この世で5番目に強い男

暗喩

第5話 説得地獄


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 そんなこんなで、無理やり幼馴染の4人を押し込んだ俺は、適当にソファに座らせた。

 何故か、ピールだけは俺のベットに横たわったまま恍惚の表情を向けているのだが……。
 相変わらず昔から訳の分からない奴だ。犬のマーキングかよ。

 俺がそんな彼女に苦笑いを浮かべていると、リンドは何故か俺の腕を掴んだまま「やっぱりミルドは天才……」などと口にしながら、得意げな表情を浮かべていた。

 彼女の髪の毛からは甘いシャンプーの香りが漂い、加えて、あまり実りのない胸が俺の腕に当たっていたのである。


 なんか、嬉しい様な恥ずかしい様なそんな不思議な感覚に苛まれて、少しだけ口元が緩みそうになった。

「で、話を聞かせてもらおうか。何故、このヒアノー学園に転入してきたんだ? どうも、俺だけの為って訳ではなさそうだが」

 一つ咳払いをすると、俺はまともにこちらを見つめるグレイスに対してそう問いかけた。

「それは、僕が王殿下を口説き落としたんだ。学生の本分である学問の習得をこの学園で行いたいと。ミルドの軍への加勢の打診も、ちゃんと許可は取ってきた」

 俺は苦笑いする。
 誰が頼んだよ。一度断ってるからこそ、前回の戦争で軍への招集も無かったわけで。
 というよりも、入隊しても、俺なんかでは使い物にならない訳だが……。

「だから、俺は戦争なんかに加担したくないぞ」

 俺が即答すると、布団を無駄にモフモフしていたピールはハッと我に帰った様にして突っかかってきた。

「どれだけグレイスが苦労してこの条件にこぎつけたと思ってるのよ!! 超大変だったんだから!! 王殿下の元を一週間の間、1時間に一度訪れてお願いしてまで来たのよ!! 」

「えっ? 今なんて……? 」

「兄さんは、ミルド兄ともう一度仲間としてやって行きたかった……。それ故の勇気ある行動……」

「俺達も24時間体制で殿下にお願いしたからなぁ!! 最初は威厳のある拒否をしていたが、友情が優ったという訳だ!! ハハハ! 」


 王殿下よ……。 
 さぞお辛かったでありましょう……。

 超の付く程強く、国家としても戦力として手放す訳にはいかないが故、邪険に扱う事も出来ずに毎日毎時ネチネチとしつこくやってくれば、王としても最終的には受け入れざるを得なかったのであろう。

 こんな脳筋共が24時間毎時やって来ては同じ文言を説得したと思うと、心苦しい限りです。

 最後なんか、多分ヤケになっていたに違いない。
 お気の毒に……。


「はぁ……」

 俺は大きくため息をついた。


 つまり、俺はこいつらから逃れられないのだと悟った。抗うけどね。
 力自慢で超のつく頑固者。加えて、鋼のメンタル。
 確かに、そんな性格は、民衆の誰よりも俺が知っていた。

「お前らは、昔からそうだったもんな……」

 まだ"英雄"ごっこをしてる最中でも、森に潜む巨大トカゲの魔物とか、明らかに雰囲気がヤバイ魔人のヴァンパイアとか、何の考えもなしに突っ込んでって簡単に倒したりしてたもんな。

 たまには作戦を立てて魔物の群れを倒そうと言っても、結局痺れを切らして真っ直ぐに突っ込んで行って数日かけて練った計画も全部圧倒的な力でオジャン。もちろん勝つけど。


 まあ、考える間もない程に力があったからって言うのが一番なんだけどね。
 そこは純粋に羨ましかったし、小さい頃は憧れてはいたんだが……。

「お前らが全員脳筋だから、俺は愛想を尽かした部分もあるんだよ」

 一通りこれまでの事を思い出すと、俺はバッサリとそう告げた。

「なになに? 英雄様方って、脳筋なの? てか、脳筋って何?! 」

 と、俺との距離を間違えているリンドは置き去りにされていた。


 そんな彼女を気にすることもなく、モスはこんな事を言った。

「よくお分かりで……」

「ハッハッハ!! やっぱり、ここまですぐに理解できるからこそ、ミルドが必要ってわけよ! 」

「心外だけど、バカメルダがいないとね……」

 モス、ブリザーク、ピールの3人は、何故かドヤ顔でそんな事を口にしていた。


 いや、決して褒めてなどいない。


 そして、グレイスは俺に向けて得意げにこう告げる。

「要は、僕らには戦闘の上で、作戦など考える頭は無く、真っ直ぐに進む事しか出来なかったのだよ!! だから、今後、ミルド。君の知略が欲しいと痛感したのだ!! さあ、だから仲間に……」


「だが断る」

 俺は、もう沢山だった。
 こいつらの前ではどんな戦略も何もかも無になる様を何度も見てきたから。

 結局、戦争は力が物を言う。

 つまり、頭を働かせるよりも、全て叩き潰してしまう方が、よっぽど自陣の被害も少なく相手に対して脅威を与えるって訳だ。

 それに、国王軍ともなれば、より経験豊富な知者もいる筈で、俺よりもずっと巧妙な作戦を立てられる者もいると……。

「ミルド、めちゃくちゃ似合ってるよ!! かなり天才っぽい!! 」

 リンドの声に気がついて、一度考える事をやめた。

「似合ってるってなんだよ……。って、えっ?! 」


 気がつけば、グレイスとブリザーク、モスによって俺は国王軍のマントを羽織らされていた。

「うん、やっぱりミルドは僕らの仲間にふさわしい」

「ミルド兄……。知将ぽくてカッコいい……」

「ハハハ!! 誰よりも似合ってんな!! 」

「仕方ないけど、仲間に入れてあげるわよ!! 」


 俺はそんな4人のあまりにも強引で自由な行動に苛立ち、マントを地面に投げつけた後で、こう雄叫びを上げた。

「お前ら、もう出ていけーーーー!!!! 」

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