この世で5番目に強い男

暗喩

第11話 防御魔法


ーーーーーー

 ピールのバカが勢いよく飛び出してくれたおかげで、今は敵兵に囲まれていた。

 俺は"洞察"で奴らの強さを確認する。
 国王軍の兵士20人に、魔導師と思し者が10人。
 加えて、剣を構えるメルデンやリベラ。

 こいつらの強さは、オーラから察するに対処出来ると判断した。
  

 だが、その奥でベルバラジ大臣とファラー元老院を守る三人のローブに身を包む男は厄介だった。
 妨害術式かなんかを施しているのか、攻撃の一端が一切感じ取れない。
  

 加えて、奴らの奥にあるアジトの中には、地面に転移魔法の魔法陣と連絡用の水晶が確認出来たのである。


 このまま逃げられては、全てが終わる。
 連絡を取られても、各地域に点在する反国王派が暴れだすかもしれない。

 むしろ、あの魔法陣の転移先はどこに……。

 基本的にグレイスの転移魔法は、無詠唱でどこでも行き来出来るチートなんだが、一般は一定の場所へしか行けない筈。
 つまり、あの先には……。

   俺はそう考えると、ピールにこう指示を出した。

「全力で俺を守れ」

 彼女はその声を聞くと、低範囲の防御魔法を展開し、俺の前に立った。

「し、仕方ないから守ってあげるわ」

 ツンデレ変態よ、ありがとな。

 俺は心の中で感謝を述べた。

「では、我々も全力で行かせてもらうぞ」

 兵士の指揮官と思しき者がそう宣言すると、兵士達は剣技を纏い、魔導師は詠唱を唱え始めた。


 早めに対処する必要があるな。
 まずは魔法陣と水晶の破壊を……。

 そう思うと、俺は一点で攻め込んでくる敵を退ける為に拘束の魔法を詠唱した。

 流石に詠唱を終える10秒程の時間を、ピールはいとも簡単に稼いでくれた。
 彼女の展開する白いベールには魔導師が唱えた無数の氷塊に、炎系統の弾、兵士が放つ協力な斬撃が延々と放たれる訳だが、全て吸収されて無かったことになって行った。

 流石に、ピールは強い。変態だけど。

 俺はそんな風に関心しながら詠唱を終えると、まだ技名とかカッコいいと勘違いしていた頃に名付けた【デスロール】を放った。

 このデスロールとは、体全身から漆黒で出来た無数の紐状の魔法が現れて認識している敵をグルグル巻きにして拘束すると言う技だ。


 ちなみに、幼馴染4人が暴れすぎな時に使う為に編み出した技だ。あいつらには子どものおままごとレベルでアッサリ跳ね除けられたんだけどね。

 わざと拘束されて喜んでたピールを思い出すとめまいが……。


 それに、【デスロール】って……。

 死の巻物とかめっちゃダセエ。だから敢えて技名とか叫ばなかった。
 敵とはいえ、笑われたら死ねるで、俺。


 とは言え、この技一つであわよくば全員拘束出来れば良いのだが……。


 そんな淡い期待をしながらその場にいる者達に俺の残念ネームな【デスロール】が触れて行く。

 同時に、前線で戦っていた兵士や魔導師は拘束されて身動きが取れずにグルグル巻きな状態で倒れ込んだ。

 しかし、その先にいる三人は打ち消し魔法で凌いでいた。
 もちろん大臣と元老院もしっかり守られていた。


 まあ、それは想定の範囲内なので、別の方法に切り替える事にする。たかが村人が数十人の国王軍の兵を押さえ込んだだけでも万々歳ってもんだ。


 それに、戦闘に乗じてちゃっかり連絡水晶の方へ向かっていたミルデンとリベラもその手前で抑え込む事に成功していた。


 危ねえよ、マジで。


 という事で、残った敵は後3人だ。
 多分、"洞察"スキルからして、大臣と元老院は一切の戦闘能力を持たないっぽい。

 魔法の杖も持ってなければ、剣も構えていない。
 それに、やたらと「な、何をしている!! 我を全力で守れ!! 」とか喚いてたから、間違いなさそうだ。


 にしても、この3人はなかなか厄介っぽい。
 顔までは見えないが、余程の死線を潜り抜けてきた、いわゆる、"戦闘のプロ"とでもいうべきか。


 変態英雄を前にしても、微かに見える口元は余裕ありげに笑っているしね。


 という訳で、俺は次の手段を選ぶ。
 なんだろうね。これまでずっとチートレベルの人間と幼きを共にした影響からなのか、全然怖くないんですよ、これが。

 だからこそ、冷静に対応が考えられた。
 

 どうやら、俺は幼馴染のお陰でハイパーメンタルを手に入れていた事に、今更気がついたのである。


 だが、そうしているうちに、3人のうちの1人が妖しく光る杖を俺に向けた。


「英雄と騎士か……。悪くない相手だ。所詮は防御のみの人間だしな」

 そう呟くと、奴の杖の先は真っ青に光り出した。


 どうやら、高等魔法の一種であろう。
 しかも、無詠唱。


 それからすぐに俺たちの頭上にはこれでもかって程巨大な氷塊が現れた。
 これを食らったら、流石に死ねるね。


 でも、あの3人の自信家はまだ自覚してないみたいだ。
 うちの幼馴染が有する特殊スキルの恐ろしさを……。


「ピール!! 俺が許す!! "神々の庇護"を使え!! 」


  彼女は頭上の氷塊を気にしつつ、俺の命令に対して、こう返答する。

「バカミルドのクセに、指図するんじゃないわよ!! でも、仕方ないわ!! 見てなさい!! 神々の"奇跡"を!! 」

 
 それから、周囲は神々しいまでに真っ白な光に包まれた。

 うん、これこれ。ちっちゃい時から何回も見てきたよ。相変わらず無慈悲なまでにでかい規模だな。


 俺はそんな事を思いながら今までの苦悩をしみじみと思い出した。


 そう、彼女はこの国で1番の防御魔法の使い手なのだ。

 だからこそ、その光が消え去った時の光景を見て、俺は苦笑いを浮かべたのであった。


 相変わらず強すぎるな、こいつって……。

「この世で5番目に強い男」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く