ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

裏切り者

俺がリンゼル様と新たな力を手に入れるため訓練を受けている同時期に、上級騎士達も動き出していた。

ナナミ『シャンクーカスティス死んじゃうかもしれないの?』

シャンク『わからない。ただ俺もあの訓練を知っているが、もしかしたらってこともあるな…』

サザルキ『そうか…だったら、俺たちには俺たちの出来ることがあるんじゃないか。』

サザルキがそう言うと、シャンクは顔を上げ話し出した。

シャンク『サザルキ、お前の言うとおりだ。カスティスだけに重荷を背負わすわけにはいかない、今俺たちの出来ることをしよう!』

ナナミ『それはいいんだけど、私たちに出来ることって?』

シャンク『裏切り者を探し出すことだ。』

俺たちカシュパラゴに裏切り者がいるとは信じ難いし、思いたくもないが、このような事態になってしまった以上考えざる終えない。

俺とユイカを除く上級騎士によって捜索が始まった。

シャンクの知り合いには、表には出てこない多くの裏情報を知っている友人がいる。

3人はまずそこへ向かうことにした。

ナナミ『シャンクってほんと人脈広いよね。友達が多くて羨ましいなぁ。私友達ユイカぐらいだから、ユイカ今ダウンしてるしー、友達誰もいないなぁ〜。』

シャンク『そんなことないだろ…っていうか俺たちは友達じゃないのかよ!まぁでもユイカがいれば十分だけどな。』

サザルキ『なぁシャンク、あの小屋に友人が?』

そうサザルキが指を刺す先には、森の中にポツリと立っている小屋があった。

シャンク『あぁ、あそこにいる。』

小屋の前に来たところでナナミとサザルキは外で待機、シャンクだけ中に入っていく。

ゆっくり扉を開け小屋の中を見ると薄暗く窓一つない、あるのは蝋燭の火が一つだけだった。

不気味な雰囲気の中シャンクが小屋の中を3歩前に歩くと、気配を殺したプロの技で、シャンクは背後から首元にナイフを突きつけられる。

『何者…』

シャンク『俺だよ、シャンクだ。』

そういうと背後の者はがっくりとナイフを下ろした。

『はぁーノックぐらいしてよ!びっくりするでしょーが!』

シャンク『悪い悪い!元気してたかサヤ?ってかお前もっと日光に当たれよ!こんな暗いところで、まったくうつ病になるぞ!』

サヤ『うるさいな!ちゃんと1日2時間はお日様の光を浴びながら昼寝してますー!あんたに心配されなくても自分の健康ぐらいちゃんと管理してるわ!まぁ、私は元気。それより久しぶりに来たけど、何か用?』

シャンク『用があってきたに決まってる。お前の掴んでるところで、この世界、カシュパラゴにいる裏切り者を教えてもらいたいんだ。』

サヤ『なるほど。さっき起こった街のことね。まぁ全ては知らないけどわかる範囲で伝える。でもその前にいつものものは持ってきてるの?』

そういうとシャンクはおもむろに服のポケットからダイヤモンド?ルビー?サファイア?鮮やかに光る宝石の様なものを手渡す。

そしてそれを受け取ったサヤは蝋燭でその宝石の様なものを炙り、確認した後に話し出した。

サヤの衝撃的な話を少し聞き、シャンクは疑念を抱く。

シャンク『つまり裏切り者は騎士の中にいて、上級騎士と繋がりがあり、そして四大騎士とも関わりのある人物…』

サヤ『えぇ。そこから導きだすと、私の中では…』

サヤは3名の騎士の名前を言った。

推測でしかないが、この女は相当頭がキレる。

その上かなり多くの情報を持っていることを考えると、適当な人間を並べただけとは思えない。

ただ、サヤが示した3名の中で特に馴染み深い騎士が入っていた。

もちろん皆知っている者だったがそいつでないことを願いたくなる者がいた。

それは…

シャンク『リガムル…』

サヤ『何?あんたの知り合い?』

シャンク『あぁ、俺たち上級騎士の同期でいつも一緒に訓練、任務、そして友達としての付き合いも多くあった…』

サヤ『そぉ…まぁ私には関係のないことだけど、友達だからこそ正してやるべきなんじゃない?あんたの好きにすればいいけど。』

サヤはさっぱりしている奴ではあるが、マトを得たことを言ってくる。

まだ決まったわけではないが、確かにこの街の有様を見ると、戦友、悪友、親友…そんなことは関係のないことだ。むしろサヤの言うように、間違っているものは間違っていると正してやるべきである。

ガチャッ

小屋の扉が開き、シャンクが中から出てきた。

サザルキ『情報は得られたのか?』

シャンクはその問いにコクリと頷くが、2人からすると明らかに先程の雰囲気と違っていた。

ナナミ『シャンクーン、何かあったのー?』

シャンクは少し考えた後に2人にサヤからの情報を事細かく話す。

それを聞いた2人はかなり驚いている様子だった。

サザルキ『つまり高確率でその3人の中の誰かがシドマに情報を流しているってことなんだな。』

シャンク『あぁ、そういうことになる…』

ナナミ『リガムル…でも違うかもしれないんだよね!きっと何かの間違いかも!』

シャンク『でも合ってるかもしれない…』

その言葉を代わきれに、3人は黙り込んだまま誰も何も話そうとはしなかった。

自ずと足は街へ向かって歩く。

気づけば街に辿り着いていた。

どのように切り出していいのか、そんなことを皆が考えていると、シャンクが沈黙を破る。

シャンク『2人とも聞いてくれ。さっき情報をくれた奴が言っていた。2人の気持ちはよくわかる。でも友人なら尚のこと間違っているものは間違ってると正してやるべきだ。』

サザルキ、ナナミの2人が頷く。

リガムルは今の上級騎士にとってかけがえの無い存在。

どんな状況にあっても苦難を一緒に乗り越えてきた大切な仲間だ。

あいつがそんなことをしたとは考えにくいが、もしシドマに情報を流し、カシュパラゴをこんな状態にしたとしたら、許すわけにはいかない。

それはこの世界の騎士…いや、親友として。

サザルキ『シャンク、どんな形であいつに話す?ストレートに聞いてみるか?』

ナナミ『サザルキはお馬鹿さんだねー。そんなことしたらもし犯人だった場合、逃げ出すか、襲いかかってくるか、シラを切られるかのどれかじゃーん。』

シャンク『ナナミお前ホントボーッとしてるようで冷静に物事を見てるよな。』

ナナミ『そーお?当たり前だと思うけどー、サザルキがおバカちゃんなだけだよー。』

サザルキ『バカバカ言うんじゃねー!』

ナナミの言う通りだ。

リガムルが犯人だった場合、街の中で聞き出すのは少々リスクが高すぎる。

もし襲いかかってきたり、逃げ出したりした場合、街の被害に繋がりかねない。

1番良い案としては、街の外に理由をつけて呼び出し、そして聞き出すこと。

これであれば何があっても街の被害に繋がることはないし、シラを切れないほど圧をかけ、聞き出すことができる。

シャンク『俺が考えてることは、いつその3人が逃げ出すかわからない。つまり時間が無いってこと。そこで提案として一人一人俺たち3人で確かめるのではなく、俺たち一人一人が一対一でアイツらに話し合うって作戦だ。』

サザルキ『確かにな。その方が手っ取り早いし、アイツらであれば戦闘になっても俺たちの方が断然強い。』

ナナミ『まぁー時間のことを考えればそれが1番良い案かもしれないね〜。』

シャンク『よし決まりだな!ないと願いたいが、念のためその3人の中では1番強いリガムルは俺が話をしてみる。』

ナナミ『なーにそれ〜、まるで私たち弱いみたいじゃーん』

シャンク『そういうことじゃない!あいつの攻撃パターンはいつも訓練を一緒にやってきた俺が1番分かってるつもりだ。それを考慮して、念のため俺がってことだよ!』

サザルキ『それなら納得だな』

シャンク『2人はその他の騎士を頼む!3人の実力は分かっているが油断するな。もし危険な状況になった場合は魔法で空に向かって合図する!そして犯人は生きて捕らえること!いいな!』

『了解!』

犯人確保に向け、3人はそれぞれの騎士のもとへ向かっていった。

シャンクは、まず街の修復を行う騎士にリガムルの居場所を聞くことにした。

騎士『シャンク様お疲れ様でございます!街はこの通り復旧しつつあります!』

シャンク『だいぶ復旧してきたな…ありがとう。それと、リガムルを見なかったか?』

騎士『リガムル騎士でしたらここに…あれ?さっきまで居たと思ったのですが?』

騎士によると、先程まで街の修復作業を一緒に行っていたそうだが、いつの間にか姿が見えなくなっていた。

そこで、作業に加わっていた魔法士にリガムルの位置を魔法で探し出してもらう。

しかしここでも異変が起こる。

魔法士『おかしいですね。リガムル騎士の居場所がわかりません。』

シャンク『居場所がわからないってどういうことだ?普通ならわかることだよな?』

魔法士『普通はすぐにわかります。それがわからないということは…魔法を遮断するような場所にいるか、それか魔法を遮断何かを持っているか…どういうことなのでしょう…』

普通なら簡単に見つかるところ、騎士達に聞いてもわからない、魔法によって捜索しても居場所がわからない。

このことからシャンクの疑念は少しづつだが、確信に近づいてしまっている気がした。

リガムルと考えたくないが、この状況の最中に姿を消すということは騎士としてあってはならないこと。

なんとかしてあいつを見つけ出さなければならない。

シャンクがリガムルの居場所を考えていると、早くもそこへナナミがやってきた。

ナナミ『シャンクーたぶんこいつが裏切り者みたいだよー』

そう言ってナナミが引っ張ってきたのは、サヤが言っていた騎士の1人だった。

きっとナナミと戦闘になったのだろう、騎士はかなりボロボロになった姿をしている。

ナナミ『洗いざらい言わないと殺すよって言ってもなかなか言わないから生きて連れてきたー』

ナナミはぼーっとしていて一見か弱い女の子に見えるが、上級騎士だけあって相当な腕前をしている。

俺も剣を交えたことがあるが、癖のある剣技で、先の攻撃を読みづらい。
ナナミ独特のスタイルを持っている。

つまりただの騎士では相手になるわけもない訳だ。

ナナミが連れてきたボロボロになっている騎士にシャンクが話しかける。

シャンク『おい、お前はなんでこんなことをしたんだ?答えるなら生かしてやる、答えないなら殺すまでだぞ…』

その問いに騎士は一向に答えようとはしなかった。

すると騎士は、最後の力を振り絞り胸に仕込んであった爆発する鉱石に魔法をかけた。

裏切り騎士『シャンク死ねー!!!』

シャンク『な!?』

ナナミ『危ない!!』

ドカーーーン!!!!…

砂煙が立ち込め、修復された町が再び被害を受けた。

ナナミはなんとか爆発を回避したが、シャンクは爆発をもろに食らっていたように見えた。

ナナミ『シャンク!シャンク!…嘘でしょ…』

爆発により近くにいた騎士数名が地面に横たわっていた。

この状況を見るとシャンクも無事で済まされそうではない。

砂煙が落ち着いてきて、周りの状況が見えるようになってきたその時、

『なんとかお守りできましたね、はぁー危なかったー』

シャンク『あぁ、死んだかと思った…本当にありがとう…君は?』

アシド『私は騎士長補佐のアシドと言います。騎士ですが、魔法を専門に扱っていまして。いやぁ私も死んだかと思いました、ふぅー危なかったぁ』

アシドはミリアの技術確認の際に立ち塞がった騎士の1人だ。
チャルキアという騎士との剣術と魔法のコンビネーションで相手をしてもらった。

シャンクとアシドが安全を確かめ合っているとそこへナナミがやってきていきなりシャンクに抱きついた。

ナナミ『シャンクー死んじゃったかと思ったよ〜良かった良かったぁ〜』

シャンク『お、おいナナミ!お前女なんだからそーゆうの気をつけろよ!慣れてない男は勘違いするから!』

ナナミ『えー、勘違いってなーに?』

シャンク『はぁ、とにかくその抱きついてる腕を離して、俺から離れた方がいいってことだよ』

ナナミは本当にわかってないのか、それともからかっているのかがよくわからない。

アシド『ナナミ様の胸が当たって…羨ましぃ…』

シャンク『何か言ったかアシド!?』

アシド『い、いえ!何も!』

シャンクはアシドの魔法もありなんとか命を落とさずに済んだが、この爆発により騎士数名の命が失われてしまった。

シドマのやり方は汚いやり方だ。

人1人の命をなんだと思っているのか。

絶対に許すことはできない。

するとそこへ、別の騎士を探していたサザルキも合流する。

シャンク『サザルキ!犯人がわかった!ナナミの追っていた騎士だ!被害は出てしまったが…何とか見つけ出すことができたぞ!』

そう言ってサザルキに犯人の報告をしたシャンクだったが、サザルキから思いもしないことを耳にする。

サザルキ『そうか…つまり裏切り者は2人ってことになるな…』

シャンク『え?どういうことだサザルキ?』

サザルキ『俺が追っていた騎士も問いただしたら襲いかかってきた。捕らえようとしたが、俺が知っているよりも遥かに強くて、それで…』

サザルキは裏切り者を捕らえるほどの余裕がなかったため、そいつを殺したという。

殺さなければこっちが殺されるという状況ならば、それは致し方のないことだとシャンクもわかっている。

シャンク『そうだったのか…気にするなサザルキ。よくやってくれたよ。ということは、2人が裏切り者…』

2人が裏切り者だった。

しかしこうも言える。もしかすると2人よりももっと裏切り者がいるかもしれない。

ならば次に考えるべきその裏切り者は、今思い浮かぶ人間としては1人しかいないだろう。

シャンク『アシド!騎士はここに何名いる!?』

アシド『はっ!負傷したものは含めないとして、5、6名ほどかと』

シャンク『わかった。まずは現状を四大騎士様にご報告し、リガムル騎士を探すよう仲間達に促せ!俺たちはリガムルをすぐに探しに行く!頼めるか!』

アシド『承知いたしました!』

こうしてリガムル捜索が大きく始まろうとしていた。

その頃…

『シャンク…まったく勘の鋭いやつだな…』

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