この世で5番目に強い男

暗喩

第2話 一つ欠けたピース

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 戦勝の功績を称える勲章授与や晩餐会を終え、王宮内の自室へと戻った"英雄"4人は、くたびれた表情で座り込んだ。

「もう耐えられない!! なんか、アイツ1人だけが約束から外れるとか、ムカつくし耐えられないんだけど!! 」

 ピールは金色に輝く髪と豊満な胸を揺らすほど魔法の杖を激しく両腕で振りながら、全身で怒りを表現していた。

 それを見て、有り余る筋肉で腕を組みながら高らかに笑うブリザーク。

「ハッハッハー!! まあ、確かにお前、小さい頃からずっとメルダにゾッコンだったもんな!
! 」

 能天気に笑う彼に対して、ピールは少し恥じらった後で、更に激しく激昂する。

「相変わらずうっさいな! なんでアンタはいっつも茶化すのよ! 」

「でも……。やっぱりミルド兄に会えないのは辛い」

 小さな体に白いベールを纏ったモスは心底悲しそうな表情を浮かべてそう呟いた。


 そんな彼女の言葉に、一同は黙り込む。

 静寂をかき消す様に、ポツリと口を開いたのは、暫く黙り込んでいたグレイスだった。

「確かに、あの頃の僕らはずっと"英雄"を目指していた。その為に努力したのは忘れていない」

 グレイスの一言に、皆は小さく頷いた。

「ハハハ!! まあ、最初誰よりも張り切ってたのはアイツだったからな!! 」

「そ、そうよ!! それに付き合わされた結果が、今なんだから!! 」

「ミルド兄のお陰で、モスも"あのトラウマ"から立ち直れた……」

「でも実際、僕達は彼を傷つけた」

 グレイスは、自分の相棒である聖剣に目をやりながら俯く。
 彼らは強かった。
 しかし、所詮は王都から外れた村の子供程度であると思っていたのである。


 だが、実際は違った。


 一度、故郷であるヒバルフ村はガリオス帝国によって攻め入られた経験がある。
  その時、王国軍は間に合わなかったのである。


 そんな窮地の際、グレイスを始めとした"4人"は、ガリオス兵を意図も簡単に退けてしまったのである。

 結果、遅れてやって来た王国軍は無残にも倒れた数千の敵兵を見ると"英雄"の誕生と喜び、国王軍への叙勲と、プリギッシュ聖学院へ入学する事を促し、立派な軍人になる為に王都まで呼び寄せたのである。

「あの時、ミルドは初めて僕達の誘いを断ったんだ」

 グレイスは悔しそうに言う。
 襲撃当時、ミルドは収穫されたばかりの農産物を手に、隣町へ向かっている最中であったのだ。

 だから、戦いには参加していなかった。

 しかし、彼らの友人ならばと王の計らいにより、ミルドの入学も条件に織り込み済みだったのだが……。


「アイツ、断っちまったんだよ……。バカとしか言いようがねえ所だが、自分が戦えなかった事を責め立てていたのか? 」

「ブリザーク、相変わらず脳筋バカね! アイツは違うのよ」

「そう、ピールの言う通り……」

「うん、彼はその前からずっと負い目を感じていたんだよ。僕達よりも弱い事を。いずれ足を引っ張ってしまうと……」

「そんなの、幼馴染であるあたし達が守れば良くない?! それに……」

 ピールが普段言わない本音をポロっと零すと、グレイスは小さく微笑んだ。
 その後ですぐに真顔になって、こう言ったのである。


「我が幼馴染ミルドは、"僕らを除く"今まで出会って来たこの国の兵士や敵軍の誰よりも強かったんだ」

 モスは、グレイスに近寄ると、それに賛同した。

「間違いない……。グレイス兄さんの言う通り、モスもそう思った。それに、ミルド兄の"スキル"は、あの日の約束に必須。だからこそ、絶対にまた5人で戦わなければならない……」

 彼女が小さな体でそう呟くと、ピールは立ち上がった。

「なら、あのバカを説得するしかないじゃない!! もう、本当に手がかかって面倒くさいヤツなんだから!! 」

「ハッハッハー!! まあ、我々幼馴染は五身一体であるって事が、戦争を通して強く理解したしな!! 」

 2人が立ち上がると、グレイスはニコッと笑うと、肩にもたれ掛かる妹であるモスを優しく抱え上げてこう言った。

「じゃあ、戦争も一通り落ち着いた事だし、説得してみるとしようか! "ヒアノー学園"に!! 」

 そう宣言すると、彼らはそそくさと支度を始めた。

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