ー MY REAL STAGE 〜 僕は彼女を死なせない 〜 ー

ルシア・モドロンリ

上級騎士の実力

ルドワードは倒れ込むサザルキにとどめとして、剣を突き刺そうしていた。

ルドワード『サザルキいい戦いだった…来世でまたやりあおう…』

剣をサザルキに向けて振り下ろしたその時。

ルドワード『な、なんだ!?』

サザルキの握る剣が1人でに光り始めた。

するとサザルキは緑の光に包まれ、不思議なことに瀕死状態にあった身体の傷はあっという間に全快となり、サザルキは立ち上がった。

ルドワード『お前、何が起こった!?どうなってる!?』

サザルキも知らない力のはずだが、彼には心当たりがあった。

それはルドワードに斬られ、意識が薄れかかっていた時に聞いた兄、ルドルキの声だった。

『もうダメなのか…俺はやはり何も守りきれなかった…』

『諦めるな…』

『その声は…兄貴…』

『お前はマセル様に誓ったはずだ。命に変えてもカシュパラゴの皆を守りたいと。それはどうした?』

『守りたいが、身体が言うことを聞かないんだ…』

『いいや違うな、お前は諦めている。サザルキ、技が出せないことはそんなにダメなことか?』

『…』

『お前は剣と何を約束した?相手を倒すためか?それとも自分の力を皆に見せつけたいだけか?』

『違う…』

『そうか。だが今のお前はそういう風にしか見えないけどなサザルキ。』

『違う…違う…』

『じゃあ、お前は何のために戦ってるんだ?』

『俺は…俺が戦う理由は…』

『お前が戦う理由それは…俺と一緒…だろ?サザルキ?』

兄の言葉を聞き、心に一筋の光が差し込まれたような感覚に襲われた。

『兄貴…そうだったな…』

サザルキはルドルキの言葉によって何かを思い出した。上級騎士となり剣に覚悟を見せた時、そして兄の亡骸に誓った想いのこと。

『俺の剣は兄貴の剣。この剣に託した兄貴の想いは、俺の思いと一緒だ。そうか…いつの間にか大事なことを忘れてたのかもしれないな。』

『忘れたなら思い出せばいいだけだ。お前はまだできる。諦めるな。お前が戦う時、それは俺も一緒…それだけは忘れるなサザルキ!』

そうして彼は、再び剣を強く握りなおす。

サザルキ『ルドワード、お前は確かに強い。そして強大な技を持ち合わせた強者だ…だがな!技を出せるから、力が互角、そんなことは関係ない!俺がどうなろうとお前を倒してこのカシュパラゴを守ることに変わりないんだ!』

ルドワード『なんだかよくわからねーが、俺の優勢は変わりないぞ!!』

2人は駆け出し、再び剣を交え始めた。

キンッキンッキーッン!

激しい剣の激突に森がざわめいている。

やはり2人の斬り合いは尋常ではない圧だ。
この斬り合いを互角にやり合っている2人の力は計り知れないものがある。
ただ少し変わったことは、サザルキの一撃一撃の重さが増しているということだ。

サザルキの剣にルドワードが押されているように見える。

ルドワード『お前、何が起こった!一撃の重さがさっきよりもはるかに重い。だが、俺にはこれがある…aspiration(アスプレイション)lose(ルーズ)!!』

ルドワードは再びあの技を繰り出してきた。目の前にいたサザルキはその技をもろに喰らってしまう。

この勝負勝ったとルドワードが心の中で思っていたその時、衝撃的な光景を目にする。

ルドワード『!?』

地割れした地面に巻き込まれることなく、サザルキが宙に浮いているのだ。

ルドワード『な、なんで浮いてられるんだ!?』

サザルキ『それは俺の剣がそうしてくれてるからだ。』

ルドワード『それはどういう…まさか!お前剣の技を使えるように!?』

サザルキ『spirit(スピリット)Blessing(ブレイシング)〜 風 〜。森林精霊たちの加護だ。』

サザルキは兄と言葉を交わした後、自然と技が発せられていた。

spirit Blessing 〜 風 〜 は剣に込められた力によって、森林精霊の力を呼び起こし、風を操るという技。

ルドワード『なるほどな…面白くなってきやがった!これでないと戦いはつまらない!!こっから本気でいくぞ!サザルキ!!』

ルドワードが宙に浮くサザルキに向かって飛び上がり、斬りかかってきた。しかし、その攻撃を見てもサザルキは微動だにしない。緑に光る剣を奴に向け、そして…

サザルキ『spirit(スピリット)Blessing(ブレイシング)〜 緑 〜』

その言葉により地面から大量の木の根がメキメキと顔を出し、あっという間にルドワードを締め上げた。

ルドワード『な、なんだこれは!?身体が動かせない!?』

サザルキ『そこからは動けないぞルドワード。その根は相手の動きを封じるのと同時に、少しづつ生気を吸い取っていく。もうお前に勝ち目はない。』

ルドワード『サザルキ卑怯だぞ!正々堂々戦え!』

サザルキ『卑怯だと…四大騎士様をハメ、師匠様をあのような状態にした貴様らに…卑怯などと言う資格はない!!!!』

バサッ!!

ルドワード『カッ!…』

サザルキはルドワードを斬り、戦いに勝利した。

サザルキ『師匠様…兄貴…ありがとう…』


その頃、ナナミはラファスの強大な攻撃を受ける瞬間だった。

ズゥゥゥゥゴォォォォォ!!

黒く巨大な竜巻はナナミもろとも山を削り取っていく。どう見てもナナミは助からないと思われた。

ラファス『あーあ、ナナミちゃん可愛かったのになぁ。シドマの仲間に引き入れればよかったかなぁ。まぁ命令に反くわけもいかないし、しょうがない…!?』

ラファスはナナミが死んだと思い完全に油断していた。

しかし死んだはずのナナミが今ラファスの目の前に現れ、そして…

バサッ!…

ラファス『カッハ!!…う、嘘だろ…ど、どうやって…』

ナナミはラファスを大きく斬りつけ、ラファスは地面に倒れ込んだ。

ナナミ『えーどうやってって、私が出せる技って攻撃の技だけだと思ったのー?身を護る防御の技も使えるから、それを使っただけだよ??』

ラファス『ナナミちゃん技を2つも使えるのか…完全に油断したなぁこれは…で、でも僕の技を防ぐ防御の技って…』

ラファスがそれを言うとナナミが剣に唱えかける。

ナナミ『roads(ローズ)bud(バッド)』

すると、ナナミの周りに紫色のモヤのようなものが何処からともなく集まり、バラの蕾のような形でナナミを取り囲んだ。

ナナミ『特別に見せてあげる。でもこの一回だけだよ〜。あ、もうすぐあなた死ぬから自動的に一回だけになるもんね。そっかそっかぁー。』

ラファス『またモヤかぁ…でもさっきは僕のJet(ジェット)black(ブラック)storm(ストーム)で消せたはず…』

キーッン!

ナナミは自分の剣で中ならモヤを斬りつける。するとそのモヤは剣を弾き返すほどの強度を保っていた。

ナナミ『イッタタァ、相変わらずかったいよねーこのバラの壁。こんな感じだから大丈夫だったんだと思うよ。』

ラファスはその硬さを目にし、口から血を流しつつ笑みを浮かべる。

ラファス『なるほどね…それは僕の技でも捉えきれないわけだ…たっく、カシュパラゴの上級騎士強すぎるだろ…』

バサッ!

ナナミ『おしゃべりが好きな人だなぁー、うるさい人は黙らせないとね。』

ナナミは瀕死のラファスに最後の一撃を入れた。

ラファスは放っておいてもきっと死んでいただろう。

しかしナナミは最後まできっちり仕事をこなす。

彼女は時に冷徹でいて、そして冷酷。

それには深い訳があるのだが、根本的な部分ではカシュパラゴを守り抜くという精神のもと判断を下す。

ナナミの行動は決して間違っていない…


その頃シャンク達もまた互角に死闘を繰り広げていた。

シャンク『はぁ、はぁ、はぁ…お前、なんでこの強さを隠していた。』

リガムル『はぁ、はぁ、はぁ、別に隠してた訳じゃないよシャンク。初めは本当にお前と同じところからスタートしたさ。だけど、あまりに強くなりすぎると、役が付き、目立ちすぎて厄介だから力を少し調整していたってところだな。』

シャンク『なるほど…やはりお前は最初からシドマの騎士…だったんだな…』

リガムル『だから最初からそう言って…!』

キーッン!!

シャンクがリガムルに斬りかかる。

シャンク『お前を斬る!必ずな!!』

リガムル『やれるものならやってみろ!シャンク!本気でこい!』

2人は再び激しく剣を交え斬り合う。そのスピード、剣技は、見てて惚れ惚れする程のものだった。

今この交戦での優勢度は、シャンクにあるように見える。

シャンク『炎の精霊(サラマンダー)!』

シャンクがリガムルに向け技を繰り出す。

リガムルは剣で防いだものの、強大な技に全ては防ぎきることが出来ず、身体の所々に火傷を負った。

リガムル『いい技だ…ってかシャンク!あっちーな!!お前大火傷負うとこだったじゃねーか!』

シャンク『俺の技をくらってそれだけの傷…剣を交えて感じていたが、やはりリガムル…お前相当な腕前だな。』

リガムル『お前にそう言ってもらえると嬉しいよ。そしたらお前にも俺の技も見せてやろうか。』

そういうとリガムルは剣を構えた。

すかさずシャンクも剣を構えるが、少し違和感を覚える。それは、さっきまでの剣の構えと今のリガムルの構えが変わったからだ。

リガムルは走り出す。

そしてシャンクに向け剣を鞘から抜き斬りかかろうとした瞬間。

シャンク『な!?刃がない!?』

リガムルが先程まで振るってきた剣は柄(つか)、つまり剣の持ち手しかなく、重要な刃の部分が無くなっていた。

ただリガムルはシャンクに対し、斬り抜いた形を取りそこで止まる。そんな隙だらけのリガムルにシャンクが斬りかかろうと剣を振り下ろす…すると…

ザクッ!

シャンクは何かの気配に気づきジャンプし、空中へと避けた。

着地し、もう一度リガムルの方を見ると。

シャンク『どうなってる…』

先程までなくなっていた刃が再び現れていた。

シャンクはとっさのことで、自分が先程見間違えたのだと思った。しかし、そうではなかった。

シャンク『な、なぜ俺が斬られている…いつ…』

シャンクは確実に何かに斬られていた。
リガムルの鞘から抜いた剣は刃がなく、当たっていない、そして気配からも避けた。

では、どこで斬られたのか…シャンクは考えていた。

リガムル『シャンク、お前何が起こったのかわからないんだろ?』

シャンク『俺に何をした…』

リガムル『知りたいか?知りたいよなシャンク。だったらもう一度自分の目で見て確かめてみろ!』

リガムルはまたあの構えになる。すかさずシャンクは向こうからくる前に、自分から斬りかかっていく。

しかしリガムルはシャンクの攻撃を交わし、またしても刃がない剣でシャンクは斬られた。

「これは一体どうなってるんだ…」そうシャンクが思っていると、またしても異様な気配がシャンクに襲いかかる。

シャンク『きたな…』

気配を感じる方向に技を放った。

シャンク『炎の精霊(サラマンダー)!』

ジャァァァン…ボォォォ…

薄く、黒く、影のようなものをシャンクの赤く眩しいほどの炎が焼くのが見えた。

その影のようなものが燃え尽きると、リガムルの刃がスーッと現れた。

シャンク『妙な技だな…』

リガムル『apparition(アパリッション)sword(ソード)。俺もそう思うよ。俺にも何が起こるかわからない技だ。刃を代償に、見えない何かが相手に攻撃をしてくれるって技。』

そんな技聞いたことがない。

ただ、この技を使っている最中は、刃がない為剣の使い手は完全にフリーになる。しかも、発動時に相手を斬ったという条件、そして発動中は静止してなければいけないという、かなり危険なルールもあるらしい。

それなら攻撃し放題な気もするが、技発動者に攻撃するものは、見えない何かに攻撃される。

その見えない何かは、数や大きさ、強さなど、どうなっているのかはよくわかっていないらしい。

シャンク『ずっと一緒に訓練してきた奴が、まさかそんな聞いたことのない技を持っているとはな…』

リガムル『お前と訓練をしていた昔はこの技は使えなかったよ。だけど…お前が強くなってるのを見て、俺も強くならなきゃって思ってな!だってお前に負けたくないしよ!』

リガムルはシャンクに向かって笑顔で話した。

その顔を見て、シャンクは歯を食いしばり…

シャンク『なんで…なんでお前がシドマなんだよ!!仲間の成長に合わせて自分も同じように、いや、それ以上に成長したいって思える奴がなんでシドマなんかに使われてんだ!!なんでカシュパラゴを裏切るようなことすんだよ…俺は…お前のこと嫌いになれないのが辛いんだよ…』

リガムル『お前はやっぱり良いやつだよ。俺はお前のこと嫌いじゃねーよ。むしろ今でも親友だと思ってる。だから…決着つけないとな…』

2人は剣を構え、そして…

キーッン!

再び剣を交える。

シャンク『炎の精霊(サラマンダー)!』

その攻撃をリガムルは剣で防ぎ、火傷を負いながらもシャンクの隙をつきあの技を出してくる。

リガムル『apparition(アパリッション)sword(ソード)…』

技の発動により静止したリガムルにシャンクが斬りにかかる。するとやはり見えない奴が攻撃してきた。

バサッバサバサッ!キーッン!

シャンクは攻撃を剣で防ぐも、全て防ぎきることはできず、かなり傷を負ってしまった。

シャンク『気配を頼りにしても、全て防ぐことは無理そうだな…ならば…』

シャンクは剣の構えを変え、目を閉じた。

シャンク『火影蛇(ほかげくちなわ)』

それを言葉にすると、赤く光る剣から炎が溢れ出て、次第にその炎は鞭のような形になる。

そして見えない何かの攻撃がまた始まった。

存在を感じながらシャンクは剣から垂れる炎の鞭を見えないものに向かって振るっていく。

ジュゥゥゥゥゥ!…ジュゥゥジュゥゥ!ジュゥゥゥゥゥ!!

炎が何かに当たるたびにジュゥゥゥゥゥと肉が焼けるような音がした。

鞭は剣と違い、扱いが難しく、コントロールしづらい。

しかし扱いが難しい反面、広い範囲に攻撃を繰り出すことができる為、この状況ではかなり有能な技と言える。

シャンクが剣を振り続けていると、再びリガムルの刃が現れた。

つまり見えないものを倒し切ったことになる。

リガムル『おいおいシャンク、またすごい技を使ってくるもんだなぁまったく。流石だよ。』

シャンク『リガムル…お前がやったことは許させることじゃない…だけど!もう一度戻ってこい!いや、最初からやり直せ!このカシュパラゴで!』

リガムルは真剣な顔をした後、少し笑った。

リガムル『シャンク、お前は俺にとってシドマだろうがカシュパラゴだろうが親友にかわりねーよ。それはカスティスもユイカもサザルキもナナミもルキも同じだ。だから…こうするしかないんだ…』

そう言うとリガムルは剣を自らの身体に向け、そして…

グサッ!…

シャンク『おい!?お前何を!!』

剣を自らの身体に差し込んだ。

リガムル『カッ!…なんとしてもお前を倒さないといけないんだよ…親友として…暗黒のsacrifice(サクリファイス)…』

技を口にした直後、リガムルが跪く地面に暗くどんよりした空間が広がると同時に、無数の黒い腕が現れ彼を闇へ引き込んでいく。

シャンク『リガムルやめろ!技を解け!解くんだ!』

シャンクはリガムルのもとへ走り出した。

リガムル『シャンク…お前の技を見て思ったんだ…もう俺に勝機はないってな…お前まだ他にも技が出せるんだろ?…やっぱりお前は強いよ…』

その言葉を最後にリガムルは闇に姿を消していった。

リガムルの姿は消えたものの、暗くどんよりとした空間だけは地面に残っている。

シャンク『クソッ!…あいつ馬鹿なことしやがって…人生はいつだってやり直せるのに…』

シャンクは自らを悔いていた。

1番身近な親友を助け出すことができないものが、カシュパラゴの民を守り抜くことができるのかと悔いたのだ。

そうして拳を強く握り、自問自答していると何者かがシャンクに襲いかかってきた。

とっさの出来事にシャンクは剣で防ぐのが遅れるも、今は火影蛇(ほかげくちのわ)を発動していたこともあって、鞭の部分を利用してなんとか回避することができた。

シャンク『貴様、何者だ…』

シューシューシューシュー…ジュワァァァォァ!!

シャンクの前に立っていたのは人の形はしているが人ではなく、黒々とした身体に顔はドラゴンのようで、背中には大きな翼を持った得体も知れない化け物だった。

異色な雰囲気を放っていた化け物だったが、シャンクの直感は化け物の正体をすでに理解していた。

シャンク『これがお前の出した答えなんだな…』

シューシューシューシュー…ジュワァァォァ!!!

化け物はものすごいスピードでシャンクに襲いかかる。

キーッン!!

シャンク『ったく!こいつなんてパワーだ!』

ジュワァァォァァァァァ!!!

シャンクが剣で防いでもその上からダメージを負うほどの力、そして…

ジュワァァォァァァァァ!!!

キーッン!!

シャンク『な!?』

化け物の攻撃をなんとか防いだ時、奴の口から青白い光線がシャンク目掛けて放たれた。

即座にシャンクは技を口にする。

シャンク『猛火(もうか)の関所(せきしょ)!』

炎の壁を作り攻撃を防ごうとしたものの…その光線には効果はなかった。

シャンク『なんだと!?…これは避けきれない…』

化け物の計り知れない攻撃にシャンクは死を悟った。

『間に合ってくれ…』

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