この世で5番目に強い男

暗喩

第7話 彼らが来た理由


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 なんだかんだ言って、幼馴染4人がやって来てもう三日の月日が流れた。

 その間、俺とリンドとの楽しくとも甘いひと時は見事に邪魔され続けた。同時に、平凡な日常は崩れ去って行った。

 会えば『英雄になろう』、『軍に入ろう』、『昔みたいに5人で』……。

 正直、鬱陶しい。
 例えるなら、蚊だ。

 だが、何となく彼らの態度に必死さを感じる事も否めなくなって来た。
 加えて、幼馴染は俺の最高に大好きなリンドと無駄に仲良くなってやがった。


 クソ、これが村人と英雄の差だった言うのかよ……。

 気安く『リンドちゃん』とか呼んでるんじゃねえよ……。なんかジェラる。

 まあ、何にせよ、彼らが必死なのは目線や視線から何となく感じ取れた。たまに周囲に見せる猜疑心は、常人には理解できないだろう。
 この学園に居てはならない存在が紛れているようだ。

 こんな時、やたらと勘が鋭くなるのは生まれつきなのかもしれない。
 どうせなら、恋愛にも生かせれば良いのだが……。

 どちらにせよ、それがこの学園に来た最たる理由が何となく理解できた。
 多分、俺のスキルを使って最悪な状況を打破して欲しいと言う事であろう。


 グレイスら"英雄"には攻撃に威力があり過ぎて、他の生徒を巻き込むから手を出せないと言ったところか。まあ、本当はそこは常に全力じゃなくて、少しくらい加減しろって話なんだけどね……。

 それに多分、アイツらは誰が被疑者であるのか気づいていない様だ。と言うよりも、騎士レベルの鼻の効いた人間でも、その"違和感"を察知する事は不可能であろう。
  

 正直なところ、ずっと前から俺はその存在の目星が付いている。
 残念ながら、普段押し込めている"洞察"ではあるが、自身の危機レベルの脅威を察知すると、自然に発動してしまう。

 オーラから色を判別して危険度、並びに敵の攻撃力を察知すると能力。

 入学当時から、怪しいと考える人物は数名存在していた。
 まあ、何か起きそうならリンドを守って王子様になろうかな程度にしか考えていなかったが。


 だって、その工作員と思しき者の総合力って、俺より弱いんだもの。
 凡人レベルの攻撃なんて、なんの脅威でもないでしょ。
 なんの目的でこんな辺境の学園にやって来ているのかは全く理解は出来ないが、アレだけ脆弱な力であるならば貴族の一人でも誘拐して身代金でも狙ってる盗賊程度だろうと放置して来ていた。


 でも、良く良く考えてみると、この国の"英雄"を呼び出す程なのかも知れない。
 だとしたら、状況は変わる。


 裏で何かが動き出しているのではという、憶測すら立てられる。と言うより、間違いなくそのレベルの因子なのであろう。

 
 俺はそんな事を考えながらも、遠目にいるその"被疑者"の1人をチラッと見た。


 すると、その彼女は俺に向けてニコっと笑顔を見せたのである。
  

 クラスで一番の秀才、メルデンを……。

  
 とりあえず、コミュ障スマイルを見せつけた後で、無駄に溶け込み出して俺の周りに付き纏うリンドと4人の幼馴染にため息をついて、帰路へと就くのであった。

  
 まあ、学園で起きる事ならばリンドにも被害が及ぶかも知れないわけだし、今回だけは協力してやるか……。
 というか、リンドに被害が及んだらどうかしてしまうで。


 俺はそう思うと、幼馴染を部屋へ来るように促すのであった。

「見え見えなんだよ、お前らの考えてる事は……」

 短めの言葉でグレイスにそう伝えると、彼は狐につままれた様な顔をしていた。


 相変わらずコイツらは脳筋だな……。

 俺はそう思うと、少しだけ"この件のみ"協力してやる事を誓った。

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