悲喜交々
戻れない
放課後の教室、秀男(ひでお)は深刻そうな顔で今日配られた1枚のプリントを見つめていた。
「進路か…」
特に将来の夢がないから専門は無しだけど、大学はシンプルに学力が足らない。。
かと言って就職はしたくない。。
「あー!もうわかんね!」
「ヒデちゃんどうしたー?」頭を抱える秀男に声をかける優しい顔をした青年。
「たつきくんはさ、進路どうするの?」
「普通に大学いくかなー」
たつきくんとは幼稚園からの幼馴染だ。
たつきくんはこの学校で一番の優等生で、おまけにイケメン。女の子からほぼ毎月告白を受けているとかいないとか…
「お前ら!遊びに行こうぜ!!!!」
騒がしく教室に入って来た金髪やんちゃ坊主頭は、幸一(こういち)くんだ。
幸一くんとは小学生からの幼馴染で「こうちゃん」と
呼んでいる。
こうちゃんは学校一の問題児で、何度も停学をくらっている。
「こうちゃんやっと停学とけたんだね」
そう言ってたつきくんがパチパチと手を叩いた。
「そうそう!もう暇で暇で」
「よ!我が家の問題児!」
そう言った僕に対して「次はお前のばんだな」と指さした。
「それよりさ、今からお前らと行きたいところがあんだけどさ…『神野山』ってしってる?」
『神野山』
ここは、地元で有名な心霊スポットだ。
噂によると16時44分、車で山道を通ると二度と戻ってこれなくなるらしい。
「神野山って…」
「あの都市伝説の場所だろ?」
「そうそう!お前らと行ってみたかったんだよ!」
輝くこうちゃんの目を見て、僕は少し嫌な予感がした。
「で、でも戻れなくなっちゃうし…」
弱々しくいう僕に、こうちゃんは「よくある噂だろ!」と言って背中を叩いた。
「でもよぉひとつ問題があってさ、あの山って車で行かないと意味ないんだよなぁ」
「僕ら運転できないから諦めようよ」
するとたつきくんが口を開いた。
「おれ、免許と車持ってるよ」
「え?」
「え?」
僕とこうちゃんは声を合わせて振り向いた。
ブウォン。
人気のない道を走る一台の車。
「たつきくん免許取ってたんだ」
後部座席から顔を出して僕は言った。
「本当に最近ね」
たつきくんは照れくさそうに笑う。
助手席でこうちゃんがスマホのマップを真剣に見つめている。
しばらく道なりにそって進んでいると、こうちゃんがいきなり大きな声を出した。
「これみろよ!」
そういって差し出してきたスマホの画面に写っているマップを見て背筋が凍った。
「道がない。。」
「たった今神野山に入ったってことだよ」
たつきくんのその一言で一気に車内が変った。
「なんかドキドキするな!」
こうちゃんは相変わらず楽しそう。
「なんか雰囲気だけで何もないのな」
たつきくんは運転席の窓を少し開けてあくびをしたその時、不意に横の草むらから人が飛び出してきた。
「たつきくん前!!!!!!」
車はクラクションの後になったドン!!という衝撃と共に止まった。
固まる車内。
「え、人引いた…?」
こうちゃんが震えた声で呟いた。
「い、一旦降りて確認しよう」
「お、おう」
たつきくんは話さない。
車を降りると、先ほどの衝撃が現実なのだと改めて分かった。
ボンネットには赤黒い血がこびりついており、車のすぐ下に倒れている被害者の顔は完全に潰れている。
「これってうちの学校の生徒じゃね?」
こうちゃんの言葉を聞いて服に目を向けてみる。
たしかに今僕たちが来ている制服を来ている。
「ほ、本当だ、、なんでこんな所に....ん?こうちゃんこの人もしかして....」
「埋めよう」
僕の話を遮って放ったたつきくんの一言。
「は?」
すかさずこうちゃんが聞き返す。
「去年の夏一緒にキャンプ行ったの覚えてる?この車その時使った車でさ、まだ道具残ってんだよ。」
「なにいってんの?」
こうちゃんの言葉を無視してたつきくんは話を進める。
「とりあえず一旦こいつ埋めよう。そしてその後ボンネットの血をタオルで拭けばなんとか」
「だから!!」
こうちゃんが怒鳴り、たつきくんは話すのを止めた。
「隠蔽しようってか?無理に決まってるだろ!!」
「じゃあどうしろってんだよ!!」
次はたつきくんが怒鳴る。
「こ、こんなのバレたら俺の人生はどうなんだよ!友達のピンチだろ?助けろよ!」
「友達だからこそだろ!そんなのやったって絶対見つかるし、今よりもっと重い罪になるだけだろ!?俺たちがちゃんと証言してやるから」
そう言ってこうちゃんは携帯を取り出すが、すかさずたつきくんが携帯を弾く。
こうちゃんのスマホをガシャンと音を立ててコンクリートに転がった。
「おい!なにすんだよ!」
こうちゃんは落ちスマホを慌てて拾った。
「お前こそなんなんだよ!友達だと思ってたのに!」
「もういい!埋めるなら勝手に埋めとけよ!だけど俺は味方しないからな!」
こうちゃんはそう言い捨て、森の奥に行ってし
まった。
「なんなんだよアイツ!もういい、二人でやるぞ」
「え、、、あ、僕は.....。」
「お前も裏切るんか?」
その時のたつきくんの顔は、僕の知っているたつきくんじゃなかった。
悪魔のようなその目に圧倒され僕は手伝うしかないと本能的に思った。
「や、やるよ。。」
僕がそう言うと、先程の顔が嘘のように穏やかになり「そっか、当然だよな」とたつきくんは笑った。
「とりあえず俺は穴掘るからお前は周りの血をどうにかして」
「う、うん。。」
生命のいた痕跡が死体の生温かさで伝わり、思わず吐きかけた。
「たつきくん!僕やっぱり無理だよ!違うやり方があるとおもうんだよ」
両手で口を抑え、たつきくんに訴えた。
がしかし、先程の悪魔のようなたつきくんの目と合い、視線をずらした。
「ご、ごめん」
下を向く僕にたつきくんは近寄る。
「お前掘れ」
たつきくんはそう言って僕にスコップを渡した。
「俺、こうちゃんともう一度話してくる。」
そう言って、たつきくんはこうちゃんが歩いていった不気味な森の中に消えて行った。
それから僕はひたすらに穴を掘った。
掘って掘って掘って、気がつくと僕の手にはマメができ、それが潰れて両手から血が出ていた。
「ひ、ひでちゃん。。。」
急に声をかけられ、驚いて後ろを振り向くとそこには、首から大量の血を出したこうちゃんが立っていた。
「こうちゃん!???だ、大丈夫!?」
ヒュー、ヒューと細い息をしているこうちゃんは僕の目を見て言った。
「た、たつきがやったんだ。」
「え?」
僕は思わず聞き返す。
「たつきが急に俺の首を木の棒で刺してきやがったんだ。」
「たつきくんが!?」
「ひでちゃん。。あいつはいま正気じゃない。に、逃げろ、、、、。。。」
そう言い残しこうちゃんは目を閉じた。
「こうちゃん!こうちゃん!!」
僕は必死にこうちゃんの名前を呼ぶが、目を覚ますことは無かった。
まさかたつきくんがこんなことをするなんて、、あんなに仲良しだったのに。。
なんで。なんで。。
「う、、ううう。」
僕は恐怖と戸惑いでどうにかなりそうだった。
溢れる涙を必死に拭って何度も何度も消して目覚めることの無いこうちゃんの名前を呼び続けた。
森の奥からこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。
たつきくんだ。
全身の毛が立ち、息が上手くできない。
「ああ、そいつもう死んでるよ」
真っ白な制服に真っ赤な血をつけ、右手に鋭利な太い木の棒を握りしめたたつきくんが平然とした様子でこちらに向かって来る。
「く、くるな!!!」
僕は喉が痛くなるほどの声でたつきくんを威嚇した。
「いやだってこいつ酷いんだぜ?森の奥行って警察に俺らのことチクろうとしてたんだ。そんなの友達じゃないだろ?」
たつきくんは歩みを止めず進んでくる。
「ぼ、僕のことも刺すのか?」
「なんで俺がひでちゃんを殺さなきゃならないんだよ。友達なのに」
「僕の友達がそんなことする訳ないだろ!!!もうお前なんて友達でもなんでもない!!絶交だ!!!」
僕は下を向いて言い放った。
少しの沈黙。
乱れた呼吸を整え、ゆっくりの顔をたつきくんにむける。
たつきくんは僕に対し少し微笑んだ。
「そっか、、ならしょうがないね」
たつきくんは先程よりもスピードを上げて僕に近づいてくる。
このままたつきくん捕まったら殺される!
気がついたら僕は大声をだして走っていた。走って走って森の奥へ進んでゆく。
たつきくんから少し距離を離し、僕は木の後ろに隠れた。
隠れて数分後たつきくんの声が聞こえてくる。
「おーいひでちゃんごめんて。何もやらないから出て来いって。」
すぐ後ろにいるたつきくんに見つからないよう両手で鼻と口を押されて必死に息を殺す。
「おまえ運動苦手だよな?こんだけ走ってたらもうキツイだろ。どっかの木で隠れてるんじゃないのかー?」
怖い怖い怖い怖い。
なんで?どうしてこうなった。
こうちゃんが怖いとこ行こうって言ってきて、でも楽しみだった。たつきくんも楽しそうにしてたし。。
僕達小さい時からずっと一緒だった。辛い時も支え合って、失恋した時はみんなで励ましあって。僕は毎日楽しかった。ずっと一緒に遊んでたかった。なのに、なのに。。。
ふと視線を地面に落とすと、先の尖った太い枝木の枝が目に入ってきた。
息が荒くなる。
鼓動が早くなり体温が上がる。
『ひでちゃん。。あいつは今正気じゃない。』
こうちゃんのこの一言が頭によぎった。
「うぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
僕は大声を出す。
「バカか!そんなことやったらバレるに決まってるだろ!!!!!」
すかさずたつきくんが反応し、僕が隠れている木の後ろを覗いた。
「い、いない。。?」
「たつきくんごめん!」
たつきくんの背後に回っていた僕は、たつきくんの首に目掛けて両手で握りしめた鋭い木を突き刺した。
「ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!」
たつきくんが動くなるまでなんども何度も突き刺した。
「はぁはぁはぁはぁ。」
僕の体は真っ赤に染っていた。
もう涙は出なかった。
「たつきくん、こうちゃん。今僕も行くね」
それならどのくらいだろうか。
僕はひたすらに続く何も無い森を歩いていった。死ねそうなところ、なんでもいい。一瞬で死ねる場所。。
すると遠くの方から車の走る音が聞こえてきた。
あれだ。あれに引かれよう。
車がすぐそこまで来たところで飛び出した。
その時の僕は戸惑いも恐怖も何も感じなかった。
激しくなるクラクションの中で車内を見たとき、僕はずっと感じていた違和感の正体がわかった。
なぜこんな山にうちの生徒が、なぜあの引かれた生徒は''僕に似てた''のか
車内の人は僕達だった。
ああ。そういう事か
その瞬間ドン!という鈍い音ともに僕の意識はなくなった。
「え、人引いた?」
「てかこの人うちの生徒じゃん!」
「なんでこんな所に。。
『神野山』
ここは、地元で有名な心霊スポットだ。
噂によると16時44分、車で山道を通ると二度と戻ってこれなくなるらしい。
慌てる車内の時計は16時44分で止まっていた。
「進路か…」
特に将来の夢がないから専門は無しだけど、大学はシンプルに学力が足らない。。
かと言って就職はしたくない。。
「あー!もうわかんね!」
「ヒデちゃんどうしたー?」頭を抱える秀男に声をかける優しい顔をした青年。
「たつきくんはさ、進路どうするの?」
「普通に大学いくかなー」
たつきくんとは幼稚園からの幼馴染だ。
たつきくんはこの学校で一番の優等生で、おまけにイケメン。女の子からほぼ毎月告白を受けているとかいないとか…
「お前ら!遊びに行こうぜ!!!!」
騒がしく教室に入って来た金髪やんちゃ坊主頭は、幸一(こういち)くんだ。
幸一くんとは小学生からの幼馴染で「こうちゃん」と
呼んでいる。
こうちゃんは学校一の問題児で、何度も停学をくらっている。
「こうちゃんやっと停学とけたんだね」
そう言ってたつきくんがパチパチと手を叩いた。
「そうそう!もう暇で暇で」
「よ!我が家の問題児!」
そう言った僕に対して「次はお前のばんだな」と指さした。
「それよりさ、今からお前らと行きたいところがあんだけどさ…『神野山』ってしってる?」
『神野山』
ここは、地元で有名な心霊スポットだ。
噂によると16時44分、車で山道を通ると二度と戻ってこれなくなるらしい。
「神野山って…」
「あの都市伝説の場所だろ?」
「そうそう!お前らと行ってみたかったんだよ!」
輝くこうちゃんの目を見て、僕は少し嫌な予感がした。
「で、でも戻れなくなっちゃうし…」
弱々しくいう僕に、こうちゃんは「よくある噂だろ!」と言って背中を叩いた。
「でもよぉひとつ問題があってさ、あの山って車で行かないと意味ないんだよなぁ」
「僕ら運転できないから諦めようよ」
するとたつきくんが口を開いた。
「おれ、免許と車持ってるよ」
「え?」
「え?」
僕とこうちゃんは声を合わせて振り向いた。
ブウォン。
人気のない道を走る一台の車。
「たつきくん免許取ってたんだ」
後部座席から顔を出して僕は言った。
「本当に最近ね」
たつきくんは照れくさそうに笑う。
助手席でこうちゃんがスマホのマップを真剣に見つめている。
しばらく道なりにそって進んでいると、こうちゃんがいきなり大きな声を出した。
「これみろよ!」
そういって差し出してきたスマホの画面に写っているマップを見て背筋が凍った。
「道がない。。」
「たった今神野山に入ったってことだよ」
たつきくんのその一言で一気に車内が変った。
「なんかドキドキするな!」
こうちゃんは相変わらず楽しそう。
「なんか雰囲気だけで何もないのな」
たつきくんは運転席の窓を少し開けてあくびをしたその時、不意に横の草むらから人が飛び出してきた。
「たつきくん前!!!!!!」
車はクラクションの後になったドン!!という衝撃と共に止まった。
固まる車内。
「え、人引いた…?」
こうちゃんが震えた声で呟いた。
「い、一旦降りて確認しよう」
「お、おう」
たつきくんは話さない。
車を降りると、先ほどの衝撃が現実なのだと改めて分かった。
ボンネットには赤黒い血がこびりついており、車のすぐ下に倒れている被害者の顔は完全に潰れている。
「これってうちの学校の生徒じゃね?」
こうちゃんの言葉を聞いて服に目を向けてみる。
たしかに今僕たちが来ている制服を来ている。
「ほ、本当だ、、なんでこんな所に....ん?こうちゃんこの人もしかして....」
「埋めよう」
僕の話を遮って放ったたつきくんの一言。
「は?」
すかさずこうちゃんが聞き返す。
「去年の夏一緒にキャンプ行ったの覚えてる?この車その時使った車でさ、まだ道具残ってんだよ。」
「なにいってんの?」
こうちゃんの言葉を無視してたつきくんは話を進める。
「とりあえず一旦こいつ埋めよう。そしてその後ボンネットの血をタオルで拭けばなんとか」
「だから!!」
こうちゃんが怒鳴り、たつきくんは話すのを止めた。
「隠蔽しようってか?無理に決まってるだろ!!」
「じゃあどうしろってんだよ!!」
次はたつきくんが怒鳴る。
「こ、こんなのバレたら俺の人生はどうなんだよ!友達のピンチだろ?助けろよ!」
「友達だからこそだろ!そんなのやったって絶対見つかるし、今よりもっと重い罪になるだけだろ!?俺たちがちゃんと証言してやるから」
そう言ってこうちゃんは携帯を取り出すが、すかさずたつきくんが携帯を弾く。
こうちゃんのスマホをガシャンと音を立ててコンクリートに転がった。
「おい!なにすんだよ!」
こうちゃんは落ちスマホを慌てて拾った。
「お前こそなんなんだよ!友達だと思ってたのに!」
「もういい!埋めるなら勝手に埋めとけよ!だけど俺は味方しないからな!」
こうちゃんはそう言い捨て、森の奥に行ってし
まった。
「なんなんだよアイツ!もういい、二人でやるぞ」
「え、、、あ、僕は.....。」
「お前も裏切るんか?」
その時のたつきくんの顔は、僕の知っているたつきくんじゃなかった。
悪魔のようなその目に圧倒され僕は手伝うしかないと本能的に思った。
「や、やるよ。。」
僕がそう言うと、先程の顔が嘘のように穏やかになり「そっか、当然だよな」とたつきくんは笑った。
「とりあえず俺は穴掘るからお前は周りの血をどうにかして」
「う、うん。。」
生命のいた痕跡が死体の生温かさで伝わり、思わず吐きかけた。
「たつきくん!僕やっぱり無理だよ!違うやり方があるとおもうんだよ」
両手で口を抑え、たつきくんに訴えた。
がしかし、先程の悪魔のようなたつきくんの目と合い、視線をずらした。
「ご、ごめん」
下を向く僕にたつきくんは近寄る。
「お前掘れ」
たつきくんはそう言って僕にスコップを渡した。
「俺、こうちゃんともう一度話してくる。」
そう言って、たつきくんはこうちゃんが歩いていった不気味な森の中に消えて行った。
それから僕はひたすらに穴を掘った。
掘って掘って掘って、気がつくと僕の手にはマメができ、それが潰れて両手から血が出ていた。
「ひ、ひでちゃん。。。」
急に声をかけられ、驚いて後ろを振り向くとそこには、首から大量の血を出したこうちゃんが立っていた。
「こうちゃん!???だ、大丈夫!?」
ヒュー、ヒューと細い息をしているこうちゃんは僕の目を見て言った。
「た、たつきがやったんだ。」
「え?」
僕は思わず聞き返す。
「たつきが急に俺の首を木の棒で刺してきやがったんだ。」
「たつきくんが!?」
「ひでちゃん。。あいつはいま正気じゃない。に、逃げろ、、、、。。。」
そう言い残しこうちゃんは目を閉じた。
「こうちゃん!こうちゃん!!」
僕は必死にこうちゃんの名前を呼ぶが、目を覚ますことは無かった。
まさかたつきくんがこんなことをするなんて、、あんなに仲良しだったのに。。
なんで。なんで。。
「う、、ううう。」
僕は恐怖と戸惑いでどうにかなりそうだった。
溢れる涙を必死に拭って何度も何度も消して目覚めることの無いこうちゃんの名前を呼び続けた。
森の奥からこちらへ向かってくる足音が聞こえてくる。
たつきくんだ。
全身の毛が立ち、息が上手くできない。
「ああ、そいつもう死んでるよ」
真っ白な制服に真っ赤な血をつけ、右手に鋭利な太い木の棒を握りしめたたつきくんが平然とした様子でこちらに向かって来る。
「く、くるな!!!」
僕は喉が痛くなるほどの声でたつきくんを威嚇した。
「いやだってこいつ酷いんだぜ?森の奥行って警察に俺らのことチクろうとしてたんだ。そんなの友達じゃないだろ?」
たつきくんは歩みを止めず進んでくる。
「ぼ、僕のことも刺すのか?」
「なんで俺がひでちゃんを殺さなきゃならないんだよ。友達なのに」
「僕の友達がそんなことする訳ないだろ!!!もうお前なんて友達でもなんでもない!!絶交だ!!!」
僕は下を向いて言い放った。
少しの沈黙。
乱れた呼吸を整え、ゆっくりの顔をたつきくんにむける。
たつきくんは僕に対し少し微笑んだ。
「そっか、、ならしょうがないね」
たつきくんは先程よりもスピードを上げて僕に近づいてくる。
このままたつきくん捕まったら殺される!
気がついたら僕は大声をだして走っていた。走って走って森の奥へ進んでゆく。
たつきくんから少し距離を離し、僕は木の後ろに隠れた。
隠れて数分後たつきくんの声が聞こえてくる。
「おーいひでちゃんごめんて。何もやらないから出て来いって。」
すぐ後ろにいるたつきくんに見つからないよう両手で鼻と口を押されて必死に息を殺す。
「おまえ運動苦手だよな?こんだけ走ってたらもうキツイだろ。どっかの木で隠れてるんじゃないのかー?」
怖い怖い怖い怖い。
なんで?どうしてこうなった。
こうちゃんが怖いとこ行こうって言ってきて、でも楽しみだった。たつきくんも楽しそうにしてたし。。
僕達小さい時からずっと一緒だった。辛い時も支え合って、失恋した時はみんなで励ましあって。僕は毎日楽しかった。ずっと一緒に遊んでたかった。なのに、なのに。。。
ふと視線を地面に落とすと、先の尖った太い枝木の枝が目に入ってきた。
息が荒くなる。
鼓動が早くなり体温が上がる。
『ひでちゃん。。あいつは今正気じゃない。』
こうちゃんのこの一言が頭によぎった。
「うぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
僕は大声を出す。
「バカか!そんなことやったらバレるに決まってるだろ!!!!!」
すかさずたつきくんが反応し、僕が隠れている木の後ろを覗いた。
「い、いない。。?」
「たつきくんごめん!」
たつきくんの背後に回っていた僕は、たつきくんの首に目掛けて両手で握りしめた鋭い木を突き刺した。
「ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!ごめん!」
たつきくんが動くなるまでなんども何度も突き刺した。
「はぁはぁはぁはぁ。」
僕の体は真っ赤に染っていた。
もう涙は出なかった。
「たつきくん、こうちゃん。今僕も行くね」
それならどのくらいだろうか。
僕はひたすらに続く何も無い森を歩いていった。死ねそうなところ、なんでもいい。一瞬で死ねる場所。。
すると遠くの方から車の走る音が聞こえてきた。
あれだ。あれに引かれよう。
車がすぐそこまで来たところで飛び出した。
その時の僕は戸惑いも恐怖も何も感じなかった。
激しくなるクラクションの中で車内を見たとき、僕はずっと感じていた違和感の正体がわかった。
なぜこんな山にうちの生徒が、なぜあの引かれた生徒は''僕に似てた''のか
車内の人は僕達だった。
ああ。そういう事か
その瞬間ドン!という鈍い音ともに僕の意識はなくなった。
「え、人引いた?」
「てかこの人うちの生徒じゃん!」
「なんでこんな所に。。
『神野山』
ここは、地元で有名な心霊スポットだ。
噂によると16時44分、車で山道を通ると二度と戻ってこれなくなるらしい。
慌てる車内の時計は16時44分で止まっていた。

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