素直に返事をした。


 まあ、反発した時点で死ぬ訳だし、それはそうか。


 という訳で、これ以上長い間ここにて会話を続けると危険と判断した俺は、奴らの拘束を解除した。

 その後で、引っ叩いて強引に起こしたローブの3人にも脅迫して"契約"の魔法をかけた。

 ちゃっかりピールにもね。
 あいつは何も感じてなかったけど。

 
 そんな側から見たら鬼畜とも取れる命令に苦笑いを浮かべたピールと共に、一度学園へ戻るのであった。


「せいぜい俺を喜ばせる働きをしな」
 
 という、人生で一度だけ言ってみたかった言葉を残して。

  

  

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