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竜の血脈―黒狼盗賊団の頭―

叶 望

030 引き裂かれた先で

 フレイン王国のとある宿にある一団が泊り込んでいた。
 その一団はある人物の奪還の為にライアック王国からわざわざ目立つように移動して来ていた。


「ルイさん、城内に潜り込むのはやはり難しそうです。」


「そうか。何か情報は入ったか?」


「3月ほど前にとある村で遭難したものを馬車で運んだという男を見つけました。」


「それで?」


「その時に乗せた人物の容姿からして、やはりシルフィール王女とシュラ様に相違ないかと。ただ王女は無事でしたが、シュラ様は瀕死の状態で毒も受けていたそうで辛うじて一命は取り止めたものの意識も戻らない状況だったとか。」


「………。」


「ルイさん、シュラ様はご無事でしょうか。」


「無事だ。城の方にシュラ様の魔力を微かに感じる。だから生きてはいるはずだ。」


 会話を続けていたルイはふと部屋の外に人が立った気配を感じ口を閉じる。


「開けてやれ。」


「よろしいんですか?」


「その為に派手に動いたんだ。」


「畏まりました。おい!ドアを空けろ。」


 扉が開き、とある人物が中に入ってくる。
 短く刈り上げた金の髪に青い瞳を持つ近衛騎士ナイルズだ。


「ずいぶんと遅い到着だな護衛の騎士様は。」


「…ルイス・シュバリエ。」


「あれだけ大勢の黒髪の集団が黒狼盗賊団を名乗りつつ移動したら流石に気が付くと思ったが随分と時間がかかったようだ。」


「国同士の決まりがあるのだ。それに手がかりもないまま他国へ行くなどできない。」


「川の流れから考えればすぐに分かったはずだが?捜索はしたのだろう?」


 ナイルズはルイスの問いに苦々しい表情を浮かべる。
 あの後すぐに捜索隊を出して探したが川の流れは早く二人は全く見つからなかった。
 そして当然川の流れに沿って移動するのだがフレイン王国の国境まで来てしまい結局引き返すしかなかったのだ。


「…当然だ。だからこそ時間がかかったのだ。」


「それで、騎士様は盗賊である我らに何のようだ?」


「力を借りたい。」


「ほう?」


「フレイン王国は国境を越えた捜索を許可しなかった。手がかりが全くないんだ。」


「王国が隠しているとは思わなかったのか?」


「それを問い質すだけの証拠がない以上そんな事はできない。頼む力を貸してくれ。」


「………。」


 頭を下げるナイルズにルイスは少し考える素振りを見せる。


「いいだろう。ただし、俺たちのやり方には従ってもらうぞ。」


「…わかった。」


 盗賊に頼らざるを得ないこの状況にも悔しいナイルズだが今はただリュシュラン王子とシルフィール王女の無事を少しでも早く確かめたいという思いがあった。
 無事でいて欲しい。
 生きている事を信じてナイルズはこうして出てきた。
 ライアック王国内では未だフレイン王国の協力が得られない状況で身動きが取れないままだ。打開する力が必要だった。


「それじゃ、フレイン王国にライアック王国からの正式な使者として謁見の許可を取ってくれ。」


「何?」


「もちろん、俺たちも同行する。」


「お、お前たちが?」


「当然だろ。もちろん使者として出るのは盗賊団の中では俺だけだけど。」


 流石にルイス以外の者が謁見の場できちんと対応できるかというとかなり難しいだろう。
 ルイスのみであると言う事でナイルズもほっとした様だった。
 元は貴族で騎士もしていたルイスならばと許可を出した。


「二人は城のどこかにいる。」


「何!」


「俺はシュラ様の魔力を知っているからな。感知には自信がある。シルフィール王女はあまり知らないから覚えてはいないが、シュラ様とはずっと一緒だったからな。」


「そうだったか。ではフレイン王国はなぜ隠すのだ?」


「それは俺にも分からない。だが、3月も経つのにシュラ様の魔力が弱々しい所からして健康な状態とは言い難いだろうな。」


「くっ…フレイン王国め何を考えている。」


「それを知るためにも城へ入り込むのが必要なのさ。それにあまり時間がない気がする。」


「どういうことだ?」


「日に日に弱っている。今でもやっと気配を掴める程度にしか感知ができない。このままだと城に入っても探すのは難しいかもしれない。」


「なっ、すぐに謁見の許可を取らねば。」


 ナイルズは慌てて部屋から飛び出して行った。
 だが、謁見の許可などすぐに取れるものではない。
 許可を取る事が出来、実際に城には入れたのはそれから更に1月後の事。
 もはや霞のように弱々しい魔力しか感知できなくなったルイスはかなり焦っていた。
 カゲロウを近くまで呼び寄せて待機させているのはいざと言う時に強硬手段に出るためだ。
 当然黒狼盗賊団の面々もその準備を着々と進めていた。


――――…


 フレイン王国の城内にある謁見の間に通されて、豪華なカーペットの上を歩きこの国の女王である女の前に立つ。
 そしてその場で跪いて言葉を待った。


「面を上げよ。」


 女の声は朗々と響き渡った。
 女王の威厳とも言うべきだろうか。
 黒い髪と赤い瞳を持つ美しい女性が豪華な椅子に腰掛けている。
 その姿はなんとも妖艶で色がある。


「余はフレイン王国女王カルラ・フレイン・ウェスリーである。貴行らはライアック王国からの使者であると聞いている。御託は要らぬゆえ用件を述べよ。」


「ありがたき幸せ。今より4月ほど前、ライアック王国で深遠の森の合宿に参加されていた貴国の王女であるシルフィール様とわが国の王子、リュシュラン様が崖から落ち川に流されました事はすでに伝わっているかと存じます。未だ我が国では発見できず、川の流れに沿って今も我が国では捜索を続けている状態です。川沿いに国境がありそれ以上の捜索が出来ない為、貴国の領土内での捜索を許可願いたく存じます。」


「それは断ったと記憶しておるが?」


「ではその理由を教えていただきたい。」


「敵国で在るライアック王国の騎士たちを我が国に入れろとは随分な申し出じゃな。」


「敵国などと。貴国の王女も行方不明なのです。捜索に協力出来ない理由は一体何なのです。」


「第七王女であるシルフィールの事はすでに放逐したもの。我が国の者ではない。」


「な、なんと。本気で仰っているのですか?」


「当然じゃ。それ以上に何がある。我が国にあの子の居場所などない。それは貴国であれば理解できよう。」


「しかし…。」


「話は以上じゃ。あぁ、せっかく我が城へと来たのじゃ。少し散策でもしていくが良い。」


「…ありがとうございます。」


 苦々しい表情のままナイルズはルイスを伴って謁見の場を離れる。
 その後をカルラ女王が沈痛な面持ちで見送っていたことなど気が付く事はない。


「妾はまた娘を一人失うやもしれぬ。」


 ぽつりと呟いた言葉はか細く誰の耳にも届かない。
 そっとカルラ女王はシルフィールの居る離れを見て悲しげに目を伏せた。


――――…


 謁見の間を出たナイルズは沸々と込み上げる怒りに拳を握り締めて歩いている。
 その後ろをルイスは付かず離れずの距離を保ちつつ気配を探っていた。
 だが、あまりにかすかな魔力は最早ルイスの探知にかかる事はない。
 悔しげに唇を噛み締めたルイスはふと城から離れた場所にある建物に気が付いた。


「ナイルズ殿、あちらを見てみませんか?」


「あちら?あの離れか。」


 二人で離れへと移動する。
 扉には騎士が常に張り付いているようだ。
 騎士は二人がこちらに向かってくるのを見て制止の声を上げる。


「女王陛下から城内の散策許可は得て居ますよ。」


 ルイスの言葉に確認すると一人の騎士を残しもう一人が確認に走る。
 そして女王陛下から許可の確認が取れたと中へ通された。
 離れの中に入ったナイルズはすぐにシルフィール王女を見つけ出した。
 そして閉じ込められたシルフィール王女から事情を聞く。
 どうやらリュシュラン王子と引き離されたらしいシルフィールはずっとここに閉じ込められていたようだ。
 そしてシルフィール王女がリュシュランとの不思議な繋がりを持っている事を知ったナイルズとルイスはシルフィール王女を連れて離れを出る。
 なぜか騎士は3人を止める事はなかった。
 まるで知らされていたかのようにそのまま通すと扉を守る任に戻って行った。



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